著者
北崎 朋希
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.640-645, 2017

1998年、ニューヨーク市は歴史的建造物の保全活用を目的として、ミッドタウン特別地区シアター街区の容積移転制度の拡充と負担金制度の導入を行った。この容積移転制度の拡充によって、従来の手法では容積移転が困難な場所にあった劇場を中心に59.7万平方フィートの未利用容積が移転された。また、この負担金制度は、劇場から開発権を購入したデベロッパーから859万ドルを集めた。この資金は、劇場の保全を直接支援するのではなく、新規顧客の開拓や新たなミュージカルやストレートプレイの政策支援に活用されている。これは、シアター産業が安定的に成長することで、劇場所有者が施設の保全や活用に自然と注力するというサイクルを生み出すという考えに基づいている。
著者
小柳 憲司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.625-628, 1998-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
7

鉄欠乏性貧血による異食症の影響が大きいと考えられた抜毛癖の症例を経験した.患児は毛髪を抜いては口に入れる行為を繰り返していたが, 経過中, 抜毛できないように髪を短くカットしたところ, 飼い犬の毛を切ってまで口に入れる行為が出現したため, 鉄欠乏性貧血の存在が疑われた.そして, 鉄剤の投与によって, 抜毛および(毛髪)異食症は急速に改善した.一般に, 抜毛癖は体毛を抜くという行為自体が快感であると考えられているが, 本症例の場合には, 抜く時の感覚そのものより, 抜いた体毛を口に入れる行為を快感に感じていたと思われる点で, 抜毛癖としてはやや特異なカテゴリーに入るといえるだろう.
著者
岩橋 瑠伊 矢吹 太朗
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.113-114, 2018-03-13

デマゴギー(デマ)が拡散されることを防ぐために,デマツイートをリツイートしているユーザーの特徴抽出を行う.そのために,現時点でデマだとわかっているツイートを過去に拡散したユーザの活動履歴を収集・分析する.分析結果をランダムサンプリングしたデータと比較することで,デマを拡散するようなユーザに共通する特徴を抽出し,その結果を報告する.
著者
佐藤 浩一
出版者
日本子育て学会
雑誌
子育て研究 (ISSN:21890870)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-20, 2018 (Released:2019-01-25)
参考文献数
48

本研究は、国内における体系的でエビデンスに基づくいじめ防止プログラムの開発に向け、各国のいじめ防止プログラムの内容を分析し、効果的いじめ防止要素を抽出・検討することを目的とした。各国のプログラムを概観すると、働きかけは「ソーシャル・エモーショナルラーニング」が中心となっており、実施手順は「システム化」され、プログラムのEBP性についても問われるようになっている。近年のいじめ対策は、当事者だけへの働きかけから、学校・家庭・地域も含めた全校的取り組み(エコロジカルアプロー チ)へのシフトや、諸科学やメソッドの統合化などの傾向がみてとれ、働きかけの対象とその特性の「包括的なアプローチ」が必要とされている。
著者
多田 隆治
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.218-233, 1998-04-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
57
被引用文献数
1 1

Since the ice core records from central Greenland revealed the presence and significance of millennial-scale large and abrupt climatic changes, widely known as Dansgaard-Oeschger [D-O] Cycles, it becomes the major objective of paleoclimatological researches to clarify their extent, nature, propagation mechanism, and driving force. Although the ultimate driving force is not yet understood, results of recent studies suggest 1) D-O Cycles are global phenomena, 2) they involve complicated interactions and feedback processes among the subsystems including atmosphere, cryosphere, hydrosphere, and biosphere, and 3) they seem tohave initiated from changes in atmospheric circulation.Catastrophic surges of Laurentide Ice Sheet called Heinrich Events are closely associated with D-O Cycles. Although Heinrich Events are likely to have been caused by free oscillationsof ice sheet growth and decay, they were probably not a cause of D-O Cycles but the events seem to have been phase-locked by D-O Cycles. Results of numerical modelling suggest the presence of multi-modes for global deepwater circulation. Switching among the modes is most likely caused by slight variation in hydrogical cycles which change the fresh water balance between Atlantic and Pacific.
著者
岡ノ谷 一夫
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.364-370, 1999-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
23

