著者
加藤 房雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

「東エルベ農村社会とドイツ農村・都市関係史とりわけ都市近郊農村史の実証的比較研究」に関する研究経過と成果は、およそ以下とおりである。(1)図書整備については、とりわけ「ベルリン圏の都市近郊農村史」に着目して、エッシャーのブランデンブルク史論、あるいは、ホーフマンの自治体論に関する新刊書や基本文献の収集と整理に努めた。(2)文書館・図書館調査は、計画どおり、主としてポツダム・アルヒーフとベルリン国立図書館を中心に行った。アルヒーフ調査に際しては、「ドイツ学術交流会」の財政的援助も得ることができた。(3)研究発表としては、平成12年6月4日、「プロイセン都市近郊農村史とベルリン」をテーマとして、「ドイツ資本主義研究会」で報告するとともに、翌平成13年5月12日には、「ベルリン圏の都市化と近郊農村の地方自治」と題する学会発表を、「土地制度史学会中四国部会研究会」において行った。(4)研究論文の主要な成果としては、「プロイセン都市近郊農村史とベルリン-テルトウ郡の鉄道建設と世襲財産所領」(『土地制度史学』第172号所収)を公表することができた。また、新稿「ベルリン圏の都市化と近郊ゲマインデの自治-19世紀末〜20世紀初頭期テルトウ郡の実態に即して」の『社会経済史学』第68巻第1号への掲載が、決定している。平成2年刊の拙著『ドイツ世襲財産と帝国主義-プロイセン農業・土地問題の史的考察』以降、10年有余の間、積み重ねてきた成果の一つの集成として、現在、新著『都市史と農村史のあいだ-ドイツ都市近郊農村史論序説』(仮題)の出版を計画している。同書は、前編 ドイツ大土地所有の歴史的役割、そして、本研究の主要な成果が系統的に展開される後編 ドイツ都市近郊農村の史的個性、の2編構成をとる予定である。
著者
渡辺 研太郎 佐々木 洋 福地 光男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.103-114, 1993-03

平成3年度から3年計画で, 「南極海海洋環境変動と生物過程の研究」との研究課題の下にオーストラリアと共同観測が始められた。初年度はプリッツ湾を主とした海氷域および沿岸観測基地周辺における生物生産過程の解明を研究テーマとし, H. MARCHANT博士(オーストラリア南極局)との共同研究"The production and fate of biogenic particles in the Antarctic marine ecosystem"をオーストラリア南極観測船, オーロラ・オーストラリス(RSV AURORA AUSTRALIS)の第6航海(1992年1月9日から3月27日)で行った。本研究の目的は, (1)係留実験により, プリッツ湾海氷域での低次生産およびその生産物の沈降過程の経時変化を年間を通して観測し, (2)低次生産者群集を構成する各種群の寄与を調べることである。そのため, プリッツ湾海域に時間分画式セディメントトラップおよび現場クロロフィル記録計, 海流計を係留し, かつ採水, プランクトンネットによる採集, 培養実験を実施した。また, 南大洋における優占的な一次捕食者, ナンキョクオキアミの摂餌選択性に関する電気生理学的実験を行った。
著者
Takashi Shimizu Tetsuya Mizoue Shinya Kubota Norio Mishima Shoji Nagata
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
Journal of Occupational Health (ISSN:13419145)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.185-190, 2003 (Released:2003-07-04)
参考文献数
32
被引用文献数
57

We investigated the relationship between burnout and communication skill training among Japanese hospital nurses to improve the mental health of human service workers. The subjects were forty-five registered nurses referred to a self-expression skill intervention program by their section superiors, with each superior choosing from two to five nurses. The hospital was located in the Kyushu area and staffed by about four hundred nurses. The subjects were divided into an intervention group (19 nurses) and a reference group (26 nurses). The intervention group received the communication skill training in July and August, 2001. The communication skill training was carried out in accordance with the assertiveness training (AsT) precepts of Anne Dickson. In June, 2001, we delivered a set of questionnaires including age, gender, working years, a burnout scale, and a communication skill check-list as a baseline survey. The baseline questionnaires were returned at the end of June, 2001. In January, 2002, we delivered the same questionnaire again to the two groups and collected them at the end of the month. Excluding the only male and insufficient answers, twenty-six nurses (58%) returned complete answers in the initial and subsequent surveys. We found that the personal accomplishment and the two communication skills such as “accepting valid criticisms” and “negotiation” of the intervention group had improved significantly five months after the training as compared with that of the reference. Our results implied that communication skill training might have a favorable effect on burnout among Japanese hospital nurses.
