著者
白井 克幸 横尾 聡 中野 隆史 大野 達也 齋藤 淳一 武者 篤 阿部 孝憲 赤羽 佳子 小林 なお 小林 大二郎 近松 一朗
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-29, 2019

重粒子線治療は良好な線量分布を持ち,高い生物学的効果を有している。従来X線抵抗性と考えられている頭頸部非扁平上皮癌(腺様嚢胞癌,腺癌など)や,粘膜悪性黒色種,骨軟部腫瘍に対して,優れた局所制御率が報告されている。本邦の重粒子線治療施設は5施設と世界最多であり,その治療技術や研究開発において指導的役割を果たしている。これまでは重粒子線治療は単施設による報告に限られていたが,2014年より日本炭素イオン線治療臨床研究グループ(J-CROS)が組織され,多施設共同臨床研究を通じて頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療の包括的な有効性や安全性が報告されてきた。これまで重粒子線治療は先進医療として行われてきたが,これらの本邦からのエビデンスをもとに,2018年から頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く)が保険適用となっている。今回の総説では,頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療の概要,これまでの治療成績ならびに今後の展望について概説する。
著者
須永 薫子 坂上 寛一 関 俊明
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.14-28, 2003-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
33

群馬県下の浅間山(1783年)噴火に伴う泥流により埋没した畑遺構土壌の理化学性を検討するため,泥流直下の江戸時代表層土から当時の畑跡と対照地の土壌を採取し,比較検討した結果,下記のことが明らかとなった。1)本報告で用いた久々戸,下原は文献史料や近傍の他の遺跡の研究から埋没の経緯が明らかな遺跡であった。泥流は短時間で大量に堆積し,泥流による江戸時代表層土へのかく乱は少なく,よく保存され,江戸時代表層土に畝の形状を明瞭に確認することができた。畝の有無を基準に畑跡と対照地を容易に区別することができた。2)泥流層の理化学性は,久々戸,下原のいずれでも類似しており,変動係数が小さく,ほぼ均質の性質を示し,一斉に江戸時代表層土を埋没させたことがわかった。3)江戸時代の畑跡土壌は対照土壌に比べ,久々戸,下原ともに固相率,全炭素量,全窒素量,易分解性有機物量は高く,可給態リン酸量は低かった。現代の表層土においても同様の結果が得られた。畑として利用することによって生じる共通した土壌の理化学性と考えられた。4)江戸時代の畑跡土壌の交換性カリウム量は畝の形状の変化に対応し変化した。これは,カリウムを多く含むなんらかの肥料が施用されたことを示唆している。5)江戸時代表層土の化学性は,全分析項目で現代の表層土と比べ,低い傾向を示した。また,江戸時代表層土の全炭素量,全窒素量,リン酸吸収係数およびCECは,母材の影響により変化した。6)易分解性有機物量/可給態リン酸量の比(E.D.O/A.P)は畑跡土壌で対照土壌に比べ1/2以下であった。この比は畑として利用することにより低下すると考えられ,埋没した江戸時代の畑跡にとどまらず過去に畑であったことを化学的に識別する有効な指標として利用することができる。

1 0 0 0 OA 信心と坐禅

著者
油井真砂 著
出版者
分身会
巻号頁・発行日
1935
著者
正木 隆 中岡 茂 大木 雅俊 青木 理佳 朝倉 嘉勇 五十嵐 徹也 星野 大介
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>巨大なクロマツが生育する神奈川県真鶴町の森林、通称「お林」で調査を行い、クロマツの成長と生存を予測するモデルを作成した。約50haのお林に面積400m<sup>2</sup>の円形プロットを約100m間隔で43箇所設置し、2015~2018年にプロット内の全個体の胸高周囲長を測定した。また、クロマツの樹高と枝下高を2017~2018年に測定した。Matsushitaら(2015)のモデルを基本に、クロマツの年直径成長量を応答変数とし、自身の直径と樹冠長率、プロット内の他個体BA、個体差を固定効果として定式化しパラメータを推定した結果、高精度の成長モデルが得られた(r=0.92)。クロマツの枯死確率については、2015~2016年の直径と直径成長量を固定効果に2017年(通常年)と2018年(稀な巨大台風が直撃)の生存・枯死を定式化し、パラメータを推定した。その結果、通常年の枯死率は直径成長量のみに左右されるが、巨大台風直撃年にはさらに直径の影響も加わり、巨大かつ低成長の個体が枯死しやすい傾向が見られた。以上から、直径、樹冠長率、周囲の広葉樹BAを計測することで成長量の推定が可能であり、それにより通常年および巨大台風が来襲した際の枯死リスクも事前に個体ごとに見積もることができる。</p>
著者
村上 正樹 藤江 智也 松村 実生 藤原 泰之 木村 朋紀 安池 修之 山本 千夏 佐藤 雅彦 鍜冶 利幸
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.P-2, 2014

