著者
シンジルト
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

新疆モンゴル牧畜地域には、特定の家畜を売らず屠らずその命を自由にするセテルという慣習がある。セテル家畜の扱い方に関する人々の解釈はその世代や地域によって異なるが、全体としてはセテルを行うのがよいとされる。動植物を含む万物の中に幸運を意味するケシゲという存在があり、セテルを行えばケシゲが集まるという認識こそ、彼らの自然認識の基礎を成す。この認識の特徴は幸福を追求することにある。そこで、幸福は人間だけでは達成しえないことが分かる。
著者
Bauer Tobias
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.23-40, 2010-03-25

本稿は、「脳死・臓器移植」問題に対するドイツ福音教会(EKD)の立場について分析を試みるものである。1997年の臓器移植法の可決以前にも、ドイツ福音教会はドイツのカトリック教会と共同で、脳死・臓器移植に関する基本的な見解を二度にわたって公にしている(1989年及び1990年)。その見解の中で、ドイツ福音教会は「脳死」を基本的に認め、臓器提供が隣人愛の行為になり得るとして、移植医療を肯定的に評価した。本稿は、脳死・臓器移植をめぐる福音主義神学の議論ではなく、ドイツ福音教会が教会として取った公式見解を検討し、「脳死」というコンセプト、臓器提供、臓器摘出、移植術を受けること等に関する教会の論証のありかたを分析しようとするものである。移植医療を肯定的に評価するに至るまで、いかなる論証が行われ、キリスト教の教義及び聖書がどのように解釈し直されたのか、それに伴って、1989年と1990年の見解から現在に至るまで、福音教会の立場がいかに発展してきたのかという点についても考察する。
著者
上野 眞也
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、過疎が進み、集落機能や農地・水・環境などの地域資源の維持に限界が見られ始めた農村に対する公共政策のあり方を研究テーマとして、ソーシャル・キャピタルを活かした農村政策の有用性を科学的に位置づけ、農村集落単位でソーシャル・キャピタルを測定する方法の開発、及び国や自治体の農村政策形成へ寄与するための知見を得ることを目的とした研究を行う。
著者
田中 雄次 加藤 幹郎
出版者
熊本大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

