著者
藤田 翔 フジタ ショウ Fujita Sho
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.123-141, 2016-03-31

時間と空間とは何か?この問い掛けに関しては、紀元前より多くの議論が交わされてきた。近年ではこの問い掛けは、科学の最先端である物理学によって大いに解明されてきた。20世紀初頭にアインシュタインによって提唱された一般相対性理論によれば、時間も空間の一種であり、時空間そのものは構造を持っていて、その構造は存在している物体によって影響を受ける。時間の流れるスピードは一定ではなく、時空間は曲がっているという、当時の常識を越えた発想は、時空の哲学を益々飛躍させた。さらにその後も物理理論は休むことなく進展し、現代宇宙論や量子重力でも時空は4次元を超えて、物理の最も根本的な系(パラメータ)として扱われている。本論文は、その最も根本的とされる時空間の存在を、改めて哲学的にカテゴライズし、一般相対性理論の枠組みにおいて、時空の実在性にある種の答えを提供することを目的としている。時空に関してその存在を主張する実体説 (substantivalism) と、時空をあくまでモノの性質と見なす関係説 (ralationism) の長い対立を背景に、構造実在論(structural realism) という考え方を介入することによって、結局はいずれの相反する立場も突き詰めれば共通して、「時空の本質はその構造全体にある」ということに着眼していることを示す。
著者
淡野 将太 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.7, pp.311-314, 2007
被引用文献数
1

The present study categorized nicknames of Japanese undergraduates and examined their feelings toward nicknames. Results categorized nicknames into 12 categories: "nickname related to one's name", "name with -chan" (e.g., Yuki-chan), "famous person", "name with -kun or -san" (e.g., Yuki-san), "appearance", "nickname related to one's nickname", "psychological attributes", "another reading on Kanji of one's name", "occupational role", "object", "hometown", and "unidentified". And results indicated that undergraduates felt "nickname related to one's name", "name with -chan", and "name with -kun or -san" happier than "famous person" and felt "name with -chan" happier than "appearance".
著者
丸山 恵理 佐藤 実 小松 博史 澁谷 斉 清水 力
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.55-63, 2016-01-25 (Released:2016-03-10)
参考文献数
19

症例は65歳男性。2011年5月特発性心室細動の診断で植込み型除細動器(ICD)を装着し社会復帰。2012年9月自宅で突然意識消失,10数秒後に意識回復するも,ICD植込み後初の意識消失であったため入院。12誘導ホルター心電図により心室細動とICDの作動が確認された。心室細動のトリガーとなる心室期外収縮は左脚ブロック上方軸であり,このことから起源を右室下壁と推定し,アブレーションを施行した。さらに治療前後に12誘導ホルター心電図で認めた心室期外収縮について連結期と先行RR時間によるプロット解析を試みた。治療前後で回帰直線を比較すると勾配が明らかに異なり,治療効果の判定に有効であることが判明した。また,連結期/先行RR時間比を時間軸に並べることにより次の事が明らかとなった。本症例の心室細動発症前2時間には,さらにその前2時間と,心室細動発症後2時間に比較して,先行RR時間が有意に長く,かつ,連結期/先行RR時間比が有意に小さい心室期外収縮が繰り返されていた。先行RR時間の延長により再分極相に不安定要素が生じ,次の連結期/先行RR時間比が小さいことにより受攻期への刺激が続き,受攻性が高まり,心室細動発症に至ったのではないかという発症機序を推察した。更なる症例の集積と解析が望まれる。
著者
浜名 康栄 林 秀謙 新津 勝 江口 文陽
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.17-22, 2010
参考文献数
25
被引用文献数
1

テトラアミン類のスペルミンとグアニジノアミン類のアグマチンの分布に注目し,きのこの子実体105試料より酸抽出したポリアミン画分を高性能液体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーにて分析した.きのこ種としては,新規23種を含む90種(子嚢菌門の3種,担子菌門87種)であった.食用きのこ20種(13属)においては,各々同種の野生自生品種と市販栽培品種のポリアミン構成はほぼ一致した.プトレスシンやスペルミジンは90種に共通して存在したが,スペルミンの含有は10種に限定されていた.アグマチンは23種に主ポリアミン成分の一つとして検出された.イグチ科の8属におけるホモスペルミジンとカナバルミンの存在も追加確認した.帽菌亞網での子実体の傘部位と柄部位,腹菌亞網での殻皮とグレバと胞子塊,タマウラベニタケでの正常子実体と奇形菌糸塊についての比較では,スペルミンやアグマチン含量の差が顕著であった.
著者
山﨑 宏人
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.91-97, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
39

