著者
石丸 伸裕
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.29-36, 2014-09-30 (Released:2016-11-17)
参考文献数
10
著者
佐々木 静郎
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.177-178, 2014

<p>平成8年に「臭気判定士」が国家資格として新設されて今年で18年(前身の環境省認可資格「臭気判定技士」からは21年)が経過する.また,当該協会誌が臭気判定士の特集(Vol. 29 No. 2 1998.3)を組んでからも16年が経過する.この決して短くはない年月の推移とともに,環境保全に対する社会的要求は多種多様化が進み,その求められる質はますます高くなる傾向にある.はたして,それは「におい・かおり環境」に対しても当てはまるのであろうか.そこで,このような背景をふまえて,産・官・学の多岐に渡る分野において,臭気判定士として活躍されている方々から,臭気判定士の資格を取得した動機,これまでの業務,現在取り組んでいる業務,今後臭気判定士にどのようなことが求められているのかなどについてご執筆いただいた.以降,順次,取り組んでいる対象分野ごとに紹介させていただく.</p><p>まずは,松戸氏(環境省水・大気環境局大気生活環境室)から,臭気対策行政の立場から臭気判定士の位置付けについて概説し,濃度規制と臭気指数規制の両輪での活躍が期待されると述べられている.</p><p>次に,主に臭気環境全般を対象とされている分野からは,井上氏(一般社団法人埼玉県環境検査研究協会)はこれまでの現場調査の経験に基づいて,嗅覚測定法における精度管理と安全管理が重要であることを,大久保氏(新潟県農業総合研究所畜産研究センター)は臭気判定士の資格の取得が畜産経営における臭気問題への対応に大きく役立てることができたことを,槻氏(エヌエス環境株式会社)は臭気判定士の資質として,臭気調査の時期,場所,方法を的確に効率よく選定できることを挙げ,そのためには経験を積み,研鑽を重ねることが重要であることを,清水氏(株式会社環境管理センター)は臭気判定士の基本業務である嗅覚測定法による臭気評価に際して,その精度を担保するためには,パネルの管理が一番重要であるということを,祐川氏(祐川環境カンファレンス株式会社)はその豊富な現地測定の経験から,臭気判定士は臭気指数の値だけではなく,その現地の環境条件を詳細に把握した上で依頼者に説明することが望ましく,その後の管理にも有効であることを,則行氏(中外テクノス株式会社)は臭気判定士は嗅覚測定試験に用いる機材,およびパネルの管理が最も重要な仕事であり,さらに常ににおいへの関心を持ち続けることが重要であることを,諸井氏(公益財団法人におい・かおり環境協会)は臭気判定士は現場でどう感じたかを正確に認識し,情報収集することが大事であり,結果として一般の人に臭気を分かりやすく伝えるようにすることが必要であることを,それぞれ記述されている.</p><p>臭気を測定する分野からは,川村氏(光明理化学工業株式会社)はガス検知管メーカーという業種では臭気判定士の仕事は,悪臭防止法に基づく臭気判定よりもむしろ製品開発・品質管理の面からの必要性が増大していることを,木下氏(株式会社島津製作所)はにおい識別装置の開発にあたり,官能検査データの取得・評価を行う際に,臭気判定士の資格を得るために学習した内容が非常に役に立ったことを,小垂氏(近江オドエアーサービス株式会社)は川村氏らと同様に自社の製品開発の際に,臭気判定士の資格を取得することによって原料選定から販売までの一連の工程を自分で実施することができたことを,瀬戸口氏(フィガロ技研株式会社)はガスセンサの直接的な利用分野を越えて,広く異業種・他業種とのつながりを広げることに臭気判定士の資格が有効であることを,吉栄氏(新コスモス電機株式会社)は臭気判定士の資格がお客さまとの話題のきっかけや営業に有効な役割を果たしていて,いろいろな業種との交流拡大に活用できていることを,それぞれ述べられている.</p><p>プラント設備関連分野からは,石塚氏(東京都下水道サービス株式会社)は下水道の業務経験をふまえて,臭気測定では,目的の把握と目的に沿った調査・分析の重要性を,佐藤氏(水ing株式会社)は過去の脱臭設備設置での苦労体験が資格取得の動機となったことを,中野氏(新明和工業株式会社)はビルピット設備の開発に際して,必要となった臭気判定士の資格取得が幅広い世界の方々との繋がりができたことを,それぞれ語られている.</p><p>製品評価の分野からは,池田氏(株式会社コープトレード・ジャパン)は,組合員からの異臭の申し出に対して的確に対応できなかった経験が臭気判定士の資格取得の動機になったことを,小澤氏(エステー株式会社)は臭気判定士のスキルが消臭製品開発における性能評価(官能評価)に役に立っていることを,北爪氏(小林製薬株式会社)は,香り製品の香料開発の経験から,香気判定という香り評価概念の提案により臭気判定士の新たな方向性を,野口氏(株式会社ハウス食品分析テクノサービス)は,食品に関連するにおいに対しては,健康にも直結することから機器と嗅覚を併用することにより,より分かりやすい言葉でのお客様への説明が重要であることを,それぞれ述べられている.</p><p>建築物・建築空間に関する分野からは,勘坂氏(株式会社大林組)は,室内空間に発生したにおいの原因特定及び除去対策は難しく,また個人の感じ方の差が大きいことを,木村氏(株式会社長谷工コーポレーション)は,住宅内のにおいの測定や消脱臭に多く携わっていることから,協会などのリードによる情報の共有化の必要性を,洞田氏(大成建設株式会社)は,体験した事例をもとに機器測定と嗅覚測定の両方の機能を持つ手法の有用性と,建築計画の段階におけるにおいへの対策が効果的であることを,前田氏(新菱冷熱工業株式会社)は,タバコ臭対策業務に取り組むにあたり臭気判定士の資格取得により社内での評価を得ることができたことを,それぞれ披露されている.</p><p>人への健康や精神衛生といった分野からは,池内氏(池内龍太郎労働衛生コンサルタント事務所)は,感覚の領域である臭気は医学の関与する部分が多いことから,産業医には臭気に一定の知識と経験が求められることを,磯貝氏(有限会社プラジュナ)は,アロマテラピーのセラピストとしての活動に,臭気判定士資格取得時に学んだことや実務経験が大きく生かされていることを,それぞれ強調されている.</p><p>将来性(進路)といった切り口からは,小関氏,可児氏(大同大学)は,大学に学ぶ段階で臭気判定士資格取得をめざした動機や理由,またこれからの目標などについて熱く語られている.</p><p>今回の特集号のまとめという大役を仰せつかった筆者自身は,実は臭気判定士の資格を取得してからわずかまだ2年余りという,はなはだ力量不足・経験不足の新人である.私自身も臭気判定士の一人として,今後の業務に誇りを持って真摯に取り組んでゆくとともに,臭気判定士の存在が社会においてますます重要視されるようになるために精進・努力していきたいと考えている.</p><p>最後に,本特集の企画にあたりお忙しいところ快くご執筆をお引き受けいただいた著者(臭気判定士)の方々に,あらためて心から感謝申し上げます.</p>
著者
岩橋 尊嗣
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.101, 2011

