著者
石崎 達 笛木 隆三 斎藤 明 江澤 一浩 土井 一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.668-675, 1992

喘息患者132名に常用抗原28種の皮膚スクラッチ反応を実施し, 別に主要抗原5種 (室内塵, チリダニ, スギ, カモガヤ, ブタクサ) については大部分の対象に各反応と無関係に皮内反応闘値, RAST値, ELISA値を測定した. この対象者の主要抗原は室内塵, チリダニ, スギ, カモガヤ, オオアワガエリ, ブタクサだけであった. 皮膚反応は若年層で陽性に出やすく (90%), 40歳以上で半減した. RAST値と皮内反応閾値の年齢別検討で特異的IgE抗体の年齢による産生低下が考えられる. 陽性率の比較で皮膚反応の感度が高く, RAST値はやや劣るが陽性者の一致率はよい. ELISAは感度は良いが上記2者と陽性者が必ずしも一致しなかった. 室内塵とチリダニは抗原性に高い相関があるが, 一方だけ陽性例も少数あった. 皮内反応閾値とRAST値はよく相関するが, ELISA値とは相関が低下した. RAST, ELISA値も相関が低い.
著者
小崎 道雄 飯野 久和 トク トランリン ホウ ファムタン 関 達治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.327-337, 2002

「米酒」醸造地帯の「米酒」と米関係食品の製法, 特徴, 背景などについて, 東南アジア全域に渡り長期調査された筆者に, 前回に引き続き甘酒, 梗米酒, 糟米酒, 籾殻吸管酒, 焼酎について解説していただい。「米酒」の製造に黒米や赤米を使ったり, 米を焦がす方法や, 米とともに雑穀やキャッサバを使用するといった工夫がみられて面白い.<BR>又吸管の籾殻壼酒は親睦だけでなく, 儀礼的にも重要な位置を占めており, 飲酒文化面からも興味深い。
著者
木野 和代 岩城 達也
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.73-86, 2008 (Released:2008-12-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1

The purpose of this study was to explore 1) the meanings included in gifts, 2) the anticipation on the part of the giver of how the gifts would be treated, and 3) the relationship between these two things. One hundred and eighty-nine undergraduates were asked to nominate an example of a gift in three different situations: a celebration gift of entrance to university, a birthday gift, and an offering at a funeral. In order to identify the meanings of the gifts, each gift was rated in terms of the quality, practical use, emotional value, and representation of both giver and recipient. Participants also rated the anticipation on the part of the giver of how the gifts would be treated. The results showed that the gifts and their meanings were different among the three situations. The study also clarified that the pattern of relationships between meanings of gifts and anticipation of the treatment of gifts were different among the situations. In addition, it was suggested that quality, practical use, emotional value, and recipients' representation promoted their attachment to the gifts in at least one of the situations. Other results were also discussed from the context of gift giving situations.
著者
鄭 栄桓
出版者
前夜
雑誌
前夜 第1期
巻号頁・発行日
no.3, pp.135-138, 2005-04
著者
池内 和彦 福島 一彰 田中 勝 矢嶋 敬史郎 関谷 紀貴 関谷 綾子 柳澤 如樹 味澤 篤 今村 顕史
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.358-364, 2018-05-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

近年,本邦における梅毒患者が急増している.諸外国において梅毒に対する標準治療薬であるベンザチンペニシリンG の筋肉注射は,本邦では使用できない.日本性感染症学会から発行されている「性感染症診断・治療ガイドライン2016」では,梅毒に対する標準的治療としてアモキシシリン(AMPC)単剤の内服治療が推奨されているが,根拠となるエビデンスは十分とは言えない.今回我々は,経口AMPC 1,500mg/日単剤による治療を行った63 名の梅毒患者(HIV 患者47 例,年齢中央値40 歳)を対象に,その治療効果を後方視的に検討した.治療効果判定についてはRapid plasma reagin 自動化法の値が,診断時から1 年以内に1/4 以下へ低下した場合を治療成功と定義した.治療成功率は,全患者の95.2%(95% Confidence interval(CI),86.7~99.0%),HIV 患者の95.7%(95% CI,85.5~99.5%),非HIV 患者の93.8%(95% CI,69.8~99.8%)であった.梅毒の病期毎の治療成功率は,早期梅毒の97.8%(95% CI,88.5~99.9%),後期梅毒の88.2% (95% CI,63.6~98.5%)であった.今回の検討では,HIV 感染症の有無や,梅毒の病期に関わらず,経口AMPC 1,500mg/日単剤治療は,梅毒に対して高い治療成功率を認めていた.
著者
福井 修
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富山大学紀要.富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.277-298, 2018-03

信託財産は受託者に帰属しているが,受託者の固有財産とは別扱いされる。これを信託財産の独立性といい,信託の特徴のうち中核的なものである。自己信託を除いて信託設定によって信託財産は委託者から受託者に移転しているが,信託財産の独立性から,受託者の債権者は信託財産に対して強制執行が認めらない。さらに,信託設定時点で委託者の責任財産からは切り離されるので,委託者の債権者も強制執行の対象とすることはできない。このように受託者の債権者も,委託者の債権者も信託財産に対して強制執行することは認められないが,信託においては強制執行と無縁というわけではない。すなわち,信託で利益を受けるのは受益者であり,受益者の債権者はこの利益を受ける権利,すなわち受益権に対して強制執行が認められる。ただ,英米では親族のうち財産管理がうまくできない者のために信託を設定して,生活を守りたいということも,信託を利用する動機の一つであった。その場合には受益者の債権者が受益権を差押えることを信託設定者が極力回避したいと考える場合もある。信託設定者の意思をどこまで尊重するかという論点があり,この点については従来必ずしも結論が一致しているとはいえない状況にある。本稿はこのような信託受益権に対する差押えについて,考察するものである。
著者
豊田 光世
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.247-255, 2017 (Released:2017-08-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

自然環境の保全を進めるうえで、多様な主体の参加と協働とはいかなる意味をもち、それらを支える合意形成とはどうあるべきなのだろうか。本稿では、新潟県佐渡市で進めてきた三つの事例を比較しながら、地域協働の保全活動推進に向けた合意形成のあり方を考察する。合意形成は、異なる意見を統合し、対立を克服するプロセスである。対立の可能性を検討するコンフリクトアセスメントから始まり、話し合いの実践、合意の形成、合意事項の実践と進む。それぞれの段階において、あるいは現場の状況に応じて、考慮すべきことが変化する。特に、「参加」というものをどのように理解するかということが、合意形成の質に大きく影響する。本稿では、市民参加の異なる捉え方を踏まえ、話し合いの場のデザインやプロセス設計の具体的考慮点と工夫を事例から分析し、協働という深い参加を実現するための合意形成に必要な視点を示す。