著者
廣田 昌彦 馬場 秀夫 高森 啓史 大村谷 昌樹 山本 章嗣 大村谷 昌樹 山本 章嗣
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

急性膵炎におけるオートファジーの意義と急性膵炎の発症機序を明らかにするために、Psti/Atg5ダブル欠損マウスと膵特異的Atg5欠損マウスを作成し、解析した。1)膵外分泌刺激時には、オートファジーの結果トリプシンが生成するが、通常はPSTI活性によりトリプシン活性は阻害されて膵障害は生じない、2)過剰な膵外分泌刺激によりトリプシン活性がPSTIの制御活性を超えると、連鎖的に膵消化酵素が活性化されて膵が障害される、という結論を得た。
著者
知念 まどか
出版者
熊本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度までの研究から、prp13-1を含むいくつかのスプライシング変異株ではセントロメア領域のヘテロクロマチン形成に異常が見られ、スプライシング因子が分裂酵母のセントロメアのヘテロクロマチン形成に関与している可能性が示唆された。分裂酵母のセントロメア領域ではヘテロクロマチン形成にRNAi機構が関与していることが知られている。そのため、RNAi機構に関与する因子の変異株では、核分裂の際に正常に染色体が二分裂できずに取り残されてしまうlagging chromosomeが観察される事が知られている。そこで、prp13-1変異株においてもlagging chromosomeが観察されるか、微小管に対する抗体であるTAT1抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、野生株ではlagging chromosomeは観察されないが、prp13-1変異株ではΔdcr1株と同様に分裂期の細胞の約19%でlagging chromosomeが観察された。さらに、ヘテロクロマチン領域に結合するSwi6pのセントロメア領域への結合がprp13-1では減少していることをChIP解析により明らかにした。これまでの2年間の研究成果をまとめ、学術雑誌(The Journal of Biological Chemistry, 285, 5630-5638, 2010)に発表した。また、このモデルを検証するためさらに実験を進めており、現在までに実験に必要な株やplasmidの作成を終了しており、ChIP解析などを用いてモデルの検証を行う予定である。この研究から、スプライシング因子が関与するクロマチン修飾機構という、これまで知られていなかった新しいスプライシング因子の役割が明らかになると期待される。
著者
徳岡 涼
出版者
熊本大学
雑誌
国語国文学研究 (ISSN:03898601)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.19-32, 2003-03-25
著者
中川 順子
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題の研究成果は次の3点である。第一に、近世ロンドンの外国人教会による救貧は、同胞による困窮移民に対する救済活動として重要な役割を果たした。それは同時に、教会による移民の規律化とアイデンティティ形成の手段でもあった。第二に、18世紀初頭のドイツ系移民はロンドン流入後に支援獲得の手段としてパラタイン移民という自己意識を形成した。彼らの流入は移民に対するイギリス社会の態度を移民規制の方向に転換させた。第三に、他者の顕在化と他者との共生(救貧や法的地位の付与)を巡る議論は、近世イングランド社会(人々)に自己意識の形成を促した。
著者
佐藤 毅彦 児島 紘 高橋 庸哉 前田 健悟
出版者
熊本大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本研究は、IT世紀の理科学習ツール「インターネット天文台・気象台」を開発・設置、教育実践に活用し効果を挙げてゆくことを目標としている。本年度は、熊本大学にインターネット天文台を設置、首都圏に既存の二基と合わせて教育利用を推進した。互いに近接した既存の二基と地理的に離れた後続天文台が渇望され、熊本大学インターネット天文台はまさにそれに応えるものとなった。また、北日本に天体ライブ映像を配信するためのサーバーを、北海道教育大学の札幌校に設置した。熊本大学教育学部附属中一年の理科で、インターネット天文台を利用した授業を行った(平成14年12月)。屋上で天体望遠鏡を使い実際に太陽面を観察した後、インターネット天文台を操作しての太陽面観察とした。