著者
小林 万里
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.9, 2004

北方四島および周辺海域は第2次世界大戦後、日露間で領土問題の係争地域であったため、約半世紀にわたって研究者すら立ち入れない場所であった。査証(ビザ)なしで日露両国民がお互いを訪問する「ビザなし交流」の門戸が、1998年より各種専門家にも開かれたため、長年の課題であった調査が可能になった。<br>1999年から2003年の5年間に6回、北方四島の陸海の生態系について、「ビザなし専門家交流」の枠を用いて調査を行ってきた。その結果、択捉島では戦前に絶滅に瀕したラッコは個体数を回復しており、生態系の頂点に位置するシャチが生息し、中型マッコウクジラの索餌海域、ザトウクジラの北上ルートになっていること、また南半球で繁殖するミズナギドリ類の餌場としても重要であることも分かってきた。歯舞群島・色丹島では3,000頭以上のアザラシが生息し、北海道では激減したエトピリカ・ウミガラス等の沿岸性海鳥が数万羽単位で繁殖していることが確認された。<br>北方四島のオホーツク海域は世界最南端の流氷限界域に、太平洋側は大陸棚が発達しており暖流と寒流の交わる位置であることや北方四島の陸地面積の約7割、沿岸域の約6割を保護区としてきた政策のおかげで、周辺海域は高い生物生産性・生物多様性を保持してきたと考えられる。<br>一方、陸上には莫大な海の生物資源を自ら持ち込むサケ科魚類が高密度に自然産卵しており、それを主な餌資源とするヒグマは体サイズが大きく生息密度も高く、シマフクロウも高密度で生息している明らかになった。海上と同様、陸上にも原生的生態系が保全されており、それは海と深い繋がりがあることがわかってきた。<br>しかし近年、人間活動の拡大、鉱山の開発、密猟や密漁が横行しており、「北方四島」をとりまく状況は変わりつつある。早急に科学的データに基づく保全案が求められている。そのために今後取り組むべき課題について考えて行きたい。
著者
高田 敦之 太田 和宏 北浦 健生 北 宜裕
出版者
神奈川県農業技術センター
雑誌
神奈川県農業技術センター研究報告 = Bulletin of the Kanagawa Agricultural Technology Center (ISSN:18813305)
巻号頁・発行日
no.157, pp.7-16, 2014-03

冬季温暖な神奈川県三浦半島地域において,寒玉系キャベツをその端境期である4~5月に生産するための品種及び栽培技術について検討し,晩抽性寒玉系新品種を用いた夏まき4月どり作型と秋まき5月どり作型の組み合わせにより,安定生産が可能なことを明らかにした。夏まき4月どり作型では,晩抽性で耐裂球性の高い中晩生~晩生品種を用い,8月下旬播種,9月下旬~10月上旬定植により3月に収穫期に達した個体を在圃させることで,4月上旬~中旬に収穫できた。この場合,在圃期間中にも肥大が進むため,畝間密植(栽植密度7,047株10a-1)しても大玉(2L~3L)になり,多収となった。一方,秋まき5月どり作型では,晩抽性で肥大性に優れる早生~中早生品種を10月上旬~中旬播種することにより,4月中旬~5月下旬にかけて連続収穫できた。本作型では,疎植(栽植密度4,761株10a-1)が大玉生産に有効で,収穫開始期も早まるが,収量の向上には結びつかず,株間密植(栽植密度7,002株10a-1)の方が多収となった。4~5月どり寒玉系キャベツの千切りカットにおける加工適性は,同時期に収穫する春系品種と比較して歩留まりが高く,葉質や機械適性等が良好で,実需者の評価が高かった。
著者
山元 恵理子
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
東洋英和大学院紀要 (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
no.4, pp.67-80, 2008

Japan and Russia are in dispute over the Northern Territories (Etorofu, Kunashiri, Shikotan, and the Habomai Shoto) in the Chishima Archipelago held by Russia since 1945. Although this issue will be solved by the governments of both Japan and Russia, there has also been since 1992 a system of so-called "Interchange without Passports / Visas", or unofficial diplomacy by citizens of Japan and Russia in the Northern Territories. This system has been crowned with great success, especially after the Hokkaido Tohooki Earthquake occurred in 1994. The first group to deliver necessities of life to Russians in Shikotan was not the Russian government, but the group of Japanese former residents. Since that time, the Russian residents have changed their sentiment and now say that they may be able to live a life together there. We can say that this "Interchange without Passports / Visas" has helped to improve their mental infrastructure. This thesis is not only makes use of the academic analysis of the former research, but it is also based on original interviews of former residents, diplomats, Russian residents, and Japanese teachers. Moreover, it reflects the author's own inspection, conducted through participation in the "Interchange without Passports / Visas" in 2005 and 2006.
出版者
農商務省水産局
巻号頁・発行日
vol.第5, 1912
出版者
農商務省水産局
巻号頁・発行日
vol.第6, 1912
著者
佐藤真之介 菱沼利彰 藤井昭宏 田中輝雄
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.215-216, 2014-03-11

