著者
井上 暁子
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

旧ドイツ領にあたるポーランド北部/西部国境地帯が、1980年代以降に書かれたドイツ語・ポーランド語文学においてどのように表象されるかという問題を、とくにその独特な「わたし語り」による記憶の描かれ方に注目して分析した。当該国境地帯は、この地域在住のポーランド語作家の文学においては多層的な記憶のテクストとして表象されているが、社会主義末期西ドイツへ移住し、体制転換後両国を行き来する作家の文学においては、国境地帯をめぐる様々なディスクールが移動者の視点から脱構築される。さらに、体制転換に伴う創作環境・流通形態の変化と、題材・テーマ・手法への影響に関して、10名の作家にインタビューを行った。

2 0 0 0 OA 脳の病態解明

著者
貫名 信行 岩坪 威 井原 康夫 祖父江 元 西川 徹 岩坪 威 井原 康夫 祖父江 元 西川 徹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

「病態脳」の研究期間において学問領域を新たに展開し得た業績としては前頭側頭葉認知症や筋萎縮性側索硬化症ALSの病態関連分子としてのTDP-43の同定である。本研究班はこれに貢献するとともにALS関連分子として同定されたFUS/TLSの機能解析において先駆的な研究を展開し、またALSにおけるRNA editing病態の解析といった世界的にもユニークな研究を展開した。また神経変性疾患におけるタンパク質分解系の役割としてオートファジーの研究を展開し、その治療応用などの方向性も示した。アルツハイマー病やパーキンソン病の病態の基礎研究を進展させるとともにさまざまなモデル動物も作製できた。精神疾患においてはゲノム異常と関連する研究において先端的な研究を行い、新たな精神発達遅滞遺伝子の同定や一部の統合失調症の家系解析から新たな病態仮説を提唱した。またゲノム工学を用いた自閉症マウスモデルの作製にも成功した。さらにこれらの疾患関連遺伝子の遺伝子導入やノックアウトにより作製されたモデルマウスの行動異常解析が系統的に行われるようになり、今後の研究展開の基盤ができた。これらの研究の成果の一部はすでにNature, Nat Cell Biol, Nat Biotech Nat Struct Mol Biol, Cell等の一流国際誌やJ. Neurosci, Biol Psychiatryといった一流専門誌に多く発表され、これらを含む約1700編の英文論文が発表された。「統合脳」の一翼として活動することにより、病態脳科学という領域を形成し、今後の統合的脳疾患研究の基盤を形成することが出来た。またこれらの成果を一般に向け公開するとともに、「包括脳」として今後より広く研究支援活動を行うことも可能となった。本年度は5年間の「病態脳」研究成果をまとめ、冊子およびCDとして報告書を作成し、領域内外に公開した。
著者
齊藤 忠彦 中山 裕一郎 小野 貴史 木下 博
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,子どもの心を動かすことができるような音楽科教育のあり方について,脳科学からの検討を試みた。歌唱や鑑賞の具体的な授業場面を想定し,活動に伴う脳内のヘモグロビン濃度の変化をNIRSまたはfMRIを用いて計測し,そのデータをもとに考察を行った。その結果,歌唱の場面では,一人で歌う時より複数の人の声に合わせて歌う時の方が,脳内の賦活部位が拡がり,ブロードマン22野および25野,大脳基底核あたりが関与する可能性が高いことなどを指摘した。
著者
Tatiana A. Leonova Valentina M. Drozd Vladimir A. Saenko Mariko Mine Johannes Biko Tatiana I. Rogounovitch Noboru Takamura Christoph Reiners Shunichi Yamashita
出版者
(社)日本内分泌学会
雑誌
Endocrine Journal (ISSN:09188959)
巻号頁・発行日
pp.EJ14-0408, (Released:2014-11-05)
被引用文献数
3