インターネット経由の天体観察自体、子供連には初めての経験であり、それは印象的なものであった。黒点の移動を調べるための前日・前々日を含めインターネット天文台をフルに活用し、この実践例から、「各地のインターネット天文台を相互利用することで、天候条件に左右されがちな天体観察の授業を、計画通りに進めることができる」という利点があらためて確認された。星が月に隠れる「星食」現象を捉え、教育学部学生対象に観測会を実施、熊本と関東とで現象に30分もの時間差があることを体験してもらった(熊本と首都圏のインターネット天文台を併用)。教員志望学生のこうした体験は、将来の小中高における教育を豊かにしてゆく大切な要素である。インターネット気象台と、「定点2000」観測点(ライブカメラ含む)、アメダス観測点などインターネット上の気集情報を組み合わせた教材を用い授業実践を行った(平成15年1月、学部生卒業研究の一環)。「青森は雪だった」「高知の天気は予想と違った」など、子供達が主体的に取り組みながら各地の天気の違いを学ぶ様子が見られ、一定の成果を挙げることができた。特定領域内においては、複数の研究と連携が動き始めたところである。その強化は、今後の発展課題である。
著者
田村 実 スタンレー ジョージ・デ STANLEY George D.Jr. ジェームズダブルシアーズ 渡辺 一徳 ジョージ・ディー・スタン
出版者
熊本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

研究成果報告書日本の三宝山帯とはアルプス等テチス海域に特徴的なメガロドン石灰岩をはじめとする二枚貝及び造礁性サンゴ化石が報告されている。日本はアルプスを含むテチスプロパ-地域とテチスフォーナを含む米国太平洋岸地域の中間的位置を示している。勿論日本及び北米のテチスフォーナを産する地域はExotic terranesではあるが,テチス域の当時の古地理をしらべる上で重要な資料を提供しうるという点でこの度の共同研究となった。1993年に田村はWallowa産地を訪れ,又スタンレーは1993年9月より1994年8月はじめまで日本に滞在し,球磨川流域,熊本県の八代郡水上越,奈良県のアザミ谷,沖縄の今帰仁層の資料に基き,専門は異なるが夫々の資料を提供し,日本とアメリカの三畳紀(特に後期三畳紀)テチス化石群の対比を二枚貝とサンゴに基づいて行い,更にテチス域全体についてにも対比を広めた。現在入手しうる最大の資料(化石)を用いて検討したが資料の不足はなお残る。特に日本のサンゴ化石は保存が悪く又産出は礫からに限られているため充分な研究ができたとはいいがたい。今後更に資料の蓄積に努力してより確度の高い結果をえたい。全体的な結論として二枚貝・サンゴ共,テチス要素を含みテチスフォーナに属するが夫々がEndemicな要素の含有率が高く,又日米双方間についても二枚貝では共通種がなく,サンゴでは北米産60種のうち1種が共通するだけで,分布を容易にする環境ではなかったと考えられる。以下に研究により判明したことを箇条書に示す。二枚貝の研究(1)ニュートン他は北米ワラワ山地の二枚貝化石群をテチス域のものとしたが,この中に日本ではテチス域(三宝山帯)に全く産せずより内側の河内ケ谷フォーナの要素の産出を報じたが検討の結果ワラワ山地で河内ヶ谷フォーナの種に同定又は類似種とされたもののいづれもが異なることが以下の如く明かになった。(2)テチスフォーナ中の三角貝類を検討した結果,次のことが明らかになった。a.日本産の上部三畳系の三角貝はGruenewaldia decussata,Gruenewaldia vokhlmanni,Kyushutrigonia hachibarensis new genss and next species,Prorotrigonia(?)sp.でこれらはテチス域から中国西部にかけての
著者
寺田 光徳
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

平成19年度はアルコール中毒についてゴンクール兄弟の『ジェルミニー・ラセルトゥー』(1865)およびゾラの『居酒屋』(1877)を研究し、後者を論じた論文を執筆した。平成20年度の研究主題に取り上げた結核については、19世紀後半の1882年にコッホによる結核菌の発見という病理学上の重大な転機があったので、結核病因論の確立の前後を比較することは研究上不可欠なことであった。そこで19世紀前半のバルザックやデュマ・フィスなどの小説からはじめて、結核菌発見の前後の時期を覆うゾラの「ルーゴン=マッカール叢書」を詳しく検討した。そして19世紀前半の文学作品中の結核に関する研究論文を執筆・公表した。最終年度の平成21年度は19世紀後半の文学作品に関する結核について研究論文を執筆するとともに、「ルーゴン=マッカール叢書」の梅毒についても研究をした。また21年度末には3年間の研究成果を報告論文の形でまとめて発表した