ワイマール映画史にとって最も重要な出来事のひとつが、ドイツ最大の映画社ウーファとアメリカの大手映画社パラマウント社とメトロ・ゴールドウィン・メイヤー社との間に取り交わされた<パルファメト>協定であった。研究代表者(田中雄次)と研究分担者(加藤幹郎)は、この協定のもつ歴史的意義を明らかにするために、海外(ドイツおよびイタリア)および国内(国立フィルムセンター)での調査研究をふまえつつ、論文化する作業を行った。平成14年度は、研究分担者に予定していた加藤幹郎がフルブライト奨学金によるアメリカでの映画研究のため参加できなかったために、研究代表者一人がドイツの国立映画研究所および東京のフィルムセンターでの調査研究と文献調査を行ない、その成果として論文「ワイマール映画のなかの女性たち」(『女と男の共同論』所収)を発表した。平成15年度は、8月にアメリカでの留学から帰国した加藤幹郎を研究分担者に加え、加藤のアメリカでの研究成果の報告と研究代表者のそれまでの研究成果の突き合わせを行なった。さらに研究分担者は、2003年10月にイタリアの無声映画研究シンポジウムに参加してドイツを含む1920年代ヨーロッパの無声映画の研究資料を収集して帰国した。研究分担者はその研究成果を研究代表者の勤務する熊本大学を訪問して報告し、その内容について双方で討論し検討した。その成果は、研究代表者の論文「ドイツの<アメリカ化>と国民映画の諸問題-<パルファメト>協定の歴史的意義」(『熊本大学社会文化研究2』・2004)で発表し、2004年秋までに刊行予定である研究分担者の著書『「ブレードランナー」論序説』(筑摩書房・2004)において公表される。今後は、<パルファメト>協定成立に至るまでのワイマール時代初期(1919-1923)の映画界の混乱した状況の詳細な分析と、<パルファメト>協定が形骸化していくワイマール時代後期(1928-1931)に製作されたドイツ映画の分析に重点をおいて研究を継続したいど考えている。
著者
吉村 豊雄 三澤 純 稲葉 継陽 足立 啓二 山田 雅彦 松本 寿三郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の中心をなす日本史研究班は、16・17年度に引き続いて、熊本大学が収蔵する日本最大の前近代組織体文書たる永青文書所蔵の細川家文書(細川家の大名家文書)のなかで、藩制の基幹文書となっている「覚帳」「町在」の系統解析に全力をあげつつ、前近代日本社会・日本行政の到達形態について実態的な成果を出すことに努めた。その結果、「覚帳」の系統的解析を通して驚くべき成果を得た。すなわち、本研究で明らかになってきたのは、日本近世の領主制が農村社会の自律的運営能力の立脚する方向で、次第に農村社会からの上申事案・上申文書の処理を業務とする割合を強め、ついには農村社会からの上申文書を中央行政機構における稟議制の起案書として、地方行政に関わる政策形成を行うに至るという、従来、想像もされてこなかった19世紀、幕末の行政段階である。熊本藩では、18世紀以降、こうした傾向を強め、中央行政機構では、こうした状況に対応した行政処理・文書処理のシステムを整備し、19世紀段階には農村社会からの上申文書を起案書とし、中央行政機構の稟議制に基づく地方行政を展開している。本研究において主対象とした熊本藩の中央官庁帳簿たる「覚帳」は、こうした歴史的推移をたどる。同時に、中央行政機構の稟議にかかった上伸事案は、農村社会で無数に生成される要望・嘆願の類いのごく一部であり、その多くは中央行政機構に上申されることなく、農村社会の段階で処理・解決されている。18世紀後半以降の地方行政は、農村社会の政策提案能力に依存しつつ、領主支配の根幹に関わる事案について上申させ、これを稟議処理し、執行することで成り立っていたと言える。
著者
田中 雄次 加藤 幹郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.本研究の目的:1919年-1933年におけるワイマール期のドイツ国民映画の変容と展開を、主要な作品の分析とともにハリウッドとの関係において検討することであった。2.実施した研究計画の概要(1)2006年および2007年の7月に研究代表者と研究分担者が、熊本大学においてそれぞれの年度の研究に関して事前調査の打ち合わせを行った。(2)研究代表者は、2006年度及び2007年度の8月下旬から9月上旬にかけてドイツのフランクフルト映画博物館及びベルリンの映画博物館において学芸員の協力を得て、主要な研究対象であるワイマール中期(1924-1927)の映画作品に関する資料収集を行った。研究分担者は、おもに東京国立近代美術館フィルムセンターとアテネフランセにおいて、フィルムセンター研究員の板倉史明氏の協力を得てワイマール後期(1928-1933)の映画研究を行った。(3)研究代表者は、2007年12月1日(土)に開催された第3回日本映画学会(於:京都大学)において、「ドイツ国民映画の典型としての『ニーベルンゲン』(1922-1924)」の講演を行った。3.研究の意義とその重要性:研究代表者は2008年3月に『ワイマール映画研究-ドイツ国民映画の展開と変容』(熊本出版文化会館)を出版した。本書は、日本におけるワイマール映画に関する本格的な研究であり、今後の研究の基本図書になりうると確信している。
著者
鈴木 克明 根本 淳子
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では、欧米において「学びたさ」についてのインストラクショナルデザイン研究で注目が集まっている「美学・芸術的な視座」からの設計原理が我が国においてどこまで援用可能かを検討し、我が国独自の原理導出を目指した。教育工学の隣接領域で展開しているペルソナ技法やユーザーストーリー等関連研究の知見を取り入れ、パリッシュが提唱したIDの美学第一原理を検討し、意欲向上につながる学習経験を実現する方策を試みた。
著者
辻野 智二 島 章
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

血管内に気泡が形成し、血管内腔が閉塞されるガス塞栓は、開心術、血管造影時等における合併症として発症するほか、潜水病等の成因ともなる。また、体外衝撃波結石破砕術時における副作用の要因として、衝撃波による血液中のキャビテーション発生が指摘されている。さらに、職業病の一つである振動性疾患(白ろう病等)についても、その発症機序には加振される血液中の生成気泡が関与する説が有力視されるなど、血液中における気泡形成の問題は、医工学上極めて重要な研究課題となっている。本研究では、液中における微細気泡の発生条件を検討するため、円板回転・減圧型気泡発生装置を試作し、気泡発生に及ぼす円板回転速度および減圧度の影響について実験を行った。また、キャビテイの様相の観察、気液二相流計測システムを用いたボイド率の計測を行い、次の結果を得た。1.高回転速度では、低減圧域で気泡が発生する。減圧度の増加と共に、低速度で気泡が生成しうる。例えば、減圧度を50mmHgとした場合、気泡発生時の速度は2.8m/sとなる。2.減圧度が大きくなるに従ってボイド率が増加する。山羊新鮮血(ヘマトクリット25%)中のボイド率は、減圧度80mmHg、速度1m/sで約1%である。3.低減圧度では、発生する気泡サイズは小さく、その成長も緩慢である。しかし、減圧度が300〜500mmHgでは直径1〜2.5mm程度の気泡が形成され、気泡間の合体も促進される。気泡力学に基づく血液中の気泡挙動に関する理論的研究を行うことにより、次の結果を得た。気泡の振動は、衝撃的な圧力の発生を伴い、その圧力の大きさは生体損傷の要因となり得る。また、発生圧力は、ヘマトクリットが大きいほど低下する。
著者
後藤 匡敬
出版者
熊本大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、知的障害教育と日本語教育における言語能力育成を志向したデジタル教材開発とWeb公開を通じ、知的障害教育と日本語教育の教材の共通項を明らかにすることを目的としている。まずは、知的障害教育向け及び日本語教育向けに開発された、言語能力育成を志向した既存教材を調査し、その共通項を探る。並行して、既に「Teach U~特別支援教育のためのプレゼン教材サイト~」(以下、Teach U)で開発・公開中の教材について、知的障害教育と日本語教育の指導者にアンケート調査を実施し、双方の専門分野の教材が自らの専門分野において活用できるか、実現可能性を探究し、得られた知見を基に開発した教材をWeb公開する。
著者
キタイン アルマンド
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

