著者
後藤 和彦
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、19世紀中葉における後発近代化を共有するアメリカ南部と近代日本において、「敗北の文化」に惹起され産出された公的文化言説、「ナショナル・ナラティヴ」が、その後に出現してきた私的言説としての文学にとってどのような意義をもったか、さまざまな文化テクストの実証的な分析によって歴史的に跡づけ、今後の両文学の本格的比較研究への新しい視座を切り開いた。
著者
中山 亨
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

キンギョソウの花色発現に関わるフラボノイド(アントシアニン・フラボン・オーロン)生合成関連酵素間の相互作用を酵母ツーハイブリッド法やBimolecularfluorescencecomplementation法などの各種の方法で解析した.その結果,キンギョソウ花弁細胞内でフラボンとアントシアニンの生合成酵素群が代謝酵素複合体を形成し,オーロン生合成関連酵素と空間的かつ機能的に仕分けられていることが強く示唆された.
著者
多田 耕三
出版者
シチズンファインテックミヨタ株式会社
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

目的:研究者は、科学技術人材を育成するために地域でロボット教室を企画実施している。参加者の技術レベルの向上により、現状教材の陳腐化が進み、参加者の要求を満たさなくなってきた。新規ロボット基板を開発し、教材への機能追加をはかり、教室の持続的な発展させる。方法:制御できるモーター数を現状の3個から4個に増やし、より広く機能の工夫ができる教材を開発する。その効果については、実際の教室と競技会で運用し、参加者の創作意欲の維持状態を観察し評価する。実証試験の競技会では、従来の3個モーターのロボットも参加し、4個モーターの新規教材ロボットの機能と比較することで、教材の実用性と有効性が検証できる。また、従来参加者の購入であったロボット制御基板については、手動コントロール回路とモーター制御+無線操縦回路の二つに分離し、前者を参加者の購入、後者を教室運営側の用意とすることで高機能化による参加者の経済的な負担増を回避し、参加しやすくする。成果:平成23年4月~11月に開発したロボット制御基板を、平成23年12月~翌3月に実施したロボット教室の教材に組み込んで投入し、成果を検証した。参加者は、前年の25名から34名となり36%増加し、経済性も含め新規教材への興味関心が高かったことが伺える。教室への参加率は85、88、91%と高いレベルで推移し、競技会においては100%の参加であった。新規教材の投入により、参加者の製作意欲の維持ができたと考えられる。競技会で4個のモーターを上手に使った新人チームが、経験者の3個モーターのロボットと互角以上の性能を発揮し準優勝するなど、新規教材の機能性も確認された。また、保護者の参加が例年より非常に多く、家庭における科学技術教室への関心と理解が進んだこともわかった。以上をもって、研究の目的は達成された評価している。
著者
深尾 昌一郎 橋口 浩之
出版者
福井工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

熱や物質の鉛直輸送に重要な寄与をするとされる大気乱流とその主要因であるケルビン・ヘルムホルツ(KH)不安定はそのスケールが小さいことから直接観測はこれまで困難であった。これをMUレーダーのイメージングモードによる超高分解能観測に加えて、多周波数帯レーダーとライダー観測を援用して、総合的に解析した。自由大気中におけるKH不安定の構造をかつてない高分解能映像観測で解析し、KHIと風速シアとの関係が明らかとなった。
著者
長瀬 美子 小谷 卓也 田中 伸
出版者
大阪大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

「心情」「意欲」「態度」にかかわるわが国の幼稚園教育の目標は、その総合性のため、明確な到達目標が描きにくく、幼児教育・保育に携わる者の共通認識になりにくいという課題がある。本研究では、乳幼児期に、あそびを通して形成した力を、小学校以降の学校教育での科学教育につなぐためには、形成すべき力を明確にし、それを体系化することが必要であると考え、現在の幼児教育の基本である5領域について、「観察」「コミュニケーション」能力が年齢にそってどのように発達するかを体系化した。このことで、発達の筋道が明確になり、保幼小連携型カリキュラムを作成するためのモデルが提供できた。
著者
羽鳥 隆英
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

