著者
和田 直樹 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.21-28, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
35

〔目的〕座位から歩行までの動作において胸郭・骨盤角度の特徴を運動学的に分析し,若年者と高齢者の違いを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕若年者14名と高齢者12名を対象に,3軸傾斜計・荷重スイッチシステム・ビデオカメラレコーダーにて座位からの歩行動作を計測した.〔結果〕高齢者は若年者と比較して一歩目離地時(foot off: FO)に胸郭・骨盤前傾角度が小さく,離殿からFOまでの時間が長かった.高齢者のFO時胸郭前傾角度・FOまでの骨盤前傾角度変化量とFunctional Reach Testに正の相関があった.〔結語〕両群ともに胸郭・骨盤前傾位で離殿するが,高齢者は前傾位を保持できずFOに至る.起立から歩行に短時間で移行するには胸郭の前傾に加え,骨盤の前傾が必要であることが新たにわかり,バランス機能の低下により若年者と異なる動作戦略に至ったと考えられる.
著者
太田 恵 大畑 光司 建内 宏重 西村 純 森 公彦 市橋 則明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.753-757, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
20
被引用文献数
5 2

[目的]歩行障害を有する整形外科疾患患者に対し,体重免荷トレッドミル歩行トレーニング(Body Weight Support Treadmill Training:以下BWSTT)を施行し,その即時効果を明らかにすることを目的とした。[対象]歩行障害を有する整形外科疾患患者20名を対象とした。[方法]BWSTTを施行し,その前後の平地歩行における10 m歩行速度,歩幅,歩行中の歩きにくさ・重だるさ・疼痛の程度を比較した。[結果]BWSTT後では,10 m歩行速度の増大および歩幅の拡大がみとめられ,さらに歩行中の歩きにくさ・重だるさ・疼痛の程度はいずれの項目においても有意に低下していた。[結語]本研究により整形外科疾患患者を対象としたBWSTTでは即時効果があることが示唆された。
著者
上岡 裕美子 吉野 貴子 菅谷 公美子 大橋 ゆかり 飯島 節
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.239-247, 2006 (Released:2006-09-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

29組の脳卒中後遺症者(患者)と担当理学療法士(PT)を対象に,それぞれが認識している理学療法目標の相違を,発症からの時期別に検討した。その結果,患者は回復期後期群では運動機能改善を目標と認識していた。維持期群は歩行・運動機能の改善と認識する者と,現状維持と認識する者の両方が認められた。一方,PTは回復期後期の患者に対して社会的役割取得および歩行改善を,維持期の患者に対しては運動機能・活動の維持および社会参加の促進を目標と認識していることが示された。いずれの時期においてもそれぞれ患者とPTが認識している目標には相違が認められ,今後,両者が確実に目標を共有するための目標設定方法について検討することが必要であると考えられた。
著者
中山 智晴 山﨑 裕司 森田 ゆかり 大﨑 康史 古谷 博和
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.9-13, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
9

〔目的〕パーキンソン病(PD)患者に対する段階的難易度設定による起居動作練習が,動作時間に及ぼす即時的効果について検討した.〔対象と方法〕PD患者13名を対象として,段階的難易度設定の技法を用いた起き上がり動作練習と寝返り動作練習を,計10~15分間実施した.〔結果〕介入前の起居動作時間の中央値は7.5秒,介入後の起居動作時間の中央値は4.4秒であり,動作時間は有意に短縮した.動作時間の改善度は,起居動作に時間を要していた重症度の高い症例ほど大きかった(rs:0.95).〔結語〕段階的難易度設定による起居動作練習は,PD患者の起居動作時間を短縮させる即時的効果を持つ,有効な動作練習と考えられた.
著者
田村 俊太郎 小林 真 斉藤 康行 朝倉 智之 臼田 滋
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.621-627, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
29