著者
大見 美智人 林 泰弘 北園 芳人 小池 克明
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では電気探査とMT法とを併用して地下浅部・深部の比抵抗分布を明らかにし,それから3次元的な温度分布構造を推定するための手法について検討した。この目的のために九州中部の阿蘇山を研究対象に選んだ。本研究の成果は以下のようにまとめられる。1.ラドンの移動の数値シミュレーションとラドン原子数算定理論により,ラドン濃度の空間的分布から,幅・傾斜方位・傾斜角度に関する断層の形状を推定することが可能になった。また,熱水の通路となる断層上のラドン濃度は,火山性地震などに起因して大きな時間的変動を示すことが明らかとなった。2.衛星画像と数値地形モデルとの組み合わせにより,熱水流動に影響を及ぼす断裂系の分布形態(走向・傾斜,分布密度)が推定できるようになった。3.一般に坑井データは分布密度が低く,深度も限られており,直接データを補間しても温度分布の特徴が得られない。これを改善するためにニューラルネットワークと地球統計学とを組み合わせたところ,地表面から標高2kmの深度までの温度分布が3次元的に推定できるようになった。この分布モデルから断層の存在が温度分布に及ぼす影響や熱水の流動形態が把握できる。4.活断層のように最近動いた履歴のある断層であれば地表面近くで比抵抗が低下する。断層の深部での比抵抗は一様でなく,特に破砕度が大きいと推察される部分の比抵抗は低い。阿蘇山火口西側の断層の推定分布域では比抵抗の異方性が顕著で,TEモードとTMモードとでは分布傾向が大きく異なる。5.阿蘇山火口西側においてMT法によって推定された比抵抗と数値シミュレーションに基づく推定温度との関係を検討し,概ね温度が高いほど比抵抗が高くなるという傾向を明らかにした。また,同じ温度でも熱水の上昇域で比抵抗が低下する現象も見出された。
著者
平田 憲 福島 美紀子 木村 章 松本 光希
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

ロドプシンやIRBP、アレスチンといった網膜特異的蛋白の遺伝子のプロモーター部位にはPCE-1領域(CAATTAA/G)とOTX領域(TGATTAA)というシスエレメントが存在しており、OTX領域にはCRXとよばれるホメオボックス型転写因子が結合することが知られていた。我々の一連の研究は、PCE-1領域に結合する転写因子を同定し、網膜特異的遺伝子の発現にそれらがいかに関わりあっているかを検討することにあった。我々はまずPCE-1領域をプローブにしてサウスウェスタン法にて、RXと呼ばれるホメオボックス遺伝子を同定した。次に抗RX抗体を用いて、ウェスタンブロット法と免疫染色法を行い、RXが網膜特異的に存在し、網膜視細胞層以外にも内顆粒層や神経節細胞層など網膜全体に存在することを示した。さらにEMSA法にてRXがPCE-1領域に結合するのを確認した。また変異をつけたプローブによるEMSA法にて、RXとCRXという似通った転写因子が結合領域のコア(ATTAA)の前の2塩基対(CAかTG)によって結合特異性が違ってくることを明らかにした。次いで我々はCATアッセイにてRX, CRXによる綱膜特異的遺伝子のプロモーターの転写調節活性を調べた。RXもCRXもアレスチンやIRBPプロモーター活性を量依存的に増加させた。それに対しアレスチンプロモーターのPCE-1領域のみに変異をつけるとRXによる活性のみが低下した。さらにRX, CRXの領域特異的なプロモーター活性をみるため、PCE-1とOTXをつないだCAT遺伝子を作成し、RX, CRXを導入して実験を行ったところ、PCE-1ではRXのみが、OTXではCRXのみが活性を増加させた。これらのことから、網膜特異的遺伝子の発現にはPCE-1とOTX領域が必要であり、それぞれRX、CRXという転写因子が領域特異的に結合し、活性化していることが明らかにされた。
著者
神野 雄二 ジンノ ユウジ Jinno Yuji
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要 人文科学 (ISSN:0454613X)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.275-286, 2010-12-03