花き類の魅力と言えば,やはり鮮やかさを眼で見,香りを鼻で嗅いで楽しみ,癒され,そして元気付けられることであろうか.私事で恐縮であるが,先日(2月27日)「世界らん展日本大賞2011」の最終日,東京ドームへ足を運んだ.最終日とあってかなりの混雑ぶりであった.ドーム内は人混みのせいもあり汗ばむ感じであったが,蘭は見た目の華やかさとは違い,花の香りはどちらかというと控え目である.展示の中で興味をそそられたのが"フレグランス審査部門"であった.洋蘭,東洋蘭,日本の蘭などさまざまな香りを放つ蘭が一堂に会し,見事に咲き誇っていた.しかし,香りとなると花に顔を近づけて初めてはっきりと認識できる程度であり,あくまでも控え目であった.<BR>香りの強い花の代表の一つとしてユリ(百合)が挙げられる.本特集の一番目は,ユリの中の代表ともいえる「カサブランカ」について,大久保氏((独)農業・食品産業技術総合機構 花き研究所)に"ユリ「カサブランカ」の強い香りの抑制"という題目で執筆していただいた.通常,花き類の場合,バラなどに代表されるようにいかにして香りを強くするかという研究は盛んに行われている.しかし,カサブランカの場合は全く逆で,香りが強すぎるため室内に飾るには抵抗を持つ人も多い.本内容は香りを抑制するための研究成果についての情報で,切り花のつぼみ状態のときにフェニルアラニンアンモニアリアーゼを含有する水に生けると,開花した時に大幅に香りが抑制される事を見出し,現在実用に向けたさらなる研究が進められている.<BR>次は,石坂氏(埼玉県農林総合研究センター園芸研究所)に"種間交雑による芳香シクラメンの開発"という題目で執筆していただいた.シクラメンは,歌謡曲の題目に取りあげられたり,12月にはクリスマスの時期に合わせて花屋の店頭に数多くの鉢植えが並び,日本人にとって非常に馴染みの深い花になっている.しかし,あれだけの数が店先に並べられていても,シクラメンの香りをイメージ出来る人はそう多くはないと思う.園芸品種のシクラメンは,華やかさに優れているが香りは弱く,ウッディー・パウダー調であり好ましいとは言い難い.これに対し,野生種には花としての価値は低いがフローラル系の強い香りを持つ種が存在するらしい.著者の所属する研究所ではこれらの品種の掛け合わせを長年にわたり研究し続け芳香シクラメンの育成に成功した.本文からは新品種を作り出す時の並々ならぬ努力の積み重ねの結果である事がうかがえる.<BR>次は,津田氏(中部電力株式会社),大西氏(日本メナード化粧品株式会社)らに"甘い香りのキク「アロマム」の開発について"という題目での執筆である.キクから抱くイメージはと問われると,殆どの人は仏事(お葬式)と答えるだろう.一方,秋には菊人形や社寺境内などで大輪を咲かせる菊展覧会などのイメージも付きまとう.しかし,キクの香りとなるとしばし考え込む.著者らは「誰も見たこともないキクを作る」という大目標をかかげ,栽培種と野生種を交配するという研究に着手し,平成22年にいままでには存在しないフローラルでフルーテイ感のあるフレッシュな香りを放つキクの新種の開発に成功している.<BR>最終の4編目は,野口氏に((独)農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所野菜育種研究チーム)"野生種から新しい香りを導入したイチゴ種間雑種品種「桃薫」"という題目で執筆していただいた.前3編は花き類に関する情報であったが,ここでは日本人に最も好まれている果物の代表であるいちごの香りについての記述である.「とよのか」,「とちおとめ」などの名前を聞いて多くの人はイチゴを思い浮かべる.ここでは,市場に無い新しい切り口となるいちごを作り出すという目標に向かい種々研究されたことが述べられている.本文中の表−7に記載されているいちごの品種間の香気成分の相違は非常に興味深い.<BR>以上,特集を掲載するにあたり,僅かばかりの紹介文を書かせていただいた.今後も花き類,果物類の分野では飽くなき香り・味への挑戦が繰り広げられるであろう.本誌でも新しい情報が得られれば遂次紹介していきたい.最後になったが,本特集を掲載するにあたって,執筆依頼をさせていただいた先生方に深く感謝申し上げる次第である.
著者
Ahnaf Mozib Samin M. Humayon Kobir Shafkat Kibria M. Shahidur Rahman
出版者
ACOUSTICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Acoustical Science and Technology (ISSN:13463969)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.252-260, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
25
被引用文献数
3

