著者
副島 弘文
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では炎症において中心的役割を果たすT細胞に注目し、虚血性心疾患患者における活性化について調べた。活性化されたT helper cellとしてTh1 cellとTh2 cellがある。Th1 cellが産生するinterferon-gammaとTh2 cellが産生するinterleukin-4といった細胞内サイトカインを染色することでT helper cellがTh1 cellまたはTh2 cellのいずれへ活性化しているのかがわかる。虚血性心疾患患者から採血を行い、そのhelper T cell内のinterferon-gammaとinterleukin-4を染色した。interferon-gammaとinterleukin-4の細胞内発現の程度を不安定狭心症患者、冠攣縮性狭心症患者、安定狭心症患者および健常者で比較した。その結果、不安定狭心症と冠攣縮性狭心症の患者のT細胞では健常者に比べinterleukin-4の産生亢進はなくinterferon-gammaの産生亢進が認められ、これらの患者ではT細胞のTh1 cellへの活性化が生じていることが分かった(Circulation 2003)。また、血清中のTh1系の蛋白質としてCD 40 ligandおよびinterleukin-18について調べた結果、不安定狭心症や冠攣縮性狭心症患者では血中蛋白質もTh1系の蛋白質が健常人に比べ多くなる傾向が認められた。また、膠原病患者ではリュウマチ性関節炎のようにTh1に活性化されているものとsystemic lupus erythematosusのようにTh2に活性化されているものとがあり注目して同様の検討をしてみた。その結果、膠原病患者で虚血性心疾患を有するものと有さないものとで比べてみると、虚血性心疾患を有する患者ではTh1へ活性化されやすく、虚血性心疾患のうちでは冠攣縮性狭心症患者が多いことが分かった(Circulation Journal 2004 in press)。さらに、経皮的冠動脈インターベンションにより患者のhelper T cellはTh1 cellへ活性化してしまうこと、事前にstatinを投与することでその活性化を抑制できることも分かった(American Joural of Cardiology 2004 in press)。
著者
千場 梅子 山本 哲郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

結核菌(死菌)を血漿に曝すと、血液凝固反応に伴い、血漿中のリボソームタンパク質S19(RP S19)が結核菌膜上の負荷電領域を足場にして血漿トランスグルタミナーゼ(FXIIIa)により架橋二量体化され、単球のC5aリセプターを介して単球/マクロファージを動員することが明らかになった。 このことから、 結核菌が局所に侵入したとき、 血管外へ透過したRP S19が上記の機序で架橋されて単球/マクロファージを動員し、 菌を貪食処理すると考えられた。この単球走化には、補体活性化産物C5aも関与していた。結核菌感染に対する自然免疫反応に、補体系とともにRP S19も関わっていることが示された。
著者
原田 幸一 魏 長年 皆本 景子 上田 厚
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

い草染土や珪藻土じん肺の発症メカニズムならびに修飾因子を解明するため、動物実験や環境調査をおこなった。珪藻土曝露ラットでは、肺胞洗浄液に好中球数が増加したが、マクロファージ数は、減少し、貪食した二酸化ケイ素により融解または破壊されることが考えられた。紫外線吸収剤は、実用品に添加される濃度では、感作性はみられず、日焼け止めの化粧などが、炎天下のい草栽培ほ場での日射作業の有効な対策となることがわかった。泥染処理のない草製織による畳表製造がおこなわれており、い草染土粉じん曝露対策としては、有効な対策であると解された。
著者
木田 徹也 島ノ江 憲剛 渡邉 賢
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

混合導電性を示すペロブスカイト型酸化物を用いた空気からの酸素分離は、電極や外部回路を必要とせず、濃度勾配のみで簡便に酸素を分離できるため、省エネルギー性が高く環境に優しい酸素富化技術として期待されている。本研究では、Co系の膜に代わり、高い特性と安定性を有するBa0.95La0.05FeO3について、膜構造の最適化による酸素分離特性の向上を詳細に検討した。その結果、La1-xSrxFeO3やBa0.3Sr0.7FeO3を酸素放出層として用いることで、大きく酸素透過速度が向上することを見出した。さらに、酸素の安定同位体18O2を用いたトレーサー拡散実験を行い酸素拡散メカニズムについて調査した。
著者
澤田 剛 MALIK A.K. MALLIK A.K.
出版者
熊本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