【背景・目的】有機金属化合物はそれを構成する分子構造や金属イオンとは異なる生物活性を持ち得るため,生命科学への活用が期待される。メタロチオネイン(MT)は有害重金属の毒性軽減などに関与するが、誘導機構には不明な点が多い。本研究では,有機アンチモン化合物ライブラリーから見出された化合物(Sb35)によるMT誘導の特性について,ウシ大動脈由来血管内皮細胞(BAE)を用いて調べた。<br>【方法】BAEをSb35で処理し,MTサブタイプおよびMTF-1 mRNAの発現をReal-Time RT PCR法により評価した。金属応答配列MREおよび抗酸化応答配列AREの活性をDual Luciferase Assayにより測定した。<br>【結果・考察】Sb35は,BAEが発現するMTのすべてのサブタイプ(MT-1A,MT-1EおよびMT-2)のmRNA発現を濃度依存的に増加させたが,MREを顕著に活性化しなかった。しかしながら,転写因子MTF-1をノックダウンすると,すべてのMTサブタイプの発現が抑制された。一方,Sb35は転写因子Nrf2を活性化し,AREを強く活性化した。そこでNrf2をノックダウンしたところ,MT-1AおよびMT-1EのmRNA発現が有意に抑制された。MT-2の発現には変化は認められなかった。以上の結果より,Sb35はすべてのMTサブタイプの遺伝子発現を誘導するが,MT-1AおよびMT-1Eの誘導はMTF-1-MRE経路とNrf2-ARE経路の両方に介在されること,これに対しMT-2の誘導はNrf2-ARE経路に依存せず,MTF-1-MRE経路に介在されることが示唆された。Sb35がNrf2の活性化によってサブタイプ選択的にMT遺伝子の発現を誘導することは,この有機アンチモン化合物がMTの誘導機構解析の有用なツールであることを示している。
著者
金子 有子 金子 隆之 高田 壮則
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.P5009, 2004

1.目的 1)河川の氾濫やギャップ形成等の台風撹乱がサワグルミの個体群動態に及ぼす影響,ならびに,2)ニホンジカ(以下シカ)の食害がトチノキの個体群動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,個体群センサスとセンサス結果に基づいた推移行列モデルによるコンピュータシミュレーションを行った。2.方法 京都大学農学部付属芦生演習林(京都府北桑田郡美山町芦生)のモンドリ谷渓畔域に2.8haの調査区を設定し,トチノキとサワグルミについて種子段階から成熟段階までの全生存個体に標識し,1989年から2003年まで断続的に個体群センサス,種子生産,実生の消長調査を行った。 1)サワグルミ個体群への台風撹乱の影響 大型台風(総降水量287mm)が直撃した1990年と台風撹乱の影響がなかった1989年,1991年,1992年,1993年,1996年の調査結果に基づき,サワグルミ集団の個体群成長率が台風と結実豊凶の要因に依存して変化する様子をシミュレーションで示した。台風の影響としては台風撹乱による稚樹生存率に対するマイナスの効果,および,台風直撃の2年後と3年後に観察された実生および稚樹生存率へのプラスの効果を考慮した。 2)トチノキ個体群へのシカ食害の影響 目立ったシカ食害が観察されなかった1997年までとシカ食害が激化した1998年以降の個体群センサスの結果から,シカ食害による動態パラメータ(実生定着数,稚樹の生存率および成長率)の低下の度合いをe-Aとおいて推定した。推定したシカ食害圧の下で個体群の長期変動をシミュレートし,個体群サイズの減少や食害圧がなくなった場合の回復の様子,成熟個体の生存率に依存して変化する長期個体群変動の様子等を示した。3.結果 1)サワグルミ個体群への台風撹乱の影響 サワグルミ集団の長期個体群成長率は台風要因と豊凶要因に依存して変化した。波及効果による台風の2年後と3年後のプラス効果を含めた場合の結果では,台風頻度が低いほど,また豊作頻度が高いほど個体群成長率は高くなった。プラス効果を含めなかった場合の結果と比べると個体群成長率が増加していた。また,実際の観察による豊作の頻度は2年に一度,台風の頻度は5年に一度であったが,この時の個体群成長率は1を越えていた。 2)トチノキ個体群へのシカ食害の影響 トチノキ集団の個体群サイズは2001年に1992年の36.15_%_に減少していた。1992年と2001年の個体群センサスの結果から推定したところ,シカ食害により生存率は樹高0-1mのサイズ階ではその2.13_%_,1-4mのサイズ階ではその95.16_%_に低下していたことが明らかになった。推定された動態パラメータを用いて1997年を初期値とし,50年間の動態をシミュレートした結果,個体群サイズは最初の数年で急速に減少し,9年目には20_%_以下になるが、その後は行列の最大固有値に従って減少速度が緩やかになることが分かった。また,50年後にシカの食害がなくなったとして回復速度を評価したところ,52年後には初期値とほぼ同じ総個体数になった。4.考察 1)サワグルミ個体群への台風撹乱の影響 サワグルミは台風の直撃による地表撹乱(河川の氾濫,斜面崩壊)や風倒木等による物理的撹乱によって大きな被害を受けていたが,台風撹乱の波及効果としてギャップ形成や裸地形成による実生定着のセーフサイトの増加があることにより,個体群成長率が上昇していることが確認された。 2)トチノキ個体群へのシカ食害の影響 トチノキ集団へのシカ食害は樹高4m以下の稚樹にのみ見られ最初の2,3年に著しい個体数の減少をもたらす。しかし,採餌効率によりその後の減少は緩やかになり,また,トチノキは成熟個体に達してからの余命が150年以上に及ぶことから個体群自体は長く存続すると考えられた。また,その状態で食害圧から解放されれば蓄積した成熟個体による実生供給で急速に回復することが示唆された。
著者
Fumihiro KANEKO Sayaka ARATA Yukari TAKEUCHI Yuji MORI
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.1297-1301, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
15
被引用文献数
3 5