大規模な疎行列を扱う数値計算において,疎行列のデータ格納形式の一つとして圧縮行格納形式(CRS)が用いられている.疎行列の形状によっては,CRSのデータ構造をブロック化して保持するブロック圧縮行格納形式(BCRS)に変換し扱うことにより,行列計算を高速化することができる.本研究では,標準ベンチマークであるフロリダコレクションの有用なすべての疎行列に対して,AVXを用いてBCRSの疎行列ベクトル積の計測を行い,性能を決定するパラメタについて分析を行うことにより,AVXで行うBCRSの効果を示した.また,AVXを用いたBCRSの疎行列ベクトル積の性能は,CRSの疎行列ベクトル積の性能と比較して,全体で70%高速化でき,高速化したときの倍率は平均1.1倍であった.
著者
木村 孝子 山澤 和子 堀 光代 長屋 郁子 横山 真智子 辻 美智子 川田 結花 土岐 信子 長野 宏子 西脇 泰子 山根 沙季
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本各地には、各地域の自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は、地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着してきた岐阜県岐阜地域の郷土料理と、その暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。<br>【方法】日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」調査に参画し、岐阜県岐阜地域の本巣市、山県市、瑞穂市を調査した。対象者はその地で30年以上居住した60歳代~80歳代女性9名で、家庭の食事作りに携わってきた人である。<br>【結果】農業が主であった本巣市・瑞穂市では、日常食は米、小麦、自家栽培された作物を中心に朝はご飯、味噌汁、漬物、昼は農作業のため弁当(白飯、梅干しや紅しょうが、芋の煮物)、農作業の合間には「みょうがぼち」、夜は雑炊に漬物を食した。混ぜご飯の「おかきまわし」もよく食べられた。山県市は急峻で石灰質の土地のため、白飯は貴重であり、飯に小麦粉を混ぜてこね、みょうがの葉で巻いた餅を食した。里芋や芋茎、干した里芋の葉、手作りのこんにゃくを使った料理、味噌も家で作り、芋を使った味噌煮は日常食であった。本巣市、山県市では大根の古漬けをしょうゆや味噌味の煮物にしていた。伝え継ぎたい家庭料理には、みょうがぼち、芋もち、里芋の煮っころがし、芋茎の酢の物や煮物、おばこ煮、十六ささげの味噌和え、千石豆の胡麻和え、桑の木豆のフライ、ねぐされもち、おかきまわし、味噌煮などがある。
著者
磯部 勝 杉山 剛 片桐 基 石塚 千紘 田村 優実 肥後 昌男 藤田 佳克
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.117-124, 2019
被引用文献数
4

