著者
尾上 哲治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.1021-1032, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
97

日本列島のジュラ紀付加体中には,パンサラサ海の遠洋域で堆積した三畳系〜ジュラ系層状チャートが広く分布する.層状チャートは,一般に泥質部と珪質部の互層から構成され,主に大陸起源の風成塵からなる泥質部の堆積と,生物源(放散虫)シリカの深海底へのフラックス増加による珪質部の堆積が,ある一定周期で繰り返し起こり有律互層が形成されたと考えられている.しかしながら珪質部において生物起源シリカフラックスがなぜ増加するのかといった,堆積環境の変動要因については明らかにされていない.本論では,未解決である層状チャート珪質部・泥質部互層の堆積機構を理解するために,(1)珪質部・泥質部の堆積速度,(2)珪質部・泥質部堆積時の古環境,(3)珪質部層厚変動の要因という3つの問題について総括した.
著者
野崎 達生 藤永 公一郎 加藤 泰浩
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.995-1020, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
147

日本列島は主に過去4億年以降の付加体から構成されており,付加体中には古海洋底で生成した様々な鉱床が胚胎している.本論文では,別子型硫化物鉱床,層状鉄マンガン・マンガン鉱床に関する成因論の進展と未解明の課題をレビューする.三波川帯に分布する別子型鉱床は遠洋域の中央海嶺で生成し,ジュラ紀後期海洋無酸素事変によって保存された.現地性緑色岩を伴う四万十帯北帯の別子型鉱床は,白亜紀後期の海嶺沈み込み現象に付随して生成した.他のメランジュ中に胚胎する別子型鉱床については未解明の点が多い.層状鉄マンガン鉱床は,中央海嶺近傍の熱水性堆積物を起源とし,緑色岩を伴う層状マンガン鉱床は海山近傍の熱水性堆積物に由来する.チャート中に胚胎し緑色岩を伴わない層状マンガン鉱床は,貧酸素・高マンガンの深層水に高酸素・貧シリカの表層水流入によって形成したと考えられるが,マンガンの究極的な起源についてはいまだ不明である.
著者
佐藤 峰南
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.983-993, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
72

地球科学の最も重要な発見のひとつである白亜紀/古第三紀(K/Pg)境界の白金族元素の異常濃集が報告されてから30年以上が経過した.それ以降,世界中のK/Pg境界層から白金族元素の異常濃集が検出されている.日本の付加体である三畳紀-ジュラ紀の層状チャートは,非常に遅い堆積速度(1000年で数mm以下)をもつ遠洋性深海堆積物であり,大陸起源物質の混入が少ないという特徴を持つ.層状チャートは,堆積速度が遅く,連続的な堆積物であることから,層状チャート中には地質時代を超えた地球外起源物質付加の記録が残されている.本稿では,日本の遠洋性堆積物中に保存された後期三畳紀の巨大隕石衝突による地球外起源物質の流入履歴について,地球化学データを用いてレビューした.層状チャート中の白金族元素およびオスミウム同位体の地球化学データは,隕石のタイプや種類を推定する上で非常に有用な情報を提供する.
著者
宇野 康司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.967-981, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
110

西南日本に分布する三畳紀・ジュラ紀層状チャートのこれまでに蓄積された古地磁気データについて,その微弱な初生磁化からどの程度の精度で過去のプレート運動や堆積場の古緯度が読み解かれるかを議論し,また,チャートが記録する二次磁化についての情報を整理した.これまでに報告されているチャートの初生磁化方向の極性判断を行い古緯度を求めた結果,三畳紀中期には赤道付近で堆積していたことが示された.チャートはその後,南中国ブロックの東縁に付加した可能性が高い.西南日本のチャートは複数の二次磁化成分を記録しており,磁化の獲得機構による分類では粘性残留磁化,熱粘性残留磁化,および化学残留磁化の三種類が存在している.このうち熱粘性残留磁化と化学残留磁化はそれぞれ,西南日本の600km離れた二つの地域間における類似性がみられ,広域的な二次磁化であることが示唆される.
著者
上松 佐知子 鎌田 祥仁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.951-965, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
179

本論文では放散虫とコノドント化石に関する過去25年間の研究成果を振り返る.放散虫生層序学分野では,中期古生代から中生代までの多くのデータが蓄積されると共に,化石帯の分解能が大きく向上した.コノドント化石は90年代以降,特にペルム系と三畳系の各階境界を定義する国際的な示準化石として重要性が増している.今後は放散虫とコノドント生層序の相互較正,更に生層序と年代測定学的尺度との対比を積極的に行っていく必要がある.生物学的研究については,放散虫の系統解析や生体飼育に関して我が国から多くの研究が発信され,知見が蓄積された.また付加体地域からは三畳紀コノドントの良質な標本が多数報告され,コノドントの古生物学的研究に貢献している.今後はこれらの研究を更に発展させると共に,微化石研究の一般への普及および次世代を担う若手研究者を育成していくことが重要である.
著者
武田 康祐
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.105-118, 2018-03-28

