著者
甲斐 広文
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

温熱療法関連の研究から, 電流刺激が生体に与える作用についての研究に着手し, パルス幅(持続時間: 0.1ms) を有する短形波の微弱電流には, PI3K-AKT 経路の活性増強効果が認められること,さらに微弱電流がユビキチン/プロテアソーム経路の阻害効果を有していることを見出した(PLoS ONE 2008, 2012; J. Pharmacol. Sci. 2008,2010;Int.J.Hyperthermia 2009; J.Surg.Res. 2009 等で発表). 一般に,細胞膜は電気的抵抗が高いために,細胞内のシグナル分子に影響することはあり得ないことから,細胞の表層を流れる電流がどのようにして細胞内に刺激を伝えるのか, これまでの細胞生物学的アプローチの経験から(EMBO J. 2007; J.Biol.Chem. 2009; Mol.Cell.Biol. 2008; Mol.Cell 2012 など), 様々な角度から微弱電流が生体に与える効果を科学的に検証してきた. その結果, 持続パルス時間が0.1 ミリ秒の電流に対して何らかの受容体が存在すること, ラフトの関与があること等を明らかにした.
著者
小脇 光男
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

教養科目「中東の文化と歴史」において、異文化理解の視点から教育実践を行ないながら、教養教育にふさわしい教材および効果的な教授法の開発に向けた基礎的調査研究を行なった。日本と中東の関わりにも視点を置き、リアルタイムの中東情報を多用した教材は中東を身近な存在として意識させることに意義があった。さらに、授業の中に基礎的なアラビア文字の学習を導入する方法は異文化としての中東への関心を高めることに大きな効果があった
著者
原田 一孝 前田 健悟 岡崎 宏光 宮本 光雄 吉永 誠吾 杉 哲
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

子ども達の興味・関心が高く,実用的価値の高い製作教材を種々検討し,ワンチップコンピュータを用いた"電子オルガン"を開発した.これはドレミ...の音階(下のソから上のソまで)2オクターブを発生できる.また,振動数と音の高さとの関連性を調べたり,非音階の音(風の音,幽霊の音など)を発生するために,連続音(496Hz〜4kHz)を発生する機能も付加した.さらに,子ども達に人気のあるメロディー6曲を自動演奏する機能も付加したものが得られた.作る喜びを体験するために,木材の切断・仕上げ・塗装,プリント基板の切断・穴あけ・部品取り付け・ハンダ付け,紙コップを使ったスピーカ部やタッチセンサ部などの組立てにおいてホットボンド接着・ネジ取り付けなど,多くの作業場面を取り入れた授業計画を開発した.夏休みには開発中の"電子オルガン"や昨年度開発した"ヤジロベー"や"崇城博士"の工作教室を熊本市博物館,熊本市中央公民館および天草郡の小学校で実施し,多くの小学生に喜んでもらうと同時に,子ども達の工作スキル並びに指導法の検討を行った.中学校での研究授業は2学期に天草郡本渡市教良木中学校,3学期に水俣市久木野中学校で実施した.この時は"電子オルガン"と"崇城博士"の2教材を用いた.中学生の工作スキルのレベルを見込んで作業場面を増やしたが,実質は小学5・6年生と大差ないように感じられた,知識の面では確実に高レベルにあることが予想されるので,この事を生かした指導法の開発が望まれた.以上の研究授業から"ものづくり"の体験は"総合的に学習する時間"の優れた教材に成り得ることが判明したが,これらの準備・実施に要する手間・暇を考えた場合,現場教師に対する外部援助があって初めて実現可能であると感じる.このため,今後はホームページでノウハウを提供したり,ボランティアグループで援助活動等を計画して行きたい.
著者
山尾 敏孝 戸田 善統 友田 祐一 石子 達次郎
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