環境科学、食品科学、臨床医学などの分野で重要な物質の幾何異性体を、高速液体クロマトグラフィによって分離、分析することは、分析化学の分野で重要な課題である。本研究では、高選択的な逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)に利用可能な、新奇な交互共重合ポリマーシリカハイブリッド型充填剤を開発することを目的としている。平成24年度は、分子ゲルを形成するL-グルタミド脂質を末端に導入し、アミド基を高密度で配向制御した超薄膜シリカ微粒子(si1-FIP)を合成し、RP-HPLC充填剤としての可能性を検討するとともに、これまでの研究成果をまとめて、図書の1章として発表した。Si1-FIPは、L-グルタミド脂質を合成してアミド基を置換後、アミノイソプロピルトリメトキシシラン(APS)修飾シリカ表面に導入して合成した。Si1-FIPを充填剤としてRP-HPLCを行った結果、多環芳香族類、特に、o-,p-ターフェニルの分離において高い形状選択性を示した(α_p<-/o-Terpheny1>=24.9)。また、これまでの研究成果を総括した結果、電荷移動相互作用を利用したN-マレイミド-オクタデシルアクリル酸エステルの交互共重合体や分子ゲル構造を利用した超薄膜を形成することで、アミド基やカルボニル基を高密度で配向制御した超薄膜が形成できることを見いだした。超薄膜シリカ微粒子をRP-HPLCの充填剤に利用することで、トコフェノール類やステロイド類、多環芳香族類をそれぞれ高い形状選択性を示した。特にトコフェノール異性体では、25min以内で完全分離が可能となった。これはL-グルタミド脂質部位とアミド基による水素結合、カルボニルπ相互作用等の弱い相互作用の多点集積化により、形状認識能が向上したためと考えられる。
著者
中川 順子
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度においても、帰化・居留権取得者に関する史料集(Letters of Denization and Acts of Naturalizaion…)の解読とそのデータベース化を前年度に引き続き実施した。また、データ処理と同時に、イギリス議会の議会史料(両院議事録や審議録)とその関連図書、一般帰化法制定に関する文献・史料、ユグノー、パラタイン、ユダヤ人移民関係の文献・史料、ナショナル・アイデンティティ関連の文献・史料の収集を行った。これまでの文献・史料に加えて、新たに収集した文献・史料の整理・精読を進めた。グローバルな視点から帰化法の問題を考察するべく、イングランド(本国)とアイルランドや北米植民地(いわゆる第一次帝国)における帰化法制定と規定内容の比較研究の準備も引き続き進めた。本年度も、帰化法制定や移民政策(とkuに移民支援政策)において、重要な対象となる18世紀初頭のパラティン移民に着目し、イギリス側の外国人支援のありかたについて重点的に研究を進めた。彼らの帝国内移動や彼らへの支援を、移民の国際移動の問題や対ユグノー支援と関連させつつ考察した。現在、パラティン移民に関する研究はまだ途上であるが、そめ成果の一部は2005年2月川北稔・藤川隆男編著『空間のイギリス史』の所収論文(「嫌われ、行き「場のない」可哀想な移民たち」)として刊行された。また、帰化法や国民意識の議論にかかわるパラタイン移民について、基礎的な史料分析を行い、移民集団としての彼らの特徴を明らかにした。その成果は雑誌論文(「『到着者リスト』にみるパラタイン移民」)として今春刊行される予定である。現在は、パラタイン移民とユグノーへの支援策を帰化法制定の議論とナショナル・アイデンティティ形成の問題に関連させつつ分析・考察を進めている。その成果の一部を今年度5月に熊本歴史科学研究会で報告したが、加えて、来年度早々にも論文として公表する予定である。
著者
西田 稔
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高温形状記憶合金として期待されているTiPdNi合金のPd, Ni過剰組成において、研究代表者が見出した新しい析出相を利用した本合金の組織制御と高機能化に関する基礎研究を実施した.析出相の組成はTi_9(Pd,Ni)_<11>と表すことができ、三方晶構造を持つ.B2母相との方位関係は{110}_<B2>//{100}_<Ti9(Pd,Ni)11>,<111>_<B2>//<001>_<Ti9(Pd,Ni)11>である.研究の進行にともない、当初、析出相と考えていたこの相はB2母相の<111>方向に4倍周期の構造をもつ規則相であることが判明した.この根拠として、上記の方位関係より4つのバリアントが存在しそれらは不規則な形状の逆位相界面(APDB)によって分割されており、規則化温度(Tc)以下の焼き鈍しにより単一バリアントのみが優先的に成長することが知られた.さらに規則相の成長にともないマルテンサト変態が抑制され、Ms温度が室温から液体窒素温度まで低下した.この現象はTi系形状記憶合金においては初めて見出されたものであり、これまで貴金属合金系のみで議論されていた母相の規則化とマルテンサイト変態の関係に、今後、新たな知見を与えるものと期待できる.拘束時効により規則相を分散させた合金では二方向形状記憶効果が200〜400℃の間で発現することが確認できた.次に二方向特性に及ぼす熱処理の影響を種々検討したが、目的として設定したTi_3Ni_4相を分散させたNi過剰TiNi合金ほど顕著な形状変化を発現させるには至らなかった.今後の課題として、規則相の正確な結晶構造の同定およびマルテンサイト変態(母相の安定化)に及ぼす規則相の影響を明らかにする必要がある.
著者
雙田 珠己 干川 隆
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は3つある。 1.健常者がズボンを着衣する時の生理的負担を評価する 2.運動機能障害者の着脱動作を分析し、障害別に動作特徴を把握する 3.障害に応じてズボンを修正し、修正効果を確認する。その結果、ズボンの着衣動作は自律神経の働きに影響することが示唆された。さらに、脳性マヒ、二分脊椎、脊椎損傷の3患者について、ズボンの着脱動作を分析し、脳性マヒの症例についてはズボンの修正を行った。
著者
深堀 建二郎
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.97-120, 2008-03-07