Canine aggression is one of the behavioral problems for which veterinary behaviorists are most frequently consulted. Despite this, the classification of canine aggression is controversial, and there are several classification methodologies. While the etiology of canine aggression differs among the types of aggression, the behavioral background underlying aggression is not well understood. Behavior trait-based evaluation of canine aggression would improve the effectiveness and efficiency of managing canine aggression problems. We developed a questionnaire addressing 14 behavioral items and items related to four types of canine aggression (owner-, child-, stranger- and dog-directed aggression) in order to examine the associations between behavioral traits and aggression in Shiba Inu. A total of 400 Shiba Inu owners recruited through dog events (n=134) and veterinary hospitals (n=266) completed the questionnaire. Factor analysis sorted the behavioral items from both the event and clinic samples into four factors: “sociability with humans,” “reactivity to stimuli,” “chase proneness” and “fear of sounds.” While “reactivity to stimuli” correlated significantly positively with all of the four types of aggression (P=0.007 to P
著者
文部省著
出版者
大空社
巻号頁・発行日
1990
著者
新田 英治
雑誌
学習院大学史料館紀要 (ISSN:02890860)
巻号頁・発行日
no.5, pp.55-82, 1989-03-25
著者
李 樹華
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.423-428, 1998-05-25 (Released:2011-07-19)
参考文献数
26

本論は朝鮮盆栽・盆石に関する文献資料を収集した上で, 中国盆景に関する文献史料と比較検討し, 朝鮮盆栽・盆石の確立と発展における中国からの影響を研究してみた。その結論としては, 朝鮮時代 (李朝) における盆栽・盆石の発展概況をほぼ明瞭した一方, 朝鮮の多種植物盆栽の鑑賞, 整枝技術と作り方, 日常管理方法, 更に怪石の鑑賞法, 怪石の扱い方および仮山の鑑賞と技術に中国の及ぼした影響も明らかにした。
著者
吉田 昌弘 笠原 敏史 田辺 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.129, 2003

