著者
大槻 美佳
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.197-203, 2018-06-30 (Released:2019-07-01)
参考文献数
10

非定型な症状を呈した患者を通して, 音韻処理について考察した。本患者は, 言語表出は, 自発話のみでなく, 呼称, 復唱, 書字など全ての表出で, 音韻性錯語, 新造語, 音韻性ジャルゴンが中心であったが, 一方, 言語理解は, 聴覚的には単語レベル, 視覚的には (文字呈示) , 文レベルでも可能であるという乖離を示した。また, 「1 音を聞いて, 該当する仮名文字を選択する」課題も全くできなかったが, 詳細に調べると「1 音」の弁別・認知は可能で, かつ, 「仮名文字」の弁別・認知も可能であることが明らかになった。本患者の症候から, いわゆる ‘音韻処理障害’ には, これまで言及されてきたような, 音韻の認知・喚起・選択・把持・配列などの障害のみでなく, 記号としての役割はある程度果たせるものの, 音響的な表出や文字表出という次のステップに利用できないという壊れかたもある可能性が推測される。
著者
内山 直美 山田 博仁
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.71-76, 2020 (Released:2020-06-30)

近年、さまざまな種類の小型電子機器の普及に伴いワイヤレス充電(給電)の研究が盛んにおこなわれているが、新規手法として光ワイヤレス充電の研究が進められている。光ワイヤレス充電は、主に送信器にレーザーやLEDのような光源、受光器に太陽電池のような受光素子を用いる方式である。安全面に制約のないLEDの研究事例は少ない。本研究では、室内でよく使われる赤外線リモコンの光ワイヤレス充電の方式について検討した。その結果、小型の結晶Si太陽電池セルと蓄電デバイスを内蔵すれば、近赤外LEDからの光により室内においても動作可能となる十分な電力量が蓄電され、乾電池レスにできることがわかった。
著者
福井 智康 平野 勉
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.120-126, 2005-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
26
著者
Toshi NAGATA Kentaro SUZUKI
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.1213-1216, 2018-10-10 (Released:2018-10-10)
参考文献数
17
被引用文献数
3

A low-cost, standalone electrochemical instrument was built from a credit card-sized computer and inexpensive A/D and D/A converter chips. The instrument is capable of cyclic voltammetry and constant potential electrolysis, with the potential range of –4 to +4 V and the current range of 1 μA to 20 mA.
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 布谷 美樹 田中 伸幸 山本 栄里 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0635, 2005 (Released:2005-04-27)

【はじめに】我々は、肩関節疾患患者の肩甲上腕リズムの乱れに関して、肩関節屈曲に伴い肩甲骨には力学的に前傾方向へのモーメントが加わり、これを制動できない場合は、肩甲骨の安定した円滑な上方回旋に支障が生ずるのではないかと考えている。そこで、第44回近畿理学療法学術集会にて、屈曲30°位において僧帽筋下部線維は上部・中部線維と比較して有意に筋活動が増大したことから、この前傾モーメントを制動するには解剖学的に僧帽筋下部線維が有効であると報告した。このことから、上肢の運動に伴い肩甲骨には力学的なモーメントが生じ、また運動方向の違いによって肩甲骨にかかるモーメントも異なることが示唆された。今回、肩関節外転運動に着目し、肩関節屈曲運動と比較して肩甲骨に生じるモーメントが異なると仮定し、肩関節初期屈曲・外転角度における僧帽筋の肩甲骨安定化機能を筋電図学的に比較・検証したので報告する。【対象と方法】対象は健常男性7名(平均年齢28.7±4.2歳)、両上肢(14肢)とした。運動課題は端座位姿勢での上肢下垂位、屈曲30°位および外転30°位をそれぞれ5秒間保持し、それを3回施行した。測定筋は僧帽筋上部・中部・下部線維とし筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。分析方法は下垂位の筋積分値を基準に屈曲30°位と外転30°位の筋積分値相対値を算出し、各線維ごとに対応のあるt検定を行った。なお、対象者には本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。【結果と考察】僧帽筋上部・中部線維の筋積分値相対値は、屈曲位と比較して外転位において有意に増大した(p<0.01)。一方、下部線維の筋積分値相対値は屈曲位と比較して外転位において減少傾向となった。肩甲上腕リズムでは屈曲60°、外転30°までは肩甲骨の運動なしに肩甲上腕関節固有の運動でなされるsetting phaseの時期である。本研究における運動課題もsetting phaseの時期であり、この時期での僧帽筋の活動は肩甲骨と体幹を固定するための活動であると考える。山本らは正常な肩甲骨の動きは胸鎖関節を支点として三次元的に制動方向が導かれることとなるが、その動的な制御は肩甲骨と胸郭を連結している筋群のバランスと肩鎖関節の安定性により決定されるとしている。僧帽筋上部・中部線維については解剖学的に鎖骨外側1/3・肩峰・肩甲棘上縁に付着しており上肢の外転運動に伴う肩甲骨の下方回旋モーメントへの制御に機能したと考える。一方、下部線維については解剖学的に肩甲棘内側下部(肩甲棘三角)に付着しており上肢の屈曲運動に伴う肩甲骨の前傾モーメントへの制御により機能したと考える。以上より、上肢の運動方向が異なれば肩甲骨に生じる力学的なモーメントも異なり、そのモーメントに応じて選択的に僧帽筋の各線維がより活動し肩甲骨を制御することが示唆された。
著者
申 東薫
出版者
金曜日
雑誌
金曜日
巻号頁・発行日
vol.4, no.37, pp.31-33, 1996-10-04
著者
高橋 ゆう子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.581-590, 2019-01-01 (Released:2019-11-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本論の目的は,RDI(対人関係発達指導法)の特徴と効果について,一家族の事例から検討することである.対象は,6 歳のASD 児とその両親で,約2 年間RDI に取り組み,その間,アセスメント(RDA)として親子のやりとりを3 回録画した.その映像は,関係性を捉える3 つの状態(共同注意,相互調整,間主観性)について評価された (Larkin, et al, 2010).また,日常生活における母子のやりとりを録画した63 場面について母親が振り返りとして記述した内容について,コンサルタントとともに分類を試み,その特徴を整理した.結果は次の通りである.まず,3 回のRDA から父親,母親とも共同注意,相互調整,間主観性のいずれにも変化がみられた.次に母親の記述については,その内容が肯定,否定,分析,課題,疑問の5 つのカテゴリーに分類でき,否定的な内容が減って肯定的なもの,子どもとの関係性に関する内容が増えた.以上から,RDI が親子の関係性の変容に影響することが推測された.そして,情緒的意欲的関係性に焦点をあてた育て直しをねらったRDI の特徴と課題について考察を行った.
著者
長田 拓哉 小澤 龍彦 奥村 知之
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

