著者
岩永 定 小坂 浩嗣 芝山 明義 柏木 智子 仲田 康一
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

子育て困難な家庭への支援ネットワーク構築の可能性を探るために,児童相談所職員と養護教諭を対象とした質問紙調査を実施した。また,家庭教育支援事業を展開している和歌山県湯浅町教育委員会の担当者に対してインタビュー調査を行った。その結果,児童相談所職員も養護教諭も相互の連携の必要性は感じているものの,現実には連携は不十分であること,連携を阻害する要因が複数存在することを意識した回答内容であった。それらの阻害要因を除去することができれば,連携は進展する可能性も示された。
著者
井上 暁子
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

旧ドイツ領にあたるポーランド北部/西部国境地帯が、1980年代以降に書かれたドイツ語・ポーランド語文学においてどのように表象されるかという問題を、とくにその独特な「わたし語り」による記憶の描かれ方に注目して分析した。当該国境地帯は、この地域在住のポーランド語作家の文学においては多層的な記憶のテクストとして表象されているが、社会主義末期西ドイツへ移住し、体制転換後両国を行き来する作家の文学においては、国境地帯をめぐる様々なディスクールが移動者の視点から脱構築される。さらに、体制転換に伴う創作環境・流通形態の変化と、題材・テーマ・手法への影響に関して、10名の作家にインタビューを行った。
著者
梅田 素博
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

芸術教科である美術科を表現教育としてとらえ、これを基盤とした総合的な教育内容と教育方法を研究した。表現教育として、芸術教育の一つである「音楽」の要素を取り入れ融合する研究を行った。また、情報化社会に対応するための映像メディアに関する研究を行った。そして総合的な学習における表現教育として、美術を基盤として音楽と映像メディアを統合した具体的な教材の制作を行い、そのカリキュラムの研究を行った。
著者
森本 剣太郎
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,持続可能な魅力的ある朝市について特性導き出しこれを一つの地域資源として活用することを最終目的として,①アンケートやヒアリング調査による量的データを収集し,また②現地調査を通して朝市の細かい特性を導く質的データを収集し,これを整理分析した2カ年の研究である.その結果,朝市の魅力キーワードを抽出し,朝市が持続的に地域活性化を担う考察した.
著者
荒木 令江
出版者
熊本大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

近年、虚血性ストレスによる脳神経系の組織障害が問題となっている。我々は、急性・慢性的な虚血や癲痛性発作等における局所的な脳組織障害の発生に、p53分子を介する脳神経特異的な細胞死へのシグナルが大きく関与していることを明らかにした。本研究では、虚血性ストレスによる脳神経組織障害発生のメカニズムを解明する一つの手段として、p53遺伝子ノックアウトマウスを用いて、虚血性神経細胞死の誘導と、脳神経組織・細胞内のp53の動態、及びp53有無に付随して発現や機能を調節されるシグナルネットワークに関わる分子群を検索/同定し、これらのタンパク質レベルでの構造と機能解析を行い、p53を介して誘導される脳神経細胞死に関連するシグナル分子の検索を行った。p53正常(+/+),ノックアウト(-/-)マウスの総頸動脈結紮による海馬・線条体神経細胞の再現性のある虚血性遅延障害モデルを開発し、各脳組織・細胞のプロテオーム及びトランスクリプトーム解析の方法論を確立した。プロテオミクス融合解析法は、2種類(2D-DIGE法・iTRAQ/cICAT法)のproteomic differential display法を同時進行で行うとともに、DNAチップによるmRNA発現差異解析を行った。現在までに、2D-DIGE法においては、約4000個の全蛋白質から213個の特異的な蛋白質(p53遺伝子の有無に関わる93個、虚血性アポトーシスに関わる53個、p53およびアポトーシス両者が特異的に関わる39個)が検出された。又、iTRAQ/cICAT法による解析においては297個の特異的な蛋白質がp53およびアポトーシスに関わる分子として同定された。さらに、DNAチップ法によって特異的に変動する分子群合計294個(上昇195,減少79)をプロテオミクスの結果と融合させ、これらの結果をシグナルネットワーク解析ソフトに供与して特異的p53依存性のアポトーシスシグナル経路を抽出したところ、caspase9を介したアポトーシス経路に加え、レドックス関連因子群、notch,wint,cadherin,IF等の関与するシグナル系がユニークな経路として検出された。本研究によってp53及び関連分子の神経細胞死に関わるシグナル伝達機構の一旦が明かになり、これらの分子シグナルの活性を調節する薬剤やターゲット分子が、脳神経系組織障害の予防や治療へ応用できる可能性が示唆された。
著者
藤中 隆久
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育実践研究
巻号頁・発行日
vol.22, pp.119-125, 2005-02-28

