著者
笠原 良太 石川 孝織 嶋﨑 尚子
出版者
産炭地研究会(JAFCOF)
雑誌
JAFCOF釧路研究会リサーチ・ペーパー
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-45, 2016-08-31

本報告書は,2016〜2018年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C)『第4次石炭政策下での閉山離職者家族のライフコース:釧路炭田史再編にむけた追跡研究』(課題番号・16K04111研究代表者・嶋﨑尚子)による研究成果の一部
著者
井原 雅行 中島 浩 宮田 章裕 青木 良輔 石田 達郎 瀬古 俊一 渡辺 昌洋 橋本 遼 渡辺 浩志
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.359-370, 2019-11-25 (Released:2019-11-25)
参考文献数
22

This paper introduces a case study intended for verifying, evaluating and improving technologies for a practical service; its process is analyzed using the design thinking approach. We develop and evaluate two technologies for disaster situations; a resilient information sharing platform and a mutual safety confirmation application on the platform. The case study includes a variety of verifications and evaluations such as a system work test in a disturbed public space, a larger scale system work test, and user acceptance evaluations that address both usability and psychological factors. The heart of our improvement process is it repeated back-step in the service design process for more efficient incremental advancement. We advance the field of technology research and service design research by providing guidelines for technology improvement and/or service design through the introduction and analysis of the practical case study.
著者
中俣 尚己
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.1-17, 2017-10-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

この論文では、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』を用い、接続助詞の前接語品詞の偏りを調査した。結果、B類接続助詞は前接語の動詞の割合が90%前後と高く、C類接続助詞は前接語の動詞の割合が60%前後と低いことがわかった。動詞の中をさらに詳しく調べると、B類の節では「いる」「ある」「見える」「違う」「テイル形」「ナイ形」といった状態を表す表現の割合がC類より少ないこともわかった。このような偏りが起こる原因としては、本研究でB類と分類した節は全て時制の区別を持たず、そのため既定的な命題は出現しえないからだと考えられる。また、「わけ」「はず」などの名詞由来の文末表現の前接語の動詞率はB類と等しく、「かもしれない」「だろう」「よ」などの名詞由来ではない文末表現の前接語の動詞率はC類と等しかった。
著者
藪崎 志穂 島野 安雄
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.127-139, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
12
被引用文献数
5 2

2008年6月に新たに選定された平成の名水百選の水質特性を明らかにするために調査・採水をおこなった。平均値をみると、ECの値は地下水が相対的に高く、pHは湧水・地下水が6.9とほぼ中性であるのに対し、河川水・用水は7.6と弱アルカリ性を示していた。水温は地下水が相対的に低い値となっていた。水質組成としては、Ca-HCO3型が卓越しているが、Na-Cl型のように海水や風送塩の影響を受けている地点や、Ca-SO4型のように火山などの影響があらわれていると思われる地点も存在している。δ18OやδDは東日本側で相対的に低く、西日本側で相対的に高い値を示す傾向が認められた。またd-excess値は日本海側で高く、太平洋側で低いという分布特性が明瞭にあらわれていた。
著者
伊豆原 月絵
出版者
日本シルク学会
雑誌
日本シルク学会誌 (ISSN:18808204)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.79-87, 2019 (Released:2019-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The author conducted a restoration study of the 18th-century French court costume and is studying aesthetic sense and dyeing technique. Because costumes are being restored based on detailed research data such as composition data such as costume patterns and weaving techniques, weaving methods, etc. There is no previous study mentioning the reason such as silk costumes are lightweight. In this study, from the survey of textiles in the Rococo era of domestic and overseas museums, it was hypothesized that the texture properties of this court costume texture might be related to silkworm varieties, and for four years from 2012, after obtaining the Grants-in-Aid for Scientific Research, we restored court costumes from breeding of the original race of European silkworm variety. First of all, we bred Sevenne white of European silkworm cultivar, reeled the raw silk, weave a white cloth and made a dress. Next, again breeding it, restoring the fabric of Kasuri made of natural dyestuffs, making it into a court costume.These studies demonstrate that the characteristics of the court costume ‘light, three-dimensional form, and soft’ properties are attributable to the characteristics of the European silkworm cultivar Sevenne White, and due to differences in silkworm varieties. We clarified the importance of fiber properties and the aesthetic sense required in the Rococo era. The characteristic is clearly to have them as a result of the experiment, it became clear that the difference in the form of the dress is caused by the fiber characteristics of the silkworm variety.
著者
大谷 崇仁
出版者
福岡歯科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

平成31年度は平成30年度までに明らかにした細胞・分子レベルでの高濃度GluOCによる脂肪細胞の細胞死(ネクロトーシス)調節をマウス個体で再現可能かというテーマに挑戦する予定であったが、分子レベルでの思わぬ発見もあり、平成30年度に引き続き、高濃度GluOCが脂肪細胞に与える影響について解析を行った。明らかになった点は大きく2つである。1つ目はGluOCが脂肪分解に大きな役割を果たしているという点である。GluOCはその受容体であるGPRC6Aに結合することで、cAMP-PKA-ERK-CREBシグナルカスケードを活性化させ、脂肪分解の律速酵素として知られるATGL(adipose triglyceride lipase)の発現量を亢進させることは以前明らかにしたが、さらにその他の脂肪分解関連酵素であるペリリピンやHSL(hormone sensitive lipase)のリン酸化を亢進させ、脂肪分解を促進させることを明らかにした。2つ目は高濃度GluOCが脂肪細胞の細胞接着を調節しているという点である。脂肪細胞の細胞膜上には接着分子の1つであるACAM(adipocyte adhesion molecule)という分子が発現しており、これらはhomophilicに脂肪細胞間の接着を調節するのと同時に、脂肪細胞の大きさを調節することが知られている。高濃度GluOCはこのACAMの細胞膜上の発現を亢進させることが分かった。以上の2点から、GluOCは糖代謝のみならず、脂質代謝においても重要な役割を果たし、かつ脂肪細胞間の細胞接着を亢進させることで、脂肪細胞に肥大化しにくい性質を付与する可能性が示唆されたことは、今後の研究の新展開として重要な1年となったと考える。
著者
深澤 克朗 沢登 千恵子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.152-157, 2016-05-14 (Released:2016-07-15)
参考文献数
16

