著者
後藤 修 竹内 裕也 北川 雄光 矢作 直久
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1632-1640, 2015 (Released:2015-08-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1 or 0

内視鏡と腹腔鏡を用いて胃を開放させずに任意の部位を過不足ない範囲で全層切除する非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(non-exposed endoscopic wall-inversion surgery:NEWS)について概説した.腹腔内汚染や医原性腹膜播種の可能性を理論的に払拭できる本法は,経口的に回収できる腔内もしくは壁内発育型胃粘膜下腫瘍や,リンパ節転移陰性が期待できるが内視鏡治療が技術的に困難な早期胃癌が良い適応となる.さらに,本術式をセンチネルリンパ節ナビゲーション手術と融合させることで,リンパ節転移の可能性が否定できない早期胃癌に対してもより低侵襲な胃機能温存手術を提供することができる.正確な漿膜マーキング,腹腔鏡下漿膜筋層切開・縫合,内反した病変周囲の粘膜切開,縫合糸近傍の粘膜下層切開など,技術的にも新規性に富む過程が満載されている.解決すべき課題は多いが,本法は内視鏡を用いたより理想的な胃癌低侵襲手術の一つとして期待が寄せられている.
著者
加藤 隆 鈴木 博
出版者
横浜国立大学教育学部附属理科教育実習施設
雑誌
横浜国立大学教育学部理科教育実習施設研究報告
巻号頁・発行日
vol.8, pp.77-97, 1992-03-27

According to MIYAKE (1978, 1982), there have been three species of the mole crabs, Hippa adactyla FABRICIUS, H. truncatifrons (MIERS) and H. pacifica (DANA) (Hippidae, Anomura, Decapoda, Crustacea) in the Japanese waters. Only one species, H. adactyla have been known from Sagami Bay. In the course of this study, the latter species, H. truncatifrons and H. pacifica were newly found from Sagami Bay, and H. truncatifrons predominates among the three species throughout the studied areas. In this study, the authors described and illustrated their distribution, variation of the body, colourations, growth rate, and feeding and mating habits. The authors also studies complete larval development of H. truncatifron. The larvae are reared in the laboratory and passed through five zoeal and one glaucothoe stages and reached to the first crab stage. All the larval and the first crab stages are described and illustrated herein, and some brief comparision and discussion with other related species are also given.
著者
Susumu Ohtsuka Kazunori Hasegawa Taeko Kimura Hiroshi Miyake Yusuke Kondo Ken Iida Honorio Pagliawan Ephrime Metillo
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1-4, pp.93-98, 2017-11-27 (Released:2018-01-11)
参考文献数
39

ウロコガイ科二枚貝ベッコウマメアゲマキScintilla philippinensis Deshayes, 1856の生体がフィリピン・パラワン島で採集されたが,外套膜とその膜上の突起,足を用いてウミウシ類及びカニ類に擬態と考えられる行動が観察された。ウミウシ類型の場合,外套膜を変形させて形態を似せる。カニ類型の場合には形態的類似性だけでなく足も用いて行動も真似る。ウロコガイ上科は他の動物に共生することで知られるが,擬態に関する知見は少ないので,今後のより詳細な研究が待たれる。
著者
有田 輝 米田 将允 鈴木 陽介 下条 誠 明 愛国
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.669-680, 2017 (Released:2017-12-15)
参考文献数
22

For bipedal robots walking on uneven terrain, lack of information about a terrain may cause serious reduction of the stability. To solve the problem, the purpose of this paper is to develop a sensor which can be mounted on robot's soles and propose methods which can increase the stability of bipedal walk with the sensor. The sensor should detect information including relative posture and relative distance between the sole of the swing leg and the floor, when the robot execute the walk by ZMP-based control. In this paper, the sensor has been designed based on Net-Structure Proximity Sensor (NSPS) and a prototype has been developed. The developed sensor is with thin structure, light weight, less wirings (four wires only) and fast response (<1[ms]). Experimental results show that the sensor can output necessary relative posture and positon between the sole and the floor for walk control. Besides, the sensor has been mounted to the soles of a hobby robot and its feasibility is shown by controlling robot so that its sole can land on a tilted floor with maximum contacting area to improve the stability.
著者
菊池寛 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
vol.第2巻, 1924
著者
堀江 尚子 渥美 公秀 水内 俊雄
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-17, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
51