教育実習は複数回行われるが、実習と実習の間をもっと有機的に使えないだろうか。実習に対して事前指導・事後指導がなされているが、学生はそのそれぞれにおいて深く考えることなく体験したままになっていないだろうか。教育実習を何回も経験するメリットは、前の経験が次の実習に生かされることにあるはずである。それには体験を自己に内面化・構造化する必要がある。個人でその作業ができるのであればよいが、他人と話し合う方が多くの人にとっては容易であろうと考えた。そこで熊本大学教育学部において2004年3月7日、参加希望者を募り「教育実習を語ろう」というイベントを開催した。ここで少人数での話し合いを行い、イベント終了後の自由記述によるアンケートで「教職に対する意識」「生徒指導・学級経営」に対する意識は高まるのかなどの検討をし、事前・事後指導の可能性を探ることとした。
著者
木村 博子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

3年間にわたり、在宅高齢者の地域復帰支援として行なっているコミュニティ音楽療法を122回、阿蘇市仮設住宅におけるコミュニティ音楽療法を10回実施し、その発展形としてのコンサートを6回実施した。それにより、参加高齢者の心身の活性化、自己尊厳の回復、社会意識の向上に有効な効果がみられた。またコンサートにおける地域在住の音楽家の出演は、地域住民の地元音楽文化の再発見ならびに演奏家自身の社会的意識の向上を促し、新しい療法的視点に基づいた演奏活動が始動する等、音楽活動における波及効果が確認された。音楽療法の知見を持つ学生たちによるコンサート企画運営は高齢者理解、異世代間交流の契機となった。
著者
田中 均 高橋 努 田代 正之 加登住 誠 本多 栄喜 一瀬 めぐみ
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要. 自然科学 (ISSN:04546148)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.7-17, 2008-12-19

The Miyaji Formation typically exposed along the coast of the Futami area, Kumamoto Prefecture, is characterized by sandy facies in the lower part and muddy facies in the upper. Abundant shallow marine bivalves are usually developed in the several horizons of the lower part. Among the identified species, Pterotrigonia (Pterotrigonia) pocilliformis, Goshoraia minor, Anthonya monobenses are the most diagnostic. From the bivalves faunal aspects and lithological character, the formation is comparable to that of the Lower Hibihana Formation of the Monobegawa Group in Shikokku. Detailed geologic survey has led to the discovery of the Miyaji Formation except for the type locality. The distribution of the Miyaji Formation offers the key to an understanding of the structural movements in this region. The Miyaji Formation is cut by several NW-SE faults. Judging from the field evidence, these faults can be determined to be associated with the geological structure of the Amakusa Islands
著者
メーゲンベルク コンラート・フォン 荻野 蔵平
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
no.104, pp.89-105, 2013-03

"Das Buch der Natur", das zwischen 1347 und 1350 von Konrad von Megenberg verfasst wurde, ist die älteste bedeutende Naturgeschichte in deutsche Sprache. Es ist weitgehend eine Übersetzung von Thomas de Cantimeprés "Liber de natura rerum" (zwischen 1225/26 und 1241 entstanden), enthält aber auch neue Beobachtungen und Ergänzungen. Dieses im Mittelhochdeutschen verfasste Lehrbuch war auch in Laienkreisen lesbar und fand rasch sehr weite Verbreitung (über 100 Handschriften). Die folgende japanische Übersetzung, der die von Franz Pfeiffer herausgegebene Textausgabe "Das Buch der Natur" (1861/1994) zugrunde liegt, behandelt die erste Hälfte des dritten Kapitels "Von den tieren in ainer gemain".
著者
田中 均 高橋 努 一瀬 めぐみ 坂本 大輔 林 智洋 本多 栄喜
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要. 自然科学 (ISSN:04546148)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.61-70, 2007-11-30

