著者
西守 隆 浦田 達也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.893-898, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
11

〔目的〕健常者において起き上がり動作中の起き上がり速度を変化させた際の体幹および上肢の関節角度を比較した.〔対象と方法〕健常者の至適な速度である「普通」(n=6)と,普通の平均遂行時間より2SD以上の「遅い」(n=5)の起き上がり動作をビデオカメラで撮影し,体幹および上肢関節の角度を算出した.統計には対応のないt検定を用いた.〔結果〕「遅い」起き上がり動作は,「普通」と比較して,体幹運動では体幹回旋角度が有意に大きく(p<0.05),上肢関節運動では支持側の肩関節内旋角度が有意に大きかった(p<0.05).〔結語〕健常者が「遅い」起き上がり動作を遂行する場合は,支持側の肩関節内旋角度を大きくすることで,起き上がり方向への身体全体の回転を大きくしている可能性が示唆された.
著者
山田 洋一 堀本 ゆかり 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.589-595, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

〔目的〕理学療法非熟達者の視線を測定することで,動作探査能力を分析し技能指標の手がかりを模索する.〔対象と方法〕対象は養成校4年生12名.腱板断裂術後の肩挙上を投影し,プロフィール告知前後の停留点の測定と,「疾患名」「注目点」「注目点の変化」「動作分析の注目点」を回答させ視線特性を検討した.〔結果〕疾患名の正答者は1名で,告知前後の停留回数は肩関節・肩甲骨周囲・肘部で有意な差があった.注目点は,全員が肩関節,肩甲骨周囲を注目していると回答し,計測による結果と一致していた. 告知後,視点ポイントが変化したと回答した者は,停留点が絞られ,停留回数は減少していた.〔結語〕非熟練者にとって容易な課題を提示することで,視線は分析に必要なポイントに視点をコントロールでき,情報収集が可能になると考える.
著者
岡本 伸弘 増見 伸 山田 学 有久 恵美子 兒玉 隆之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.103-107, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
18
被引用文献数
13 3

〔目的〕当回復期リハビリテーション病院における自宅復帰に必要な因子を「FIM」を用いて検討した.〔対象〕当院に入院した患者226名とした.〔方法〕対象者の退院先を自宅(自宅群)と施設(施設群)の2群に分け,入院時および退院時FIM各項目得点を比較した.さらに,自宅群および施設群を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.〔結果〕自宅群では,食事を除く運動11項目で退院時に有意な増加が認められた.一方,施設群では,有意差が認められた項目はなかった.退院時FIM得点の比較では,食事を除く運動11項目および問題解決・記憶の認知2項目において自宅群が有意に高値であった.ロジスティック回帰分析の結果では,トイレ移乗・更衣下に有意なオッズ比が認められた.〔結語〕トイレ移乗および更衣下が重要な自宅復帰因子の可能性が示唆された.
著者
木村 悠人 阿南 雅也 高橋 真 林 秀俊 新小田 幸一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.541-546, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
21

〔目的〕LCS患者の着座動作の運動学的特徴を明らかにすることであった.〔対象と方法〕LCS群24人と対照群18人とした.着座動作の動きを,デジタルビデオカメラを用いて撮影し,各体節および下肢関節の角度と角速度,身体重心(COM)を求めた.〔結果〕下方移動相では,LCS群は膝関節屈曲が有意に小さく,体幹傾斜および股関節角速度の加速と減速の切り替え頻度が高かった.後方移動相では,LCS群はCOMの後方移動と骨盤後傾が大きく,膝関節角速度の加速と減速の切り替え頻度が高かった.〔結語〕LCS群の着座動作において,下方移動相では体幹と下肢の協調性が低下しており,後方移動相ではCOMがより後方に変位するために,より大きな膝関節伸展筋力を必要とする戦略をとっていることが示唆された.
著者
後藤 力 東 幸仁 佐々木 正太 中河 啓吾 木村 祐之 野間 玄督 原 佳子 茶山 一彰 河村 光俊 奈良 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-91, 2002 (Released:2002-08-20)
参考文献数
12

