著者
田中 聡
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マウス始原生殖細胞の形成に関わるニッチェを構成する環境要因としては、BMPシグナル及びWntシグナルが考えられているが、その作用機序の詳細に関しては不明な点が多く残されている。生殖細胞の形成不全を示すDullard欠損マウス胚の解析から、BMPシグナルでなく、Wntシグナルに依存して生殖細胞の形成不全が生じることが明らかとなった。DullardによるWntシグナル活性の適正量の調節には、Dishevelled 2を介したcanonical Wntシグナルの制御機構の存在が考えられた。以上より、Wntシグナル活性の適正量の調節が、マウス生殖細胞形成に重要であることが明らかとなった。
著者
川越 保徳 森村 茂
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

温度や塩分濃度の変化に迅速柔軟に対応できる“淡水-海水コラボレートAnammox 培養系”を構築し,窒素除去特性と細菌群集構造を明らかにした。淡水性と海洋性Anammox細菌の両培養物を反応槽に接種し,淡水,海水,および中間的な培養条件にて連続培養を実施し,全条件下で約5日間以内にAnammox反応特有のNH4-NとNO2-Nの同時除去を確認し,その後0.1g/L/dの窒素容積負荷で安定した窒素除去能を認めた。また,淡水と海水の中間的条件での連絡培養物では,淡水性Anammox細菌と海洋性Anammox細菌の存在比が1:30となり,培養条件の違いによって細菌叢が変化することが明らかになった。
著者
吉良 佳子
出版者
熊本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は自己集合性脂質のキラル会合構造をもとに,その超分子特性やナノ繊維構造を生かした機能性材料の開発を目的としており,本年度はω-アミノアルキル化およびω-ピリジニルアルキル化L-グルタミン酸誘導体の優れた両親媒性や分子会合特性を評価し,これらのカチオン性自己組織化分子のキラルなホストとしての機能性およびテンプレートとしてのホスト機能性の評価を実施した。従来のL-グルタミン酸誘導体にはない優れた両親媒性はω-アミノアルキル化によって促進され,これはナノチューブやヘリックスなどの繊維状会合体を形成することで分散していると考えられる。一方で,ω-ピリジニルアルキル化では水やアセトニトリルなどの極性溶媒にのみ溶解するが,有機溶媒でもナノチューブを形成する珍しい例である。また,高次キラル会合体であることから溶媒環境によって特有のキラリティーを示すだけでなく,アキラル分子にも二次的にキラリティーを誘起でき,その機能性はアルキルスペーサー長によって異なる挙動を示した。さらに,ω-ピリジニルアルキル化L-グルタミン酸誘導体は水中で二分子膜構造からなるナノチューブを形成するため,膜内部の疎水性場にモノマーを取り込ませ,これを光照射で重合することでテンプレート剤としての機能性を評価している。このように,本研究で用いた両親媒性L-グルタミン酸誘導は不斉材料だけでなくナノ構造材料として十分に期待される。
著者
松田 博貴 井龍 康文 中森 亨 佐藤 時幸 杉原 薫 佐々木 圭一
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本企画調査は,「気候・海洋環境変動に伴いサンゴ礁分布域の北限・南限(「サンゴ礁前線」)は移動する」というモデルに立脚し,琉球列島を調査対象域として,1)「サンゴ礁前線」の移動に基づくサンゴ礁形成の規制環境要因の解明および気候・海洋環境変動の復元,2)種々の時間スケールでの環境変動に対するサンゴ礁生態系の応答,ならびに3)全球的炭素循環におけるサンゴ礁の機能と影響,を解明するための科学提案「第四紀気候変動に対するサンゴ礁の応答」の実現を目的として実施された.企画調査では,国内外関連研究者13名により,現在のサンゴ礁北限近傍に位置する喜界島でのワークショップ(2003年8月),ならびに東京での公開シンポジウム"氷期にサンゴ礁の北限はどこだったのか??-I0DP/ICDP掘削プロジェクト「サンゴ礁前線の移動に基づく氷期・間氷期の環境変動解析」の実現に向けて-"(2004年1月)を通じて,1)様々な生物指標・化学プロキシーからの気候・海洋情報の抽出・解析法の総括,2)仮説検証に最大効率を生みだす最適掘削地点の選定,3)コア試料を補完する検層の選定と検層計画の最適化,4)サンゴ礁性堆積物における掘削ツールと掘削計画の最適化,について,炭酸塩堆積物,造礁生物,地球化学,年代決定などの観点から,多角的に検討を加えてきた.今後は,これらの討議により明らかにされた問題点や技術的課題について検討していくとともに,データ蓄積の乏しい北限域のサンゴ礁ならびに礁性堆積物の調査を継続し,早期の科学掘削の実現を図る.なお本企画調査の成果については,特集号として出版する予定である.
著者
良永 彌太郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