Research in corpus-driven Automatic Speech Recognition (ASR) is advancing rapidly towards building a robust Large Vocabulary Continuous Speech Recognition (LVCSR) system. Under-resourced languages like Bangla require benchmarking large corpora for more research on LVCSR to tackle their limitations and avoid the biased results. In this paper, a publicly published large-scale Bangladeshi Bangla speech corpus is used to implement deep Convolutional Neural Network (CNN) based model and Recurrent Neural Network (RNN) based model with Connectionist Temporal Classification (CTC) loss function for Bangla LVCSR. In experimental evaluations, we find that CNN-based architecture yields superior results over the RNN-based approach. This study also emphasizes assessing the quality of an open-source large-scale Bangladeshi Bangla speech corpus and investigating the effect of the various high-order N-gram Language Models (LM) on a morphologically rich language Bangla. We achieve 36.12% word error rate (WER) using CNN-based acoustic model and 13.93% WER using beam search decoding with 5-gram LM. The findings demonstrate by far the state-of-the-art performance of any Bangla LVCSR system on a specific benchmarked large corpus.
著者
一ノ瀬 孝恵 日浦 美智代
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
研究紀要 /広島大学附属中・高等学校 (ISSN:13444441)
巻号頁・発行日
no.50, pp.37-44, 2004-03-01