本研究では有酸素運動を行うことで一酸化窒素(NO)産生増加を介する血管内皮機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。対象は運動習慣を持たない健常男性8名(平均年齢:27±3歳)とした。血管内皮依存性拡張物質としてアセチルコリン(ACh)を使用し,血管内皮非依存性拡張物質として 硝酸イソソルビド(ISDN)を使用した。また,NO合成酵素阻害薬としてNG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)を使用した。運動方法は最大酸素摂取量の50%とし,1日30分,5回/週の頻度で3ヶ月間行った。前腕血流量の変化はプレチスモグラフにて測定した。ACh投与では運動後に有意な増加を認め,NO合成酵素阻害薬であるL-NMMA投与下では消失した。血管内皮非依存性拡張反応では有意な変化を認めなかった。これらより有酸素運動による血管内皮機能の増強は,NO産生増加を介することが示唆された。
著者
渕上 健 松尾 篤 越本 浩章 河口 紗織 北裏 真己 松井 有史 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.251-256, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
27
被引用文献数
3 2

〔目的〕慢性期脳卒中片麻痺患者の下肢機能に対する運動観察治療の効果を検証すること.〔対象〕慢性期脳卒中片麻痺患者21名とした.〔方法〕参加者を運動観察治療群と対照群に分けた.運動観察治療群は他者が前方またぎおよび側方またぎ動作を施行している映像を各5分間観察した後,同様の身体練習を各5分間実施した.対照群はまたぎ動作の身体練習のみを行った.アウトカムは前方および側方またぎ動作の成功回数,functional reach test,four square step testとし,介入前後および介入1ヵ月後に抽出した.〔結果〕群間比較において,functional reach testに交互作用が認められた.また,運動観察治療群において,前方またぎ動作の成功回数,functional reach test,four square step testが有意に向上し,介入1ヵ月後まで持続した.また,効果量についてすべての項目で運動観察治療群が対照群を上回っていた.〔結語〕慢性期脳卒中片麻痺患者に対する運動観察治療は,身体練習のみに比較して下肢パフォーマンスを有意に改善させる.
著者
伊藤 崇倫 小林 巧 神成 透 堀内 秀人 松井 直人 角瀬 邦晃 野陳 佳織 大川 麻衣子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.749-752, 2019 (Released:2019-12-21)
参考文献数
16

〔目的〕片脚立位動作課題を用いて,人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)後患者の膝関節周囲筋の同時収縮とバランス機能との関連について検討した.〔対象と方法〕TKA後4週が経過した9名と健常高齢者10名とした.片脚立位動作を姿勢移行時と保持時に区分し,各区間における膝関節周囲筋のco-contraction index(CI)を測定した.〔結果〕TKA群と健常群のCIの比較について,有意な差を認めた.CIとバランス機能の関連について,TKA群では移行時のCIとfunctional reach testに有意な負の相関が認められた.〔結語〕TKA患者において,姿勢変化を伴う重心移動には膝の同時収縮が影響する可能性が示唆された.
著者
佐藤 稜 沢谷 洋平 柴 隆広 広瀬 環 佐藤 南 石坂 正大 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.673-677, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

〔目的〕要支援・軽度要介護高齢者における抑うつとサルコペニアの関係を明らかにすること.〔対象と方法〕通所リハビリテーション利用者,要支援1・要支援2・要介護1の65歳以上の高齢者79名,男性45名,女性34名を対象とした.抑うつの程度におけるサルコペニアの有病率と抑うつの程度における筋力,身体機能,骨格筋量の関係を検討した.〔結果〕男性のみ抑うつの程度とサルコペニアの有病率に有意な関連を認めた.また,男性は抑うつが強くなるに伴い骨格筋量の有意な低下が認められた.女性においては有意差が認められなかった.〔結語〕抑うつとサルコペニア間に,性差が存在し男性要支援・軽度要介護高齢者において抑うつとサルコペニアに関連があることが明らかとなった.
著者
長谷川 正哉 島谷 康司 金井 秀作 沖 貞明 清水 ミシェルアイズマン 六車 晶子 大塚 彰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.437-441, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
32
被引用文献数
6 2