再生不良性貧血はT細胞を介した自己免疫疾患と考えられている。GPIアンカー型膜蛋白が欠損した細胞の増加や6番染色体短腕UPDによるHLAアレル欠失血球の出現はT細胞の関与を間接的に示している。再生不良性貧血患者の約1/3にクローン性造血を示唆する遺伝子変異が検出されることが報告された。ATG+シクロスポリンによる免疫抑制療法不応例に対しエルトロンパグが奏効するとの報告が注目されている。再生不良性貧血に対する造血幹細胞移植の治療成績を向上させるためには,前処置関連毒性の軽減とGVHD予防の強化が必要である。最近,心毒性の軽減を期待して,シクロフォスファミドを減量し,代わりにフルダラビンを併用する前処置が広まりつつある。しかし,混合キメラや二次性生着不全といった新たな課題が浮上している。前処置にATGやalemtuzumabを加えて,GVHD発症抑制の強化が試みられている。
著者
竹島 克典 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.158-168, 2013-06-30 (Released:2013-10-10)
参考文献数
25
被引用文献数
3 1

本研究は, 小学校において, 抑うつ症状を示す児童の仲間との社会的相互作用を行動観察し, その対人行動の特徴と機能的関係を検討することを目的とした。自己記入式の抑うつ評価尺度を用いて抽出した抑うつ症状を示す高学年児童10名について, 学校内の2つの場面で行動観察を実施し, 仲間との相互作用について低抑うつ児童10名との比較を行った。観察1では, 学校の休憩時間に抑うつ症状を示す児童の自然観察を行った。観察2では, グループの問題解決課題場面を設定し, 抑うつ症状を示す児童と仲間との相互作用を観察した。その結果, 抑うつ症状を示す児童は, 自然場面において孤立することが多く, 仲間との相互作用が少ないことが明らかになった。また, 観察2の結果から, 抑うつ症状を示す児童は, グループ場面においても孤立・引っ込み思案行動が多く, 仲間とのポジティブな行動のやり取りが少ないことが明らかになった。さらに, 相互作用の逐次分析から, 抑うつ児の孤立・引っ込み思案行動の下では, 仲間の攻撃行動が起こりにくいことが示された。 これらの結果から, 児童の対人行動および仲間の行動との機能的関係について考察し, 子どもの抑うつに関する対人モデルを検討した。
著者
平井 耕太郎 喜多 かおる 三賢 訓久 藤川 直也 北見 一夫
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.283-286, 2005-04

14歳.学校の健診で膿尿を指摘され受診した.1日15~20回程度の頻尿および1日に2~3個のパッド使用を要する尿失禁を自覚していた.排尿性尿路造影で骨盤内に6cm程度の円筒形と考えられる異物を認めた.問診では1年前にスプレー缶を自分で腟に挿入し,抜去しようとしたところキャップが腟内に残ったまま抜けてしまい,そのまま放置していたとのことであった.膀胱造影で膀胱後方への造影剤溢流を認め,膀胱腟瘻が示唆された.用手的に異物の除去を試みたが不可能であったため,全身麻酔下に腟内異物除去および経腟的膀胱腟瘻閉鎖術を施行した.腟内を膀胱鏡で観察すると腟口から約2cmのところに異物が認められ,非観血的に摘出できた.膀胱腟瘻は閉鎖術後3ヵ月で再発したため経腹的閉鎖術を施行し,以後再発はない
著者
広瀬 通秀
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02869756)
巻号頁・発行日
vol.15, 1978-03-31
著者
Yasuhiro HEISHIMA Yasutomo HORI Seishiro CHIKAZAWA Kazutaka KANAI Fumio HOSHI Naoyuki ITOH
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.15-0612, (Released:2016-03-18)
被引用文献数
1

We investigated the basic characteristics of indirect arterial blood pressure (ABP) measurement using a device that combines oscillometry and photoplethysmography in cats. Dobutamine was infused intravenously in four anesthetized cats. Direct ABP was measured by a catheter. Indirect ABP was measured from the left forelimb. Dobutamine significantly elevated both systolic arterial pressure (SAP) and mean arterial pressure (MAP) in a dose-dependent manner. The indirect SAP, MAP and diastolic arterial pressure (DAP) values were closely correlated with the direct ABP values (r=0.88, 0.89 and 0.83, respectively). The mean bias for SAP, MAP and DAP was 3.4, 0.2 and −2.4 mmHg, respectively. The indirect ABP measured by this device may be used to reliably monitor ABP changes in anesthetized cats.