著者
原 たみ子 武井 一夫
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
Japanese orthoptic journal (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.167-171, 2000-11-30
参考文献数
11

第一・第二鰓弓症候群による耳介形成不全を合併した屈折異常弱視、内斜視の4歳女児に対し、弱視治療を目的とした幼児眼鏡支持法を考案した。眼鏡テンプルを市販のシリコン製ヘアバンド(カチューシャ)とマジックテープ付きのストッパーにて固定し、眼鏡装用時の安定性を確保した。その眼鏡のデザインは患児に好まれ、装用後10ヶ月で、視力、中心固視および内斜視は著明な改善を示した。<br>新たに製作された眼鏡の外観は良好で、安価な作製費用で済み、既製の眼鏡装用困難な耳介の形成異常や位置異常、不随意運動を伴う症例にも有用な方法と考えられた。
著者
植村 要
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.48-57, 2015-07-31 (Released:2017-02-23)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本稿は、当事者性を認識している調査者が実施するインタビュー調査に注目し、生成される語りについて、方法論上の特徴と意義を明確にすることを目的とする。考察は、当事者に関わる先行研究について、当事者性と研究テーマとの関わり、当事者性を表明するか否か、および、構築される位置性を枠組として行う。結論として、実施したインタビュー調査に当事者性が関わっているとするのであれば、調査者と被調査者の両者が、研究テーマに当事者性を認識しているかの確認手続きが不可欠であることを指摘する。そして、この確認から構築される関係において生成される語りは、質的差異をもつこと、および、この質的差異を意義とするときに、採用する方法が当事者インタビューであることを示す。
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.65-73, 2011

前号Vol.53 No.6に引き続き,インドの都市と農村での乳製品の種類とその製造法,そして,乳製品の利用のされ方について紹介する。本稿では,乳のみの乳製品に様々な添加物を付加して加工した「乳菓」を概説する。そして,インドの乳加工体系の特徴を分析し,複雑なインドの乳加工体系の本質に迫ってみたい。
著者
及川 康 片田 敏孝
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.66-73, 2015

<p>2013年5月に中央防災会議の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループは、「南海トラフ巨大地震対策について」と題する最終報告において「地震予知は一般的に困難である」とする立場を表明した。本稿では、このような「予知は困難」とする政府見解が住民にどのように受け止められる可能性があるのかについて、アンケート調査に基づき検証を行った。</p><p>曖昧さを嫌って物事を二律背反的なものとして思考しやすい住民の心理傾向を前提とするならば、多くの住民は"予知の三要素(時期・規模・場所)"を具体化に明確化してくれる情報を望む傾向にあるものと考えられ、そのような要望に直接的に応えてくれる可能性を秘めた従来の地震予知という制度は、原則的には大きな期待とともに受容される可能性が高いと言える。しかしながら、このたびの「予知は困難」とする見解は、そのような住民の感情とは基本的には逆行するものであると言え、ともすると否定的な反応を示す住民が少なくないことも想定され得る。</p><p>インターネット調査という制約下であることから解釈には注意を要するものの、本稿で検証に用いた回答者集団においては、否定的な反応を示す回答者が大勢を占める状況ではなく、肯定的反応と否定的反応の回答者が混在する状況となっていた。また、曖昧さを嫌って物事を二律背反的に捉える心理傾向が強い回答者ほど、「予知は困難」とする見解に対する否定的反応が現れやすいという傾向が示された。</p>
著者
林 美帆
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究 (ISSN:24335894)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-19, 2017

日本近代女性史の中で大きく取り上げられる、与謝野晶子と平塚らいてうが中心となって行われた大正期の母性保護論争は、女性が母となることで国家から金銭的援助を得ることの可否を問うものであった。羽仁もと子はこの論争に直接的には関わらず、どちらかの主張を指示する言説は発表していない。しかしながら、羽仁は家計簿をはじめとした家庭論や職業論など、独自の視点を『婦人之友』誌上で展開し、多くの女性の支持を集めていた。本稿では、与謝野と平塚の母性保護論争における主張を整理し、羽仁の家庭論および職業論と対比することで、同時代の女性がおかれている状況を明らかにする。その上、二人と羽仁との共通点および差異を考察し、羽仁が示した解決策の一つが「女性の組織化」であったことを論じる。
著者
中澤 弘貴 馬場 俊晃 辻本 恭久
出版者
一般社団法人 日本歯内療法学会
雑誌
日本歯内療法学会雑誌 (ISSN:13478672)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.31-35, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
28