Long-term management of patients with differentiated thyroid cancer (DTC) commonly includes TSH-suppressive therapy with L-T4 and, in case of postsurgical hypoparathyroidism, Calcium-D3 supplementation, both of which may affect skeletal health. Experience with female patients treated for DTC at a young age and who were then receiving long-term therapy with L-T4 and Calcium-D3 medication is very limited to date. This cross-sectional study set out to investigate effects of Calcium-D3 supplementation and TSH-suppressive therapy on bone mineral density (BMD) in 124 young female patients treated for DTC at a mean age of 14 years and followed-up for an average of 10 years. BMD was found to be significantly higher in patients receiving Calcium-D3 medication than in patients not taking supplements. The level of ionized calcium was the strongest factor determining lumbar spine BMD in patients not receiving Calcium-D3 supplementation. Pregnancy ending in childbirth and HDL-cholesterol were associated with a weak adverse effect on spine and femoral BMD. No evidence of adverse effects of L-T4 and of radioiodine therapies on BMD was found. We conclude that Calcium-D3 medication has a beneficial effect on BMD, and that TSH-suppressive therapy does not affect BMD in women treated for DTC at young age, at least after 10 years of follow-up.
著者
高畠 令王奈
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、既存のリアルタイムPCRをはじめとするDNA定量技術を評価するために、一桁台を含むごく少数の規定数N個のDNA分子を含む標準試料DNAの開発を試みた。そのために、標的DNAが直列にN個つながったDNA試料(標準DNA-N)を作製した。標準DNA-Nには、予め各PCR標的DNA配列間に制限酵素の認識配列を配置しておき、一定体積中に標準DNA-Nが1分子以下になるまで限界希釈し、さらに、制限酵素処理することによって、分子数が任意のN個からなる標準DNAの調製が可能となる。現在、PCRの標的配列を16個含む標準DNA-16までの開発に成功した。
著者
大澤 清 合田 憲人
出版者
独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究ではマルコフ連鎖モデルを野球の試合に適用し,選手ごとにその成績から定義される状態遷移行列を用いて得点の確率分布を求め,その結果から試合に勝つ確率を求めて選手を評価する手法を提案した.従来手法では打撃成績のみを用いて計算を行っていたが,本研究では守備成績の失策数をモデルに組み込み,より実際の野球に即した計算を行った.その結果,失策の多い野手が少ない野手に比べて1シーズンで2勝分程度の損失を守備成績によって与えていることが示された.またモデルに守備成績を加えたことで増加した計算量に対応するため並列計算環境を利用し,約2億1千万の打順から1時間22分程度で最適な打順を選ぶことが可能となった.
著者
寺尾 保
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、短期集中型高地トレーニングに焦点を絞って、末梢血液循環の動態、動脈硬化度に及ぼす効果について明らかにするとともに、自律神経系(交感神経及び副交感神経のバランス)の変化からも検討した。その結果、中高年者に対する標高1500m前後に相当する低圧低酸素環境下における2日間の歩行運動は、運動終了後の翌朝において、自律神経活動の適切な反応(健常型)がみられ、末梢血液循環を一時的に改善することが示唆された。週末を利用した「高地ウォーキング」は、定期的に継続すると安静時の自律神経系及び末梢循環を比較的早期に改善することが期待できると示唆された。
著者
篠原 文明 宮下 仁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、抗癌剤(5FU、CDDP)と上皮増殖因子受容体(EGFR)の分子標的治療薬(セツキシマブ)を併用した口腔癌治療法の検討と、腫瘍細胞に発現する特定酵素(群)がIFNG分解責任酵素として作用し腫瘍免疫を減弱する腫瘍免疫回避メカニズムについて解析した。セツキシマブは主にAktを阻害し、オートファジーの抑制により5FUのアポトーシスを増強させることが示唆された。各細胞株の培養系においてIFNGの濃度減少が見られ、TACEのmRNA発現に細胞間の差がみられた。質量分析からIFNG分解にTACEや他の酵素、KRAS遺伝子の関与が示唆された。

2 0 0 0 OA 字源

著者
簡野道明 著
出版者
北辰館
巻号頁・発行日
1925

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1913年09月03日, 1913-09-03

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1913年10月27日, 1913-10-27
著者
岩堀 健治 山下 一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.478-483, 2001-07-01
被引用文献数
2