著者
工藤 栄 伊倉 千絵 高橋 晃周 西川 淳 石川 輝 鷲山 直樹 平譯 亨 小達 恒夫 渡辺 研太郎 福地 光男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.279-296, 2002-03

第39次および第40次日本南極地域観測隊夏期行動期間中(それぞれ1997年12月4日∿12月13日及び, 1998年2月15日∿3月19日と1998年12月3日∿12月20日及び1999年2月24日∿3月19日), 南大洋インド洋区で南極観測船「しらせ」の航路に沿って表層海水をポンプ連続揚水し, プランクトンネットで3∿8時間濾過して動物プランクトン試料を得た。動物プランクトンの湿重量測定を行い, 航路に沿って現存量を整理した。連続試料採取したにもかかわらず, 隣接した試料間においても現存量の変動は大きく, 動物プランクトンの不均一分布が伺えた。動物プランクトン現存量は「しらせ」南下時に顕著に認められる海洋前線通過時にしばしばきわだって大きくなり, その前後の海域で得られた値との格差は際立っていた。これら海洋前線では水温・塩分変動が大きく, 南大洋インド洋海区を四つの海域(亜熱帯海域, 亜南極海域, 極前線海域, 南極海域)に区切っている。2回の航海で得た現存量の平均値を比較したところ, 高緯度海域ほど平均値が大きくなる傾向があり, 南極海域で最大となった。南極海域の内でもプリッツ湾沖から東方にかけての海域(東経70-110°)で現存量が大きく, これまでの停船観測結果で推察されていた同海域の生物生産性が高いことに呼応する現象と考えられた。また, リュツォ・ホルム湾沖からアムンゼン湾沖の大陸近くの航行時に得られた現存量は, より沖合部を航行する東経110-150°間に得られた値よりも1/2程小さなものであり, さらに, 東経110°以東において大陸沿岸よりを航行したJARE-39とやや沖合いを航行したJARE-40で得られたデータ間でも前者の現存量が小さく, これらから南極海域では表層水中の動物プランクトン量が生物生産期間がより短くなると考えられる沿岸部ほど小さいことが推察された。今回表層水中で連続試料採取して得られた動物プランクトン湿重量値は, 過去四半世紀間に停船観測において同海域で主にプランクトンネット採集によって得られた値と大きくは異なってはいなかった。動物プランクトン分布の正確な測定のためには動物プランクトンの鉛直分布特性など考慮する必要があるが, 海域ごとの空間分布特性や海域内での変動性などの研究には今回のようなポンプ揚水による試料採集でも適用可能な部分が多く, その研究実施方法の容易さを考慮すると今後の長期的な動物プランクトンモニタリングなどに適した手法と思われた。
著者
イーズ ジェレミー (2009) EADES Jeremy S. (2008) EADES Jeremy Seymour (2007) KOVACS L. KOVACS Laszlo
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

研究2年目は、主として、国内外のデータから人口に関するデータベース作成に携わり、日本を含む異なった国と地域における人口数および出生と、家族構成の変化における相違と類似性を明らかにした。これにより明らかになった傾向には目を見張るものがある。世界中のすべての地域において、人口全体に占める農村部の人口は急速に減少している。このことは、農村経済(地域経済)がどの程度まで持続されうるのか、また、農村部にみられる文化と知識はどこまで保護することができるのかという重要な疑問を投げかげている。一般的な傾向とは際立った相違がみられるのがオーストラリア・ニュージーランドを含むオセアニア地域である。この地域では都市化の動きが鈍化し、他の地域よりも農村部の人口減少がゆるやかである。これにより今後の提案として考えられることは、少数ではあるが安定した農村部の人口とそれに伴う都市部でのよりゆるやかな人口増加である。しかしながら、日本はさらに一段階進み、老齢人口(の全体に占める割合)の増加により、とくに農村地域での人口減少が確実となっている。これらの研究をもとに論文を作成し、国際農村社会学会による第12回世界農村社会学会議(テーマ:1950年以降の非農村化の推移と2030年までの予測、2008年7月6-11日韓国、高陽)と、International Symposium on Youth Unemployment:Preparation,Opportunities and Challenge(テーマ:経済情勢および出産・健康に関する決定への若年者失業の影響、30 October,2008,Beijing,China)に提出した。
著者
梅村 絢美
出版者
首都大学東京
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、インド伝統医療アーユルヴェーダの世界拡張の状況を、治療を受ける患者に焦点を当てることで、患者の身体上から見えてくるグローバル化について明らかにすることを目的としている。本年度は、最終年度であり、本研究課題の理論的枠組みを完成させるに十分な調査データを収集することに努めた。7月から半年間のスリランカ調査を行い、インドから伝えられたアーユルヴェーダが、スリランカにおける土着の伝統医療やその他の伝統医療と融合あるいはそれらを侵食していく状況を、現地で収集した歴史文献やアーユルヴェーダ大学における伝統医療の教育実践の現場の調査から明らかにした。こうした社会的背景を明らかにする傍ら、農村地域において地域共同体に埋め込まれた伝統医のもとで調査を行い、患者一人ひとりへのインタヴュー調査から、西洋医療やアーユルヴェーダ、スリランカ土着の伝統医療など、さまざまな医学がひとりの患者の身体に、さまざまなアプローチをしていることを明らかにした。また、スリランカ独自のカタワハと呼ばれる言霊信仰が、医師と患者とのあいだの言語コミュニケーションや、診断結果の言語化を忌避させる原因として作用していることも明らかとした。本研究の学術上の意義は、患者の身体を基点とした伝統医療のグローバル化の状況の記述およびその理論的枠組みを提示した点にある。また、社会的な意義は、今日の日本社会における医療がおかれた状況は、医療訴訟などの増大に伴い、医療実践の数値化・言語化への強迫観念的とも言える志向がみられるが、本研究が提示したスリランカの事例は、言語化を忌避するという正反対の志向がみられる。こうした事例から、インフォームド・コンセントをめぐる是非など、さまざまな問題領域における考察の道筋が開かれることが期待できる。今後、スリランカで得た事例をより入念に熟慮したうえで、日本社会における医療をめぐる問題についても考察を行なっていきたい。