本論では、山田寒山の印学面での業績を論述するとともに、『寒山本印章備正』の成立と内容を見、『印章備正』に纏わる事柄を精査し、日本印学史の一端を明らかにする。尚、本稿は第十六回書学書道史学会において口頭発表した「日本印人研究-山田寒山の印学と『印章備正』を中心に-」を基に、その後の新知見を追補し纏めたものである。
著者
野原 稔弘 池田 剛 桜田 忍 金城 順英
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

Incarvillateine (INCA)に関するこれまでの構造活性相関試験より、鎮痛活性発現に必要な基本骨格が明らかとなった。本結果を礎に、芳香環部あるいはアルカロイド部を多彩に変換することに依り、さらに強力な活性物質に導くことができるものと予想される。特にアルカロイド部分単独で強力な活性を有する化合物を本構造に導入することで、さらに活性を増強させることも可能であると考えられる。鎮痛作用発現のために重要な因子の中で、INCAの前駆体と考えられるモノマーのIncarvine Cが殆ど活性を示さなかったことより、特に二量体構造が、その強力な鎮痛活性発現に対して重要な役割を担っていることが示唆された。そこで、INCAと同様の立体構造を有するα型ジフェニルシクロブタンジカルボン酸:α-truxillic acid (TA)、および4,4'-dihydroxy-α-truxillic acid (DHTA)の二種を合成して鎮痛活性を検討した結果、腹腔内投与において、これら両者がホルマリンテストの第二相目の炎症性の疼痛行動を強力に抑制することが明らかとなった。特にDHTAはINCA以上の鎮痛活性を示し、NSAIDsの一般的な投与方法である経口投与においても、市販薬として繁用査されるロキソニンとほぼ同等の鎮痛抗炎症活性を示した。さらに、尿酸結晶を用いたラットの痛風モデルにおける痛みに対しても強力な鎮痛効果を示した。また、DHTAの大量経口投与時における潰瘍の発生は全く認められなかった。さらに多種のTAおよびその誘導体を合成し、鎮痛効果の比較および検討を行なった結果、同二相目における疼痛行動の抑制効果は、シクロブタン環の存在、α型の立体構造、シクロブタン環の遊離カルボン酸の存在、ならびに芳香環上の置換基の種類が重要な因子であることが判明した。
著者
岩岡 中正
出版者
熊本大学
雑誌
熊本法学 (ISSN:04528204)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.41-66, 1984-12-30

小論は、サウジー政治思想研究のための予備的考察として、以下の三点についてサウジーの考えを簡単にスケッチするものである。「サウジーの歴史観」「サウジーと産業革命」「サウジーの国家像」という三つの点である。
著者
寶月 拓三
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1991年6月3日の大火砕流の発生以来,雲仙普賢岳の東向き斜面には引き続き火砕流および土石流が襲い,8,000人以上が被災者した。被災者は自治体の指導による長期の避難生活の結果,転居を余儀なくされ,被災者は散在し,地域の住民の再構成が成されることになった。被災地域内の各地域では,民間住宅,公営住宅あるいは仮設住宅などの特徴を持つ住宅への入居の状況が異なっていた。これらの状況の類似性から,地域性を指摘できるが,この地域性は被災の時期や程度の地域性,被災者用の公営住宅等の設置場所によって生じていると判断した。多くの被災者は被災前の住居付近に転居することを望んでいたが,実際には,離れた場所に設置された被災者用住宅であっても転居する傾向が認められた。家屋を含め財産の多くを失った被災者にとって,経済的負担を軽減することが第一義的に重要であったと判断できる。被災者世帯のほぼ3分の1は避難の過程で分離した。世帯の分離は,一般の世帯でも観られるように,世帯内での世代構成に依存しているようである。即ち,老親・未成年の扶養・養育や,成人した子供の独立に依存する。ただ,被災地域内の地域によっては,このような世帯の分離が促進されたようである。それに加えて,被災前に比較して,被災後は世帯から分離した人々が被災地である島原市の外へ出ていく傾向が強まったようである。また,就業者のうち,農業従事者が被災後に転職あるいは無職になっている例が多数認められ,生産基盤である農地を失うことにより,離農が加速されていることが窺えた。結局,被災世帯の分裂および都市近郊農村社会における就業構造の変貌が恐らく不可逆的に加速し,さらには居住地の分散移動の結果,地域社会が質的および空間的に再編成され,新たな地域社会が形成されてきた。地域社会の再編を促す触媒として,今回の火山災害を位置付けることができると現時点では考えている。