<p>立枯れはキノアの生育や収量に最も影響を与える障害のひとつである.キノアの立枯れに関する研究はキノア栽培が盛んな南米のアンデス地域では行われているが,環境の大きく異なる我が国においては過去に研究事例はない.そこで本研究では生育初期におけるキノアの立枯れの発生原因とその抑制法について検討した.立枯れ率は播種時期によって大きく異なったが,いずれの播種時期でも出芽直後から第4葉期まで立枯れが発生し,その後はほとんど発生しなかった.播種時期の違いによって立枯れ率に違いが生じた原因は気温や日照時間より降水量の違いによる影響が大きいことが明らかにされた.そして,立枯れ率は土壌水分が低いと低下することが明らかになった.このことから,キノアの立枯れを抑制させるには生育初期において土壌水分が過剰にならないようにすることが重要と考えられた.さらに,供試したキノア12品種の間には立枯れ率に明確な違いはなかった.立枯れた個体からはRhizocotnia属菌やFusarium属菌が見出され,立枯れの発生にはこれらの菌が関与している可能性が示唆された.薬剤散布で立枯れの発生が抑制できるか検討した結果,播種時にダコレート水和剤を1m2当たり2 g以上を土壌の表面に散布すれば立枯れ率を抑制することができることが明らかになった.</p>
著者
綾部 園子 堀口 恵子 神戸 美恵子 永井 由美子 阿部 雅子 高橋 雅子 渡邊 静
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】日本調理科学会平成24〜26年度の特別研究で,次世代へ伝え継ぐ資料とし群馬県内で聞き書き調査を行い報告した。その後の追加調査や刊行資料調査も含め,群馬県の家庭料理の副菜の特徴について報告する。</p><p>【方法】平成25年〜27年に群馬県内の8地域において,各地域2名以上(60 歳〜80 歳代,居住年数 40 年以上)の調査対象者に対して面接調査を行った。面接は特別研究の方法に従い,調査の同意を得た上で,調査票に沿って対話したものを記録した。その後,嬬恋村・片品村において追加調査を行った。</p><p>【結果および考察】群馬県は首都圏に近く気候にも恵まれ,いろいろな野菜が生産され,旬には山菜やきのこなどの利用も多い。これらの野菜を使って多様な野菜料理が作られているが,中でも「きんぴら」はそれぞれの家庭の味つけで鍋いっぱいに作る常備菜で,おかずはもちろん麺類の「こ」としてもよく登場した。また,自宅でとれた野菜をたっぷり入れたみそ汁は副菜を兼ねるもので,牛蒡,大根,にんじん,里芋,ねぎなどの野菜に油揚げ,豆腐,こんにゃく等をいれたけんちん汁はその代表ともいえる。野菜の煮物にはさつま揚げなど「買ったもの」を入れることも多かった。漬物(ぬか漬け,梅干し,沢庵,白菜づけ,紅しょうが,らっきょう,きゅうりの味噌漬け,きゅうりやなすの塩押し,山菜漬け,きのこ漬け等)はそれぞれ自家製の野菜を樽で漬けた。ゆでた野菜はうどんの「こ」にする他,お浸しや胡麻よごしとしても食べた。大根葉,切り干し大根,いもがら,ぜんまいなどの乾燥野菜や切り昆布は戻して煮物にした。野菜の天ぷら,花豆などの煮豆,特産のこんにゃくを使った田楽や白和えも来客時や日常食として食されている。</p>
著者
鈴木 敬明 易 強 櫻川 智史 田村 久恵 岡嶋 克典
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.35, pp.101, 2002

若年者が適切な高齢者水晶体擬似フィルタ(以下、フィルタ)を装着した際の刺激色による反応時間の変化を測定し、色による反応時間の違いが高齢者と同じになるかどうかを比較&middot;評価した。20代がフィルタを装着しないの場合、刺激色による反応時間の差が100ms程度であるのに対し、60代は20代と比べて全体的に反応時間が遅く、特に灰色と青色の刺激に対して他の色より200ms程度反応時間が遅くなる傾向が見られた。また、20代がフィルタを装着した場合には、灰色と青色の刺激に対して他の色より200ms程度反応時間が遅くなるという、60代と同様の傾向が得られた。
著者
竹村 豊
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-25, 2018

2017 年10 月時点で日ロ首脳会談は19 回を数え、ロシア極東ではロシア政府が進める一連の「極東発展国家プログラム」1 )に呼応するように日本政府は8 項目の経済協力を提案し、北方領土問題を抱える平和条約交渉を前進させようとしている。16 年12 月のプーチン大統領来日時に提案された北方領土4 島での共同経済活動は17 年9 月、両国政府が5 項目の事業を実施することで合意した。一方で両国間の貿易は依然としてエネルギー・資源産業分野に大きく依存しており、価格低下のため2014 年から16 年の3年間で貿易高は大きく減少した。今後、日ロ関係を持続的に発展させていく上で、資源エネルギー中心の大企業向け案件ばかりでなく、地方企業や中小企業の活躍できる場を提供することや起業家が参入できる仕組みを作るため、日ロ双方が努力すべきではないか。新規参入により新しいビジネスの可能性が生まれ、日ロ貿易の構造改革や将来的には日ロ関係発展にも資するのではないだろうか。
著者
平石 哲也 長谷川 準三 黒木 啓司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
no.14, pp.275-279, 1998

Long period waves often cause large surging motion of moored vessels by resonance to naturaloscillation of the mooring system composed of the elastic hawsers and ship body. In order to preventthe amplification of long period waves in harbor by the reflection, the wave absorbing beach isproposed. The artificial beach with mild slope can reduce the reflection coefficient. The appropriateinstallation planning for beaches in harbor is discussed on basis of the results of numericalsimulation.