2009年度は、前年度末かち依頼を受けて編集部員として参加していた三省堂の出版企画『日本映画作品事典』(仮題、山根貞男/佐崎順昭編著、2010年刊行予定)のための調査が高く評価され、新たに署名入り原稿を多く執筆した。なかでも並木鏡太郎、佐々木康、渡辺邦男という、これまでの日本映画史の記述からは完全に漏れていた監督の作品解説を担当するなかで、一般にはアクセスすることが難しい彼らの膨大な作品群をほぼ網羅的に鑑賞し、またその同時代における批評言説の分析を通じて、日本映画におけるメロドラマ的想像力への知見を深めることができたのは幸運であった。とりわけ佐々木と渡辺はともに長谷川伸文学の映画化を複数回試みており、研究課題の遂行に益するところ大であった。また2009年10月からは、本年度より非常勤講師(映画研究担当)を務める京都造形芸術大学映画学科において長谷川伸の代表的な股旅物の戯曲『瞼の母』公演(2010年4月17日/18日、同大学高原校舎にて上演の予定)に演出補佐として参加した。この公演の独自性は男役・女役を問わず出演者全員が同学科の俳優専攻の女子学生である点にあり、女剣劇という日本文化史上の興味深い水脈の魅力を教えるだけでなく、メロドラマ研究における鍵概念(文化的性、身体、演技、異性装など)を再考察するうえでの貴重な機会となった。これらの成果を踏まえて、二本の研究論文を準備した。それは日本のメロドラマ映画史において独自の位置を占める映画作家・マキノ雅弘が長谷川伸の戯曲『刺青奇偶』を映画化した『いれずみ半太郎』(東映、1963年)のテクスト分析「運命《線》上に踊る男と女-マキノ雅弘『いれずみ半太郎』分析」(日本語版)および"Why Does Not Onaka Fall?: A Textual Analysis of Makino Masahiro's Odd and Even"(英語版)である。残念ながら年度内の発表はできなかったが、2010年前半までには両者とも査読制学術誌に投稿の予定である。
著者
丸森 亮太朗
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

最先端成膜プロセス技術の一つ,マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)成膜技術により,白金加金表面へのチタニアコーティングを試みた.その結果,(1)結晶相の主要な生成物としてルチル型チタニアおよびTiOが認められた.(2)測色結果では,白金加金は金属色を十分に遮蔽しているとはいえない結果であった.(3)SEMによる観察では,等方性の結晶組織が観察された.
著者
山田 由美子
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

【目的】精神科領域の薬物を使用している授乳婦において、母乳の継続を判断する上で薬物の母乳移行性が問題となる場合がある。しかし、リスペリドン、セルトラリン、エピリプラゾールなど新薬においては特に母乳移行性に関するデータが少ない。本研究は、リスペリドン服用患者の母乳移行性について検討した。【患者背景及び分析方法】患者背景:患者は妊娠期間中、リスペリドン4mg/日を朝・夕食後2回に分けて服用、コントロールは良好であった。内服を継続していたが、出産後3日目より精神的に不安定となり6mg/日を毎食後3回に分けて服用することに変更となった。患者希望によりピーク濃度の1点のみの採血のため、出産後4日目、服薬1時間後の母乳と血液を患者から採取した。なお、本研究は信州大学医学部医倫理委員会の承認事項を遵守して行った。分析方法:分析カラム;SHISEIDO CAPCELL PAK ACR 3x150 5μm、温度;40℃、流速;0.5ml/min、検出器:クローケムII検出器(ECD検出器)、ガードセル;850mV、E1;400mV、E2;800mV、移動層:0.05Mリン酸緩衝液(pH3.0):メタノール:アセトニトリル(70:15:15)にて行った。前処理:血清0.5mlに20%炭酸ナトリウム溶液1mlを加え、内部標準(100ng/mlミアンセリン)20μl、ジエチルエーテル:イソアミルアルコール(99:1)6mlで抽出後、有機層を0.005M硫酸溶液0.2mlで逆抽出し、HPLCのサンプルとし、75μlをinjectionした。母乳は1mlに20%炭酸ナトリウム溶液2mlを加えた。以降は血清と同じ操作にて調製したが、母乳は100μlをinjectionした。母乳中のリスペリドン測定用の検量線は、母乳の代わりに粉ミルクを用いた。測定検出限界は0.5ng/ml。【結果】患者の血清及び母乳中のリスペリドンの濃度は各々18.6及び1.8ng/mlであり、母乳中への薬物移行の指標となる母乳中濃度/母親血中濃度比(M/P比)は0.096であった。【考察】リスペリドンのHenderson-Hasselbalchの式によるM/P比は0.5又は1.87、pH分配仮説による分配係数は約0.95-2.74である。また、蛋白結合率は90%、半減期3.9hであり、これらのデータから薬学的評価を行うと、リスペリドンの母乳移行はかなり少ないと予想できる。文献では、投与量の1~5%の移行、AUCO-24のM/P比は0.42との報告がある。これらと今回の実測値は、リスペリドンの母乳移行性は少ないことと一致しており、本薬物は計算上の薬学的評価から母乳への移行性を推測可能であることが裏付けられた。
著者
脇田 祥尚
出版者
広島工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