中学校選択教科「家庭」では, 昨年度から「植物に親しむ」ことをテーマに「梅シロップ作り」「ハーブの栽培」「染色」「そば作り」「みそ作り」の授業を展開し, それらの中から「そば作り」に関する教材開発を図った。ゲストティーチャーの大久保氏から教わった30分でできるそば打ちの授業で, 生徒はそばについて興味を持ち, 家庭で積極的にそば打ちを行うようになった。今年度は, 生徒に家庭で気軽に実践できるそば打ちを体験させながら, そばアレルギーの生徒に対応すべく新たなメニューの開発を試みたので報告する。
著者
大谷 紀子 岡部 大介 白井 大輔 高田 志麻 沼尾 正行
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.21-22, 2017-03-16

アーティストの潜在的な創造性を刺激し,創作の幅を広げることを目的として,プロのアーティストの作曲活動における自動作曲システムの活用方法を提案する.本研究で使用する自動作曲システムは,個人の感性に即した楽曲の生成を目的として開発されたもので,特定の感性に響く既存楽曲から共通する特徴を抽出し,進化計算アルゴリズムにより抽出した特徴を反映した楽曲を生成する.入力する既存楽曲や,生成楽曲の構成要素の一部をアーティストが指定することで,自身の創作意図を生成楽曲に盛り込む.活用事例として,フォークデュオ「ワライナキ」が共同募金応援ソングを作成した過程を示すとともに,作成された楽曲の印象に関するアンケート調査結果を報告する.
著者
高原 健爾 前川 孝司
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2019年度は,反応モデルの構築で大きな進展が得られた。粒子1つのミクロ的な反応のシミュレーションのモデル基盤が構築できた。具体的には,アコースティック・エミッション(以降AE)法により,亀裂が生じた際に発生する弾性波であるAEを水素発生時に測定することができた。その結果に基づいて,水素発生のファクターと考えられるき裂進展のシミュレーションモデルを構築した。実験では,あまり実績が得られなかった。これまでに設計した水素発生制御のファジィルールをさらに検討し,100[W]の燃料電池では,より精度良く水素発生を制御できるようになったものの,実験者の操作ミスにより発生装置の接続部等に変形・亀裂が生じ,一時的に充分な実験を行えない状況になった。一方,1[kW]燃料電池では,水素漏れが発生し,修理に時間がかかった。修理後に実験を行った。その結果,一部に改善が見られたものの,水素発生容器内の圧力が高いにも関わらず,燃料電池の出力が800[W]程度でダウンしてしまうという状況が続いている。大きな出力が得られないので,システムの検証実験が十分に行えないでいる。原因の一つとして,水素発生を増加させるために,送水量を増やすことでタンク内の温度低下が起こり,一時的に水素発生が抑制されることが確認できており,送水温度を上昇させるための方策を検討した。また,自動制御だけでなく,手動で水素発生の調節を行えるようにしており,余計な電力を使うことなく水素発生できるように改造した。
著者
金 泰亨 金子 弘昌 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.2C1a, 2012

蒸留プロセスで重要な問題である共沸現象について設計段階から考慮する必要がある。分子間力による混合物の非理想性は共沸の主要な原因とされており、電荷情報から得られる分子間力に関する変数は共沸予測の重要な情報になると考えられる。今回は量子化学計算による分子の電荷情報を統計モデル構築の際の説明変数として用いることで共沸予測モデルの開発を行った。提案手法により未知の混合物の共沸を精度良く予測できると期待される。
出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2076, pp.44-48, 2021-02-01