〔目的〕浮き趾が歩行中の足底圧に与える影響について調べることを目的とした。〔対象〕健常成人女性104名に対し静止立位時の足趾接地状態の評価を行った結果から,浮き趾群20名および完全接地群15名を実験対象として抽出した。〔方法〕浮き趾群および完全接地群に対し歩行中の足底圧の計測を行い,足趾および前足部の荷重量,足底圧軌跡の軌跡長を抽出し比較検討した。また軌跡の特徴を分類し比較検討した。〔結果〕完全接地群と比較し浮き趾群では,足底圧軌跡長,足趾荷重量が小さく,足底圧軌跡が足趾まで到達しないことが確認された。〔結語〕浮き趾群では足趾による安定した支持基底面の形成ができず,歩行中の重心の前方移動が困難であること,および中足骨頭部に荷重が集中し,足部のアライメント異常につながる可能性があることが示唆された。
著者
佐藤 仁 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.233-237, 2006 (Released:2006-09-22)
参考文献数
22
被引用文献数
3 2

一側(右)上肢PNF屈曲-外転-外旋パターンの開始,中間,終了肢位で,徒手による等尺性抵抗運動を施し,対角線上の左下肢にかかる力について検討した。被検者は右利き健常男性14名(平均20歳)。右上肢同パターンへの抵抗運動で左下肢にかかる力は,上肢開始肢位4.04±2.40 kgf,中間肢位9.01±3.00 kgf,終了肢位6.10±4.09 kgfであった。左下肢にかかる力は,上肢中間肢位への抵抗運動が,開始肢位および終了肢位に比して有意に高値を示した(p<0.05)。左下肢伸展方向の最大筋力に対する割合は,右上肢開始肢位28.8%,中間肢位61.2%,終了肢位43.7%であった。一側上肢への等尺性抵抗運動で,体幹や下肢へ運動が拡がり,力学的な反応で反対側下肢の筋活動が向上すると解釈した。
著者
解良 武士
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-6, 2003 (Released:2003-05-01)
参考文献数
33
被引用文献数
10 1

呼吸筋力の測定には,最大口腔内圧を用いることが一般的である。最大口腔内圧は様々な因子で変化するが,肺気量の変化が最も大きな影響を及ぼす。この呼吸筋力の低下は肺胞低換気による高炭酸ガス血症を伴う低酸素血症の原因となるため,呼吸器疾患を持つ患者には重要である。呼吸筋力はいくつかの原因で低下するが,閉塞性換気障害と拘束性換気障害を例に取り解説する。呼吸筋力低下がもたらす症状を持つ患者にとってその改善は重要であるが,そのトレーニング方法についても紹介する。
著者
大八木 博貴 木下 和昭 眞田 祐太朗 阿部 渉 石田 一成 柴沼 均
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.145-149, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
25

〔目的〕本研究は人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節屈曲可動域(膝屈曲ROM)低下に及ぼす膝蓋骨アライメントの特徴を検討した.〔対象と方法〕対象は変形性膝関節症に対してTKAを施行された28膝とした.測定項目は年齢,Body Mass Index,膝屈曲ROM,膝蓋骨アライメント(外方傾斜角,外方偏位)とした.術後の膝屈曲ROMが術前値未満の群(ROM低下群)と術前値以上の群(ROM改善群)に分け,各測定項目を群間で比較した.〔結果〕ROM低下群はROM改善群に比べて術前後の膝蓋骨外方偏位と術後の膝蓋骨外方傾斜角が有意に高値であった.〔結語〕術後の膝屈曲ROMは,術前後の膝蓋骨外方偏位が大きく,術後に膝蓋骨外方傾斜角が増大するほど低値になる傾向が示唆された.
著者
上條 史子 千代丸 正志 大川 孝浩 上田 泰久 西村 沙紀子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.567-572, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
29