鳴禽類においては歌はオスがメスを性的に誘引するための行動である.また, この行動は幼鳥期に親から学習される行動である.一般に鳥の歌は複数の歌素を固定した順番に配列することでできている.しかし, ジュウシマツの歌は特異で, 複数の歌素を非決定的に配列してうたう.この配列規則は, 有限状態文法としてあらわすことができる.どうしてジュウシマツの歌はこのように複雑なのであろうか.まず, 解剖学的なレベルでの局所破壊実験により, 歌を制御する階層的構造が明らかになった.次に, 機能を知るためのメスの好みを測定する実験により, 複雑な歌はメスの性選択により進化したことが示唆された.さらに, ジュウシマツの祖先種であるコシジロキンパラのオスの歌はより単純であるが, メスは潜在的に複雑な歌に対する好みをもつことがわかった.以上の結果から, 複雑な行動の進化と脳の変化について考察し, ヒトの言語の起源に迫る手がかりとしたい.
著者
西澤 直子
出版者
慶應義塾福澤研究センター
雑誌
近代日本研究 (ISSN:09114181)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.143-163, 1997

資料一 はじめに二 小幡甚三郎関係資料の詳細と成立経緯三 小幡甚三郎の履歴四 アメリカ留学五 おわりに : 小幡兄弟への期待
著者
田中 善大 伊藤 大幸 村山 恭朗 野田 航 中島 俊思 浜田 恵 片桐 正敏 髙柳 伸哉 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.332-343, 2015 (Released:2017-12-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究では,単一市内の全保育所・公立小中学校の児童生徒の保護者を対象に調査を実施し,ASD傾向及びADHD傾向といじめ被害及び加害との関連を検討した。ASSQによってASD傾向を,ADHD-RSによってADHD傾向を測定した。いじめ被害及び加害は,関係的いじめ,言語的いじめ,身体的いじめのそれぞれのいじめについて測定した。保育所年少から中学3年生までの計8396名の幼児児童生徒のデータに対する順序ロジスティック回帰分析の結果,他の独立変数の効果を調整しない場合には,いじめ被害及び加害ともに,いずれのいじめに対してもASD傾向とADHD傾向の効果が示された。これに対して,他の独立変数の効果を調整した場合には,2つの発達障害傾向のいじめに対する影響は異なるものであった。いじめ被害では,全てのいじめでASD傾向の主効果が確認されたが,ADHD傾向の主効果が確認されたのは関係的いじめと言語的いじめのみであり,オッズ比もASD傾向より小さかった。いじめ加害では,全てのいじめでADHD傾向の主効果が確認されたが,ASD傾向ではいずれのいじめにおいても主効果は確認されなかった。これに加えて,学年段階や性別との交互作用についてもASD傾向とADHD傾向で違いが見られた。
著者
内藤 栄一
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.588-594, 2017-08-10 (Released:2017-08-19)
参考文献数
23
被引用文献数
1
著者
大阪湾海岸生物研究会
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
自然史研究 = SHIZENSHI-KENKYU, Occasional papers from the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786683)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.17-40, 2018-12-26

2011年から2015年にかけて,大阪湾南東部の6ヵ所の岩礁海岸において潮間帯生物相調査を実施した。その結果132種の海藻,1種の海産顕花植物および479種の動物が記録された。出現種を報告するとともに,同様の方法でこの海域で行った前回の調査結果と比較する.
著者
榎村 寛之
出版者
法制史学会
雑誌
法制史研究 (ISSN:04412508)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.53-79,en5, 2010-03-30 (Released:2017-03-01)