Mukujima Island is 16 kilometers northeast of Tsukumi City, Oita Prefecture, and is geotectonically occupied by the Chichibu Terrain of the Outer Zone of Southwest Japan. In this area the Upper Mesozoic strata are exposed in Jimukujima and Okimukujima Islands, and are lithostratigraphically divided into four formations, i.e. Mukujima, Jimukujima, Okimukujima and Bungo Formations in ascending order. In this paper, the stratigraphy is described in some detail, with remarks on correlation, and the features of the bivalve faunas are made clear. The Mukujima Formation, about 65m thick, is characterized by the predominance of feldspathic quartzsandstone. Several shallow marine bivalves which were conspecific with the bivalves from the Torinosu Group in Sakawa, Sakamoto, Yatsushiro and Tanoura areas, and Soma Group (Nakanosawa Formation) in Soma area, and the fragmental plant fossils occur from this formation. From the faunal aspects and lithological characters, the Mukujima Formation is best comparable to the Torinosu Group in Shikoku, and is assigned to the Late Jurassic. The Jimukujima Formation about 550m thick is in fault contact with the Mukujima Formation. The formation is characterized by the frequent occurrence of red-colored rocks, with intercalation of brackish-water shell beds. From the fossil-contents (Ryoseki fauna) and lithological characters, the formation is comparable to the Ryoseki Formation of the Monobegawa area, the Koshigoe Formation of the Haidateyama area, the Togawa Formation of the Gokase area and the Kohara Formation of the Yatsushiro area.
著者
小川 尚 羽山 富雄 長谷川 佳代子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ラットの味覚野では機械受容ニューロンが機能円柱を形成していることはWang and Ogawa (2002)が先に報告したが、本研究では味覚ニューロンの円柱構造を研究することを目的とした。ラットの大脳皮質味覚野は眼窩と岩様骨の間で、嗅状溝の背側部の島皮質前部にあり、電極を皮質表面に垂直に刺入するために。既成のマニピュレータを組み合わせることにより首振り可能な3次元マニピュレータを作成した。ラットの大脳皮質味覚野にいろんな角度で記録電極を刺入したラットの大脳皮質味覚野に種々の角度で記録電極を刺入し、表面近くより50-100μmステップで四基本味+グルタミン酸ソーダの全口腔刺激に反応するマルチユニット神経活動を記録し、パソコン上で自家製ソフトによりユニットを分離して味覚ニューロン活動を同定し、四基本味+グルタミン酸ソーダに対する応答プロフィールおよび口腔内受容野を調べた。味覚ニューロンは多くの場合1-2個が連続的に記録されるに過ぎなかったが、数例で5-6個が連続的に記録できた。四基本味+グルタミン酸ソーダ中最も大きい応答を生じる刺激をベスト刺激とすると、ベスト刺激は殆ど1個毎変化したが、偶に最大で4〜5個連続して同じベスト刺激を共有するニューロンが見い出され受容野の位置が変化することがあった。それに反しベスト刺激が変化するにも関わらず同じ箇所に受容野は連続して見い出されることもあった。特に、複数の味刺激に同じように大きい応答を生じるニューロンが連続して記録される場合に口腔全体に受容野を持つ例があった。同じ円柱内ではベスト刺激や受容野を共有すると仮定すると、受容野を共有する円柱サイズは約20ミクロン、ベスト刺激のみを共通とする円柱は約30ミクロンと推定された。これは機械受容性受容野をもつ持たないに関わらず、この所見は当てはまった。円柱のサイズを確認するために、最初の電極刺入点近くで、やや角度を変えて第二の電極を刺入して、味覚ニューロンを調べた。円柱サイズが小さいためか、サイズを調べる有効な手段とはならなかった。本研究の1部は2004年7月の国際嗅覚味覚シンポジウム(京都)で発表した
著者
田中 雄次
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.67-90, 2006-03-31