過去2ヵ年度の研究にひきつづき、カンボジアを主な調査対象地とし、「東南アジアの土着的住居・集落にみられる計画技術の活用に関する研究」を進めた。これまで、都市居住に焦点をあて、街区居住という視点から宅地割りや路地形態の分析を行うとともに外部空問の利用形態について分析を行ってきた。また街路景観の分析も行ってきた。18年度は、フランス統治期の都市計画と現在の都市構成の関係を明らかにするため、施設分布や道路構成などに着目しながら都市構成に関する研究を行った。また、東南アジアの都市部でランドマークあるいは都市資源として位置づけられるコロニアル建築に焦点をあてそのデザインの特徴ならびに空間利用の変化について分析を試みた。また、外部空間の活発な活用について詳細な分析を行うため市場の空問構成・空間利用についての分析も行った。都市居住の根幹をなす都市住居・ショップハウスにっいての分析では、増改築に着目し、多様な増改築の事例を(1)居住面積の確保、(2)独立性の確保、(3)アクセス経路の変更という3点に整理した。今後さらに東南アジアの都市部では開発圧力が高まり、集合住宅の需要が高まっていくと考えられるが、西洋型の集合住宅の型を導入するのではなく、その地域独自の居住様式に適合した集合住宅の型の検討が望まれる。本研究の成果は、その基礎的研究として位置づけられるが、これら3点の特質をべ一スにしながら冗長性の高い建築計画技術の開発が望まれることが明らかとなった。
著者
佐々木 寛 藤井 聡
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究課題は、睡眠中の記憶の固定および消去を司る神経基盤の解明を目的とする。研究に用いた記憶課題は漢字二文字からなる単語の記銘課題と再認課題からなり、再認課題は記銘課題直後と24時間後に実施した。被験者は記銘課題と24時間後再認課題の間に7時間の睡眠をとった。記銘課題では、100個の単語を被験者は記憶した。再認課題では、記銘課題中に提示された単語のほかに新たな単語50個が提示され、被験者は単語が記銘課題中に提示されたものかどうかをボタンで回答した。記銘課題および再認課題時の脳活動を機能的MRIにより計測した。記銘課題遂行中の脳活動について、再認できた単語の記銘に関わる脳活動を、直後再認によるものと24時間後再認によるものとで解析し比較した。その結果、直後再認でも24時間後再認でも再認できた単語に有意な活動が認められた領域として、右海馬、背側の下前頭回が同定された。また、直後再認で再認できた単語に有意な活動が認められず、24時間後再認で再認できた単語に有意な活動が認められた領域として左上前頭回、左中前頭回、腹側の下前頭回、左中側頭回、左右中後頭回、左舌上回、右海馬傍回が同定された。これらの結果から、「弱い記憶」の記銘には海馬および背側の下前頭回を含む領域の活動が本質的であるのに対し、それを「強い記憶」として固定するためには、それらの領域ほかに左上前頭回、左中前頭回、腹側下前頭回ほかの領域の活動が重要であると考えられた。24時間後再認時に正しく再認できたときの脳活動部位として両側海馬が同定された。この領域の活動の強さの解析から、活動の強さと睡眠の構造とに関係があることが示唆された。この結果から、睡眠により記憶の固定が起こり、その状態を再認時の脳活動として検出できることを示唆すると共に、Squireによる記憶の固定に関わる海馬-皮質系記憶システムの説を支持するものと考えられた。
著者
大槻 毅
出版者
流通経済大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