〔目的〕転倒・転落アセスメントシートを妥当性と簡便さを備えた評価へと改訂すること.〔対象と方法〕1309人の入院患者を対象とした.転落アセスメントシートと転倒の有無からリスク因子の抽出と重みづけを行い,改訂転倒・転落スコアを算出し,その予測精度求めた.改訂スコアに対しては潜在ランクによる危険度の分類を行った.〔結果〕転倒の因子は39項目から7項目となった.予測精度は従来のスコアが感度88.5%,特異度43.0%,Area under the curve(AUC)0.700であり改訂スコアが感度65.6%,特異度71.0%,AUC 0.718であり潜在ランクごとの転倒数には有意差が認められた.〔結語〕改訂スコアによる転倒予測と,潜在ランク理論による危険度の分類は妥当である.
著者
佐々木 拓良 石坂 正大 金子 純一朗 梅田 啓
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.855-859, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

〔目的〕本研究は,運動療法が下肢末梢の経皮的酸素分圧(PtcO2)に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕循環器疾患を有さない健常成人20名を対象とした.レジスタンス運動(RE条件),有酸素運動(AE条件)の2条件に分けて運動療法を行い,各条件での経皮的酸素分圧の変動をモニタリングした.〔結果〕AE条件はRE条件に比べて運動時のPtcO2が有意に低下し,両条件において下肢のPtcO2とSpO2の変動に有意相関は得られなかった.〔結論〕単関節運動を伴うレジスタンス運動は,多関節運動を伴う有酸素運動と比較して,PtcO2の大きな低下をきたすことなく実施可能であった.
著者
杉浦 令人 畠中 泰彦 荒井 友章 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.225-228, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
7
被引用文献数
4 1

〔目的〕膝関節伸展の等張性収縮における力─速度の関係の立証や等尺性最大トルクを推定する上で,人体にとって計測の安全性を担保するための適切な負荷を検討した.〔対象〕20~30代の健常男性6名とした.〔方法〕ハイスピードビデオカメラで撮影した映像を動画編集ソフトウェアにて連続静止画へ変換し,画像計測ソフトウェアの角度ツールを用いて角速度,関節角度を求めた.最小負荷では20%,30%,40%1RM,最大負荷では100%,130%,150%,160%1RMにおける角速度を比較した.〔結果〕最小負荷では3条件に有意差はなく,最大負荷では150%と160%の間以外に有意差があった.〔結語〕最小負荷は40%,最大負荷は150%が適切な負荷であると考えられた.
著者
正保 哲 柿崎 藤泰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.689-692, 2014 (Released:2014-10-30)
参考文献数
11

〔目的〕高強度レジスタンストレーニング前後の循環動態を把握するために,高強度の運動前後の一回拍出量,末梢血管抵抗,圧受容器反射感受性の変化を明らかにすることとした.〔対象〕運動習慣の無い健常男性11名とした.〔方法〕臥位下肢伸展挙上にて最大随意筋力の80%の負荷で10回実施する運動課題を設定し,運動前後の循環動態を分析し,運動前後の一回拍出量,末梢血管抵抗,圧受容器反射感受性を比較検討した.〔結果〕収縮期血圧とLF/HFに運動後の有意な低下を,圧受容体反射感受性に有意な上昇が認められた.全末梢血管抵抗には,運動後1~2分での有意な低下がみられた.〔結語〕今後は,TPRの低下による末梢血管の弛緩作用と循環血液量の増加が認められ,交感神経活動亢進が持続しない運動負荷強度の設定が必要である.
著者
Rodrigues Gusthavo Augusto Alves Felipe Danilo De Souza Silva Elisangela De Freitas Wagner Zeferino Higino Wonder Passoni Da Silva Fabiano Fernandes De Carvalho Wellington Roberto Gomes Aparecido de Souza Renato
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.2849-2851, 2015
被引用文献数
9

