著者
橋口 暢子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

「目的・方法」本研究の目的は、温熱環境の構成要因である湿度と気流が、入浴後の生体へどのような影響を及ぼすかについて、特に皮膚性状を中心とした生理反応や、不快感、乾燥感を中心とした心理反応の双方から検討し、看護の対象者をとりまく適切な住宅温熱環境についての基礎資料を得ることである。交付初年度の平成17年度は、健康な男子大学生8名を被験者とし、冬期のエアコン暖房使用時の環境を想定した(湿度20%、気流0.6m/s、室温25℃)環境に、一定の手順で入浴した後、80分間椅座位にて滞在してもらい、それと、入浴をしない状況で同じ温熱環境に滞在した場合と比較することで、入浴後の生理心理反応に及ぼす特徴を明らかにし、気流速度が速く、低湿度の環境は、体温調節反応に及ぼす負担や、皮膚の乾燥に対する影響が、入浴後であれば特に大きくなるなどの知見を得た。そこで、本年度は、湿度、気流の違いが入浴後の生理心理反応に及ぼす影響について、昨年度と同様に被験者実験を行った。温熱環境条件は、湿度20、60%、気流0.2m/s以下の各2条件を組み合わせ計4条件とした。測定項目は、皮膚温、直腸温、血圧・脈拍、皮膚水分量、経皮水分蒸散量、皮脂量、体重、主観申告(温冷感、不快感、湿度感、気流感、顔・目の乾燥感)である。被験者の基本衣服は、短パン、半袖Tシャツ、スウェット上下である。「結果」低湿度環境では、皮膚水分量が少なく、蒸散量が多くなること、顔の乾燥の自覚が強まることが示され、気流が大きい環境では、温冷感の涼しいや不快感の申告が多くなること、眼の乾燥が強まることが示された。また、湿度60%、気流無し条件では、入浴後の平均皮膚温の低下が小さいことが示された。「結論」皮膚の乾燥には気流の違いよりも湿度が低湿度であることの影響が大きく、気流速度は主に温冷感、不快感に大きく関与することが示唆された。気流速度が速く、低湿度の環境が他の条件に比べ顕著な生体反応を引き起こすことは示されなかったが、湿度60%、気流無し条件では、入浴後の皮膚温の低下が抑制され、一般に言う湯冷めを軽減させることができることが示唆された。
著者
三浦 均也 前田 健一 窪内 篤 菅野 高弘 大塚 夏彦
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、港湾地域における岸壁等の施設の耐震性能を高度化することであり、地震時における地震時土圧の特性を明らかにし、より合理的で経済的な地震時土圧の評価法および耐震設計法を開発することである。この目的を達成するために、北海道釧路港で実施していた「実大重力式岸壁の地震時挙動観測」で得られるデータの収集、分析・評価を進め、地盤の液状化に関連した岸壁の被害メカニズムを明らかにするとともに耐震設計の提案を行った。研究成果の概要および特徴は以下の通りである。「研究の独創性」 阪神淡路大震災で生じた港湾施設の甚大な被害に対して、これまでの耐震設計の枠組みの中で設計地震衝撃力を増大させ構造物が長大化させる考え方が主流であった。しかし、本研究ではこれまでの震度法にとらわれない。構造物の振動特性と液状化対策の効果を適切に反映できる独創的な地震時土圧評価法および耐震設計法を提案し、その検証を観測結果に基づいて検証することができた。「研究の実用化の可能性」 2003年十勝沖地震における観測結果を解析することによって、地震時における岸壁の挙動メカニズムが明らかになり、提案していた地震時土圧の評価法も検証することができた。現在をこの評価法を取り入れた耐震設計法の開発を終え、1年以内に行われる港湾構造物の耐震設計法の改訂という形で研究の成果が実用化されることになった。また、試験岸壁の建設時や建設後長期間に渡る観測においても岸壁挙動の重要な知見が得られ、これらは岸壁の施工管理や維持管理において今後実用化される予定である。「研究の達成度」 当初予定していた現地観測と耐震設計法の開発を予定通り達成することができた。2004年9月26日には十勝沖地震が発生し試験岸壁は震度5強の衝撃力を受けた。試験岸壁の背後地盤は液状化し、岸壁には地震時特有の変形が生じ機能が深刻な損傷を受けた。地震衝撃力による液状化を伴う岸壁の被害を観測によって捕らえることに成功したため、観測結果の解析と耐震設計法の検証は説得力を持って予定通り達成することができた。「研究の学問的発展への貢献度」 このような実大岸壁の背後地盤の液状化を伴う地震時挙動を得たのは世界的にも初めてである。地震時挙動の観測によって得られたデータは、2005年1月17日から1年間インターネットで世界の研究者に公開している。このデータを用いた研究成果を持ち寄り2005年9月には国際会議を開催する予定であり、この分野の学問的発展に大きく寄与するものと期待している。また、このような前例のない観測を通じて観測方法や試験方法についても重要な知見を得ることができた。
著者
渡沼 玲史
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