〔目的〕健常高齢者における素早い立ち上がり後のふらつきの要因について検討すること.〔対象と方法〕対象は男性健常高齢者15名とした.三次元動作解析システムを使用し,素早い立ち上がりとその後の立位姿勢を計測した.立ち上がり後の立位不安定の指標には,重心の進行方向位置から実効値を算出し使用した.実効値と立ち上がり動作における下肢運動学的項目と運動力学的項目の相関について検討した.〔結果〕実効値と左股関節伸展モーメント最大値の発生タイミング間には負の相関を,左膝関節モーメントの最大値とは正の相関を示した.〔結語〕立ち上がり後の立位を不安定にさせる要因には,離殿後の股関節の遠心性制御能力が考えられ,それに関連して膝関節の伸展筋力も関与すると示唆された.
著者
矢嶋 昌英 浅川 康吉 山口 晴保
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.95-99, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

〔目的〕高齢者の「楽しさ」を構成する因子を明らかにすることを目的とした。〔対象〕群馬県前橋市敷島及び吉岡町老人福祉センターの利用者165名とした。〔方法〕独自に作成した調査票を用い,性別,年齢,「楽しみ」の有無,「楽しい理由」について個別面接により聴取した。「楽しみ」の有無を尋ね,「有る」と回答された方には,その内容および「楽しい理由」を聴取した。「楽しい理由」はTaxonomy of Human Goals(人間が持つ目標の分類)を参照し,「はい」と「いいえ」の2件法で回答を得た。「楽しい理由」としてあげられた項目について探索的因子分析を行い,「楽しさ」を構成する項目を抽出した。〔結果〕楽しみがある人は159名(96.4%)であった。主な内容はカラオケ,センターに来ること,会話,温泉,手芸であった。「楽しい理由」として抽出されたのは3因子11項目であった。それぞれ,第1因子は探究・理解・知的創造性・熟達・課題創造性であり「認知-課題」,第2因子は個性・自己決定・優越であり「自己主張的社会関係」,第3因子は平穏・幸福・身体的健康であり「情動」と命名した。なお,11項目のCronbach α係数は0.73であった。〔結語〕地域在住高齢者の「楽しさ」は,「認知-課題」,「自己主張的社会関係」,「情動」の3因子構造を示し,抽出された11項目で評価できることが示唆された。
著者
小暮 英輔 原 毅 石井 貴弥 前田 眞治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.867-872, 2015 (Released:2016-01-09)
参考文献数
27

〔目的〕消化器がん患者の術前後の倦怠感の質を検討するために調査した.〔対象と方法〕消化器がん患者33名にCancer Fatigue Scale(CFS)を用い,その小項目を因子分析することで倦怠感の質を検討した.〔結果〕3因子が抽出され,因子負荷量はそれぞれ24.5,17.9,17.3%であった.CFSで本来の要素とされる身体的,精神的,認知的倦怠感とは異なるもので,3因子を身体的耐久性,精神的,初動動作の倦怠感と解釈した.〔結語〕周術期消化器がん患者は身体的耐久性・初動動作の倦怠感が交雑しており,様々な要素が含む特有の倦怠感の質が存在している可能性がある.
著者
久保 晃 啓利 英樹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.115-118, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
6
被引用文献数
18 14

本研究の目的は,高齢入院患者47例,年齢71.6±9.0歳を対象に,簡便に測定可能な前腕長と下腿長をもとに身長の実測が困難な高齢者の身長を推定することである。前腕長は肘頭近位部から尺骨茎状突起遠位部まで,下腿長は腓骨頭近位部から外果遠位部までと定義し,前腕長と下腿長を加えた前腕・下腿合計長を算出した。立位身長と前腕・下腿合計長との相関係数はr=0.87(p<0.01)で,回帰式は(身長)=2.1×(前腕・下腿合計長)+37.0,決定係数は0.76であった。この回帰式を用いることで,ADL能力に依存せずに多くの高齢者を対象に身長の推定が可能となり,BMIなどの体格評価から栄養状態等への応用が可能な点で有意義であると考えられる。
著者
相澤 杏莉 齋 綾乃 長井 幸美 堀井 旺歩 山田 佳奈 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.123-128, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
33

