著者
井上 孝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.87-100, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
44

筆者は,2015年6月に「全国小地域別将来人口推計システム」の試用版を公開した.このシステムは,小地域(町丁・字)別の長期(2015~2060年)にわたる日本全国の推計人口(男女5歳階級別)を,初めてウェブ上に公開したものである.システム構築にあたっては,小地域の人口統計指標を平滑化する新たな手法を提案した.その後,本システムにはさまざまな改良が加えられ,2016年7月に正規版が公開されるに至った.本稿では,まずこのシステム開発の経緯に言及したあと,システムの理論面の根幹である,新しい平滑化法の概要を述べる.つづいて,推計方法と推計精度を中心に本システムの概要を述べたあと,その操作方法について解説し,最後にむすびに代えて今後の展望を示す.
著者
阿部 和時 黒川 潮 竹内 美次
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.225-235, 2004-09-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16
被引用文献数
5 or 0

間伐は健全な人工林を成立させ, 良質な木材を生産するために欠くことのできない重要な施業である。近年, 日本の人工林では森林・林業を取り巻く情勢が悪化して間伐を実施することができず, 細い木が林立した立木本数密度の高い人工林が増えている。このような林分では根系の発達が悪く, 森林が持つ表層崩壊防止機能が劣るのではないかとの懸念が強い。このため, 既往の研究をもとに間伐の影響も加えた森林の崩壊防止機能を評価できる方法を提案することを目的とした。ここでは日本の主要造林樹種であるスギの人工林を対象とした。本手法を提案するに当たり, 立木密度1400本/haの間伐林分と3400本/haの非間伐林分における根系分布状態を比較調査した結果, 根の全体積や深さ方向への体積分布, 最大分布深さ等について両者の間に明瞭な違いがなかったため, 根の分布量推定には同じ方法を用いることにした。また, 間伐された木の根が徐々に腐朽して崩壊防止機能が減少する過程を根の引き抜き試験によって調査したところ, 間伐後約10年で根の引き抜き抵抗力は消失することが明らかになった。これらの調査結果を加え, 間伐・非間伐林分における崩壊防止力の変化を評価できる手法を完成した。この手法を用いてシミュレーションしたところ, 強い間伐を多く実施した林分の方が崩壊防止力は低いことが示された。特に, 30~40年生以上の壮齢林における間伐は崩壊防止力の上昇傾向を大きく鈍らせた。しかし, 一般的に間伐が15年生頃から行われることを考えると, 表層崩壊が多発しやすい20年生以下の幼齢林では間伐の影響が現れることはなかった。また, 20年生以上の林分で一般的な強度の間伐が行われても, 斜面安全率が1.0を下回らないことが示された。この結果から, 間伐は病中害や気象害などに強い健全な森林を造成するために実施し, このような健全な森林が形成されることで必然的に崩壊防止機能も発揮されると考えるべきであることを指摘した。
著者
矢向 正人
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.12-23, 1992-12-31
被引用文献数
1 or 0

Music is a systematizing of time, and various characteristics of time are reflected in music. A singular point of time passes is the present, but the present time which we understand practically, has range. The present range is different, and it is dependent on the line of connection. Also in music the present has range. For example, it can either be a tone or a first motif. Interpretation of music is changed according to which range is selected as the musical present. The various range of time according to how to take the present, is inseparable from the hierarchy of music. In concrete terms, the variety of the present range is closely related with the difference between the hierarchical units, the lower stage (short unit) and the higher stage (long unit). That is to say, the diversity in the choice of the present range proves musical hierarchy. This paper considers, by way of a schematic model, how hierarchical characters which musical present has are related with meter which is another factor that composes musical time.
著者
北尾重政 画
出版者
中村小兵衛[ほか1名]
巻号頁・発行日
1771

北尾重政画。歌舞伎風俗絵本。半紙本3巻合1冊。明和8年(1771)正月、江戸芝切通・中村小兵衛、中村忠治刊。墨摺り筆彩。蔵書印「談洲楼燕枝」他。現状は上下2巻本のような外観を呈するが、丁付によれば、下冊は中・下巻の合綴であると判断される。莫逆新泉陳人の序に「武江は霜月時を違へす、旭に向ふ三番叟絶すとふたりの大入、其繁昌を北尾氏の画に写し、三家栄種と題し」云々とある通り、江戸の歌舞伎の繁栄ぶりを描いたもの。上巻は、題名の「三家」に当たる中村座、市村座、森田座の起源を中心に扱い、中巻は顔見世の様子を花道、鶉桟敷、下座、切落客、桟敷客、仕切り場など、下巻は見物の貴賤、三階(楽屋)、役者、乗り込み、表がかりなどで、随所に油、煎餅、そば切りの見世の店頭図を挿入する。原題簽の角書きに「劇場風俗」とあるように、当時の歌舞伎を取り巻く風俗、実態を様々な角度から照射する。同趣の題材を扱った絵本、絵入り本に勝川春章の安永9年(1780)刊『役者夏の富士』、歌川豊国の享和元年(1801)刊『俳優画図三階興』などがあるが、それらの魁ともいうべきもの。伝本極稀。(鈴木淳)
著者
石塚 喜明
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.248-263, 1940-04-25 (Released:2017-06-30)