五十嵐さんだけではない。日本では現在、「リモハラ」が社会問題になりつつある。「リモートハラスメント」の略だ。コロナ禍でリモートワークが急速に広がったことで、新たに市民権を得つつあるハラスメントである。
著者
相良 直彦 上田 俊穂 西田 富士夫 正井 俊郎
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.31-38, 2008 (Released:2008-07-16)
参考文献数
31
被引用文献数
2

担子菌ナガエノスギタケはモグラ類の巣の近傍の排泄所から特異的に生えるので,これを手がかりとしてモグラ類の巣を探知できる.この方法によって滋賀県高島市朽木において調査した巣のうち3例はミズラモグラのものであった.これらの例は,標高770 m,440 m,および260 mにあった.巣の同定は,坑道の径と巣および排泄所に残存する体毛の形態とによっておこなった.さらに,標高260 mの例では,巣を使用中のミズラモグラを捕獲して巣の同定を補完するとともに本種生息の直接証拠とした.滋賀県北西部における本種の存在と,このような低標高地点における本種の営巣・生息が報告されるのは初めてである.
著者
冨永 隆生 小川 暁郎 清水 厚志 渡邉 和孝 渡邉 和晃
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.15-20, 2021

<p><b>背景・目的</b> 高血圧症は脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を引き起こすケースが多く日常より予防的に摂取可能な機能性食品などの開発が推奨されている。高血圧症にはアンジオテンシンⅡの合成酵素であるアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)を抑制する治療が行われている。本研究では降圧作用を示す大豆、及び米ぬか発酵物(OE-1)よりACE阻害活性を有するペプチド含有画分を分離、精製し、さらにペプチド配列の解析を行った。</p><p><b>方法</b> OE-1より疎水性クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィーを用いACE阻害活性を有するペプチドの分離を行った。単離した各ペプチドからペプチドシークエンサーによりアミノ酸配列を解析した。</p><p><b>結果</b> ACE阻害活性を示す5種類のジペプチド、並びに5種類のトリペプチドが得られた。各ペプチドのアミノ酸配列は、ジペプチドがAY(Ala-Tyr)、GY(Gly-Tyr)、SY(Ser-Tyr)、NY(Asn-Tyr)、及びDY(Asp-Tyr)、一方、トリペプチドがYGS(Tyr-Gly-Ser)、YQG(Tyr-Gln-Gly)、SYN(Ser-Tyr-Asn)、YDQ(Tyr-Asp-Gln)及びYNP(Tyr-Asn-Pro)であった。ジペプチド類のAY、GY、SY、NY、およびDYのACE阻害活性(IC50値)はそれぞれ、30.5mM、184mM、96.7mM、32.6mM、及び18.3mMであり、トリペプチド類のYGS、YQG、SYN、YDQ、及びYNPはそれぞれ1070.1mM、746.7mM、1778mM、1736.2mM、及び484mMであった。</p><p><b>考察</b> OE-1の降圧作用には数種類のACE阻害ペプチドが関与していることが推測された。これらのペプチドは総合的にはたらいて降圧作用を発現していると考えられた。</p>
著者
大野 正博 松本 智保
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:21894825)
巻号頁・発行日
no.13, pp.23-28, 2020-03-31