本稿は律令国家の初期段階における神祇祭祀法について、社会に対する法の効能と社会における法の受け取られについて考察するものである。国家的な祭祀とは、習俗ではなく、国家の形成過程における重要な「政治」であった。七世紀後期の日本社会においては、祭祀は税の体系を維持するほどの効力があった反面、全国的な統制は未成立だった。日本最初の総合的な法典である、「大宝律令」のうち「神祇令」は、「慣習としての祭祀」を「イデオロギー統制」に転化させる側面を持ち、祭祀に縛られた未開社会から社会が祭祀を規制し、国家が統制する文明社会への転機に出現した法といえる。しかしながら、社会体制の異なる唐の祠令から継授したという側面があるので、その内容には極めて不完全な部分が残されていたことが近年の研究により明らかにされている。神祇令の目的は、多様な神から、「神祇」と呼ばれる神を抽出することである。神祇とは、天神地祇のことで、「天皇中心の国家秩序を確認するために有効な神」であり、その基盤イデオロギーは天孫降臨であったと見られる。祠令が、中国の伝統的祭祀すべての規定を意識しているのに対し、神祇令は「未定型の祭祀を神祇官の下に法として整理する」ための法だということができる。神祇令は神を定義する法なのである。ところが、国家的注釈書である『令義解』では、神祇令の注解は、天神地祇の定義をしていないことをはじめ、総体に些末な語義の注釈に留まり、法の観念性やその実効性についての議論には至っていない。これが九世紀前半の律令法の理解の実態であった。神祇法を支える意識に大きな転換が見られるのは、一〇世紀に法細則を集成した『延喜式』の「神祇式」である。神祇式の条文からは、唐の祠令を読み込み、その解釈を日本社会に適合させようとする努力が読み取れる。例えば、国家的祭祀のシンボルである伊勢神宮は、八世紀末の政治改革によってその統制が強められ、国家的な位置づけが明確になるが、神祇式はその意識の下で書かれている。また、伊勢神宮に奉仕する未婚の皇族女性である斎王は、神祇令には定義されなかったが、神祇式では、天皇の命令で置かれることが明記されている。天皇祭祀の存在を前提にした事務規定に過ぎなかった神祇令とは違い、神祇式は、王権祭祀の内容にまで踏み込んで規定した法なのである。すなわち、延喜神祇式は単なる神祇令の細則ではなく、天皇の祭祀を含め、祭祀全般を法で規制することに一部成功した、画期的な法だといえる。神祇式によって、天皇の責任下でシステム化された国家祭祀体制が確立された。すなわち、地域に定着した「神祇」意識と国家祭祀の方向性がようやく連動し、共通した神意識の形成が形成される道筋ができた。それは「神祇令」という「理念的な統治法」が「神祇式」という「実効性のある行政法」へ転換したことを意味するのである。
著者
吉森 丹衣子 Taeko Yosimori
雑誌
国際経営・文化研究 = Cross-cultural business and cultural studies (ISSN:13431412)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.179-188, 2016-12-01

In recent years, self-affirmation has been attracting attention in the area of education and psychology, Since it was pointed out that Children’s self-affirmation of Japan is lower than in a foreign country of a children. For this reason, research and practice to raise the self-affirmation of children have been made. However, it is not a study about the increase of self-affirmation of college students so that, In this study, we investigated the influence factors on the self-affirmation of college students. As a result, it was found that anxiety abandoned and communication skills can affect the self-affirmation.
著者
及川 靖広 池田 雄介
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、光音響効果を用いた音源生成の理論を確立し、最終的にはそれを気体中に適用することで任意の音源を再生可能な空中音源の生成を目指している。本年度は、初年度の成果に基づき、物体表面を音源位置とする音響信号の再生を目指し、システム構築、実験を行なった。光学的音響計測器を構築し、音波生成の様子を確認した。具体的には、以下の課題について取り組んだ。(1)複数の周波数を再生可能なシステムの構築:初年度は光音響効果という物理現象の基礎的な特性を明らかにするため、正弦波などの単純な定常音の発生を対象としたが、レーザパルスの周波数を変えることにより複数の周波数の音を再生可能なシステムを構築した。レーザを金属、木材、炭化コルク等に照射して、音の発生を確認した。光を照射する物質との関係など、光音響効果に関わる様々な要因を実験により確認した。(2)音源のプロジェクションを目指した処理:可動式ミラーによりレーザ光照射位置を変えることができるシステムを構築し、光を照射した場所を音源とすることができることを確認した。このシステムにより移動音源を生成可能であることを実験により確認した。(3)光学的音響計測による音源近傍の計測:我々がこれまで開発してきた位相シフト干渉法と偏光計測技術を組み合わせた空気の屈折率変調を定量的かつ高速高空間分解能で計測可能な計測器を用いて、音波発生の様子を計測するために音源近傍の観測を行ない、音波発生の様子を可視化した。
著者
大橋 美幸
出版者
函館大学
雑誌
函館大学論究 (ISSN:02866137)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.59-92, 2018-10

北海道新幹線の開業3年目に、函館市等の街頭、イベントでアンケートを行い、開業前、開業直後と比較した(回収数3824)。 北海道新幹線の利用経験は函館5割、他の沿線5~6割、札幌3割であり、沿線だけでなく遠方からも利用されている。目的は道内外ともに観光が多く、開業直後から変わっていない。 沿線への開業の影響は、経済・社会全体に「プラス」、観光客数が「増えた」と函館、新幹線駅地元で5~7割に評価されており、おおむね肯定的に捉えられている。ただし、1年前に比べて実感は薄くなりつつある。 道外からの移動は、東北8割、北関東4割が新幹線を利用しており、東北で開業前のJR利用が移行し、北関東で飛行機からの一部乗り換えが起こっている。訪問先は函館のみが8割程度であり、開業直後から変わっていない。周遊につながっておらず、新幹線の開業効果を限定的なものにしている。