Abstract : This study aimed to identify the root and root canal morphology of maxillary first (P1) and second (P2) premolars in Japanese patients using computed tomography (CT). The subjects were 200 Japanese individuals (100 males, 100 females) who had undergone CT for investigation of oral pathologies in the Department of Radiology at our hospital. For all subjects, one root was present in about 80% of P1 and >90% of P2. Using Turner's classification, one root and one apex were observed in about 50% of P1 and >90% of P2 in both sexes. P2 never showed a complex root in females, but two complex roots were observed in males. P1 predominantly (about 83%) showed two root canals, however, P2 predominantly (about 70%) showed one root canal. In addition, two root canals were more frequent in P1 than in P2 in both sexes (p<0.01). Using Vertucci's classification of the anatomy of one root in P1 and P2, two root canals in P1 were mostly Type Ⅳ (two root canals did not join in the morphology of two root canals and two apical foramina) or Type Ⅱ (two root canals joined in the morphology of one root canal and one apical foramen).
著者
赤堀 三郎
出版者
東京女子大学現代教養学部国際社会学科社会学専攻紀要編集委員会
雑誌
東京女子大学社会学年報 (ISSN:21876401)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-12, 2016-03-02

日本ではここ10 年ほど,自己責任という言葉の濫用に代表されるように,他者への無関心および全体への滅私奉公を当然視するかのような言説の独り歩きが広く見られる.本論文はこの風潮を道徳的観点から非難したり,日本文化の特殊性と結びつけて論じたりするものではない.「社会システムの観察」という論点を手がかりとして,このケースのような現象一般を扱うための普遍的な枠組を探究することを目的とするものである.\rソシオサイバネティクスでは,コミュニケーションにかかわるこの手の現象を,個々の人格や個々の言説そのものではなく,社会システム(コミュニケーション・システム)という「観察者」の水準において考える.「社会システムの観察」は,ソシオサイバネティクスの主要論点のひとつとされている.ソシオサイバネティクスの観点からは,自己責任などのクリーシェの蔓延というケースに関して,次のように分析できる.第一に,クリーシェが繰り返し用いられることで,ポジティブ・フィードバックに基づく社会システムの逸脱増幅プロセスが生じる.このようなメカニズムが世論の極端化(polarization)の根本にある.第二に,世論の極端化を21世紀突入後のメディアの変化,とりわけソーシャル・メディアの台頭との関連で考えることができる.第三に,世論の極端化の方向を変えようと望むならば,対抗的言説によって火消しを試みる前に,「社会システムの観察」においていかなるフィードバック・ループが作用しているか,あるいは,どのようにそのループを断ち切れるか,といった点にまず着目するべきである.以上のような社会学的視座に立つことで,「社会システムの観察」の状況―たとえば不安定で,ちょっとしたきっかけで二極化したり,極端から極端へと振れたりするような状況―を描き出し,何らかの対策を立てることが可能になる.
著者
河野 由美
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