[Purpose] This investigation evaluated the acute cardiovascular responses that occur while playing virtual games (aerobic and balance) emulated by Nintendo Wii<sup>®</sup>. [Subjects] Nineteen healthy male volunteers were recruited. [Methods] The ergospirometric variables of maximum oxygen consumption, metabolic equivalents, and heart rate were obtained during the aerobic (Obstacle Course, Hula Hoop, and Free Run) and balance (Soccer Heading, Penguin Slide, and Table Tilt) games of Wii Fit Plus<sup>®</sup> software. To access and analyze the ergospirometric information, a VO2000 analyzer was used. Normalized data (using maximum oxygen consumption and heart rate) were analyzed using repeated measures analysis of variance and Scheffe's test. [Results] Significant differences were found among the balance and aerobic games in all variables analyzed. In addition, the Wii exercises performed were considered to be of light (balance games) and moderate (aerobic games) intensity in accordance with American College Sports Medicine exercise stratification. [Conclusion] Physical activity in a virtual environment emulated by Nintendo Wii<sup>®</sup> can change acute cardiovascular responses, primarily when Wii aerobic games are performed. These results support the use of the Nintendo Wii<sup>®</sup> in physical activity programs.
著者
山崎 貴博 木藤 伸宏 阿南 雅也 新小田 幸一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.951-956, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
34
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,変形性膝関節症者の歩き始めにおける外部膝関節内反モーメントの特徴を主成分分析を用いて明らかにすることである。〔対象〕被験者は変形性膝関節症の女性10名19肢と膝関節痛のない中年女性10名10肢であった。〔方法〕課題動作は歩き始めの動作とし,3次元動作解析装置と床反力計を用いて,立脚肢の外部膝関節内反モーメントを算出した。歩き始めの外部膝関節内反モーメントの時系列変化から,主成分分析を用いて抽出された主成分得点に対して群間の比較を行った。〔結果〕主成分数は第3主成分までとなり,各主成分に対する群間の比較では,第1主成分得点のみ膝OA群と対照群の間で有意差が認められた。〔結語〕本研究において,膝OA群は歩き始め開始時より外部膝関節内反モーメントが継続的に大きいことが明らかとなった。したがって,膝OA患者の外部膝関節内反モーメントの大きさに影響を与える要因の一つとして立位時の下肢アライメントの状態を考慮する必要がある。
著者
大森 隆生 萩野 浩
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.181-186, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
17

〔目的〕理学療法学生の臨床実習前後における自己効力感の変化を調査し,その変化に関連する要因について検討した.〔対象と方法〕対象は理学療法士養成校の4年生の学生142名で,アンケート調査を実習前,1期実習終了後,2期実習終了後に実施した.アンケート項目は,特性的自己効力感尺度,実習に関する質問を中心に調査した.〔結果〕自己効力感は,実習前と比較して2期実習終了後は有意に向上した.自己効力感の不変向上群は,低下群と比べて,2期実習終了後の実習に関する質問において担当数,目標達成,課題達成,症例理解,指導者の肯定的言動,達成感の項目で有意に高かった.〔結語〕自己効力感の変化には,臨床実習を積み重ねることと最後の実習内容が影響してくることが示唆された.
著者
村田 伸 村田 潤 大田尾 浩 松永 秀俊 大山 美智江 豊田 謙二
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.509-515, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
42
被引用文献数
3 1

〔目的〕高齢者を対象にウォーキングによる運動介入を行い,その介入が身体・認知・心理機能に及ぼす効果について,無作為割付け比較試験によって検討した。〔対象〕地域在住高齢者69名(平均年齢72.0±4.4歳)である。〔方法〕ウォーキングによる運動介入の前後に,身体・認知・心理機能を評価し,比較検討した。〔結果〕週3日,1回につき30分のウォーキングを12週間継続できた介入群25名の測定値は,介入後6分間歩行距離が延長し,主観的健康感,生活満足度,生きがい感といった心理面の向上が認められた。一方,その他の指標とした上下肢筋力や立位バランスなどの身体機能,および認知機能には有意差は認められなかった。なお,統制群29名におけるすべての測定値に有意差は認められなかった。〔結語〕ウォーキングによる運動介入は,地域在住高齢者の介護予防や健康増進に有用である可能性が示唆された。ただし,身体機能や認知機能を向上させるためには,本研究における介入の期間や頻度,および運動強度などの検討がさらに必要であることが明らかとなった。
著者
梅井 凡子 小野 武也 十河 正典 沖 貞明 大塚 彰 大田尾 浩 梶原 博毅 武藤 徳男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.191-195, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
17
被引用文献数
4 3

