著者
木内 正人 大嶋 一矢 山本 英男 松村 記代子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.31, 2014 (Released:2014-07-04)

「紙幣らしさ」が備わる模様は、肖像、唐草模様、彩紋(さいもん)模様が代表的なデザイン要素である。しかし、紙幣のデザインは他にも重要なデザイン要素を備えている。それは紙幣に用いられている書体である。日本の紙幣(正しくは日本銀行券)において、日本銀行などの発行主体、額面金額、記番号、印章などが印刷され、それらの文字は一般国民に理解され、読みやすさ、使いやすさをもって付与されている。特に重要とされるのが「大蔵隷書」と呼ばれる書体である。「大蔵隷書」は書体名としての認知度も低く、それに関わる具体的な資料、文献もほとんどない。しかし、今日の紙幣に使われていることから、生活環境の中で誰もが目にする機会も多く、潜在意識的に広く認知できている書体ともいえる。そこで本研究では、日本の紙幣における伝統書体として「大蔵隷書」が果たしてきた役割について、紙幣デザインの歴史的変遷で説明する。
著者
宮川 剛
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.157-166, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

研究者の実績評価がどのように行われるかは,研究者個人はもちろん,大学や研究所など研究機関の日々の活動の方向性を左右する重要な要因である。研究ポジションの数に比して研究者人口が過剰であることや,競争的資金の研究予算における比重が増す中,客観的な評価指標の重要性が認識されつつある。近年,諸外国では,研究者個人の論文の総引用数,各年の総引用数,h-indexなどのさまざまな研究実績に関する数値的指標(メトリクス)が考案され,研究者の採用・昇任などの人事や,研究提案審査時に参考資料として活用されている。しかし,わが国においてはこのような取り組みが十分に進んでいるとは言いがたい状況である。本稿では,科学技術研究において客観的評価指標が求められる背景と各種メトリクスの紹介を行う。さらにメトリクスを普及させるための方策,活用上の留意点,その波及効果について,一研究者としての視点から議論し提言を行う。
著者
石突 吉持 山内 一征 三浦 義孝
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.91-98, 1989-02-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
14
被引用文献数
4 6 2

日本では, 昆布ヨードの過剰摂取による甲状腺中毒症 (ITT) の報告がない。我々は, 日本人が好んで摂取する昆布の過剰摂取がITTを発症させることを見出した。献立表から算出したヨード量28-140mg/日を毎日摂取し, 1ケ月, 1年を経て甲状腺中毒症を示した42, 59歳の女性例である。両例のT3は高く, T3/T4比, T4/γ-T3比は低く, 無機ヨード値は正常生活者の平均2.05ug/dlの+2SDより高値であった。昆布摂取の禁止後, 1ケ月で中毒症状消失, T4, T3, γ-T3, T4/γ-T3比は正常化した。摂取ヨード源を明らかにするため, 昆布内及び水浸昆布の出汁中ヨード量を測定した。昆布内ヨードの99%が水浸30分, 煮沸15分で水溶液中に出る事を確かめた。以上の結果は, ITTが昆布及び昆布出汁の過剰摂取により発症すること, また, 昆布出汁として1日28mg/日以上のヨード量を毎日摂取すると, 日本人ではITTが引き起こされる可能性があることを示唆している。
著者
内村 直之
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.161-168, 2014-06

STAP cell problems including its scientific misconduct problem are now very serious matters for Science and Technology in Japan. Science communication in such situation is considered as a good tool for mutual understanding between layperson and professionals.
著者
平川 仁尚
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.679-682, 2014 (Released:2015-03-10)
参考文献数
1
被引用文献数
1