低出生体重児では注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症 (ASD)などの発達障害に類似した特異的な行動発達を高率に認めるといわれる。その原因はいまだ不明だが、子宮内、新生児期の高度なストレスによるエピジェネティクスの関与も疑われる。ストレス反応には、ヒトGR 遺伝子(NR3C1)のほかに、コルチゾール不活化酵素である11β- hydroxysteroid dehydrogenase 2遺伝子(11βHSD2) 、セロトニントランスポーター遺伝子(SLC6A4)などが関与していることが知られている。本研究では、この3つのストレス反応関連遺伝子のメチル化解析を行うことを目的とした。2019年度では前年度に引き続き、1) 研究機関で運用している「NICU入院児の検体保存バンク」の試料を用いて前出遺伝子のメチル化解析を行うこと、2)妊娠経過、在胎期間、出生体重の周産期情報、NICU入院期間中にみられる合併症、治療についての臨床情報を用いることについて、対象の選択と同意取得を行った。新たに「NICU入院児の検体保存バンク」での試料保存している12名から同意を得た。昨年度分とあわせて18名25検体からDNAを抽出した。先行文献からセロトニントランスポーター遺伝子(SLC6A4)の解析領域候補として5'UTR領域の20CpGのメチル化率を測定することとした。先行研究で解析したヒトGR 遺伝子(NR3C1) プロモーター領域の15CpG サイトとあわせて、現在第1回目のメチル化解析をバイサルファイトシークエンスにより行っている。また対象となる18名の周産期・新生児情報を後方視的に診療録から取得し、昨年度作成したデータベースに情報を追加した。
著者
大山 隆
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会 年会・秋季大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>世界的にESG経営が重要視される中、FCC残渣油を原料にしてニードルコークスを生産し、高品質な電気製鋼用黒鉛電極の骨材を生産するとともに、電気自動車用のリチウムイオン電池の炭素材を生産している。本発表では、このスキームと装置の信頼性向上の考え方を紹介する。</p>
著者
府和 正一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p><b>はじめに</b></p><p></p><p>・研究目的 神社の野外寄進物には鳥居、狛犬、灯篭、社号標、旗竿などがある。これらには寄進者の名称、居住地、寄進年代などが刻まれている場合が多く、文化遺産である。災害で倒壊、破損した事例が多い。神社の野外寄進物の調査と記録が重要である。</p><p></p><p>本稿では口能登の県社であった羽咋神社と能登一宮であり旧国幣大社の気多神社、中能登町の石動山登山口の二宮にある延喜式内社とされる旧郷社天日陰比咩神社、石動山(564m)史跡にある延喜式内社で旧郷社伊須流岐比古神社を対象とする。奥能登では珠洲市の延喜式内社で旧県社の須須神社、輪島市の延喜式内社とされる旧県社重蔵神社を対象とした。以上、能登地方主要6神社について、野外寄進物の特色を明らかにすることを目的とする。</p><p></p><p>・研究方法 市町村史、神社史等による文献調査と現地調査による。現地調査は野外寄進物を社号標、鳥居、灯篭、狛犬、歌碑・句碑、その他に分け、寄進者の個人名・団体名、居住地、寄進年代等を記録する。2019年7月現在の調査結果を考察対象とする。</p><p></p><p></p><p></p><p><b>野外寄進物の性格</b></p><p></p><p>1 対象野外寄進物の神社別の総数が加賀地方に比べて能登地方は少ない。最多は重蔵神社の56個、次いで須須神社の34個である。最少は伊須流岐比古神社の5個である。加賀地方では白山比咩神社の76個、大野湊神社の76個、菅生石部神社45個である。</p><p></p><p>2 種別では能登地方主要6神社合計、灯篭が44.9%で最多である。次いで狛犬19.4%、鳥居14.6%、社号標8.5%の順である。 3 材質では、石造が81.6%を占める。金属造が11.5%あり、鉄は灯篭の竿部分に使われ、アルミは旗竿に使われ、青銅は神馬像に使われている。木造7.3%は鳥居である。石質は花崗岩が46.1%と多い。凝灰岩は10.3%である。</p><p></p><p>4 分布については、神社境内入り口には鳥居、灯篭、社号標がある。参道の両側には灯篭が配置される。拝殿前には狛犬、灯篭等がある。 </p><p></p><p>気多神社のみ神門がある。伊須流岐比古神社には狛犬が無い。 </p><p></p><p>5 寄進者居住地域別では能登地方主要6神社で、石川県内が62.4%と多く、特に各神社が立地する市町村の割合が高い。気多神社への寄進者は地元羽咋市から中能登町、七尾市まであり、他の神社に比べて範囲が広い。これは気多神社の平国祭、鵜祭りの巡行範囲と一致している点で注目される。</p><p></p><p>県外からの寄進では、移住者が多い東京都、大阪府、愛知県からが多い。須須神社では北海道、樺太への農漁業移住者による寄進が多くある。重蔵神社では愛媛県の輪島塗商が寄進した狛犬がある。伊須流岐比古神社には佐渡から灯篭が寄進されている。 </p><p></p><p>能登地方主要6神社計では、個人による寄進が58.2%と多い。団体寄進は27.3%、不明14.5%である。多人数での寄進は地元住民によるものが多いが、天日陰比咩神社では東京都在住の中能登町二宮出身者一同による事例がある。</p><p></p><p>重蔵神社では、如月祭で神社祭礼を担当する同一年齢階層による団体寄進がある。氏子達が伝統祭礼主体となることで、人的交流が深まり、団体寄進が生じやすい風土が継続されている。</p><p></p><p>6 寄進時代別では、江戸期の野外寄進物は少ない。重蔵神社に7個、須須神社に2個、羽咋神社に2個存在する。これは北前船主等や、有力商家による寄進である。気多神社には江戸期の野外寄進物が残存しない。能登地方主要6神社とも明治・大正期は比較的少ない。昭和前期は奥能登の方が口能登より寄進数が多い。昭和前期でも重蔵神社は昭和天皇即位奉祝の昭和初期、須須神社は皇紀二千六百年(1940年)記念関連が多い神社の寄進物が多い。これは羽咋市と鹿島郡の主産業であった合繊織物業が盛況であった時代を反映する。</p><p></p><p>石動山に近い中能登町芹川原山の神明社の社殿と灯篭や狛犬が1994年二宮の天日陰比咩神社境内に移築された。過疎が進み、神社維持が困難となったためである。過疎により山村の野外寄進物と社殿が地縁のある山麓の神社境内へ移築された事例である。</p><p></p><p></p><p></p><p><b>参考文献 </b></p><p></p><p>府和正一郎. 2018.「白山市白山比咩神社の野外寄進物」2018年人文地理学会大会 研究発表要旨88-89.</p><p></p><p>府和正一郎. 2019.「加賀市菅生石部神社と金沢市大野湊神社の野外寄進物」 日本地理学会発表要旨集 No.95.305.</p><p>府和正一郎. 2019.「珠洲市須須神社と輪島市重蔵神社の野外寄進物」2019年 人文地理学会大会 研究発表要旨94-95.</p>
著者
桑島 巖
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.67-74, 2019
被引用文献数
3