現在ナノメートルサイズの機能構造体が注目されているが, 生物界では既にナノメートルオーダの生体分子が自己集合することでナノ機能構造体が実現されている。そこでこの生物における自己集合能を模倣した, 生体分子を用いたナノ機能構造作製プロセス"バイオナノプロセス"を提案する。この手法の有効性を示すため, 金属化合物を担特できるフェリチン分子の二次元結晶をシリコン基板上に作製し, そのタンパク質殻を熱処理により除去して導電性ナノドット配列の作製を試み, 成功した。現在更に発展形の実験を実施中である。
著者
窪田 暁 Satoru KUBOTA クボタ サトル
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural and social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.10, 2014-03-31

本稿の目的は、ドミニカ共和国(以下、ドミニカ)の移民送りだし社会としての面、およびトランスナショナルに展開する移民と故郷の人びととの相互交渉に注目し、そのなかから誕生した「ドミニカンヨルク」というイメージにドミニカ社会のどのような価値観が投影されているかについて考察するものである。そのうえで、このような相互交渉にもとづき生みだされた移民イメージが野球選手に移民としての役割を担わせることに結びついたことを明らかにする。 トランスナショナルな現象を扱う先行研究では、故郷の人びとを移民からの影響を一方的にうける(うけない)対象として捉えてきた。そこで描かれるのは、移民からの影響をうけて変容するコミュニティや非移民の姿であった。しかし、多くの人びとは移民からの最低限の送金でなんとか生活を送り、バリオ(共同体としての町、村)内に格差が拡大しないような節度あるふるまいを実践している。それを支えているのが、地域社会の伝統的な規範意識や価値観である。 しかしながら、現在のドミニカをめぐる経済状況は厳しく、より多くの送金を受けとりたいというのがバリオの人びとの本音であることも事実である。そうした状況のなかで、年々増え続ける移民に対して、一時帰国の際に華美で散財のかぎりを尽くす「ドミニカンヨルク」というステレオタイプ・イメージを創りあげ、国際電話やfacebookといったトランスナショナルな相互交渉を通して、移民にも「ドミニカンヨルク」像を演じさせることに成功したのである。さらに、こうした「ドミニカンヨルク」の役割を、野球選手に担わせることによって、今度は「野球移民」を誕生させることに繋がっているのである。 そこで本稿は、こうしたステレオタイプ・イメージの創出を、二国間にまたがるトランスナショナルな相互交渉の過程から明らかにする。そのうえで、伝統的な規範意識や価値観を武器に、新自由主義経済が蔓延する予測不可能で不安定な社会を生きぬくドミニカの人びとの生活戦略の在りようを示したい。Focusing on transnational discursive relations in the Dominican Republic, this article aims to investigate how behavior is symbolized in the process of creating the migrant image of “Dominican York.” I further consider how the process of creating this image produced the figure of the baseball migrant. Dominican emigration has increased substantially since the 1960s, and there are now about two million Dominicans living in the U.S.A. My fieldwork shows that they express a sense of still belonging to their homeland at two levels. The first is by keeping a direct connection through frequent calls to their homeland and sending remittances to their families. The second is reflected in the frequent return trips to their homeland. The existing studies on Dominican emigration dealing with transnationalism have focused on the unidirectional impact of migrants on their native country by their sending of remittances. However, these studies have paid scant attention to an important aspect of everyday cultural practice in the sending society, that is, the effect of this immigration on morale and behavior in the local community back home. Social conditions in the Dominican Republic, however, remain difficult, and it is still true that local people need to receive more remittances. In the transnational discursive relations, nonmigrants have used local knowledge to create a migrant stereotype image of luxury and ostentation in “Dominican York.” In so doing, they have allowed migrants there to perform this role, and this has been a factor in the birth of the baseball migrant. Here I indicate the process of how a stereotype image has been created through the transnational discursive relations of both migrants and nonmigrants. I will show the Dominican life strategy of survival with local knowledge in the face of a spreading, unstable, and unpredictable neo-liberal world.