特徴としてデータ量が多くなるモーションキャプチャデータを要約する質評価指標を開発してその有効性を確認した。本研究で開発した指標の特徴は、人文科学的な予見が入らない物理量から指標を作成している事である。さらに、質評価指標を中心とした舞踊解析手法を開発し、いくつかの舞踊動作に適用して検証した結果、当該手法がモーションキャプチャを用いた舞踊研究の効率化を可能することが分かった。また、5組の舞踊家の計9種の動作をモーションキャプチャによってディジタルデータ化した。
著者
神谷 智 KAMIYA Satoshi
出版者
名古屋大学史編集室
雑誌
名古屋大学史紀要 (ISSN:09155848)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-49, 2000-03-25 (Released:2006-01-06)

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
牛山 素行
出版者
岩手県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)2005年豪雨災害の特徴解析2005年に発生した豪雨災害のうち,特に台風14号による災害(9/4-8)に注目し,被害の大きかった宮崎県を中心に現地調査,資料解析を行った.豪雨災害が多発した2004年の事例と比較しても,大きな被害を生じた事例であり,数年に1回程度発生する規模の事例と判断された.宮崎県日之影町においては,長年の地域の取り組みにより早期の避難が行われ,20世帯以上が全壊する洪水・土砂災害にもかかわらず人的被害を生じなかった事例を確認した.また,宮崎市においては市による電子掲示板上で市民・市役所間の災害時における迅速な情報交換が行われ,わが国におけるほぼ初めての形態であることを示した.これらの成果は災害後1週間以内にweb公開し,数万ページビュー/日の参照があり,報道機関からも多くの問い合わせを受けた.(2)台風0514号災害時の死者の死因に関する検討台風0514号による人的被害(29名)に関し,台風0423号の際に開発した手法を適用して,死亡状況に関する解析を行い,そのほとんどが,「土砂災害により,高齢者が,屋内で死亡」であったことを指摘した.これは,洪水による青壮年の死者が目立った台風0423号の事例とは異なり,近年整備されている災害情報の活用による救命の可能性がある犠牲者が中心であったことを指摘した.また,この解析手法の有効性を示した.(3)豪雨時の自治体の対応に関する調査2004年度末に調査票を配布した,2004年の豪雨災害時および災害後の被災,非被災自治体における災害対応状況についての調査を解析した.その結果として,(a)豪雨災害の頻発は防災担当者の豪雨災害に対する関心を高める事は確かである。たとえば,リアルタイム豪雨情報の参照頻度が高まる,豪雨災害による避難勧告の可能性を予想する市町村が増加するなどの変化が見られる.(b)関心の高まりは具体的な対策にはつながらない.たとえば,災害前39%の市町村が指定避難場所の選定に浸水の影響を考慮していなかったが,災害後,見直しを行ったのはそのうち12%にすぎない.(c)2003年水俣市土石流災害の教訓は,ほとんど他の市町村に波及していない,(d)防災ワークショップが1割程度の自治体で実施されているが,その半数程度が住民だけで行われている,などを指摘した.
著者
橋本 正治 川野 常夫 西田 修三
出版者
摂南大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