安倍内閣では,人口減少,少子高齢化に真正面から立ち向かうという強い決意の下に,「一億総活躍社会」の実現を最重要課題に掲げている。その最大のチャレンジとして位置づけられたのが「働き方改革」である。働き方改革については,総理が議長,労使のトップを含む有識者からなる「働き方改革実現会議」を開催し,議論を積み重ね,合意形成した「働き方改革実行計画」を決定した。「働き方改革実行計画」においては,同一労働同一賃金の実現に向け,正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で,待遇差が存在する場合に,いかなる待遇差が不合理なものであり,いかなる待遇差が不合理なものでないかを示す政府のガイドライン案を示すとともに,ガイドライン案の実効性を担保するため,裁判で救済を受けることができるようにするための法改正の方向性を示している。また,長時間労働の是正として,経団連及び連合による労使合意を踏まえ,従来,上限なく時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても,上回ることができない罰則付きの上限を設定することとしている。その他,テレワークや副業・兼業など柔軟な働き方がしやすい環境整備,女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備,病気の治療と仕事の両立など,その他の課題についてもその方向性を示している。その後,労働政策審議会で法律案要綱が答申され,厚生労働省としては法案の国会提出を目指している。
著者
茶谷原 昭義 杢野 由明 坪内 信輝 山田 英明
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.272-280, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1

ダイヤモンドは超高圧安定相であることから大型結晶の合成が困難であり、応用は工具など硬度を利用した用途に限られていたが、大きさとコストの課題をクリアできれば、その用途は計り知れない。特に究極の半導体と称され、半導体開発ロードマップ上では、炭化ケイ素SiCや窒化ガリウムGaNの次に位置している。高温動作が可能であり、物質中最高の熱伝導率が活かせるパワーデバイスが実現すれば、例えば、車載用インバータを冷却フリー化でき、低電力損失と冷却システムの軽量化の両面から省エネに貢献できる。本稿では、大型化が可能な気相合成による単結晶ダイヤモンド合成と難加工材であるダイヤモンドをウェハ形状にする技術開発について述べる。

2 2 2 0 OA 明治俳諧史話

著者
勝峯晋風 著
出版者
大誠堂
巻号頁・発行日
1934
著者
リー テジョン ソン ユンホ
出版者
THE GEOTHERMAL RESEARCH SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本地熱学会誌 (ISSN:03886735)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.207-213, 2012-10-25 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8

韓国での地熱利用は最近の10 年間に著しい成長をとげた。中でも地中熱ヒートポンプ(GHP)が際立っており,それは主として,さまざまな補助金制度,研究開発への支出,新エネルギー・再生可能エネルギー利用を公的機関に義務づける法令,電力料金定額制度等を含む,強力な政府支援によるものである。深部地熱資源に関しては,韓国は火山性の高エンタルピー地熱資源を持たないものの,地下深部には莫大な量の地熱資源がある;例えばEGS 技術を用いれば6.5 km までの深度に19.6 GWeの地熱発電ポテンシャルがあると評価されている。EGS による地熱発電のための最初の概念実証プロジェクトは,ポハンで2010 年12 月に開始された。EGS による地熱発電が5 年間のうちに実現する予定である。国家地熱技術ロードマップ(TRM)は,2030 年までに200 MWe の設備容量導入を達成する目標を定めている。国家地熱TRM に基づいた研究開発プログラムは,全国的なGHP システムとEGS システムの普及に対しその技術的な側面を支援していく。政府による助成金制度が続けられる限り,少なくともこの先5 年間は,急速なGHP の導入が続くと予想される。
著者
大内 翔平 伊藤 聡志
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
日本磁気共鳴医学会雑誌 (ISSN:09149457)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.29-32, 2019-02-15 (Released:2019-03-18)
参考文献数
5

Compressive sensing (CS) is an effective approach for fast magnetic resonance imaging (MRI). To improve the reconstruction accuracy and computational speed, we propose a novel deep architecture using deep learning. Experiments on MR image reconstruction demonstrate that proposed method significantly accelerates the reconstruction time, with image quality comparable to that of traditional iterative reconstruction.
著者
山根 信二
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.29, pp.199-204, 2018-08-12