The author studied the causal nature of the toxic action of copper-ions on the growth of rice plant. The growth of the rice plant compared, in water culture, under the following conditions : - (a) The root is placed in the nutrient solution without copper. (b) The root is placed in the nutrient solution with copper. (c) One half of the root is placed in the solution without copper while the other half with. And the following conclusions are obtained. (1) The rice plant absorbs easily copper-ions in the nutrient solution. (2) The greater part of copper-ions absorbed is fixed in the root. The function of the root, especially its absorptive function, is thereby injured. (3)This injurious effect inhibits the root from absorbing the further amounts of copper-ions which seem to protect itself from the further action of copper. (4) The absorption of nutrients is also inhibited. Then the plant growth does not proceed normally. (5) Though onehalf root is placed in the nutrient solution with copper the plant does not suffer an injurious effect even in the concentration of 100 ppm of copper-ions if the other half is placed in the solution without copper. When the entire root is placed in the nutrient solution containing copper the plant dies in a short time even in the concentration of 50 ppm of copper-ions. (6) The rice plant growth well until the copper content of the top reaches the concentration of 100 gamma per 1 g of air-dried sudstance, regardless of the supply of nutrient solution.
著者
天野 篤 松下 訓 山本 平 稲葉 博隆 桑木 賢次
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-07-25)

局所脂肪は隣接臓器の状態を反映するとともにその臓器にも影響を及ぼすことが示唆されている。本研究では動脈硬化性疾患の代表である虚血性心疾患に対する手術の際に皮下脂肪、冠動脈周囲および内胸動脈周囲の3か所の脂肪を採取し解析、脂肪の質にどのような差があるのか検討を行った。一部の炎症性サイトカインや炎症性マクロファージの発現は冠動脈周囲で最も高く、皮下で最も低かった。一方で血管新生関連因子は内胸動脈周囲で最も高かった。線維化マーカーは冠動脈周囲の発現が最も高く、コラーゲンは皮下脂肪で最多であった。このように皮下脂肪と血管周囲脂肪、さらにはその血管の状態により異なる脂肪のプロファイルを示していた。
著者
北嶋 志保
出版者
Hokkaido University(北海道大学)
巻号頁・発行日
2015-03-25