わが国の社会保障制度では、社会保険が中核的地位を占めている。わが国の社会保険は、一般制度としての年金保険、医療保険および介護保険があり、特別制度としての労働関係に特有の労災と失業を給付事由とする労働保険(労災保険と雇用保険)がある。そして1950年代後半から1960年代初頭にかけて整備された「国民皆保険・皆年金体制」をわが国における社会保険の原型とすると、その特徴の一つは被用者保険と非被用者保険の二本建制度であった点である。しかし、わが国における社会保険の原型は、これが形成されて約半世紀を経過した今日までに劇的に変容してきた。具体的には、1982(昭57)年の老人保健法による老人医療制度、1985(昭60)年の新・国民年金法、2000(平12)年実施の介護保険法において本格的に導入された保険者拠出金制度、基礎年金における第3号被保険者の保険料徴収対象からの除外、介護保険法における第2号被保険者の保険料負担と給付との極端な希薄化等、である。本研究では、特に、以上のような社会保険給付の費用負担関係に現われている急激な変化に着目し、費用負担に関する新しい規範論理の構築を目指した。その研究成果は、以下の研究報告で発表済みである。1.「社会保障法体系論からみた社会保険の規範的意義」社会保険法理研究会、平成18年5月7日、熊本大学、2.「労災補償の生活保障理論-その形成と展開-」荒木先生生誕82年祝賀研究会、平成18年10月21日、唐津シティホテル、3.「労災補償の生活保障理論-その形成と展開-」社会法研究会、平成18年12月9日、熊本県立大学、4.「(論文紹介)江口隆裕『社会保険と租税に関する一考察-社会保険の対価性を中心として-』」社会保障法研究会、平成19年3月27日、鹿児島大学、5.「社会保険給付における費用負担の法関係」社会保険法理研究会、平成19年6月30日、熊本大学、6.「社会保険給付費用の負担の法関係」社会法研究会、平成20年2月2日、九州大学。本研究で明らかになったことは、社会保障法における財源調達手段としての社会保険システムについて、今日の段階では対価性という規範論理のみでは把握できず、個別の保険者集団を越えた一種の社会連帯が存在しており、その社会連帯の主体、要件、内容を明確化することが求められていることである。
著者
宮田 敬士
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

生理活性因子アンジオポエチン様タンパク(AGF)の機能解析を行うために、AGF強制発現マウスを用いて検討した。AGFは、血管新生作用とは独立して、褐色脂肪組織、骨格筋組織に作用し、エネルギー代謝亢進を認めた。さらにトレッドミルによる運動負荷や寒冷刺激による体温変化を検討したところ、AGFは、走行時間、距離の延長や体温の抑制を認めた。以上より、AGFはエネルギー代謝亢進、運動耐容能の向上、低体温の抑制と有益な効果をもたらす分子であることが示唆された。
著者
高橋 隆雄
出版者
熊本大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

平成8年度・9年度でのアンケート調査をさらに完全にするために、10年度は、熊本市とその近郊の中学校7校(1.547名)を対象にアンケート調査を実施した。また、高校生自身が持つ自己理解の虚偽性を裏づけるために別の調査も実施した。これらによって今までの解析結果がかなりの程度確証された。アンケート調査としては、さらに生命倫理に的をしぼった内容でも行なってみた。ここでも興味深い解析結果が得られた。平成10年度のアンケート調査実施対象は、2660名。3年間の研究期間では統計6.844名となり、膨大なデータと解析結果を得ることができた。これらのアンケートの特徴は、設問数が33〜41問とないこと、内容が意議の広い領域に亘ること、数量化しやすい方式も採用していること等であり、相関係数がとりやすく解析が容易なように工夫しておいた。このため種々の統計処理が可能となり、多くの成果を上げることができた。それらの成果の一部は大学の紀要に論文として掲載したり、学会において研究発表という形で公表したが、成果が相当の量にのぼるため、約100頁(A4版)の報告書を準備中であり、3月中旬に印刷される予定である。ともかく、この3年間の研究によって、倫理学の新しい方法としてアンケート調査をとらえる試みの第一段階は十分成功したと言える。
著者
田口 宏昭 寺岡 伸悟
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