【はじめに】スポーツ・リハビリテーションの中で受傷部位の回復を評価するにあたって,機能レベルのテスト項目のほかに,10M走や垂直跳び,反復横跳びなどの能力レベル(いわゆるパフォーマンス)のテスト項目も行われる.中でも,垂直跳びの能力はジャンプ競技(バレーボールやバスケットボールなど)の重要な要素である.これまでのジャンプ研究の報告から,垂直跳び動作は下肢および上肢や体幹の運動を使った全身運動であると言われている.下肢傷害の機能回復を垂直跳びの結果より判断する場合,上肢や体幹運動を考慮して実施する必要がある.しかし,上肢の運動が垂直跳びに影響を及ぼすことは知られているが,どのような上肢運動が垂直跳びの成績や力学的な要素に関与しているのか十分に明らかにされていない.本研究はこの点を解明するために調査を行い,若干の知見を得たので報告する.【対象と方法】対象は健常男子名(平均年齢21±1[SD]歳,身長173±5cm,体重58±5kg,BMI19±1).「垂直跳び」は助走なくその場で出来るだけ高く飛び,壁面に設置した垂直跳び計測用ボードにあらかじめチョークの粉をつけた指先をつけるよう指示し測定した.対象は,肩関節屈曲0度(T1),肩関節屈曲90°(T2),肩関節屈曲180度から伸展運動させ(T3),続いて屈曲運動を行わせた.肩関節屈曲30度(T4),肩関節120度(T5)から屈曲運動のみ行わせた.これらと,肩関節180度で固定(T6)して行ったときとを比較した.各課題5回ずつ行わせ,うち最高と最低値を除く3回のデータを用いた.なお,各運動課題はランダムに行った.さらに,同時に,床反力計を使って垂直方向の力も計測した.【結果】垂直跳びの成績はT1=58±6cm, T2=56±7cm,T3=55±8cm,T4=55±7cm,T5=51±7cm,T6=49±7cmであった.フォースプレートからZ方向の大きさは,各被検者ごとの差を取り除くため,ノーマライズを行い,各被検者の体重を引き,体重で除したものを用いた.その結果,T1=14.4±0.3,T2=13.9±0.4,T3=14.3±0.3,T4=13.4±1.2,T5=12.9±0.3,T6=13.1±0.5であった.【考察】本研究では,垂直跳びにおける上肢の振りの関与について,上肢運動に条件を設定して行った.T1からT3は上肢を振り下ろす運動範囲に条件をつけて行い,上肢を固定した場合に比べ,垂直とびの高さは大きく,z方向の力成分も大きかった.このことから,上肢を振り下ろす運動により,床からの反力を得ている可能性がある.T4とT5は上肢を振り上げる運動範囲に条件をつけ,運動範囲が小さい場合,垂直跳びの高さが減少し,z方向の力成分も減少していた.同様に,上肢を振りあげるも高く飛ぶために必要な床からの反力を得ているものと考える.
著者
村山 史秀 亀田 誠 高松 勇 井上 寿茂 土居 悟 豊島 協一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.28-33, 1996
参考文献数
11
被引用文献数
9

吸入療法に熟練した成人5名において, NE-U03(従来の超音波吸入器の欠点の改善が為された新携帯型超音波吸入器), 加圧式吸入器であるPari-Master, 日商式の3機種を使用して, DSCG液吸入後の尿中排出量を比較検討したところ, それぞれでの尿排出量は平均1600μg (NE-U03), 680μg (Pari-Master), 360μg(日商式)で, NE-U03が最も多く, Pari-Masterの約2倍, 日商式の約4倍であった. そこで, フローボリューム曲線検査の可能な小児喘息発作患者18例において, NE-U03とPari-Masterで気管支拡張効果に差があるかどうか比較したところ, NE-U03を使用した群で臨床症状スコアが有意に減少し, 心拍数が増加した. 呼吸機能の改善度はNE-U03の%FVC, %FEV_<1.0>, %PEF, %V^^・_<50>, %V^^・_<25>の増加率は, 平均10.3%, 19.1%, 25.5%, 32.5%, 29.3%で, Pari-Masterの10.6%, 15.9%, 24.1%, 25.4%, 21.3%と比較して, %FVC以外はいずれも改善率は大きかった. 以上の結果は, 吸入薬剤肺内沈着率は吸入器の機種によって大きく変動することを示した. しかも気管支拡張剤を使っての検討で, 沈着率の増加が気管支拡張効果を増大させる事を示唆する結果も得られ, 吸入療法の効果を科学的に評価するとき, 名目投与量(nominal dose)で論ずることは, 意味が少ないと言える. 今後吸入療法の科学的な発展の為に, 各機種について, 吸入効果に影響する特性を明らかにしていく事が必須である.
著者
竹本 正明 浅賀 知也 金 崇豪 宮崎 真奈美 中野 貴明 広海 亮 稲村 宏紀 山本 晃永 伊藤 敏孝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.516-520, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
7

背景:現在日本では高齢者が増加しており,高齢者の救急搬送数そして高齢者施設からの救急搬送数も年々増加している。目的:高齢者施設からの救急搬送例を検証し,その傾向と問題点を検討した。方法:2014年1月から2015年12月までの24カ月間に高齢者施設から当院救急外来に救急車で搬送された患者を対象として後ろ向きの研究を行った。結果:症例は715例。平均年齢は85.3歳であった。中等症以上の症例は67.0%であった。搬送元としては特別養護老人ホーム,介護老人保健施設,介護付き有料老人ホームが多かった。搬送理由としては心肺停止49件,内因性591件,外因性75件であった。内因性疾患の中等症以上の割合は69.5%であり,外因性では中等症以上が26.7%であった。考察:明らかに緊急度が低い症例も散見され,とくに外傷では念のための受診を目的とした救急要請も多いと考えられた。不要な救急要請を減らすためにも各高齢者施設ではかかりつけ医との連携を深め,患者の緊急性の要否を判断ができる状況をつくる必要があると考えた。