以下に示す計画に従い研究を実施した。(1)3次元曲線の入力法の提案・入力装置の試作・評価実験(2)作業者の特性の検出法の提案・検出装置の試作・評価実験(3)個性や熟練度の検出法・評価法の提案と試作装置による評価実験(4)熟練度に応じて柔軟に対応するインタフェースの提案と評価実験CADシステムに用いるための3次元入力法を提案し、試作装置の精度と入力に要する時間について評価した。その結果、精度に関して300mmの曲線の長さに対して5mm程度の誤差が生じていることと、処理時間に関して作業者が違和感を覚えるとされている0.1sec以内に前ての処理が行われているとが明らかとなった。評価実験を行った結果、本入力装置のように作業者の表現内容を機械が判断し入力情報として用いる方式を用いることで未熟者であっても容易に熟練者と同じ入力処理が行えることが明らかとなった。作業者の熟練度は、作業結果や作業工程などに現れると考えられるが、作業の内容に応じて評価しなければならない。本研究では、未熟者と熟練者では作業の疲労度に差がでることから、疲労度を生理的情報を検出することで熟練度合いを評価する手法を提案した。作業の負担とならない生理情報の検出法の提案と測定装置の試作を行い、生理情報と精神的疲労度との関連を実験により明らかにした。熟練を要する作業のシミュレータを開発し、作業者の熟練度に応じてインタフェースのC/D値を作業中に変化させる実験を行った。被験者が熟練者の場合、作業成績を維持しながら作業時間が短くなった。これは、本手法を用いることによりさらに技能の習熟が進んだことを意味し、有効性が確認されたと考えられる。
著者
佐藤 卓己 佐藤 八寿子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

従来のテレビ論やテレビ史の大半は娯楽文化論か政治報道論であり、教育・教育とテレビの関係は「子どもとメディア暴力」や「メディア・リテラシー」に集中していた。本研究では「教養のメディア」としてテレビ放送の意義を再検討することをめざした。『テレビ的教養-一億総博知化の系譜』(NTT出版・2008年)などにおいて、NHK、民間放送、放送大学など諸組織ごとに分かれた既存の個別研究を統合する放送メディア教育研究の新しい枠組みを提示した。
著者
松田 りえ子 佐々木 久美子 酒井 洋 青柳 由美子 佐伯 政信 長谷川 康行 日高 利夫 石井 敬子 望月 恵美子 山本 敬男 宮部 正樹 田村 征男 堀 伸二郎 池辺 克彦 辻 元宏 小嶋 美穂子 佐伯 清子 松岡 幸恵 西岡 千鶴 藤田 久雄 城間 博正 大城 善昇 豊田 正武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.18-23, 2001-02-25 (Released:2008-01-11)
参考文献数
7
被引用文献数
8 7

1996年から1998年に, トータルダイエット試料中のアルミニウム濃度を測定しアルミニウムの一日摂取量を推定した. 10か所の機関でトータルダイエット試料の調製及びアルミニウム濃度の測定を行った. アルミニウムの一日摂取量は平均3.5mgであり, 範囲は1.8mgから8.4mgであった. 分析結果の正当性は, 認証標準試料の分析により保証された.
著者
村井 祐一 田坂 裕司 北川 石英 石川 正明 武田 靖 武田 靖
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

マイクロバブル混合液体の層流域から乱流域までのレオロジー特性を実験的に研究したものである.層流域では,非定常なせん断応力場において気泡形状と応力の関係に非平衡性が表れる場合,平衡を仮定した実効粘度よりも10倍以上大きな運動量伝達特性をもつことがわかった.遷移域では周波数の変調による乱流への初期遷移が抑制されることがわかった.また乱流域では乱流渦干渉による乱流エネルギー低下,気泡クラスタリングによる新しい境界層構造の出現や伝熱促進が観測された.
著者
宇都宮 隆
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.39-41, 1976-12-25