本研究では,中高齢者のべ 243 人を対象に,24 時間血圧,起床後 2時間における収縮期血圧(SBP)の上昇(モーニングサージ),筋力づくり運動(抵抗性運動)時およびウォーキング時の血圧を測定し,日常生活における身体活動量および体力との関連を検討して,以下の知見を得た.1.24 時間における SBP の平均値およびモーニングサージと運動時の心拍数上昇との間に正の相関関係が認められた2.就寝時における SBP の最低値と身体の柔軟性との間に正の相関関係が認められた.3.抵抗性運動時の SBP 上昇は,加齢に伴い増大したが,日常生活における身体活動量が多い者では小さかった.4.ウォーキング時の SBP 上昇は,より高齢の世代では気温が低い日に,比較的年齢が低い世代では体格指数(BMI)が高い者で大きい傾向にあった.
著者
高阪 一治
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は原田直次郎と青木繁という明治期を代表する洋画家の絵画作品を取り上げ,当時のドイツ絵画,すなわち19世紀末のベックリーンやライブル,ハンス・フォン・マレー(マレースとも表記)との関連を指摘して,原田や青木の絵画の特質の解明のみならず,これを通じて,わが国の近代美術の特質解明に資するものである。原田については,これまでも彼の《騎龍観音》においてベックリーンとの関連が指摘され,また滞欧作《靴屋の阿爺》においてライブルとの関連が語られてきたが,《靴屋の阿爺》研究ではいまだ具体性に欠けるきらいがあった。他方,青木の《海の幸》研究では,研究者の一部にマレー(ス)の名を挙げる者がいたが,これまた具体性に欠ける指摘であった。本研究で得られた知見としては,次の点が挙げられる。1.原田直次郎について。《靴屋の阿爺》の研究において,ドイツ19世紀末絵画との関連を掘り下げ,具体的に比較作品を挙げてライブル,メンツェル等との比較を試み,その上で,《靴屋の阿爺》の独自の特質を明らかにしたこと。またこれに関連して,原田の師であるG・マックスについても,その理解を進めたこと。2.青木繁について。《海の幸》とマレーの《ナポリのフレスコ画》(1873)との比較検討を通して,モティーフと画面構成での両者の類似点を確認するとともに,当時のマレーの評価の高まりを指摘して,青木繁がマレーを見た可能性に関する傍証を強化したこと。また,《海の幸》の他にも,マレーとのつながりが認められる可能性について,作品名を挙げて言及したこと。今後の課題は,青木繁がマレー作品(おそらくは図版)を見た可能性を検討するにあたって必要な調査,例えば,当時,ドイツ19世紀末絵画の情報がどの程度わが国にもたらされていたか,そして,青木の周辺にはどのようなものがあった可能性があるか,に関する調査を続行することである。
著者
北中 順惠
出版者
兵庫医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

覚せい剤メタンフェタミンによる薬物依存状態に、豊かな環境(回転皿)がどのように影響するか、マウスを用いて検討を行った。三日間ICRマウスに回転皿使用を試みたところ、マウスは日に日に回転皿を回しており、一方で食餌、飲水等に変化はなく、豊かな環境を提供していると判断した。メタンフェタミン投与によりマウスは自発運動量が増加し、依存性が確認されるが、そこに回転皿の直接的影響は確認できなかったが、依存性を消去するためのメタンフェタミン投与休止期間中に回転皿が存在すると依存性の消去促進が確認できた。
著者
秋山 英文
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