Elisabeth Langgasser, die als Halbjudin in der genzen Zeit des Dritten Reichs in Berlin lebte und mit ihrem arischen Mann und drei Tochtern unter wiederholten Luftangriffen sehr litt, gab kurz nach dem Weltkrieg 18 Kurzegschichten als "Der Torso" heraus, die von zwei Gedichten eingerahmt sind. In disem Kuzgeschichtenband "Der Torso" ist "alles drin: der Schrecken, das Entsetzen, der Wahnsinn und die Groteske, aber auch die Unschuld ... und die Treue und Zartlichkeit ..." Im vorliegenden Aufsatz habe ich diese 18 Geschichten und zwei Gedichte zunachst genau interpretiert. Und dann habe ich die Frage untersucht, ob dieser Band als Ganzes eine musikalische Komposition hat oder nicht, weil Langgasser in einem ihrer Briefe seinen "Aufbau musikalisch, nicht logisch, geschweige chronologisch" auffasst. Als Ergebnis hat sich ergeben, dass man diesen Band nicht genau als musikalisch bezeichnen kann, er jedoch als Ganzes unter einem einheitlichen Gesichtspunkt beschreiben werden kann, d.h. mit christlichem Glauben durchdrungen ist, zu dem sich Elisabeth Langgasser lebenslang bekannt hat.
著者
森 正人
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.151-161, 2014-03-17

本論文は事実と虚構という問題意識にかかわって、古代の説話と作り物語、近代の小説における転生譚をめぐり表現の方法を検討するものである。はじめに現代の事実および虚構の概念に相当する古代・中世の言葉に関して一般的な検討を行い、この問題をめぐる作り物語の批評基準および同時代の説話の表現方法を整理し分析する。そのうえで、浜松中納言物語、この物語を典拠としたと作家が明言している「豊饒の海」における転生の証拠と転生者の記憶の問題を取り上げ、その構想と表現方法を読み解く。浜松中納言物語は当時の説話を踏まえながら、その言説に見られる事実性を強調する方法に倣わず、「まことらしさ」を満たせば十分としている。「豊饒の海」は、浜松中納言物語を典拠としたと三島由紀夫自身明言しつつ、そこからさらに古代日本の転生をめぐる説話や浜松中納言物語のプレテクストである竹取物語をも導き入れて構成されている。そのことによって、小説は「典拠」からずらされ、小説自体をも相対化する。
著者
森 正人
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
no.105, pp.151-161, 2014-03

本論文は事実と虚構という問題意識にかかわって、古代の説話と作り物語、近代の小説における転生譚をめぐり表現の方法を検討するものである。はじめに現代の事実および虚構の概念に相当する古代・中世の言葉に関して一般的な検討を行い、この問題をめぐる作り物語の批評基準および同時代の説話の表現方法を整理し分析する。そのうえで、浜松中納言物語、この物語を典拠としたと作家が明言している「豊饒の海」における転生の証拠と転生者の記憶の問題を取り上げ、その構想と表現方法を読み解く。浜松中納言物語は当時の説話を踏まえながら、その言説に見られる事実性を強調する方法に倣わず、「まことらしさ」を満たせば十分としている。「豊饒の海」は、浜松中納言物語を典拠としたと三島由紀夫自身明言しつつ、そこからさらに古代日本の転生をめぐる説話や浜松中納言物語のプレテクストである竹取物語をも導き入れて構成されている。そのことによって、小説は「典拠」からずらされ、小説自体をも相対化する。
著者
浅井 篤 石本 博子
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 : 熊本大学倫理学研究室紀要 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.25-35, 2014-03