本稿の目的は,身体の柔らかさに着目し,その定義づけ,加齢変化,性差に言及し,スポーツ障害・外傷の発生に柔軟性と関節弛緩性がどう影響するかを示し,この発生の予防として行われているストレッチを中心とした介入の柔軟性向上に対する効果に言及することである.身体の柔らかさは,主に柔軟性と関節弛緩性で表現され,これらは加齢とともに低下し,関節弛緩性は女性の月経周期によって影響される.身体各部の柔軟性の低下は障害・外傷の発生頻度を高め,一方で関節弛緩性が高い場合には障害・外傷を起こしやすい.関節弛緩性を生じない範囲で柔軟性を向上させることは,スポーツに起因する怪我を予防するのに重要であり,いくつかのスポーツ種目について,障害・外傷を予防するための,主にストレッチの有意義性を提示した.
著者
一場 友実 解良 武士 島本 隆司 糸数 昌文 丸山 仁司 大久保 隆男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.195-198, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
11
被引用文献数
5 2

抵抗負荷による呼吸筋トレーニング器具を用い健常成人男性7名を対象に,負荷量を変化させて呼吸筋活動を検討した。最大口腔内圧とその時の筋電活動,最大随意収縮時の筋電活動そして5段階の吸気・呼気抵抗負荷時の口腔内圧とその時の筋電活動を記録した。測定筋は吸気補助筋群(胸鎖乳突筋,僧帽筋),呼気筋群(外腹斜筋,腹直筋)である。筋電活動レベルの評価には,最大随意収縮時の筋電活動に対する百分率を用いた。結果として吸気・呼気口腔内圧と負荷量の間には,直線的な関係が認められた。また筋電活動と負荷量を二要因とする二元配置の分散分析の結果は有意な主効果が認められたが,その筋の活動は各筋群間によって差が認められた。吸気負荷では胸鎖乳突筋の筋電活動が最も高値を示し,全ての筋において筋の活動は負荷量増加に伴い直線的に増加した。呼気負荷では外腹斜筋の筋電活動が低負荷から高値を示したが,その他の筋は負荷量増加によっても著明な活動は呈さなかった。
著者
海津 陽一 大森 裕 中澤 浩幸 飯塚 晃弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.83-87, 2020 (Released:2020-02-28)
参考文献数
11

〔目的〕回復期リハと訪問リハにおける院内連携カンファレンス(連携カンファ)を実践し効果検証することを目的とした.〔対象と方法〕連携カンファは,回復期リハ,訪問リハの連携係1名ずつで行われ,訪問リハ適応の有無を検討した.効果判定は,連携カンファを導入前の1年間と導入後の1年間(post-CON)の連携者数,連携者の介護度内訳,退院日から訪問リハ開始までの日数(DDS)を比較した.〔結果〕連携者数は,8名から32名と増大を認めた.介護度内訳は,連携のなかった要支援者がpost-CONには連携者全体の31.3%と増大を認めた.DDSは,12.5日から6.3日と平均6.2日短縮した.〔結語〕連携カンファは,連携者数増大に効果的で,DDSを短縮できる可能性のある連携システムである.
著者
岩室 樹 鈴木 啓介 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.253-258, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
23

〔目的〕外来心臓リハビリテーション(外来心リハ)に参加している高齢者がレジスタンストレーニング非実施となる特徴を明らかにする.〔対象と方法〕外来心リハ患者24名(平均年齢78.9 ± 7.8歳)に対し,健康関連QOLや自己効力感に関する質問紙を実施した.毎回レジスタンストレーニングを行う実施群(11名)と行わない非実施群(13名)に分け検討した.〔結果〕非実施群は実施群に比べ,SF-36サマリースコアの身体的側面(PCS)が有意に低く,役割/社会的側面(RCS)が有意に高かった.〔結語〕外来心リハ時に身体的,社会的な側面の評価を行い,レジスタンストレーニングを定着させる介入を検討することが必要である.