〔目的〕虚血再灌流後の骨格筋の状態を経時的に確認すること.〔対象〕8週齢のWistar系雌性ラット41匹を7群に振り分けた.群わけは正常群と再灌流時間の異なる6群とした.〔方法〕駆血圧300 mmHg,駆血時間90分間で右大腿に駆血を行い異なる時間再灌流を行った.筋萎縮評価にはヒラメ筋相対体重比とヒラメ筋線維横断面短径を用いた.〔結果〕正常と比較し,ヒラメ筋相対体重比は再灌流時間が96時間群で,ヒラメ筋線維横断面短径は再灌流時間が72時間群で,それぞれ有意に減少していた.〔結語〕骨格筋において虚血再灌流後には浮腫が発生するとともに筋萎縮も発生していることが確認できた.
著者
本間 はるな 齋藤 香保里 高橋 俊章
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.107-112, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
25

〔目的〕体幹への揺動刺激が身体柔軟性に及ぼす影響を男女別に検討した.〔対象と方法〕健常成人20名を対象にクロスオーバーデザインを用い,揺動刺激の介入と背臥位姿勢を保持するのみの非介入の実験を行った.揺動刺激前後で体圧,筋硬度,脊椎可動性,皮膚伸張性,長座体前屈,主観的な寝やすさを評価した.〔結果〕揺動刺激により男性では接触面積増加,体圧平均値減少,体幹最大屈曲位での胸椎後弯角減少,脊椎可動域拡大,長座体前屈距離増加,腰部筋硬度が低下した.女性では,接触面積および皮膚伸張性が増加し,体圧平均値が減少した.〔結語〕揺動刺激で男女ともに柔軟性が向上した.揺動刺激は男性では深部の軟部組織である筋や関節に対して,女性は浅部の軟部組織である皮膚に対して主に作用した.
著者
大江 健人 瀧口 述弘 徳田 光紀 庄本 康治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.929-933, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
29

〔目的〕脊椎圧迫骨折後疼痛患者1名への経皮的電気刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)が与える影響の検討.[対象と方法]80代女性,診断名は第2腰椎圧迫骨折であった.プラセボTENSをA期,通常のTENSをB期として1日ずつを交互に,計4日間実施した.TENS実施前後に安静時痛をVisual Analog Scale(VAS)で測定し,Timed up and Go test(TUG)とTUG後疼痛をVASで測定した.〔結果〕A期に比べB期では安静時痛VAS,TUG後疼痛VAS,TUGで大きな改善を示した.〔結語〕脊椎圧迫骨折後の症例においてTENSは疼痛と運動パフォーマンスの即時的改善に効果的な可能性が示唆された.
著者
甲斐 義浩 村田 伸 田中 真一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.365-368, 2007-08-01
参考文献数
24
被引用文献数
5 6

本研究は,健常成人男性15名(平均年齢22.4±5.7歳,平均身長170.2±5.4 cm,平均体重62.3±8.7 kg)の左右30肢を対象に,利き足と非利き足における足把持力と大腿四頭筋筋力およびそれらの最大値到達時間について比較検討した。利き足の判定については,ボールを蹴る足を機能脚,走り幅跳びで踏み切る足を支持脚とした。機能脚と非機能脚,支持脚と非支持脚の比較において,双方ともに足把持力と大腿四頭筋筋力および最大値到達時間に有意差は認められなかった。本研究では,利き足と非利き足の足把持機能ならびに大腿四頭筋機能の優位性を示すに至らなかった。今後,別の変数を用いた検討が必要と考えられる。<br>
著者
熊谷 創 前田 健太郎 荒谷 咲希 布施 伸悟 川村 大介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.837-841, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
18