著者
柳町 功
出版者
日本経営学会
雑誌
日本経営学会誌
巻号頁・発行日
no.5, pp.77-89, 2000-05-30

It is the aim of this paper to review the backgrounds and features of corporate restructuring that has been undertaken in Korean big business groups, or chaebol, in 1990's. We can explain the traditional structure of Korean chaebol from two features such as absolutely closed ownership by founder on his family, and highly diversified business structure. Through recent corporate restructuring we can confirm that traditional features in Korean chaebol has been changing. Corporate restructuring can be explained from two aspects such as "inside" factors and "outside" factors. As inside factors, for example, we can point out two major changes, such as the wealth inheritance and distribution among the chaebol families, and aggressive restructuring drive aimed for the world best company. And as outside factors we can consider stepped up the Kim Dae-jung administration's policy for chaebol reform. In the last two years after the onset of Korea's IMF crisis, many chaebols have successfully overcome the worst recession through painful reforms. But among the largest five chaebols, the Daewoo group, which was famous for its "globalization strategy" and "emperor-management style" by chairman Kim Woo-choong, collapsed in the summer 1999. In the top-four chaebol, the Samsung group is undisputedly the best "role model" in Korea's corporate restructuring drive. Samsung's corporate restructuring can be explained from the two aspects above mentioned. Other groups, Hyundai, LG, and SK are also highly estimated in their successful restructuring efforts by President Kim Dae-jung and the government. In early January 1998, President-elect Kim Dae-jung and five tycoons of Korean largest chaebols agreed to drastically reform their business practices. The five-point accord, which became the main targets of President Kim's chaebol-policy, was as follows: to hold chaebol leaders more accountable for their managerial performances, to boost managerial transparency, to improve their financial health, to focus on core businesses and to eliminate loan guarantees among affiliates. And at the end of August 1999, President Kim has started new three reform programs. These new measures are aimed at restricting the chaebol's control of the non-banking financial sector, barring them from circular cross-unit equity investment and inside trading and checking illegal inheritances and the transfer of wealth among chaebol family members. As a whole, these government-pressured policies are very severe. But the most important point is not the government policy but the chaebol's understanding of crisis and their positive attitude for reforming themselves in order to survive intensifying global competition.