濃霧では通行止めとなる高速道路において,霧除去対策として防霧ネットが用いられているが効果が不十分である.そこで,改良策として,遠赤外線と高親水性を有する塗料をネットに塗布し,これを利用して霧除去実験を試みた.使用する塗料の種類や塗布の有無,ネットの種類を変え,室内実験により霧除去の効果を調べ,開発した.ネットが捕捉した水量の測定や捕捉状況を撮影し,水膜発生メカニズムを明らかにした
著者
泉家 康宏
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は運動療法の臓器保護作用を骨格筋由来ホルモンの観点から検討した。筋肥大が誘導できる遺伝子改変マウスでは腎疾患モデル後の組織障害が減弱しており、機序として腎臓でのeNOSの活性化が関与していた。骨格筋由来ホルモンを網羅的に探索し、Heme oxygenase-1 (HO-1)とThrombospondin-2 (TSP-2)をスクリーニングした。骨格筋特異的HO-1欠損マウスの解析から、HO-1は血管内皮細胞やマクロファージ由来である可能性が示唆された。TSP-2は心不全患者のバイオマーカーとなりうる可能性が示唆された。本研究成果は骨格筋を中心とした臓器連関の機序解明に寄与すると考えられた。
著者
井手上 賢
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヒト染色体セントロメア領域を構成するSatellite I領域から産出されるノンコーディングRNAであるSatellite I RNAについて、その機能を解析した。Satellite I RNAをノックダウンした細胞では染色体分離の異常を示す。このRNAには染色体分離のキー因子であるAurora Bが結合し、そのリン酸化活性とセントロメアへの局在を制御されることを見出した。Satellite RNAに結合する因子を探索するため、Satellite RNPをプルダウンし、ともに沈降してきた因子を質量分析で同定した。そのうちRBMXのノックダウンは染色体分離の異常の表現型を示した。
著者
河村 能人 萩原 幸司 相澤 一也 木村 滋 古原 忠 東田 賢二 乾 晴行 奥田 浩司 中谷 彰宏 君塚 肇 中島 英治 大橋 鉄也
出版者
熊本大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

総括班の役割は、各計画研究と公募研究が緊密に連携して十分な研究成果が出せるように、本領域の組織的かつ効果的な運営と研究支援活動ならびに若手人材育成を図り、本領域の目的達成と次への展開に資することである。運営面での特徴は,①6つの部会と4つの事務局による効率的な運営、②量子線共同利用施設や共通試料提供等による研究支援、③若手人材育成への注力、④国際交流,異分野交流,産学官交流の推進である。総括班としての主な成果は、各種領域内会議による効果的な運営、研究支援による効率的な研究推進、領域内交流による連携推進、国内外シンポジウム等の開催による本領域のプレゼンス向上、若手研究者の活躍等である。
著者
三池 史子
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究 (ISSN:2185985X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.79-88, 2014-03-31

近年、少子高齢化の進行とともに空き家の増加が顕在化し、国や地方自治体において法や条例の整備、助成金や空き家バンクなど様々な対策が検討、実施されている。人口減少社会へ向けて今後も増え続けることが予測される空き家については、地域特性に応じた対策が必要となっている。そのため、本研究では熊本市における空き家の実態を把握し、空き家発生に影響を及ぼす要因について分析した。その結果、郊外の住宅団地では空き家率が低く、都市部の住宅地において空き家率が高いこと、地区の平均道路幅員や平均世帯人員が影響を及ぼすことが明らかになった。Recently, the number of vacant houses is increasing with acceleration of demographic aging. Therefore, national and local government have been addressing various measures such as development of laws and ordinances, grants and bank of vacant houses. As regards vacant houses, the number will be expected increasing because of depopulation society. It is necessary to take measures in accordance withe regional characteristics. This study purposes are to understand the distribution condition of vacant house in Kumamoto city, and to analyze about factor that influences which house become a vacant. As a result, there are three findings as i) the rate of vacant houses is low in housing estate where is in suburban, ii) the rate of vacant houses is high in residential area where is in urban, and iii) average of road wide at district and average of house hold size are factors that influences to vacant houses.
著者
藤本 憲信
出版者
熊本大学
雑誌
国語国文学研究 (ISSN:03898601)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.267-284, 2014-03-06
著者
松田 佳紀 堀内 千歌 荒木 卓哉
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究 (ISSN:2185985X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.121-130, 2011-03-25

中心市街地の衰退は全国各地で問題になっている。本報告書で取り上げた熊本県八代市本町商店街も郊外大型店舗の進出やモータリゼーションの発達により衰退の一途を辿っている。著者らは高校生と成人を対象としたアンケート調査および実地調査、八代市本町商店街関係者からの聞き取り調査を実施し八代市中心市街地の現状を調査した。調査結果から、中心市街地が生活の拠点としての役割を失っており、高校生に対するアンケート調査では「中心市街地がどこにあるか知らない」という意見まで見られた。調査から確認された消費者の需要をもとに八代市中心市街地活性化策を考案した。商店街に新たな役割を付与することを「元気と潤いのあるまちづくり」と定義付けを行い、本論を展開する。最終的に八代市本町商店街関係者とのディスカッションを経て「一口店主制」を提案する。This paper describes the process of the downtown revitalization project in Honmachi shopping street, Yatsushiro city, and Kumamoto prefecture. There are a number of run-down downtowns across Japan including the Honmachi shopping street. We administered a questionnaire and conducted field observations in order to grasp the situation and yield ideas for the revitalization of the shopping street. Based on the results from these research activities, we propose the "Unit storekeeper system."
著者
田上 亮太
出版者
熊本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