〔目的〕片側人工膝関節置換術を控えた変形性膝関節症(膝OA)患者における術後の股関節周囲筋へのアプローチ考案の一助になるデータを得ることを目的とした.〔対象と方法〕対象は,年齢,性別をマッチングさせた膝OAなし群18名,膝OAあり群17名であった.方法は,ハンドヘルドダイナモメーターを用いて,股関節伸展,外転,外旋筋力を2回ずつ測定した.〔結果〕股関節伸展および外転筋力において,膝OAあり群で有意な筋力低下を認めた.膝OAあり群の術側と非術側間での比較では,3方向全てにおいて有意差を認めなかった.〔結語〕手術を控えた変形性膝関節症患者は,術前から股関節周囲筋力が低下していることが示唆された.さらには,その筋力低下は両側性に認められた.
著者
深谷 隆史
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.787-791, 2009 (Released:2010-01-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

〔目的〕本研究は,ランジ動作においてステップ幅が異なる時の下肢関節への運動力学的負荷を把握することを目的とした。〔対象〕健常成人男性8名を対象とした。〔方法〕ランジ動作は,最大ステップ幅(Long-Step)と最大ステップ幅の半分(Short-Step)の2種類とした。動作解析装置及び床反力計を用いて下肢関節の運動学的及び運動力学的データを収集し,動作時の股関節,膝関節,足関節の関節力と関節トルクを算出した。〔結果〕Long-stepで上方及び後方への床反力が有意に大きかった。股関節力,膝関節力,足関節力は下方への圧縮力と前方への剪断力がLong-stepで有意に大きな値を示した。関節トルクではLong-stepで股関節屈曲及び足関節底屈トルクが大きく,Short-stepでは膝関節伸展トルクが大きくなることを示した。〔結論〕ランジ動作を運動療法として取り入れる際,下肢関節に対して治療目的に応じてステップの幅を選択しながら行うことが重要であることが示唆された。
著者
曽田 武史 矢倉 千昭 高畑 哲郎 岡 真一郎 田原 弘幸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.515-519, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
23

[目的]本研究では,背臥位から腹臥位,続いて立位に姿勢変化させたときの血圧レベルの変動について調査した。[対象と方法]健常成人54名(男性27名,女性27名,平均年齢22.0±2.7歳)を対象に各姿勢における収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP)および脈拍数(PR)を測定した。[結果]腹臥位は背臥位や立位に比べてSBPが有意に低下し,背臥位に比べてPRが有意に増加した。立位は背臥位や腹臥位に比べて有意にDBPは上昇し,PRも増加した。[結語]本研究の結果から,背臥位から腹臥位への姿勢変化における短時間の血圧レベルの変動は,背臥位から立位への姿勢変化に比べてDBPやPRの変動が少なく,SBPが低下する可能性があることが示された。
著者
神里 巌 城野 靖朋 粕渕 賢志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.385-388, 2018 (Released:2018-07-06)
参考文献数
15

〔目的〕近年,固有感覚の重要性が指摘されている.固有感覚機能には末梢に存在する固有感覚受容器の働きが重要な役割を持つが,固有感覚受容器からの求心性の情報が大脳皮質に伝わることが重要である.本研究では脳の運動錯覚を惹起することのできる振動刺激に着目し,振動刺激が膝関節固有感覚に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.〔対象および方法〕健常26膝の,①安静,②振動刺激,③等尺性筋収縮前後の膝関節位置覚を測定した.関節位置覚は膝関節屈曲90°から角速度0.25°/secで屈曲し,105°での測定誤差角度を測定した.振動刺激部位は大腿四頭筋遠位複合腱部とし,周波数は90 Hzとした.各介入前後および条件間での比較を行った.〔結果〕振動刺激介入後および筋収縮介入後は測定誤差角度が小さくなり(p<0.05),固有感覚の向上がみられた.〔結語〕局所への振動刺激による運動錯覚は膝関節固有感覚を向上させることが示された.