著者
寺崎 秀則 田上 正 津野 恭司
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

1.未熟胎仔ヤギでのto and fro venovenous bypass ECLA安全性と有効性の実証:帝王切開にて娩出した, 在胎118〜139日, 体重700〜3190gの未熟胎仔ヤギ6例で, 頚静脈よりthin wall catheterを心房まで挿入して1本のカテーテルで交互に脱送血をくり返すto and fro venovenous bypass ECLAを実施した. 在胎132日以上, 体重2400g以上の3例は, 18時間〜32時間のECLA実施後, 気管内チューブを抜去でき, 自力でガス交換と経口摂取が可能となった. 在胎120日, 体重2000gの1例は, 87時間のV-VバイパスECLAの後離脱できたが, ベンチレーターで管理中に急に呼吸不全状態となりECLAを再開した. しかし, ガス交換補助が不十分であったため, V-VバイパスからV-Aバイパスへ変更した. 203時間のECLAを実施したが, 生体肺のガス交換能が全く改善しなかったのでECLAを断念した. 解剖の結果, 気道ならびに肺胞内は膿性の分泌物が充満していた. ベンチレーターならびに気道管理不良による感染で重症肺炎を合併したものと考えられる. 体重700g, 1250gの2例は, 未熟度が高度で, 低酸素症の改善がないまま, バイパス開始2時間で低血圧ついで心停止をきたして死亡した. 生体肺のガス交換能と心機能が未熟で, V-Vバイパスでは生命維持に必要な心肺機能を補助代行できなかったためであろう. 超未熟児の重症例ではV-VバイパスECLAよりV-Aバイパスが良いと考えられる.2.ECLAの臨床応用:在胎34週, 体重2000gのRSD患者がベンチレーター療法で気圧外傷を合併し, ガス交換が不良で生命の危険が迫ったのでECLAを実施した. 3日間のECLAで救命できた.以上のように, 頚動脈を損傷しないで済むto and fro venovenous bypass ECLAは, 体重2kg以上の新生児重症呼吸不全の治療に臨床応用可能である.
著者
河原 正泰
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ブラウン管ファンネルガラスからの鉛の回収と無害化を目的として、還元溶融による金属鉛の回収と塩化揮発による鉛の除去について検討した。また、鉛を回収した残渣からの鉛の溶出性についても検討を加えた。その結果、ブラウン管ファンネルガラスの最適処理法を見出すことができた。
著者
柿本 竜治 溝上 章志
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.路線別バス事業経営評価手法の開発平成14年の道路運送法の改正により,バス路線の需給調整規制の廃止とともに地方バス補助制度も改定された.これにより,これまで内部補助を前提としていた事業者への補助措置ではなく,生活交通確保のために地域にとって必要な路線に対する路線毎の補助制度に改められた.補助金投入に際し,従来,路線を評価する指標として営業係数や輸送密度が用いられてきたが,これらの指標による評価には営業費用を最小にする投入や産出がなされているかという企業努力は不問としている.そこで本研究では,生産性と集客性で構成される「企業努力面」と,公共性と収支性で構成される「経営・環境面」とにより路線を分類し,さらに運行サービス水準等の路線の特性による主成分分析を行い,路線改善策を抽出する方法の提案を行なった.この方法により,公的補助投入対象路線を効率的に絞り込むことが出来るとともに,補助対象外の路線を維持するための具体的な改善策を示すことが出来た.2.路線別特性評価に基づくバス路線網再編手法本研究は,バス輸送の持つ平均生産性構造と実績費用とを比較することによる当該路線の生産効率性,および路線沿線の潜在需要と実際に獲得した乗車人員との比較による潜在需要の顕在化可能性という2つの視点から,バス路線別の特性評価を行なう方法を提案したものである.さらに,この特性評価法による路線の分類,および分類された路線を改善する合理的でシステマティックな路線再編方策を示す.熊本都市圏を対象として汎用交通需要パッケージの一つであるJICASTRADAを利用し,この路線分類別改善方策にしたがったバス路線網の再編を試みた.再編バス路線網に対して交通需要予測を行なった後路線別,および路線網全体の乗車人員や営業係数などについて効果分析を行い,本手法の実用可能性と有用性を検証した.