1、アスナロ精油による抗腫瘍効果:アスナロ精油を胃癌、食道癌、大腸癌、乳癌細胞株とそれぞれ反応させたところ、いずれの細胞株に対しても濃度依存的、時間依存的にアポトーシスを誘導した。腹腔内に胃癌細胞を投与したヌードマウスにアスナロ精油を吸引させたところ、コントロールと比較して腹膜播種転移が有意に抑制された。2、アスナロ精油における抗腫瘍メカニズムの解明:アスナロ精油を分画し、ツヨプセンを同定した。ツヨプセンは抗腫瘍効果を有し、癌細胞にアポトーシスを誘導することを確認した。またツヨプセンが癌細胞内でPKM2と会合することを明らかにした。
著者
桜井 芳生
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.2_91-2_104, 1990-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
5

まず、柄谷行人が『探究II』でおこなったクリプキの可能世界論の援用への疑義を提示する(1節)。つぎにこの柄谷の可能世界論の誤用がかれらのいう「第二の論点」と関連していることを確認し(2節)、大澤のいう「世界」と「宇宙」という概念を導入することで、柄谷がいわば「世界間差異」と「宇宙的差異」との混同に陥っていることを指摘し、後者をめぐって柄谷とクリプキとが異なっていることを明示化する(3~5節)。我々の行ってきた議論を用いて、柄谷のいう「反復」の議論への接近を試みる(6節)。最後に、ここでの議論とルーマンの「脱トートロジー化」の議論との連関を示し、社会理論的含意を示唆する(7節)。
著者
鈴木 洋
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.47-51, 2011-02-20 (Released:2011-05-20)
参考文献数
11

インクなど(含色材流体)の塗布プロセスを考えるうえで,流体の流動特性について知ることは重要である。インクの多くは色素微粒子が溶媒(分散媒)に懸濁された状態(サスペンジョン)であり,一般に通常知られている水や空気のような単純な粘度特性を示さない。乾式である場合にも同様である。また媒体によっては粘弾性という特殊な性質を示す場合があり,この場合にはより複雑な流動特性が発現する。ここではこれら特殊な流体を取り扱うレオロジーに基づき,かかる複雑流体の基礎的な流動特性について解説する。
著者
海野 光信 村上 忠洋 畑迫 茂樹 佐々木 友也 千邑 彰人
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.449-452, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
17

〔目的〕脳卒中片麻痺患者における体幹側屈筋力の左右差に股関節周囲筋の麻痺が影響するか否かを明らかにする.〔対象と方法〕初発脳卒中片麻痺患者9名を対象に,端座位で麻痺側と非麻痺側方向への等尺性体幹側屈筋力を「骨盤固定なし」と「骨盤固定あり」で測定し,麻痺側と非麻痺側で比較した.〔結果〕「骨盤固定なし」では麻痺側筋力が非麻痺側筋力に比べ有意に低下し,股関節周囲筋の麻痺が重度な者ほどその傾向が強かった.「骨盤固定あり」では左右差はみられなかった.〔結語〕脳卒中片麻痺患者における体幹筋力の左右差は骨盤の固定に働く股関節周囲筋の麻痺の影響により出現し,骨盤を他動的に固定しこの影響を小さくすることで左右差がなくなると考える.
著者
志村 久
出版者
心理科学研究会
雑誌
心理科学 (ISSN:03883299)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.90-104, 2018 (Released:2019-01-26)
参考文献数
30