相互に関連する以下の三つの研究成果が得られた。(1)日本の近世において、畿内に広く分布していた両墓制についての先行研究及び実地踏査から、埋墓と詣墓という二種類の墓を持つこの制度が、遺骨と霊魂が日本の伝統のなかで必ずしも一体の「存在」として扱われてこなかった事実に注目し、現代の自然葬に顕著な遺骨崇拝に対する否定的態度という要素がこの伝統のなかに含まれていたことを明らかにした。(2)そして他方、同様に近世において、火葬、焼骨の投棄(散骨)、無墓地、無墓参供養の4特性を有する無墓制と呼ばれる葬送形式があったことに注目し、現代の自然葬がこの墓制と形式的な類似性を持ち、無墓制が現代の自然葬の原型であることを明らかにした。(3)散骨の実施現場での参与観察を通して、散骨が無宗教の「宗教的」儀礼として行われていること、すなわち、散骨を支持する人びとが特定の宗教を信じる場合も信じない場合でも、一時的に散骨の場として特定された空間並びに時間が聖化され、散骨の儀礼そのものが自ずと「聖なるもの」として現象してくることを見出した。このような散骨儀礼は、死者の人格自体の聖化を意味するものであり、「墓は心のなかに」という散骨推進団体が掲げるスローガンと響きあうものである。(4)本研究は当初、散骨の行為について「自然葬をすすめる会」の会員たちが語る際に「自然に帰る」という言説を多用しながら他界表象を描いているという事実に基づき、自然葬が自然界の諸物に宿る精霊への信仰として理解されるアニミズムへ回帰する現象である、という仮説を立てて出発した。この仮説を確かめるために「自然葬をすすめる会」の会員315名を対象にして実施したアンケート調査の結果から明らかとなったのは、散骨という行為を通して、死者の霊魂がそれら諸物に入りこみ精霊として存在し続けるという観念は限定的で、むしろ人びとは死後の霊魂を信じないか、あるいは霊魂の存続に対して確信を持たない傾向を示すことが明らかとなり、仮説は否定された。
著者
山口 幸代
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

株主利益の追求と社会的配慮という企業に対する二つの要請の関係性をどのように捉えるべきなのか。英国で2006年に成立した新会社法は、従来の会社法制においては明言されることのなかったこの課題に果敢に取り組み、法的な位置づけを試みたものとして注目に値する。そこで平成19年度は、企業運営における社会的要因の配慮の位置づけと、それに関する法的枠組みのあり方を、英国新会社法を例にとり考察した。同考察においては、域内国としての英国に影響を及ぼすEU規制の状況を同時にカバーすることで、EUレベルでの動向にも目を向けた。英国会社法上の社会的責任にかかる規制のあり方は、第一に、会社の目的を株主利益の追求と位置づけながらも、その実現には社会的な配慮が求められるという認識のもと、会社法上の明文で-具体的には、取締役の一般義務の一部として-このことを示すに至った。第二に、環境情報の開示義務については、改正前から存在していたものの、度重なる改正でやや混乱を招いていたその内容を、新しいビジネス・レビュー規制の枠組みの中で再整理した。ここで情報開示の目的が、取締役がどのように上述の一般義務を遂行したか判断するための情報を株主に提供することにある、と明示されたため、社会的要素に関わる情報提供の重要性はこの一般義務の遵守の観点からも裏付けられることとなった。さらに、代表訴訟に関する改正によって株主が直接取締役の一般義務違反を追及するための道が開かれたことで、会社の社会的配慮のあり方にとどまらず一般的にみても株主の経営監視体制は強化されたことになる。会社に対して社会的配慮を備えた株主利益の追求が義務づけられたことには、コーポレート・ガバナンスの基本命題である「会社はだれのために、どのように運営されるべきか」という問いに対する一つの答えが示されているといっても過言ではないだろう。
著者
伊原 博隆 高藤 誠 澤田 剛
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は、新奇反応の開拓や機能材料を創造する新しい手法の開発・確立を目的として、極限環境場としてのメガGレベルの超重力場に着目し、各種モデル反応をデザインしながら有機反応やナノ傾斜構造化を実施した。本報告では下記の三つの研究課題について成果報告を集録した。(1)高分子電解質中でのアルカリ金属の選択的輸送現象の誘起と傾斜構造化の実現(2)有機半導体の傾斜複合化(3)ラジカル付加反応おける新奇立体選択の発掘
著者
薄田 千穂
出版者
熊本大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