2次元高分子ナノ構造の自己組織的構築のための方法論として、芳香族Schiff base反応を分子間のカップリング反応として用いた「固液界面平衡重合法」を検討している。芳香族Schiff base反応の反応平衡をpHで制御することで、均一溶液中では反応かぎりぎり進行しないにもかかわらず、モノマーの濃縮と疎水効果による反応促進効果が働く固液界面では選択的に平衡重合が進行する。固液界面で起こる自発的なカップリング反応と自己組織化により、分子レベルで配列した構造が形成することをプローブ顕微鏡による観察により明らかにしている。前年度の成果としてのベンゼン骨格をベースとした最小のユニット同士の組み合わせから、ベンゼンユニットがアゾメチン結合によってハニカム状につながれた構造を構築することに成功している。π共役的に繋がれた最もシンプルなベンゼンユニットからなるポーラスハニカムネットワーク構造は、グラフェン、グラフェン状窒化炭素(g-CN)に続く第三の共有結合性2次元ネットワーク状モノレイヤとしての展開が大いに展開される。この成果を受けて本年度は2次元ハニカム状メッシュ構造性薄膜の基板成長の検討を柱に検討を行った。本年度の成果としてモノレイヤに対するこれまでのプローブ顕微鏡による観察に加えて、光電気化学測定によって可視光領域での光電流の発生を確認することに成功した。このことはプローブ顕微鏡での視覚的知見に加えて表面での重合による共役系の延長を裏付ける非常に有力な証拠となり得る。さらに、研究室が持つ基板選択的な重縮合反応に基づく多層薄膜成長のノウハウを組み合わせることで、ポーラスハニカムメッシュ構造を基板上で連続的に自発成長させることで、π共役系がネットワーク状に広がった有機薄膜のその場構築にも成功した。モノレイヤと同様、多層薄膜においても可視光領域における光電流の発生が確認された。
著者
有吉 範敏 作間 逸雄 市岡 修
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の第一の成果は,Leontiefの環境経済モデルに立ち返って,政策分析に利用可能なLeontief環境経済CGEモデルの開発を手がけたことである。そこではまず,環境と経済を統合し均衡論のフレームワークで考察したLeontiefの先駆的研究を展望したあと,Leontief環境経済モデルの構造の徹底的な解析を試みた。また,Leontiefモデルの拡張や一般化ならびに応用分析についても考察を行い,経済主体の最適化行動や政府による課税を組み込んだLeontief環境経済CGEモデルの開発を手掛けた。本研究の第二の成果は,環境・経済統合勘定(SEEA)の拡張・改良版である環境SAMを構築することによって,環境SAMに基づくCGEモデルを構築し,これを用いて様々な政策分析を行ったことである。そこではまず,わが国のSEEAデータとSNAデータを用いて,詳細な「環境SAM」を構築し,その上で「帰属環境費用」に焦点をあてた簡易化された「環境SAM」のCGE分析を行なった。この環境SAMでは,労働,資本に加えて,「エコマージン」=帰属環境費用という生産要素の存在を仮説的に仮定し,実際には資本側の取り分として分配される所得の中に環境をいわば「搾取」して得た部分があり,維持費用概念に基づく帰属環境費用がその部分に該当すると考えた。この部分にコブダグラス型の関数形を当てはめて,いくつかの比較静学分析を実行した。主要な比較静学結果は3つある。(1)環境税,間接税の増税は,エコマージンを減少させる。(2)資本の外生的増加,労働の外生的増加に対するエコマージンの反応は逆になる。さらに(3)中間投入を帰属環境費用分だけ増加させた実験では,経済への影響は軽微なままエコマージンをゼロに出来る。なお,SEEAやSAMを含むSNAのフレクシビリティに関する研究や,CGE分析に用いたソフトウエア(GAMS, HERCULES)に関する詳細な解説も行った。
著者
杉浦 正晴
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

O-モノアシル酒石酸が、アルケニルボロン酸、アリルボロネート、ジボロンなどのホウ素化合物を活性化し、不斉共役付加反応やアリル化反応を促進する有効な不斉有機触媒となることを見出した。選択性や触媒活性の改善のために、触媒のアシル基およびカルボキシル基の効果を検討すると共に、計算化学による触媒の作用機構の究明を行った。また、触媒の回収・再使用に関する知見を得ることができた。
著者
永渕 昭良
出版者
熊本大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