本稿では、中世古典文学の数作品について「係り結び」を構成する係助詞の頻度を計測し、それをベースにテキストマイニングを試みた。統計的手法としては、比率の検定、主成分分析、クラスター分析、判別分析を行った。「係り結び」は鎌倉・室町時代あたりから衰退が起こってきているということが定説であり、本稿の作品群においても、時代を追ってその傾向が見られる[1][2]。さらに、その作品間での差を段単位での係助詞の頻度により調査した。その結果、「宇治拾遺物語」は他の作品とは差があるという傾向が見受けられた。
著者
芝池 由規 川尻 智士 有島 英孝 菊田 健一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.391-394, 2022 (Released:2022-05-31)
参考文献数
9

症例は45歳男性.右顔面と右上下肢のしびれを主訴に受診,画像検査にて左橋被蓋上部ならびに左上小脳脚に出血を認めた.第2病日,舌の左側に限局した味覚低下を自覚.電気味覚検査にて舌左側の鼓索神経ならびに舌咽神経領域に味覚障害を認め,中枢性味覚障害と診断した.同症候は上小脳脚付近に存在するとされているpontine taste area(PTA)に至るまでの同側の上行線維が障害されたためと考えられる.本症例はPTA近傍の上小脳脚の出血で同側味覚障害を呈しており,病巣の上小脳脚近傍には対側の交差線維は存在しないことが推察され,PTA近傍の橋上部被蓋で交叉する可能性が示唆される.
著者
濱田 雄太
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.529-534, 2022-08-05 (Released:2022-08-05)
参考文献数
18

重力の量子化は,素粒子物理学最大の難問の1つとして,長年横たわっている.弦理論やホログラフィー原理を使って,様々な状況下での理解が進んでいるが,未だ完全な定式化には至っていない.そこで,少し視点を変えて,仮に重力の量子論が完成したとして,我々の世界にどんな示唆があるのか,という問いを考えてみよう.量子重力理論が完成すれば,時空の曲率がプランクスケールにまで大きくなった場合を取り扱うことができる.したがって,インフレーション期以前に存在したかもしれない超初期宇宙の超高温状態や宇宙の始まり,ホーキング輻射によりプランク長さ程度まで小さくなったブラックホールの運命,が分かると期待される.次に,重力以外のセクターについてはどうだろうか? すなわち,なぜ我々の世界は標準模型で記述されるのか,暗黒物質の正体は何なのか,電弱スケールとプランクスケールの階層性はどこからくるのか,といった疑問に量子重力理論は何か役立つのであろうか?これらに直接答えることは難しい.ここでは,このような問いに迫るための第一歩として,「量子重力理論は理論の非重力セクターに非自明な制限を与えるか?」を問いたい.仮に重力を量子化せず,古典的に扱うならば非自明な制限は得られないだろう.プランクスケール以下の低エネルギー有効理論は,古典重力理論と結合した有効場の理論で与えられる.この低エネルギー有効場の理論の立場からは,アノマリーを生成しないことにだけ注意すれば,どんな物質場や相互作用を導入しても良い.ところが,近年の発展により,一見無矛盾だけれども,量子重力と結合できない有効場の理論の集合(沼地(Swampland)と呼ばれる)が存在し,さらにそのような理論の数は,量子重力と結合できる有効場の理論の数よりも遥かに多いことが明らかになりつつある.このように,低エネルギーの立場からは一見明らかでない制限を見出そうとする研究は,量子重力の沼地問題と呼ばれ,最近研究が進展している.もちろん,完全な量子重力理論を手にしない限り,沼地は確定できないのだが,ブラックホール,弦理論,あるいはホログラフィーが正しいと仮定して,様々な角度から量子重力理論が持つべき性質を議論できる.こうして得られる(あるいは予想される)制限は,沼地条件または沼地予想と呼ばれる.最近,著者らは,低エネルギー有効理論の無矛盾性条件の詳細を注意深く調べることで,一見明らかでない隠された沼地条件を見出せることを発見した.具体的には,次の2つを考えた.1つ目は,散乱振幅の無矛盾性条件である.場の理論の基本的性質であるユニタリー性や因果性は,散乱振幅がある種の条件を満たすことを意味する.そこから,広いクラスの理論で弱い重力予想を示すことができた.2つ目は,理論に存在する位相欠陥の無矛盾性である.欠陥の動力学を記述する場の理論が無矛盾に存在することを要請して,元々の理論のゲージ群に強い制限が与えられることが分かった.さらに,我々は,様々な沼地条件をブラックホールエントロピーの有限性の一般化として理解することも提案した.また,いくつかの沼地条件とブラックホール物理との関係を明らかにした.提案は,これまで独立と思われてきた沼地条件を,より基本的な1つの原理から理解できる可能性を示唆している.今後の更なる発展により,量子重力理論の隠れた無矛盾性条件,背後にある原理が明らかになっていき,現象論への示唆,あるいは量子重力の定式化そのものへの示唆が得られることを期待する.