高い精度で生物化学溶液発光の絶対定量分光計測を行うための技術装置開発を進め、量子収率の評価や、種の異なる生物など様々な発光酵素にまたがった発光スペクトルの直接比較を行えるようにし、古くから関心の的でありながら未だ理解されていない、ホタル生物発光の発光色決定機構の解明に迫ることが本研究の目的である。産業技術総合研究所・光放射標準グループによって国家標準トレーサブル校正が行われたフォトダイオードと、併せてダングステンランプおよび干渉フィルターを用いた光源を用いて校正を行い、0.29%の集光効率と約5.7%の分光器透過率を経てCCD検出器で19フォトン/カウントの絶対感度で生物発光絶対量分光計が行えるようになった。天然北米産ホタルの精製ルシフェラーゼを用いて、ホタル生物発光の量子収率計測のpH依存性と温度依存性の実験を行い、我々自身による過去の測定値41.0±7.4%に近い、47.1±6.5%という値を得た。天然北米産ホタルの精製ルシフェラーゼを用いて、通常のMgの代わりに、Zn、Cd、Ni、Co、Ca、Mnなどの金属イオンを付加したことによるスペクトル変化の定量計測を行った。Ca、Mnでは、Mgの場合と同様に色変化は起きなかったが、Zn、Cd、Ni、Coを添加した場合には、pH依存性の結果と同様に、緑側の発光成分の量のみが金属イオン量に応じて変化し、赤側の発光成分は変化しないという兆候が見られた。また、発光スペクトルが、1.85eV、2.0eV、2.2eVにピークをもつ3つのガウス型ピークに分解する解析が可能であることもわかっているので、発光スペクトルをピーク強度、位置、幅の3つのパラメータとして数値化して整理し、金属イオン依存性を定量的にプロットした。色変化の感度の大小は、Mg、Ca、Mn<Co、Ni<Zn、Cdのような序列に従っていることがはじめて明らかになった。
著者
浦辺 徹郎 沖野 郷子 砂村 倫成 石橋 純一郎 高井 研 鈴木 勝彦
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008-11-13

地下・海底下に存在する大量の水は、流域の岩石との反応により、海洋を含む地球表層環境や生命活動に大きな影響を与えると考えられてきた。本研究では、海底下の水の流れを地質学的背景から4種類に分類し(4つの大河仮説)、鉱床形成を含めた物質循環システムと微生物生態系システムが4つの大河に対応して制御されていることを、期間中に実施した33の研究航海と物理・化学・生物・地質の分野横断的手法を通じて明らかにした。
著者
松村 明 山本 哲哉 熊田 博明 中井 啓 磯部 智範 成相 直
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

神経膠芽腫に対するホウ素中性子捕捉療法の臨床的有用性を証明するための臨床研究を行った。初発神経膠腫例では、無病再発期間14か月、生存期間21か月を得た。再発悪性脳腫瘍、膠芽腫1例、悪性髄膜腫1例の治療を行った。再発膠芽腫はBNCT治療後2年を経て放射線壊死、皮膚壊死あるも腫瘍再発なく生存, 家庭内軽介助。髄膜腫症例は再発の兆候なくKPS90%を維持し2年経過と良好な結果を得ているが、原子炉の利用が制限され、症例の蓄積による分析は中断された。
著者
竹内 崇
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