教育のゲーミフィケーションとしてのクエスト授業 (Quest–based Learning) について,北米の実施例をモデルとしてローカライズおよび支援システムの試実装と中間評価を行った.まずクエスト授業と支援システムについて整理し,次に北米のゲーム産業と大学教育との連携によるクエスト授業の事例について述べる.必要とされる機能を実現するために従来の LMS のモジュールを拡張することでクエスト授業を支援する学習管理システムを構築した.プロトタイプ評価として,北米の大学におけるゲーム開発・プログラミングの QBL 科目の日本版の教材を開発・試運用して評価を行なった.ゲームデザインの観点から,クエスト学習支援するマップ機能を新たに考案し開発を行った.最後に今後の課題について議論を行う.
著者
Ken OKABAYASHI Takanori NARITA Saki TAKASHIRO Sawako NADAOKA Shuichiro KANAI Daisuke ITO Masato KITAGAWA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.369-372, 2019 (Released:2019-03-14)
参考文献数
16

This study was undertaken to establish a method for measuring mRNA expression by using real-time RT-PCR in the diagnosis of canine meningiomas. When performing real-time RT-PCR, it is essential to include appropriate control tissues and to select appropriate housekeeping genes as an internal standard. Based on the results of our study, RPS18 constitutes a suitable internal standard for the comparison of mRNA expression between normal meninges and meningiomas. The results showed increased mRNA expression of VEGFA and EGFR; however, mRNA expression of KDR was reduced. Measuring mRNA expression by using real-time RT-PCR with appropriate control tissues and internal standards can provide useful information to understanding the pathogenesis of canine meningiomas, which corresponds with immunohistochemical findings.
著者
Hidetaka NISHIDA Midori YAMAZAKI Hiroki SAKAI Sadatoshi MAEDA Hiroaki KAMISHINA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.365-368, 2019 (Released:2019-03-14)
参考文献数
25

A 4-year-old male Toy Poodle was presented with a history of status epilepticus. On presentation, neurological examination revealed a delay in postural reactions in the right pelvic limb. Magnetic resonance imaging showed a fluid-containing cystic lesion that compressed the mesencephalon, hippocampus, and amygdala. The cyst was surgically removed via left rostrotentorial craniotomy. The final diagnosis was an intracranial ectopic choroid plexus cyst. The patient has remained free of seizures for 18 months after surgery. This is the first case report of an intracranial ectopic choroid plexus cyst that was surgically removed in a dog.
著者
神林 潤一 鈴木 康弘 沖津 卓二
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.41-48, 2004-02-28 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

教室と廊下の間が, 壁や窓によって区画されないオープン型の普通教室が増えているが, 従来型の教室に比べ騒音環境の悪化が懸念される。そのため, 全教室がオープン教室である仙台市立の3小学校ならびに従来型普通教室をもつ小・中学校4校において, 教室内の騒音測定と現場の教師に対するアンケート調査を行い, それぞれの騒音環境について比較検討した。その結果, オープン教室の騒音レベルは, 明らかに学校環境衛生の基準値50dB (A) を超えていること, オープン教室内では児童も教師も隣接教室からの騒音に少なからず影響を受けていることが分かった。以上のことから, 学校の新設に際しては, 騒音に対する十分な配慮が必要であり, 既存のオープン教室に対しては, 適切な防音対策が望まれる。
著者
Hajime ASADA Osamu ICHII Hirotaka TOMIYASU Kazuyuki UCHIDA James K. CHAMBERS Yuko GOTO-KOSHINO Koichi OHNO Yasuhiro KON Hajime TSUJIMOTO
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.353-356, 2019 (Released:2019-03-14)
参考文献数
8

The mutations of TP53 gene are frequently observed in canine histiocytic sarcoma (HS). The objective of this study was to examine the distribution of tumor cells with TP53 gene mutations. Tumor tissues were divided into three or four regions and TP53 gene mutations were examined. TP53 gene mutations were detected only in parts of the HS tissues from six of the eight dogs, and the frequency of the mutant allele varied (0–65%) among the tumor regions. This study suggests that canine HS can exhibit intratumor heterogeneity. Further studies are needed to examine the clinical significance of the intratumor heterogeneity of TP53 gene mutations.
著者
Seoung-Woo LEE Hoon JI Su-Min BAEK A-Rang LEE Min-Ji KIM Sang-Joon PARK Seong-Kyoon CHOI Sungho YUN Tae-Hwan KIM Kyu-Shik JEONG Jin-Kyu PARK
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.269-273, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
15

A 2-year-old castrated male mongrel dog presented with a well-demarcated fluctuant dermal mass, located on the back of the neck. Grossly along with cystic structures filled with a black greasy fluid, when cut open. Microscopically, the mass was multi-lobulated. The lobules consisted of neoplastic basaloid cells and showed central degeneration, forming multiple central cystic structures filled with dark melanin-pigmented materials. Immunohistochemically, the neoplastic cells were strongly positive for CK14 and partially positive for CK19, but negative for CK7, CK8/18, CD34, S-100, Melan-A and α-SMA. Based on the findings, the present case was diagnosed as a feline-type basal cell tumor characterized by cystic structures filled with abundant black fluid.