最近増加傾向にある医療的背景を持たないケアマネジャーは訪問看護師など医療者とのコミュニケーションを苦手としているといわれる。そこで, 訪問看護師とケアマネジャーのコミュニケーションを円滑にするための教材作成の基礎資料とするため,「ケアマネジャーを悩ませる訪問看護師の行動傾向」をテーマに参加者に約1時間グループ討論してもらった。参加者は8人で, その内訳は職種別に医師1人, 看護師1人, 医療系 (看護系) ケアマネジャー2人, 非医療系ケアマネジャー3人, 福祉職1人であった。出された意見をKJ法の技法の一部分を用いてグループ化した結果,「病院と同等の医療管理レベルをチームに要求する」,「必要最低限の業務しかしたくない」,「在宅経験が少なく, 知識が医療的なものに偏っている」,「権威勾配を背景にチームを上から管理しようとする」,「クライアントや家族の前で感情をコントロールできない」,「専門用語を使いすぎる」,「特別指示書に変えたがる」の7グループが抽出された。こうした訪問看護師に対するケアマネジャーの本音は, 病院から地域・在宅に医療の重心がシフトしていく中で, 病院外における看護師の在り方を考える上で重要な情報である。一方, ケアマネジャーにとっても訪問看護師の行動傾向を知ることでマネジメントのノウハウを蓄積しやすくなるものと期待される。
著者
藤原 成一
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
no.43, pp.117-131, 2006

時代の転換期には新しい型の人間が登場し、新しい型の人間が時代を創造してゆく。平安時代末期には野性味ある「武者」(むさ)が世をきり拓いたし、十四世紀には農業経済の先進地帯を中心に、上はバサラ大名から下は野伏山伏や強盗まで、「悪党」が社会の各階層に輩出して世の中を混乱に陥れ、時代を大きく動かした。時代が悪党をくすぶり出し、悪党が時代を活気づけた。彼らは御恩と奉公という絶対服従倫理の枠内に居ながら、それを嘲笑し蹂躙(じゅうりん)して新奇な価値観や異装の美学を創り出した。頼りとするもののない時代における自侍のライフスタイル、男の生きざまであった。時代を直視し、時代に向かって、自らの力をぶちまけて生きる男である。本稿では、時代と格闘して生きる悪党の生態を見つめ、世直しを期待されるまでに人気をかちえた彼らの歴史上の意味を検証する。悪党といわれるこんなやくざな連中が、私たちの歴史を鮮やかに彩ってくれるのである。
著者
野村 祐基 磯村 太郎 板井 陽俊 安川 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.575, pp.7-12, 2007-03-01
被引用文献数
6

人の足音は歩き方や履物の種類,床面などの環境によって違いが現れる.足音を用いて個人を特定することができれば,セキュリティシステムの一環への利用が期待出来る.他にも,左右の足音のばらつきや歩き方を分析することにより,骨格のバランスや健康状態の推定に利用できる可能性がある.このように,足音の識別が可能となれば,様々な分野への応用が考えられる.歩行足音を用いた個人識別に関する研究は幾つか紹介されているが,従来の研究では特徴量抽出を中心に議論されている場合が多い.歩行足音は音声等と同様に時間変化する信号であり,足音が継続する時間長は非線形に伸縮すると考えられる.本稿では,収録した歩行足音に短時間フーリエ変換を施し,周波数成分のコサイン距離の総和をDPマッチングで求めるという手法を利用して個人識別を行った結果を示す.
著者
宮入 暢子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.80-89, 2014-05-01 (Released:2014-05-01)
参考文献数
12
被引用文献数
6 2

Galaxy ZooやeBirdに代表されるシチズンサイエンスでは,基礎研究データの効率的な整備や新たな知識の生産に市民が直接貢献している。「開かれた科学」は17世紀後半の科学アカデミーの成立や学術誌の成立に端を発し,今日の科学研究の基本理念である(1)先駆性の確保,(2)科学の集約化,(3)第三者による正当性の担保,(4)著者による説明責任の確立,といった基礎を築いた。サイエンス2.0の到来によって,プレプリント,オープンピアレビュー,オープンデータリポジトリ,科学のソーシャル化によるネットワークを介したイノベーションなど,学術コミュニケーションの多様化が促進された。これまで論文とその引用という形でしか計ることのできなかった研究インパクトに,オンライン上の注目度を定量化するオルトメトリクスが加わり,各国政府の研究データのオープン化の方針が進む中,科学データ流通を促進するための情報基盤の確立は急務である。