マイクロ波-水熱及び炭素系触媒のアプローチを活用して、200 ℃ のより穏やかな条件で酸化グラフェン (GO) を還元することに成功した。還元された GO は、糖 (例え:グルコース、フルクトースなど) を 5-ヒドロキシメチルフルフラール (5-HMF) などの有用な生成物に変換する際に高い触媒活性を示し、50% 以上の収率が得られた。 rGO に Fe や Cu などの金属イオンをドープすると、触媒活性がさらに向上した。出発物質としてのフルクトースへの影響は、グルコースよりも有意であることが観察された。反応機構を解明し、コンピュータシミュレーションによりパラメータを計算した。
著者
菅澤 貴之 三須 敏幸 桑畑 洋一郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

大学院博士課程修了者の就業状況については、近年、「ポスドク問題(若手研究者問題)」としてマスコミ等で社会問題化されているものの、大学院重点化政策が開始される1990年代までは博士課程在学者数が3万人未満にとどまり、対象者へのアプローチが困難であったことも影響し、未解明な部分が多い。そこで本研究では、インターネットによる調査票調査から収集された調査データを用いた計量分析(定量的手法)とインタビュー調査(定性的手法)を組み合わせた実証分析を行うことで、博士人材のキャリアパスの実態を多角的に捉えることを試みる。
著者
重石 光弘 浪平 隆男
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

福島第一原子力発電所での事故に関連して放射性汚染コンクリートが発生し、将来の原子力発電所の廃炉による大量の放射性コンクリート廃棄物の発生が懸念される。床や壁の様な平らなコンクリートの除染は従来技術で可能だが、汚染した破片の除染の技術を明確でない。本研究では福島原発事故で発生した放射性コンクリートの除染を行うためのパルス放電技術の適用性を評価した。パルスパワー放電法を用いた骨材リサイクル技術を適用したコンクリートの除染は、分離回収された骨材の放射能濃度の減少とスラッジ中の放射能濃度の増加を示した。この事実は、汚染コンクリートの骨材とスラッジへの分離が放射性物質の除染と減容の可能性を示唆している。
著者
南 健太郎 Kentaro Minami
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究
巻号頁・発行日
vol.5, pp.193-211, 2007-02-28

A lot of cultures flowed in from China and a Korean peninsula around northern part Kyushu in the age of Yayoi. The bronze mirror is one in this, Northern part of Kyushu has been mainly brought from first Han to post Han. Yayoi period circulates Chinese mirror, divided mirror and imitative mirror. The purpose of this thesis is to catch a time, spatial transition of the bronze mirror and the realities of the metal mirror circulation are clarified. The going side by side relation between Chinese mirror and imitative mirror clarified. And Chinese mirror and imitative mirror distribution situation were compared, and the feature brought together. Result of analysis the first stage Chinese mirror is shown limited distribution and Korean imitative mirror was distributed to the remote place. The second stage, the bronze mirror is produced in northern part Kyushu. The reason for the factor of the production beginning is that a new thing for people who were managing circulation to distribute it to the surrounding is needed. This is thought for the factor of the production beginning to have existed on not the one that originates in the lack of Chinese mirror and the expansion of the mirror holder layer but the side where circulation was managed to the end.
著者
吉村 豊雄 Toyoo Yoshimura
出版者
熊本大学
雑誌
(ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.29(史学篇), pp.28-49, 1989-03-20

小稿の課題は、端的にいえば、大名の参勤交代を規定した寛永武家諸法度第二条が、実は肥後熊本藩主細川忠利が提示した意見(献策)を相当に組み込む形で審議・制定されたのではないか、この知られざる事実とその政治的意義を明らかにすることにある。
著者
岩崎 泰頴 Yasuhide Iwasaki
出版者
熊本大学
雑誌
熊本地学会誌 (ISSN:03891631)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.2-9, 1976-07-15
著者
石井 正将
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

急性心筋梗塞に対する治療法の発展により、その予後は改善傾向であるものの、最近、閉塞血管のない心筋梗塞であるMINOCA(myocardial infarction with non-obstructive coronary arteries)の存在が認識され始めたが、日本においてはまだMINOCAに関する報告がほぼなく、MINOCAの実態は不明である。本研究ではビッグデータを用いて日本におけるMINOCAの診療実態を疫学的に明らかにするとともに、その診断に寄与する血液バイオマーカーの探索を行う。
著者
熊本大学60年史編纂委員会
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学六十年史
巻号頁・発行日
vol.[3], pp.365-382, 2014-03-03