著者
田岡嶺雲 訳註
出版者
玄黄社
巻号頁・発行日
1910
著者
和田 俊憲
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中止犯における任意性要件は自由意思の問題ではない。自由意思に関わるのは、中止故意、中止の自発性および中止意思である。中止故意については、予防メカニズムにおける自由意思の意義を検討する必要があり、それで足りる。自発性については、制度ごとに相対的な法的概念として位置づければ足りる。脳科学から見た自由意思が直接影響を及ぼすのは中止意思であるが、反省・悔悟が事実的自由意思の不存在を凌駕する要素となりうるため、反省・悔悟の法的意義を解明することが"自由意思の危機"を解決する糸口となる。
著者
岩室 紳也
雑誌
思春期学 = ADOLESCENTOLOGY (ISSN:0287637X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.459-463, 2002-12-25
著者
岡上 雅美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、刑罰目的の観点から行う量刑事実の「選別」すなわちどのような量刑事実がどのような理由において量刑上考慮されることができるのかの問題を、刑罰論その他犯罪論の知見を通じて検討しようとするものである。(1)刑罰論の再構成および(2)犯罪後の量刑事実を取り扱う。(1)では、ドイツの議論を中心にして、「法の回復」論からする応報刑論の立場から、一定の構成要件外の事実について、それが刑罰論に反映されるべきことを論証した。同時に、予防目的は刑罰の正当化根拠ともなりえないことからそもそも量刑事実として重視することが妥当ではなく、量刑の指針としては不安定であるものと考える。(2)については、いわゆる王冠証人規定について検討を加え、これをさらに発展的に捉えるために、真実発見のための協力的態度のみならず、他の問題としても「被害者との関係」が同じく「規範の妥当性の回復」という刑罰の正当化根拠に基づいて、正当な量刑事情となりうることについて検討した。いわゆる修復的司法に関する研究が近時盛んに行われているが、それを量刑論に応用しようとする試みである。これについてもまた、刑罰目的論との照らし合わせが出発点となる。なお、これらの成果は論文集として今年度中に公刊する予定である。
著者
伊藤 昌司 川嶋 四郎 八田 卓也
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、2年間にわたる充実した研究の結果、次のような研究実績を得ることができた。まず、頻繁に、共同の研究会を開催した。個別具体的な内容は、以下に記載したとおりである。八田卓也「任意的訴訟担当の許容性について」、川嶋四郎「判例研究・遺言者の生存中における遺言無効確認の訴えの利益」、篠森大輔「遺言執行者の地位について」、八田卓也「判例研究・遺言執行者の職務権限が認められた事例」、八田卓也「判例研究・遺言無効確認の訴えの利益」、伊藤昌司「1883年ベルギー王国民法改正予備草案理由書」、川嶋四郎「判例研究・具体的相続分の確認を求める訴えの利益」、松尾知子「遺言事項別・権限別にみた遺言執行」、伊藤昌司「判例研究・遺留分減殺」、岡小夜子「共同相続人間の取得時効」、道山治延「検認と相続資格」等。いずれの研究会においても、家庭裁判所の裁判官および調査官等の参加を得て、活発な議論を展開し、かつ、有意義な指摘や示唆を得ることができた。