患者中心の医療が進められており,患者が治療に主体的に参加し,治療方法を選択することが求められている.しかし,病気や診断方法,治療方法が複雑であるため,突然病気を患った患者がこれらを正しく理解し,判断,決定することは容易ではない.患者の意思決定や治療に対する積極性を促し,QOL(生活の質)や健康状態に良い影響をもたらすためには,医療に関する必要な情報を取得し,理解,活用する力が患者自身に求められている.ところで,情報化社会の進展に伴い,誰でも容易にインターネット上に情報発信が可能となっている.そのため,インターネット上に存在する患者やその家族によって発信された情報が近年注目されている.実体験に基づく医療情報は患者の不安を軽減させたり,励みとなる可能があることに加えて、大規模かつ即時的な情報は,既存の調査を上回る可能性がある.しかし,人手で膨大なデータから,求める情報のみを取捨選択し,収集するには多大な労力が必要である.また,人手による検索では,悪い面ばかり無意識に注目し収集してしまうといった問題点が挙げられる.したがって,本研究は,インターネット上から得られる患者の実体験情報を自動的,網羅的に収集,提示することで,患者の判断材料や励みとなるシステムの構築を目的としている.近年,自然言語処理技術を用い,医療カルテから薬剤名や病状を特定する研究が進められている.著者も医療カルテやブログ記事を対象とし,薬剤名や症状名などの医療用語の位置を機械学習により特定する研究を行ってきたが,「頭痛」のような症状名は抽出できても「頭が痛む」のように対象と評価のセットで記載された症状については抽出の対象としておらず,また非専門的な表現にも対応しきれていないなどの問題点があった.本研究で著者が対象とするブログ記事も専門家ではない患者やその家族によって書かれたものであるため,専門家によって書かれたカルテに出現する用語や言い回しとは異なる表現が使われることが多いことが問題点として考えられる.そのため,本学位論文は闘病ブログに現れる表現の多様性を損なわず,適切に抽出するシステムを構築して行った研究について述べている.医療情報のなかでも,医薬品は治療において必要不可欠なものであるため,医薬品の効果や付随して起こる副作用についての情報を取得することは,患者にとってよりよい治療につながると考えられる.本学位論文では,目指すシステムの第一段階として,患者によって書かれたブログ記事から,薬剤の服用による変化,効果,副作用を,(薬剤,対象,効果)の三つ組で抽出するシステムの構築・提案を行った.実際にブログに出現する薬剤の効果,副作用に関する記述の特徴を調査し,その際用いられる特定の表現を収集し,手がかりとした.その手がかり語と構文情報を考慮したパターンマッチングにより抽出を行う.専門用語や評価表現に着目した抽出を行わないため,話し言葉で書かれたブログの表現の多様性を保持した抽出が可能であり,例えばこれまで抽出が困難であった擬音語や擬態語で書かれた評価表現も収集することができる点に本研究の独創性がある.ブログに出現する薬剤に関する効果,副作用の記述に対し,手がかり語を用いたパターンの有効性を確認するため,ブログの要約文であるスニペットを対象に評価実験を行った.一般的に意見抽出に用いられるパターンマッチング手法の評価結果と比較したところ,適合率において40.7ポイント高い42.1%という優位性のある結果を示し,本手法の有効性を確認することができた.要するに,従来の意見抽出に用いられる「薬剤名→対象」「対象→効果」(矢印は係り受け関係を示す)がブログに出現する薬剤に関する情報には不適切なことが多く,提案した「薬剤名→効果」「対象→効果」のパターンが適していることが明らかとなった.しかし,再現率は6.2%と低い結果となった.その原因として,大きく2つ考えられる.手がかり語が存在しない,助詞の省略といった理由から要素が存在する場所を特定することの誤りによって出力ミスまたは出力が得られないこと,また抽出された要素が,三つ組の要素として不適切であることである.これらの問題を解決するため,二つの改善手法を提案した.第一に,提案したパターンが当てはまらない場合についても抽出を可能にするため,手がかり語が存在する場合,しない場合について複数のパターンを提案し,それらを組み合わせて抽出を行った.その結果,再現率が24.8ポイント向上し31.0%となり,より柔軟な抽出が可能となったことが示された.また,評価表現は擬音語や擬態語など多彩な表現で記述されることが多いため,評価表現辞書に存在する表現では不十分なことが多い.しかし,薬剤の効果,副作用が現れる対象は身体の部位や感情など,ある程度限定されている.そこで第二に,対象要素の適切性を判断することにより,適合率の向上を図った.薬剤添付文書中に存在する対象要素として用いられる可能性のある単語を収集し,辞書の作成を行った.このようにして作成した辞書をフィルタとして用いることで,適合率が15.8ポイント向上し57.9%となり,対象単語に対するフィルタリングの有効性が明らかとなった.さらに,スニペットのみならずブログ全文を対象とし,システムの有効性を確認した.システムの改善に役立てるため,薬剤の効果,副作用が書かれたテキストの特徴を解析し,複数のパターンに分類されることを示した.今後は,意味解析を用いて文の構文パターンを分類し,最適な抽出パターンを判別,適用すること,照応解析により薬剤名が含まれない文からも抽出を行うこと,モダリティを考慮した抽出が必要であると考えられる.
著者
田上 善夫
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.169-194, 2010-11

本論では,風の祭祀にかんして,まず現在の実態を明らかにする。とくに風の祭祀の分布密度の高い,信越地方とその周辺を例として,特色のある民間行事をとりあげる。こうした風の祭祀について,とくに以下の3点から分析を加える。まず共通点の多い,信州とくに諏訪周辺の風の祭祀からの分析である。次に記紀に始まる古文献にみられる風の祭祀からの分析である。さらに風の三郎とかかわりの深い,全国に進出した諏訪信仰からの分析である。最後にこれらの分析に基づいて,風の祭祀にみられる風の観念について,検討を試みる。
著者
是枝 裕和 泉 恵理子
出版者
日経BP社 ; 2002-
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.4-7, 2015-09

「同じ現場」というものはありません。物語、役者が変われば、カメラの位置も変わるはずです。でも、自分の〝型〟でこなそうとする。経験が増えると、「これでいい」「それがセオリーだ」と思ってしまうんです。そうならないように自分をどう戒めるか。
著者
Fumiko Tomiyama Ryu Watanabe Hiroshi Fujii Yukiko Kamogawa Yoko Fujita Yuko Shirota Takashi Nakamichi Hiroshi Sato Tomonori Ishii Hideo Harigae
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1427-1432, 2015 (Released:2015-06-01)
参考文献数
18

A 71-year-old man was admitted to our department due to arthralgia and renal dysfunction. A physical examination disclosed swelling of the right shoulder and left wrist joints. Laboratory tests showed elevated serum IgG4 and creatinine levels, and magnetic resonance imaging of the wrist revealed bone erosion and synovitis. In addition, fluorodeoxyglucose positron emission tomography showed uptake in the submandibular glands, pancreas, kidneys, and affected joints and a renal biopsy revealed tubulointerstitial nephritis with the infiltration of IgG4+ plasma cells. The patient was subsequently diagnosed with IgG4-related disease (IgG4-RD) and successfully treated with corticosteroid therapy. This case suggests that erosive arthritis may occur in patients with IgG4-RD.
著者
佐藤浩敏 著
出版者
東北史刊行会
巻号頁・発行日
1917