本研究は,ホームレスに対する支援のための入所施設において,継続的な支援の関係の構築を目指したアクションリサーチであり,支援の関係性の継続と崩壊という現象を理論的に考究するものである。近年,急増したホームレスの人々が抱える問題は多様である。なかでも対人関係に問題を抱える人は少なくない。ホームレスの支援活動では,当事者と支援者の関係性の継続が重要である。関係性の継続には,関係の本来の様態である非対称が非対等に陥らないことが要請され,そのためには偶有性を喚起・維持する方略に希望がある。本研究はこの方略を組み込んだアクションリサーチである。具体的には,ホームレスを多く引き受ける生活保護施設Yが開催するコミュニティ・カフェに注目し,その施設の退所者と地域の人々の協働の農作業プロジェクトを実践した。偶有性の概念を媒介にして戦略的な実践によって継続的な関係が構築された。支援関係の継続と崩壊について理論的考究を行い,労働倫理を強く持つ人々は支援を受ける当事者になることが困難であることを指摘した。
著者
三浦 尚子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.65-77, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
15

本稿は東京都U区を事例地域に,障害者自立支援法施行後,精神障害者を対象とする作業所の新サービスへの移行状況とその利用実態に関する質的調査を行った.その上で,国家レベルの福祉施策の転換が地域レベルの障害者福祉サービス供給に及ぼした影響を,作業所という「ケア空間」の場が果たす役割に関連付けて考察した.その結果,移行先が就労継続支援B型のサービスに集中し,その一因に実際には就労支援に消極的な旧共同作業所が含まれており,「なんちゃってB」を自称していることがあると明らかになった.これらの事業者は,就労が困難な利用者のニーズに対応する一方で,経営基盤が安定する就労継続支援B型を選択して作業所の存続を図っている.自称「なんちゃってB」の出現は,障害者の自己責任を志向し,就労自立に傾倒した新制度に抵抗するための事業者の戦略であり,その結果旧共同作業所は,従前と変わらず精神障害者の居場所として機能している.
著者
任 海
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.51-64, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
17

中国では,1990年の土地使用権の譲渡に関する条例の制定とともに,急激に都市化が進行した.本研究は,中国上海市静安区大中里地域の市街地再開発を事例として,上海市内部での都市化の進展をミクロレベルで考察することを目的とする.再開発地域の居住者には,立退きに際し,金銭形式と住宅形式の二つの形式に基づく五つの補償方法が提示された.この再開発事業では,居住者に関するデータが一部公開されていることから,本研究では1,679世帯の里弄住宅居住者データを用い,居住者による五つの補償方法の選択状況を分析するとともに,移転先との関係を解明することを試みた.その結果,都市環状高速道路で形成される上海市の圏域構造が補償住宅の供給戸数の分布,居住者による補償方法の選択と移転先の決定と密接に関係していることが明らかになった.さらに,中心市街地の再開発と郊外新区の開発の連携は,都市人口分散の手段であることが裏づけられた.
著者
中井 信介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.38-50, 2013-01-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
43

本稿では東南アジア大陸部の山村で広く行われている豚の小規模飼育について,タイ北部ナーン県におけるモンの山村の事例に基づいて,その実態を明らかにした.特に,1)豚の形質,2)豚への給餌,3)豚の利用形態,の3点を明らかにすることから,山村における現在の豚の小規模飼育の継続要因を考察した.その結果,タイ北部の山村において豚が継続して飼育される要因として,年に一度行われる祖先祭祀での供犠利用に基づく宗教的要請と,正月祝いなどの慶事の宴会利用に基づく他家との関係を確認するための社会的要請が定期的にあることが示された.さらに,小規模な飼育が成立している要因として,豚の餌についての技術的・労働力的要請が示された.すなわち,豚の餌はバナナの葉と茎など山村周辺の自然に由来するものであり,これらは潤沢に存在するが長期貯蔵が不可能であり,毎日自力で採取する必要があるために,各戸の飼育規模が規定されていることが明らかとなった.
著者
松田 睦彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.199, pp.11-24, 2015-12-25