ステビアの収穫期は,ステビオサイド含有率の推移等からみて,開花期直前が適期とされている。したがって開花期の早晩は生育・収量に影響する主要特性の一つである。実生個体群における観察では,平均開花期は9月20日前後であるが,稀には7月28日と非常に早いものから,10月2日と遅いものまで幅広い変異がみられ,きわめて変異に富んでいる。また越年株においては,稀に萌芽後間もなく着蕾・開花する個体が生ずる。このようなことから花芽分化要因を検討した。
著者
橋本 篤孝
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学短期大学部研究紀要 (ISSN:1346440X)
巻号頁・発行日
pp.19-30, 2001-03-22

実務社会に即した自殺の分類を試みた。法律論争等で常に使われるような確立された自殺分類がまだみられないからである。本論文では, 自殺を簡明に3つのカテゴリーに分けた。それぞれは, 自殺者が自殺の後, 周辺の社会に与えた損害に対して, 例えその死後であっても, 責任をとる必要があると考えられるカテゴリー, 逆に, その死後, もはや責任をとる必要がないと考えられるカテゴリー, さらには, どちらとも判断できないカテゴリーの3つである。これらの分類基準は, 自殺決意における自己の意思の積極的関与(自己責任)の程度に負わせた。
著者
伊良部 邦夫 山里 栄昭 照屋 功 Irabu Kunio Yamazato Eisho Teruya Isao
出版者
琉球大学工学部
雑誌
琉球大学工学部紀要 (ISSN:0389102X)
巻号頁・発行日
no.50, pp.p1-7, 1995-09

The experiments were conducted to measure the velocities of flow around a circurlar cone. Because of variaton of the cross section area in the longitudinal axis, the flow around the the circular cone behaves very high complex and forms the vortex streets which are issued from both side of the cone and attach in downstream to the plate setting it. The flow fields were visualized using the mixed particles in water and resulted in the velocity fields by the method of Particle Imaging Velocimetry (PIV). From analyses of the instantaneous velocity fields, the Strouhal numbers which showed an interesting variation were gained to the Reynolds numbers.
著者
王 道洪 高木 伸之 渡邉 貞司
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

雷の前兆現象の解明を目的に2005年と2006年の夏季にそれぞれチベット雷について総合観測実験を行った。それらの観測データを解析して、以下の知見が得られた。1.チベット雷雲は夕方から深夜にかけて発生することが殆どである。雷活動は雷雲によって随分異なる。雷が多い雷雲では一分間20回以上の雷放電が観測されており、少ない雷雲では全放電数が数回程度にとどまる。2.2005年度観測できた雷雲の殆どは地上で主たる正極性電界を示したが、2006年度観測できた雷雲の殆どが地上で主たる負極性の電界を示した。前者の場合、雷の9割以上が雲放電であり、落雷の数が極めて少ない。後者の場合、普通の夏季雷雲と同じ、落雷が2〜3割合を示す。普通の雷雲の下部に正極性のポケットチャージがあり、これが落雷を誘発するとされている。正極性電界を示すチベット雷雲の場合、このポケットチャージはむしろ主電荷領域であり、その下に落雷を誘発する逆極性のマイナスポケットチャージがない。これは正極性電界を示すチベット雷雲において落雷があまり発生しない原因と推測している。3.雷の開始場所は明らかに高度が高い層と低い層に分かれており、それぞれの場合、その後の雷放電リーダが異なる特性を示す。雷の開始に関して、負極性リーダが見かけ上最初に伸びるとの説が主流になっているが、今回の研究では始めて正極性リーダのものと負極性リーダのものと両方が存在することを突き止めた。4.雷雲の発達段階によっては落雷の割合が随分異なり、落雷しやすい電荷構造が明らかに存在すると考えられる。

2 0 0 0 OA 童蒙英学初歩

著者
島一徳 (桂潭) 校
出版者
[ ]
巻号頁・発行日
1871