<p>ディオバン臨床研究不正事件とは,製薬会社ノバルティス社が発売する高血圧治療薬ディオバンの有効性を検証した 5 つの大規模臨床試験において論文不正が明らかになるとともに社員が統計解析などに深く関与していた事件である.本事件ではノバルティス社元社員が逮捕され,裁判になるという臨床研究の分野では極めて異例の事態にまで発展した.</p><p>裁判は,元社員の不正な関与と改ざん行為は認定したが,論文作成は法律で定める広告には当たらないとの解釈によって 1 審,2 審とも無罪となった. </p><p>本事件を契機として臨床研究法が制定されたが,事件の根幹にあるものは製薬企業と研究者の医療モラルの低下である.</p>
出版者
日経BP
雑誌
日経アーキテクチュア = Nikkei architecture (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.1185, pp.8-10, 2021-02-11

デザインビルド方式による庁舎建設のプロポーザルで、異例の事態が立て続けに発生している。1次審査を通過した3者のうち2者が突然の失格に。その決定プロセスを巡って、審査を担う委員の大半が辞任した。
著者
梅村 淳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.787-798, 2021-07-10

Point・視床下核刺激療法(STN-DBS)は,進行期パーキンソン病の運動合併症(wearing offやジスキネジア)に対して最も広く行われている標準的手術療法である.・手術は定位脳手術の方法で行う.MRIガイドでのターゲティングに微小電極記録を併用してSTNを同定し,そこにDBS電極を留置する.・DBS電極の留置は局所麻酔下で行われ,術中の試験刺激により効果や副作用を確認しながら行う.