Should we respect treatment refusal of incompetent patients who cannot decide forthemselves? What principle or reason could justify compulsory interventions against the patients' will? This paper deliberates various factors that possibly influence our attitudes toward an incompetent patient's refusal of treatment. Issues discussed would include standard treatments at a given time in a given culture, advance directives, perpetuity of incompetency, nature of refusedinterventions, alternatives, emergency, ethical and medical uncertainty, ourdiscriminatory feeling, human dignity, fundamental liberty, and patient's moralobligations. We conclude that compulsion against incompetent patients should beexceptional and must not be forced unless there is a serious reason.
著者
逸見 泰久
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ハマグリMeretrix lusoriaは全国各地で漁獲量が激減している二枚貝である.本研究では、ハマグリの厳格な資源管理が行われている福岡県糸島市加布里湾と自然管理が不十分な熊本市白川・緑川河口で、2009~2011年に定期的な定量採集を行い、地域間で個体群構造を比較するとともに、生活史特性や個体群動態を把握し、資源管理技術の開発を行った.また,資源管理を促進するために、養殖・畜養技術の開発を並行して行った.
著者
石原 明子
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-20, 2013-03-25

In the areas affected by the TEPCO First Fukushima Nuclear Accident, lots of conflicts among community members and family members and the destruction of many human relationships have taken place. They also happened in the areas affected by the Minimata Mercury Polution. There are four reasons why conflict and destruction of human relationshipoccur under serious environmental pollution : 1) high distresses in the society under pollution or disaster cause conflicts, 2) urgent needs of social change to respond to the pollution and disaster underscore anew the worldview differences among the stakeholders, 3) the pollution and disastere reveals hidden structural violence in the society, 4) polution and contamination of natural environment such as water, air, and soils threaten basic human needs, and the lack of basic human needs increases risk of conflict. In order to resolve conflicts in the communities affected by the TEPCO nuclear disaster, Curle's conflict transformation model for asymmetric conflict would be useful.
著者
尾原 祐三 大谷 順 椋木 俊文 佐藤 晃 山田 文彦 麻植 久史
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

この10年間であまり行われていないX線CTを用いた非破壊試験と最近の地球資源システム工学と地盤環境システム工学の管球課題で重要な解明すべき課題に対し,基本的試験法および測定法の高機能化に焦点を絞り研究を実施した。例えば,破壊靱性の荷重負荷速度依存性,寸法効果を評価するとともに,X線CTによるき裂の可視化により破壊靱性の粒子配列依存性を明らかにした。また,ベントナイトやアスファルトを含む地盤材料を対象とした移流拡散・分散試験により,および裁荷試験により,空隙内部での水や塩の流動特性を明らかにするとともに,物質のマトリクストラップ現象の定量化に成功した。
著者
河村 洋子 Singhal Arvind
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究 (ISSN:2185985X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.35-45, 2012-03-23

本稿の目的はわが国では非常に新しいPositiv Deviance (PD)を紹介することである。私たち研究者は問題に着目し、問題そのものの理解や知識を求めるが、それだけでは有効な解決策を生みだすことはできない。PDはむしろ最善の解決策はコミュニティの中にあるとし、コミュニティに潜在する創造力や知恵に着目する。そのような解決策は社会の「当たり前」の基準から逸脱し顕在化していない。しかし問題に対して良い結果を生んでいても、それがコミュニティ内の他者より恵まれた資源があるからという理由であってはコミュニティ内の他者は実践できない。したがって、逸脱は他者と同様限られた資源しかもたない者に見られるものでなけらばならない。PDはこのように見出された行動(実践)を顕在化し、コミュニティ内に定着されていく。PDの概念は行き詰って解決策を見いだせないでいる複雑な社会課題に対して、発想の転換を提供する。The purpose of this article is to introduce the concept of Positive Deviance (PD), which is very new to Japan. Researchers tend to focus on problems or deficits and to face the challenge of finding and creating solutions. PD believes that solutions lie in the community from the asset-based viewpoint. However, such solutions, being away from the standard or the usual, are deviant and latent in the community. The deviant appreciates better outcomes not due to the better access to resources and should rather have as limited resources as the others do. Others can follow the deviant because s/he is in a similar situation with limited resources. PD tries to identify what the deviant is doing and to amplify it across the community. PD seems very useful in challenging stacked social problems, providing us with a new way of thinking.
著者
太田 訓正
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本申請では、Human Dermal Fibroblasts(HDF細胞)からリプログラミング物質の同定を目的とした。乳酸菌を超音波破砕処理後、クロマトグラフィーを繰り返し、細胞塊形成能を持つ分画を同定した。その分画を用いて、MALDI-TOF-MS解析を行い、リプログラミング物質の同定を試みた。私たちは、リプログラミング物質の同定に成功し、これをHDF細胞に作用させると乳酸菌を用いた時と同様に細胞塊を形成した。これらの細胞塊は脂肪細胞、骨細胞、神経細胞などへと分化したことから、乳酸菌由来リプログラミング物質は、宿主HDF細胞の遺伝子発現をコントロールしていることが示唆された。
著者
Bauer Tobias 萩野 蔵平
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-58, 2008-03-14