この論考は、ハリウッドにおいて生涯重要な位置を占め続けたルビッチの幾つかの作品と、1920年代にハリウッドへ進出したF.W.ムルナウの作品、ドイツ最初の近代的なプロデューサーであり、映画のビジネスとしての要請と芸術上の要請を結びつけるすべを熟知していたE.ポマーのハリウッドでの活動、それにハリウッドで数本の作品に出演し第1回のアカデミー賞男優賞を獲得した名優E.ヤニングスの活動を中心に、ドイツ国民映画がハリウッドでの影響下でどのように変容したかを検討することに主眼を置く。
著者
木子 莉瑛 木原 信市 越智 由紀子 梅木 彰子 佐藤 友紀 高木 恵美子
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育実践研究
巻号頁・発行日
vol.19, pp.79-85, 2002-02-10

The purpose of this study is to clarify the impression to nurse by each generation. The subjects were 655 persons, consisting of puberty (a teen-ager), youth (a person in the twenties and thirties), middle age (a person in the forties and fifties) and old age (a person in the sixties and over). This study disclosed the following results. The generation, of nearly old age, who came in more contact with nurse, had significantly better impression than other generations. On the other hand, youth had significantly worse impression to nurse than other generations. As an bad impression, there were hard work and low wages for it, few holidays, incompatibility with a family life, inadequate assessment from society, and job of only younger.
著者
城谷 哲也 宮村 信博 荒木 栄一 七里 元亮
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

糖尿病における膵β細胞疲弊の一因として、β細胞のグルコース応答性のインスリン生合成や分泌障害が生じることが知られている。本研究では、高血糖におけるグルコース応答性のインスリン遺伝子転写が、atipical PKC(PKCζ)を介して転写因子のPDX-1(pancreatic and duodenal homeobox gene-1)を修飾して影響をおよぼしているかを分子レベルで解析した。膵β細胞でのPKCの関与、またPDX-1のリン酸化に関わるPKCのfamilyを同定するため、MIN6細胞にPKCの阻害剤であるCalphostin CやGo6976を反応させ、EMSA及びCAT assayを施行した結果、グルコース応答性のPDX-1のリン酸化にはatipical PKCが関与している可能性が示唆された。抗PKCζ抗体を用いたwestern blotの結果、MIN6細胞の核抽出物中にPKCζが存在することを確認し、免疫染色でもMIN6細胞の核内にPKCζの存在を確認しえた。さらに、低(2mM)及び高(20mM)グルコースにおけるPKCζの活性の変化を基質を用いて測定した結果、20mMグルコース培養下でのPKCζ活性は有意に増加していた。また、atipical PKCを特異的に阻害するCalphostin Cを反応させると、この20mMグルコース培養下でのPKCζ活性を完全に抑制した。最後に、atipical PKC(PKCζ)のグルコース応答性インスリン遺伝子転写への関与をより詳細に解析するため、ラットatipical PKC(PKCζ)cDNAを基にdominant negative PKCζを作成し、発現vectorに組み込んだ後、MIN6細胞に発現させwestern blotにて、その発現蛋白を確認した。さらに、dominant効果の確認後、in vitro及びトランスジェニックマウスを作成し、より詳細な解析を行う予定である。
著者
三澤 純 ミサワ ジュン Misawa Jun
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.147-164, 2004-03-20

本稿において、筆者は、「安場男爵家文書」(熊本大学附属図書館寄託「永青文庫細川家文書」)と題された写本から、安場保和宛元田永孚書翰四点、下津休也宛元田永孚書翰一点、元田永孚意見書一点、合計六点の史料紹介を行った。これらの史料は、全て未発表のものであり、特に元田と安場とが日本近代史上に果たした巨大な足跡からして、大きな研究価値を有していると考えられる。本稿作成過程における厳密な年代比定の結果、下津宛書翰が一八八〇(明治十三)年である以外、全ての史料が一八七四(明治七)年に書かれたものであることが判明したが、この年は、佐賀の乱、台湾出兵等の大事件が起こっている年である。今回、紹介した書翰からは、これらの事件に対して、元田と安場とが、二人の郷里・熊本の政治情勢に大きな関心を持ちつつ、自らが属するいわゆる実学連の今後の動きを模索していることを読みとることができて興味深い。紙数の都合上、最小限の書誌的知見を整理したほかは、解題の類を一切省略したが、これについては今後の課題とする。