特に、伊藤は、フランス法系の遺言執行制度の研究の一環として、明治大学の図書館に所蔵されている資料を入手し、ベルギー王国(当時)の1883年ベルギー王国民法改正予備草案理由書中の遺言執行者に関係する部分を調査・研究し、その成果を「訳注付き翻訳・ベルギー王国民法改正予備草案理由書」としてまとめつつある。川嶋は、文献収集を行い、遺言執行者の訴訟上の地位について、比較法的研究を行った。特に、昨年秋、アメリカ合衆国ワシントンDCにて、アメリカ州法における遺言関係の立法資料等の収集活動に従事した。現在、ノース・カロライナ州遺言法の翻訳と分析を行っている。お、当初、共同研究者であった八田は、一昨年、日本における遺言執行関係の最近の最高裁判決を研究し、かつ、ドイツ連邦共和国のケルンおよびベルリンにおいて、遺言執行に関する学説および実務の現況調査に従事した。以上の獲得できた知見がら、日本法における遺言執行者の実体法上および訴訟法上の権限のあり方について、総合的な研究成果を公表する予定である。
著者
渡辺 晃宏 馬場 基 市 大樹 山田 奨治 中川 正樹 柴山 守 山本 崇 鈴木 卓治
出版者
独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

奈良文化財研究所では、1961年に平城宮跡で初めて木簡を発掘調査して以来、20万点を超える木簡を調査・研究してきた。今回の研究では、この蓄積と、文字認識や情報処理に関する最新の情報学・情報工学との連携を図り、(1)木簡の情報を簡易にデジタル化するシステムの開発、(2)木簡の文字画像データベースの作成、(3)木簡解読支援データベース群の構築、(4)木簡の文字自動認識システム(OCR)の開発の4点を軸に研究を進め、木簡の文字画像データベース「木簡字典」と、木簡の文字解読支援システム「Mokkan Shop」(モッカンショップ)を開発した。「木簡字典」には、カラー・モノクロ・赤外線写真・記帳ノート(木簡の読み取り記録)の4種類の画像を掲載しており、これまでに約1,200字種、約20,000文字を収録した。「Mokkan Shop」には、今回開発した墨の部分を抽出するための画像処理手法や欠損文字に有効な文字認識システム、及び今回入力した古代の地名・人名・物品名のデータベースに基づく文脈処理モジュールを搭載し、解読の有効性を高めることができた。これにより、全体が残るとは限らない、また劣化の著しい、いわば不完全な状態にあるのを特徴とする木簡を対象とする、画期的な文字の自動認識システムの実用化に成功した。「木簡字典」と「Mokkan Shop」は、木簡など出土文字資料の総合的研究拠点構築のための有力なツールであり、当該史料の研究だけでなく、歴史学・史料学の研究を大きく前進させることが期待される。なお、今回の研究成果の公開を含めて木簡に関する情報を広く共有するために総合情報サイト「木簡ひろば」を奈良文化財研究所のホームページ上に開設した。また、WEB公開する木簡字典とは別に、『平城宮木簡』所収木簡を対象とした印刷版「木簡字典」として、『日本古代木簡字典』を刊行した。
著者
原 正昭 高田 綾 斎藤 一之 齋藤 一之 高田 綾
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

テープに付着させた指紋試料からのShort Tandem Repeat(STR)解析を行ったところ、1個の指紋付着試料(約200mm^2大)からでも十分にSTR型判定が可能であることが判明した。次に、メンブレン付きスライドガラスに指紋を付着後、レーザーマイクロダイゼクション装置を用いて指紋の隆線部分を採取し、微量な隆線試料からのSTR型解析が可能であるか否かについて検討したところ、10×6mm大で12~6ローカス、7×4mm大で7~2ローカス、7×2mm大で4~1ローカスのSTR型が判定された。