『健康の庭』 (Gart der Gesundheit) は、中世において最も影響力のあったドイツ語による本草書の一つで1485年に刊行されている。その論述は、ヒポクラテスやガレノスといった古代の医学者によって整備された「体液病理説」 (Humoralpathologie) に基づいている。その学説とは、身体の健康や病気を体液あるいは構成要素の均衡や不調和によって説明する理論である。本稿では、『健康の庭』から第1部の「序章」と第4部の「検尿」をとりあげ、体液病理説が中世の医学や予防医療においてどのような役割をはたしていたかを論じた。
著者
赤池 孝章 岡本 竜哉
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

Helicobacter cinaediは1984年に初めてヒトへの感染が確認された新興感染症菌である。これまでの報告の多くは、免疫能低下症例における日和見感染症であるが、我々は免疫異常のない術後患者における敗血症・蜂窩織炎の事例を報告した。本菌は培養効率が悪いため、我々は本菌の主要抗原組換え蛋白質を用いた本菌感染の血清診断法を確立した。近年、非消化器疾患、特に動脈硬化症や不整脈の病態に、H.pyloriなどの慢性感染の関与が示唆されている。H.cinaediはH.pyloriに比べ血管侵襲性が強く、様々な非消化器疾患に関連している可能性が示唆される。そこで本菌と動脈硬化症や不整脈との関連について臨床疫学的な解析を行った。まず、熊本大学附属病院にて2005年から2009年にかけて精査・加療した症例で、心房性不整脈を有する群(不整脈群:132症例)と、有しない群(非不整脈群:137症例)を対象に、抗H.cinedi抗体レベルをELISA法にて測定した。その結果、非不整脈群に比べ不整脈群において有意に高い抗体レベルを認めた。一方、これまで上室性不整脈との関連が示唆されてきたH.pyloriやChlamydophila pneumoniaeに対する抗体レベルは両群間で差を認めなかった。また多変量解析にて、H.cinaedi抗体が陽性であることは、心房性不整脈に対する有意な独立した危険因子であることがわかった。さらに、本菌に対する特異抗体を作成し、解離性大動脈瘤症例から得られた剖検組織(9例)を免疫組織染色した結果、全例にて粥状硬化巣のマクロファージに一致した陽性像を認めた。以上の知見は、H.cinaedi感染が動脈硬化症や不整脈といった心臓血管疾患の病因に関連していることを強く示唆しており、当該疾患の病態解明ならびに新たな診断・治療法の確立に大きく寄与できるものと期待される。
著者
三池 史子
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究 (ISSN:2185985X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.71-77, 2013-03-29

近年、住宅をはじめ大型店舗、病院など様々な都市機能が郊外に立地しスプロール化する一方で、都市の中心にありながら人口が増加し続けている校区がある。本稿では、熊本市中央区を事例に都市内で人口が増加するメカニズムについて考察するための包括的な状況の把握と仮説検討を行う。人口の推移、世代人口の比較、家族類型の推移、住居の種類と所有関係や地価の動向から、居住空間の選好、人々の移動率などの要因が明らかになった。In recent years, various urban functions sprawled, whereas there are some districts that population had been continuously increasing. In this paper, I perform grasp and hypothesis examination of the comprehensive situation to consider the mechanism that population increases Chuo-ku, Kumamoto in an example in cities. From a change of the population, a comparison of the generation population, the change of the family type, the kind of the house and possession relations and the trend of land prices, the factors such as the choice enthusiast of the houseroom, the movement rate of people became clear.