短時間で風速が増加する突風を受ける構造物においては,同じ風速レベルの一定風速下で作用する風力より大きな非定常風力が作用するが,その現象や非定常風力の特性についての体系的な解明はほとんど行われていない。平成22年度は,立ち上がり時間の短い突風時に構造物に生じる非定常空気力の発生要因と非定常風圧力特性の解明および一定風速からの突風時の非定常風力特性の解明を目的として以下の3項目について研究を実施した。1.立ち上がり時間の短い突風下で生じる流体慣性力が,楕円断面柱に作用する風力のオーバーシュート現象に及ぼす影響を準定常風力式と風洞実験および数値流体計算により検証した。その結果,風速の立ち上がり時間の無次元パラメータである「無次元立ち上がり時間」が非常に小さい場合には慣性力の影響が大きく,オーバーシュート現象の一因になるが,無次元立ち上がり時間が比較的大きい場合には,慣性力の影響は小さく,その他の要因によって引き起こされることを明らかにした。2.立ち上がり時間の短い突風を受ける陸屋根および切妻屋根模型の風圧力特性を突風風洞実験によって検証した。突風生成時に生じる風洞内の静圧勾配の影響を考慮した模型表面圧を計測する工夫を行い,各模型の表面風圧を計測した結果,立ち上がり時間の短い突風時に模型表面の各面において風圧力のオーバーシュート現象が生じ,模型表面各点のピーク風圧係数と無次元立ち上がり時間に強い関連性が見られることなどを明らかにした。3.一定風速から立ち上がり時間の短い突風が生じた時に楕円断面模型に作用する非定常風力の特性について突風風洞実験により検証した。その結果,一定風速からの突風時においても,風力のオーバーシュート現象が現れるが,突風の立ち上がり前の風速が高くなるほど,オーバーシュート現象が小さくなることなどを明らかにした。
著者
関野 恭弘
出版者
岡山光量子科学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我々の宇宙は、より大きい宇宙項を持った(より膨張率の高い)宇宙からの量子的トンネル効果によって生成された事が、超弦理論によって示唆されている。そのような宇宙を記述する厳密な(非摂動的)定式化を2次元共形場理論によって構成して観測への予言を与える事を目指し、宇宙のトポロジー、宇宙における揺らぎと共形場理論の演算子の間の対応などを詳しく調べた。また、トンネル効果によって生成された宇宙における宇宙背景輻射スペクトラムの解析を進めた。
著者
龍田 真 照井 一成
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、構成的集合と余帰納的定義をもつ構成的論理を構築し、この論理体系を用いて、余帰納型を用いたプログラムの性質を明らかにし、また、構成的集合と余帰納的定義を用いたプログラム合成システムを試作することであった。次のような3つの研究成果を得た。(1)論理式Aが長D-正規証明をもつならば、Aの長正規証明が唯一であることを証明した。(2)古典二階自然演繹の強正規化可能性の証明に関して、CPS変換を用いた従来の証明が本質的誤っていることを主補題に対する反例をあげて示し、この原因が継続消滅の現象によることを指摘し、オグメンテーションの概念を用いてこの証明を完成させた。例外処理ラムダ計算や値呼びラムダミュー計算など他の類似の体系のCPS変換を用いた強正規化可能性の従来の証明が、継続証明により同様にして本質的に誤っていることを指摘した。(3)構成的二階自然演繹に置換簡約を追加した論理体系の強正規化可能性の簡明な証明を与えた。従来知られている証明は、Prawitzによる証明だけであり、これは記述が不完全であり、また複雑な帰納法を必要とした。原子選言論理のアイデアを用い、構成的二階自然演繹に置換簡約を追加した論理体系が原子選言論理に簡約を保存して翻訳できること、原子選言論理は飽和集合が定義でき飽和集合を用いた強正規化可能性の証明方法が使えることの2つから、新しい簡明な証明を得た。
著者
山田 正 高橋 信博
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

「漢方薬」は免疫増強作用などホスト側の体質の改善を主目的とし、結果として疾患を改善させようとするものが多い。その中でも日常的に「健胃薬」などとして用いられている漢方薬は、副作用の心配が少なく、口腔内局所投与によっても影響が少ないと思われる。そこで、本研究計画では、黄連や黄柏がもつ(1)各種歯周病関連菌の増殖に対する影響、(2)その作用様式、(3)有効成分、(4)プロテアーゼなどの菌体外酵素に対する影響などを明らかにし、これらの漢方薬の抗菌メカニズムを解明することを目的とし、以下の結果を得た。1.黄連・黄柏の水抽出物は歯周病関連菌Porphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Actinomyces naeslundiiの増殖を抑制した。一方、齲触関連菌であるStreptococcusとLactobacillusの増殖はあまり抑制しなかった。2.黄連・黄柏水抽出物の有効成分はベルベリンに代表されるアルカロイドであることが分かった。3.この抗菌効果の作用様式は殺菌作用であることが明らかになった。2.さらにPorphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、Actinobacillus actinomycetemcomitansの菌体外プロテアーゼを阻害することが分かった。しかし、プロテアーゼ抑制に必要な黄連・黄柏水抽出物の濃度は増殖阻害に必要な濃度よりも高かった。以上の結果から、黄連・黄柏は歯周病関連菌に対して抗菌作用を示すことが明らかになった。また、プロテアーゼ活性阻害効果があるものの、抗菌効果の本質は殺菌作用であることが推察された。