平成20年度にはカドヘリン分子と相互作用せずにPAR-3複合体とのみ相互作用する特殊なβカテニン・カドヘリン融合タンパク質の作製に成功した。本年度はこの融合タンパク質の性質とこの分子がPAR-3複合体とカドヘリン・カテニン複合体の相互作用を阻害するドミナントネガティブ因子として機能できるかどうか、解析を進めた。先ずこの融合タンパク質はカドヘリン非存在下でも内在性のαカテニンの発現増強を行うことを明らかにした。野生型のβカテニンではこの発現増強は見られず、融合タンパク質内のカドヘリン細胞質領域、特のそのC末端領域がαカテニンの発現状況であることも明らかにした。次ぎにこの融合蛋白質を通常の培養細胞に発現させたところ、目立った異常は見られなかった。しかし、上皮分化誘導をかけると上皮細胞接着装置複合体形成に微妙に影響を与える可能性が示唆された。より高い発現状態で上皮組織構築における影響を調べるために、ニワトリ初期胚においてこの分子の過剰発現を試みた。その結果、神経管上皮組織構築に異常が見られた。現在これが融合タンパク質によるドミナントネガティブ効果であるかどうか、詳細な検討を進めている。miRNA依存的な遺伝子発現抑制をカドヘリン、PAR-3などについて試みた。しかし用いたF9細胞では有効な発現抑制効果が見られなかった。miRNAの発現量が低い可能性が考えられるが、発現量を上げる手だてがなく、この計画は中断している。
著者
澤 進一郎
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、植物感染性センチュウを用いた分子遺伝学的研究手法の確立を行った。さらに、センチュウ感染過程における、植物細胞の脱分化、多核化、再分化過程における分子機構に焦点を当て、その分子機構にせまるべく、エフェクタータンパク質のプロテオーム解析、また、候補遺伝子を用いたY2Hスクリーニングを行った。
著者
荻野 蔵平 Bauer Tobias
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
no.98, pp.167-182, 2008-03

Bei diesem Beitrag handelt es sich um eine japanisch Teilubersetzung des "Gart der Gesundheit" (Erstdruck 1485), der als eines der wichtigsten spatmittelalterlichen Werke der Krauterbuchliteratur gilt. Hier beschrankt sich die Ubersetzung auf den ersten Teil, die "Vorrede" sowie das erste bzw. das 426. Kapitel des zweiten Teils, namlich "Beifuss" und "Fuchs".
著者
高潮 征爾
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は心不全患者における脳由来神経栄養因子(BDNF: Brain-derived neurotrophic factor)を評価し、心臓リハビリテーションによるBDNF値の変化と、抑うつ症状や運動耐容能の改善が相関するか検討した。BDNF値は心不全が重症になると低下し、その低下は予後不良因子であった。心臓リハビリテーションによりBDNF値は有意に上昇するが、運動耐容能やBNPの改善とは相関せず、抑うつ症状の指標と相関が見られた。本研究の結果から、心不全患者ではBDNFは低下しており、心臓リハビリテーションによるBDNF上昇は抑うつ症状改善と関連する可能性が示された。
著者
須田 年生 馬場 理也 石津 綾子 梅本 晃正 坂本 比呂志 田久保 圭誉
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

造血幹細胞ニッチと幹細胞動態の研究、ならびに幹細胞におけるDNA損傷反応に関する研究を展開し、しかるべき成果を得て論文発表すことができた。幹細胞ニッチに関する研究に関しては、Integrin avb3 が周囲の環境に応じて、サイトカインシグナルを増強することを通して、造血幹細胞の維持・分化を制御することを示した(EMBO J, 2017)。造血幹細胞の代謝に関連した研究では、造血幹細胞が分裂する直前に、細胞内カルシウムの上昇を通して、ミトコンドリアの機能が活性化することを見出した。さらに、造血幹細胞分裂直前の細胞内カルシウムが上昇をカルシウムチャネル阻害によって抑制すると、① 造血幹細胞の分裂が遅延すること、② 分裂後の幹細胞性の維持(自己複製分裂)に寄与することを示した。また、in vivo において、造血幹細胞周辺のMyeloid progenitor(lineage-Sca-1-c-kit+)細胞が細胞外アデノシンが造血幹細胞の細胞内カルシウムの上昇やミトコンドリア機能の制御に関与することも確認した。さらに興味深いことに、Myeloid progenitorは、上記の細胞外アデノシンによる造血幹細胞の与える影響を増強していることも見出している(JEM in Revision)。造血幹細胞におけるDNA 損傷反応における研究では、Shelterinと呼ばれるタンパク複合体の構成因子Pot1aが、造血幹細胞のDNA損傷の防止に加えて、活性酸素(ROS)の産生を抑制し、造血幹細胞の機能維持に寄与することを新たに明らかにした(Nat Commun, 2017)。