著者
生田 まちよ 宮里 邦子 野村 恵子 永田 千鶴 木村 重美
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

在宅人工呼吸療法の小児の介護を行う家族の介護負担は大きい。このため家族にとって、レスパイトケアが重要である。しかし、これまでのレスパイトケアの利用は、家族の行事や病気などでの緊急の利用がほとんどであった。さらに、小児はレスパイト施設の利用が困難な状況であった。そこで、定期的に子どもの自宅に訪問看護師が長時間滞在するホームベースレスパイトケアを実施した。そして、そのケアの有用性が示唆された。さらに、このホームベースレスパイトケアを実施するには、不可欠な訪問看護師が、安心して小児のレスパイト訪問ができるような、教育プログラムを開発して実施した。
著者
本山 敬一
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

メチル化シクロデキストリン(M-CyD)を用いて腫瘍細胞選択的新規抗癌剤を構築するため、腫瘍細胞に高発現する葉酸レセプター(FR)に特異的に結合する葉酸(FA)を修飾した葉酸修飾M-CyD結合体を調製した。葉酸修飾M-CyD結合体は、FR発現細胞選択的に取り込まれ、強い細胞障害性を示した。これらの知見は、FAやM-CyDを用いた腫瘍細胞選択的新規抗がん剤の構築に際し、有用な基礎資料となるものと考えられる。
著者
岩岡 中正 首藤 基澄 吉川 榮一 谷川 二郎 中村 直美 中山 將
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、[I]人間社会基礎論研究と[II]比較地域論の二方向から、近代(化)の検証と今日的意義およびその普遍化可能性について考える。[I]の(1)の哲学・倫理学・美学部門では、近代の主観主義的人間観の射程の研究(中山)、個人主義概念の基礎的研究(岡部)、自由主義的人間観の限界と地球全体主義の提唱(篠崎)が、(2)の法哲学・政治学部門では、近代リベラリズムにおける自律概念の研究(中村)、脱近代パラダイムの視点からの、「普遍」としての「近代の研究(岩岡)、アレント研究を通しての、政治的アイデンティティの研究(伊藤)が行なわれた。[II]の(1)の「英米における近代化」では、16世紀の英語の語彙の近代化の研究(上利)、シェイクスピアの戯曲における英国近代化の萌芽の研究(谷川)、19世紀英国小説に見る労働者と近代化の影についての研究(大野)、アメリカ小説に見る、コマ-シャリズムという近代化の悪き側面についての研究(里見)、さらに(2)の「アジアにおける近代化」では、祭元培の人権意義の非西洋的由来に見る中国近代化の特殊性の研究(吉川)、夏目漱石と芥川龍之介における日本近代化の理念の比較研究(首藤)、国民国家的視点からの日本近代化の研究と近代化論の批判的考察(小松)が行なわれた。通算13回の研究発表会と11回の研究打ち合わせ会から、以下の視点を得た。つまり、[II]グループの研究から、今日、単線的進歩の近代化論は受け入れられず、西洋も含めて世界の諸地域が多様な近代化をとげてきており、したがって近代化の一義的普遍化は困難であること、しかし他方、[I]グループの研究が示すように、やはり現代社会には「近代」に共通の普遍的な成果と問題点およびその克服の試みがあるという認識に立って、地域的な多様な近代化における個別性と、真の近代がめざす「人間の善き生」という普遍性をどう止揚するかという視点の重要性を確認した。この視点から今後さらに近代についての研究を進めたい。