小稿は人の日常的な地域移動とその生活文化への影響を扱うことが困難な民俗学の現状をふまえ,その原因を学史のなかに探り,検討することによって,今後,人の移動を民俗学の研究の俎上に載せるための足掛かりを模索することを目的とする。1930年代に柳田国男によって体系化が図られた民俗学は,農政学的な課題を継承したものであった。柳田の農業政策の重要な課題の一つは中農の養成である。しかし,中農を増やすためには余剰となる農村労働力の再配置が必要となる。そこで重要となったのが「労力配賦の問題」である。これは農村の余剰労働力の適正な配置をめざすものであり,柳田の農業政策の主要課題に位置づけられる。こうした「労力配賦の問題」は,人の移動のもたらす農村生活への影響についての考察という形に変化しながら,民俗学へと吸収される。柳田は社会変動の要因として人の移動を位置づけ,生活変化の様相を明らかにしようとしたのである。しかし,柳田の没後,1970年代から1980年代にかけて,柳田の民俗学は批判の対象となる。その過程で人の移動は「非常民」「非農民」の問題へと縮小される。一方で,伝承母体としての一定の地域の存在を前提とする個別分析法の隆盛により,人の移動は民俗学の視野の外へと追いやられることになった。人の日常的な移動を見ることが困難な民俗学の現況はここに由来する。今後,民俗学が人びとの地域移動が日常化した現代社会とより正面から向きあうためには,こうした学史的経緯を再確認し,人びとが移動するという事象そのものを視野の内に取り戻す必要がある。Regular population movements between regions and their impacts on lifestyle and culture are difficult topics for today's folklorists to address. In order to identify the causes of such difficulties, this paper examines the history of folklore studies. The end goal of this examination is to find clues as to how future folklore studies can address the issue.The folklore studies systematized by Kunio Yanagita in the 1930s were derived from agro-politics. One of the major agro-political issues he was interested in was the development of medium-scale farmers. In order to increase their number, rural surplus labor needed to be reallocated. What was important there was the issue of labor allocation to make full use of rural surplus labor. This was a main focus of Yanagita in his research on agricultural policies. It was later absorbed by folklore studies while being transformed into the issue of impacts of population movements on rural life. Yanagita regarded population movements as a factor of social changes and examined the phenomenon to reveal changes in lifestyle.His folklore studies, however, were criticized after his death, in the 1970s and 1980s, during which the issue of population movements was trivialized to the issues of "non-folks" and "non-farmers." The rise of a separate analysis method based on the assumption that there were communities that served as bases for transmitting tradition also marginalized the issue of population movements from folklore studies. This is why regular population movements are difficult topics for today's folklorists to deal with.Now that we are living in a society where inter-regional population movements have become very common, it is essential for folklorists to recognize the above-mentioned historical context of folklore studies and incorporate the perspective of population movements into their studies.
著者
鳥養 孝好
出版者
別府大学考古学会
雑誌
考古学論叢
巻号頁・発行日
no.1, pp.115-122, 1973-04
著者
Katsuyuki V. Ooyama
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.369-380, 1982 (Released:2007-10-19)
参考文献数
23
被引用文献数
48 or 0

航空機観測の進歩に伴ない,台風の一般構造およびエネルギー収支については,1960年代の初めごろまでに.かなりよくわかってきた。しかし,これらの知識を力学的に統一して台風の生成発達を説明する理論は容易に生れなかった。現在の台風理解の因となった最初の発達理論が出るためには,力学的問題としての台風の認識,特に種々の要因の相対的重要度,を再考する必要があった。雲のパラメータ化が成功の原因のように云われるが,実は,問題認識上の変化がそのような雲の扱いを一応許されるものとした。雲のパラメータ化を技術的にのみ応用すると,その後の種々の線型理論(いわゆるCISK)に見られるような物理的混乱を引きおこす。一方,台風の理解のためには,線型理論は不充分であり,理論の概念としての妥当性および限度は非線型数値モデルによる実験によってのみ評価されることとなった。数値モデルの進歩により,台風成生の理解のためには,雲のパラメータ化を取り除く必要があることもわかってきた。この論文は,歴史を逆転するかの如く見える最近の発展の裏にある真の進歩を概念的に解明することを目的とする。