○研究目的明治24年に創刊された第五高等学校龍南会発行の校友会雑誌『龍南会雑誌』『龍南』には、夏目漱石、厨川白村、村川堅固、下村湖人、犬養孝、大川周明、梅崎春生、木下順二など多数の著名人が寄稿しており、研究者の興味を引いてきた。近代の思想・文学研究、教育史研究などに資するため、目次のデータベース化、原本の収集などを行い、それをもとに龍南会雑誌等の五高史料公開を充実させる研究を行う。○研究方法龍南会雑誌の目次をもとに、原本及びコピーで内容を確認しながら掲載項目をデータベース化する。これにより発行回数や発行人、また編集委員や所属部の変遷など龍南会に関する基礎データをまとめる。○研究成果1、発刊ペース、頁数1891〜1898年10回・平均65P、1899〜1904年6〜7回・平均108P、1905〜1912年5回・平均102P、1913〜1931年4回・平均ll9P、1932〜1939年3回・平均107P、1940〜1942年2回・平均97P、1943〜年1回・平均94P2、発行人表記の変化および内容の変化について発行人の表示に変化がみられるのは、全国の高等学校社会科学研究会が強制解散させられ、思想の絞めつけが厳しくなっていた大正15年である。これまで雑誌部と称していたのが文芸部という名称となるが、昭和7年五高に同盟休校が起こった後は、再び雑誌部となっている。また、掲載記事の傾向は大正ころから、世相的なものは姿を潜め、文芸的なものが多くを占めるようになる。3、編集委員・所属部について毎年雑誌委員が選出され、編集にあたる。文芸の欄の執筆も担当し、雑誌委員は龍南会雑誌・龍南にとって重要な役割を担っていた。毎年度の最終号には雑誌委員の「擱筆の辞」が掲載されている。また、所属部も当初の5部から漸次増加し、報国団に改組される前年の昭和14年には18部となっている。
著者
山口 幸代
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は、企業の社会的責任、という近年その重要性が注目されている問題について、会社法制という視点からのアプローチを試みるというものであった。企業をとりまく利害関係者の中で、企業が社会的責任を果たすべき対象として今回焦点を当てたのは企業の労働力を担う従業員である。具体的なアプローチの手法としては、会社との関係で従業員にもたらされた損害に対しては会社だけでなく役員にも責任を負わせることで、健全な企業運営を担うことに対する経営者の責任意識を高めることにつながることが期待できると考えられる。
著者
堀畑 正臣
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

室町前期の古記録(中原師守『師守記』(記録1339~74)、三条公忠『後愚昧記』(記録1361~83)、伏見宮貞成親王『看聞日記』(記録1416~48)に於ける記録語・記録語法の調査と研究を行い、(1)記録語「計會」、「秘計」の意味の変遷をまとめ、(2)『看聞日記』の記録語「生涯」についての先学の記述の訂正と意味を論じ、(3)記録語法の「有御~(御~あり)」について『覚一本平家物語』と古記録資料の関係を究明し、(4)これらを収めた研究成果報告書を作成した。(5)また、多くの記録語・記録語法の用例をカードに取り、今後の研究に利用できるようにした
著者
梅田 素博
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、総合的学習のための表現教育の教材の開発にある。先ず、表現教育に関する音楽教育、美術教育(造形教育)、映像教育のカリキュラムと教材を資料として、収集した。そして、具体的な表現教育の教材を研究した。手順は次の通りである。1.音楽教育と美術教育最初に、色彩と形態を用いて音楽を表現した。PCCSのトーンを使って、オクターブと色彩の両者の関係を作成することによって、色彩における楽譜との相関を行った。それは、一つのオクターブの中の12音と12色相との適用である。また7つのオクターブと7つの色彩トーンを適用させた。次に、音と形態との関連において、音の長短と形や線の広さを相関させた。この結果、音楽と美術を照応することによって独創的な表現を表すことを立証した。2.映像教育(光)映像教育では、光を素材とした。そして上記1の結果に基づき、ルミノグラフ・パターンを研究した。光は、重要な造形要素の一つである。デジタルカメラ、カラーフィルター(赤・黄・緑・青の4原色)、原図(点・線・面)、特殊効果フィルターなどを用いて実験した。その結果、空間、リズム、緊張、コントラスト、バランス、ハーモニー、コンポジション等の表現効果が得られた。以上の結果、音楽と美術(色彩・形態)と映像(光)の関連するシステムの存在を明白にした。具体的には、「蠱惑の世界」シリーズ及び「月光の宇宙」シリーズである。そして将来にわたり表現教育において、新しい教材の開発を可能とした。
著者
飯田 全広 末吉 敏則 尼崎 太樹 尼崎 太樹
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