大豆加工品の中でも豆麹は蒸煮大豆に麹菌を繁殖させ製造したものであり、味噌や醤油の原料として使用されている。大豆加工品には血圧抑制活性の指標とされるアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)阻害活性や抗酸化作用の指標とされる DPPH ラジカル消去活性があると報告されている。そこで本報では、タンパク質含有率が中程度の品種であるタチナガハおよびタンパク質含有率が高い品種であるサチユタカの2 種類の大豆を用いて豆麹を作製し、大豆の品種差異が豆麹のACE 阻害活性、およびDPPH ラジカル消去活性に与える影響について比較検討した。その結果、予想に反してサチユタカ由来の豆麹よりタチナガハから作製した豆麹のACE 阻害活性が高かった。また、タチナガハから作製した豆麹の DPPH ラジカル消去活性よりもサチユタカ豆麹の活性のほうがより高かった。Among processed soybeans, soybean koji is produced by breeding koji mold on steamed soybeans and used as raw materials for miso and soy sauce. It has been reported that processed soybeans have angiotensin Ⅰ conversion enzyme (ACE) inhibitory activity, an indicator of blood pressure suppressing activity, and DPPH radical scavenging activity, an indicator of antioxidant activity. Therefore, in this report, we produced soybean koji using two kinds of soybeans, Tachinagaha, a cultivar with a medium protein content, and Sachiyutaka, a cultivar with a high protein content. And we compared the effects of soybean varieties on ACE inhibitory activity and DPPH radical scavenging activity of soybean koji were compared. As a result, unexpectedly, the ACE inhibitory activity of soybean koji prepared from Tachinagaha was higher than that of soybean from Sachiyutaka. In addition, the activity of scavenging DPPH radicals of soybean koji made from Sachiyutaka was higher than that of soybean koji from Tachinagaha.
著者
宇野 英満 桝本 茜 黒木 健司 富永 和孝 小野 昇
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.327, 2002

Porphyrin oligomers have received great attention in various fields, because they are promising candidates for organic conductive materials, near IR dyes, molecular wires and so on. Many synthetic approaches to covalently linked porphyrins are reported for such purposes. We have succeeded in the new preparation of a bisporphyrin linked with a bicyclo[2.2.2]octadiene skelton. Our strategy provides an easy access not only to the gable porphyrin bearing spatially fixed porphyrin chromophores but also to a fused porphyrin dimer having a highly p-extended chromophore by simple pyrolysis. In this session, we will present the preparation and the property of gable diporphyrins, chromophores of which are connected with bis(ethano)anthracene and ethanonaphthalene moieties, and their conversion to acene-fused diporphyrins.
著者
佐々木 顕 東樹 宏和 井磧 直行
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.174-182, 2007-07-31 (Released:2016-09-15)
参考文献数
41

日本のヤブツバキCamellia japonicaの種特異的な種子食害者であるツバキシギゾウムシCurculio camelliaeの雌成虫は、頭部の先に伸びた極端に長い口吻を用いてツバキの果実を穿孔し、果実内部の種子に産卵を行う。このゾウムシ雌成虫の攻撃に対し、ツバキ側も極端に厚い果皮という防衛機構を発達させている。日本の高緯度地方ではヤブツバキの果皮は比較的薄く、ツバキシギゾウムシの口吻も比較的短いが、低緯度地方では果皮厚と口吻長の両者が増大するという地理的なクラインが見られ、気候条件に応じて両者の軍拡共進化が異なる平衡状態に達したと考えられる。日本15集団の調査により口吻長と果皮厚には直線関係が見られ、また、両形質が増大した集団ほどゾウムシの穿孔確率が低いツバキ優位の状態にあることが東樹と曽田の研究により知られている。ここではツバキとゾウムシの個体群動態に、口吻長と果皮厚という量的形質の共進化動態を結合したモデルにより、共進化的に安定な平衡状態における口吻長と果皮厚との関係、穿孔成功確率、それらのツバキ生産力パラメータや果皮厚と口吻長にかかるコストのパラメータとの関係を探った。理論の解析により、(1)ツバキ果皮厚と、ゾウムシの進化的な安定な口吻長との間には、口吻長にかかるコストが線形であるときには直線関係があること、(2)コストが非線形であるときにも両者には近似的な直線関係があること、(3)南方の集団ほどツバキの生産力が高いとすると、緯度が低下するほど果皮厚と口吻長がより増大した状態で進化的な安定平衡に達すること、(4)ゾウムシの口吻長にかかるコストが非線形である場合、ゾウムシの平均口吻長が長い集団ほどゾウムシによる穿孔成功率が低くなることを見いだした。これは東樹と曽田が日本のヤブツバキとツバキシギゾウムシとの間に見いだした逆説的関係であり、ツバキシギゾウムシ口吻長には非線形コストがかかると示唆された。平均穿孔失敗率と口吻長との間に期待されるベキ乗則の指数から、ゾウムシの死亡率はその口吻長の2.6乗に比例して増加すると推定された。