SoC市場は、高集積化の進展とともに多様化しており、設計はより複雑になってきている。FPGAの搭載はこの問題を解決策として有望である。しかし、FPGAは大量のメモリからできているため、ソフトエラーが発生したときに回路故障につながる。本研究は、信頼性の高いリコンフィギャラブル・ロジックのアーキテクチャとして、SoC用フォールトトレラントFPGA(FT-FPGA)アーキテクチャと、その設計ツール(CAD)を提案している。また、FT-FPGAの試作チップを開発し、このチップの一連の評価によって、FT-FPGAは、ハードエラーおよびソフトエラーの回避と自動修復の能力を有することを確認した。
著者
柊中 智恵子 中込 さと子 小野 ミツ 前田 ひとみ 武藤 香織 北川 小夜己 矢野 文佳 村上 理恵子 福田 ユカリ
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、遺伝性神経難病である家族性アミロイドポリニューロパチーに焦点を当て、患者・家族と看護職のニーズ調査をもとに、看護職に対する遺伝看護教育プログラムを開発することを目的として実施した。患者・家族のニーズ調査から、発症前遺伝子診断を受けて生きる人、発症者、家族といった立場の様々な苦悩や葛藤の様がわかった。また、看護職も遺伝性疾患ということで、対応に困難を感じていた。これらの結果に基づき、教育プログラムに盛り込む内容を検討した。
著者
原田 一孝
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

昇圧形スイッチトキャパシタ(SC)電源の場合,半導体スイッチをON/OFFするのに,各スイッチのソース電位は電源電圧より高いことが要求されます.一般には,この種のスイッチにはPチャネル形MOSFET似下,P-MOSFETと略記)を用い,駆動回路の簡略化を図りますが,P-MOSFETの特性として,ON抵抗が大きく,特に最終段では,パワーロスの増加が無視できなくなります.そこで,ON抵抗が小さく,飽和電圧も小さなN-MOSFETを用い,リング形SC電源の特性を活かした駆動回路(最終出力電圧より大きな電圧を得る)を提案することによって,高効率の電源が得られました.3段のSC電源の実験結果では,92%の高効率と30%以上の出力電圧の改善が得られました.また,電源負荷が無くなった時,直ちに動作を止め,節電状態に入ることで,特にモバイル機器では電池の消耗を最小限にすることが出来ます.リング形電源についての節電回路も提案し,それらの実験結果やシミュレーション結果を次の国際会議で発表しました(ITC-CSCC 2002,The 2002 International Technical Conference on Circuits/Systems, Computers and Communications,タイ国).モバイル機器の表示器のバックライトとして,エレクトロルミネセンス(EL)は有望視されています.そのような目的に使用するためのSC電源チップを構成しベアチップを試作しました.出力を補強するための0.1・Fキャパシタ4個を外付けした状態でも,6.8mm角,厚さ3mmと非常に薄く小さな電源回路が得られることが分かりました.MOSFETのチャンネル構造から応用範囲はかなり限定されますが,低ノイズ極小容積を持つ電源が得られることが分かったことは,大きな成果と考えます.
著者
池水 信二
出版者
熊本大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

インターロイキン(IL)-23は、Th17細胞の活性化を介して炎症性自己免疫疾患に関わる。IL-23の受容体は、IL-23RとIL-12Rβ1からなる。IL-23と受容体の結合を阻害すると、疾患の病状が緩和される。IL-23については、米国の2グループにより修飾糖を切除した試料、我々により糖修飾形状の蛋白質の構造が明らかにされた。本研究の目的は、IL-23と2つの受容体IL-23RおよびIL-12Rβ1との認識機構を構造生物学的に明らかにすることである。IL-23RおよびIL-12Rβ1の構造解析を目指して、GSTを融合させたIL-12Rβ1の細胞外ドメインを大腸菌を用いて発現させ、精製を行った。酵素を用いてタグの切除を行ったが、効率良くGSTを切り離すことに成功出来ていない。現在、GSTを切除する条件を検討中である。IL-23Rについては、細胞外に3つのドメイン(D)があるが、どの領域を介してIL-23と結合するのか、明らかにされていない。D1, D2-D3, D1-D3の発現を、大腸菌・動物細胞を用いて試みた。D2-D3について大腸菌を用いて発現させることに成功した。D1を含む試料については、大腸菌と動物細胞の両方で発現させることが出来ていない。調製したD2-D3を用いて結合実験を行ったところ、リガンドとの結合が確認出来なかった。現在、D1およびD1-D3の発現系の構築を進めているところである。IL-23/IL-12Rβ1複合体の調製・結晶化。精製したIL-12Rβ1とIL-23混ぜて複合体として精製を行った。その後、微量結晶化装置モスキートを用いて結晶化を行ったところ、微結晶を得た。現在、構造解析に適した質およびサイズの結晶を得るため、結晶化条件の精密化を進めているところである。