著者
諏訪 真美
出版者
愛知淑徳大学
雑誌
医療福祉研究 (ISSN:13497863)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.78-84, 2005

青年の社会的ひきこもりは,さまざまな疾患がその背景となっている.そのうち統合失調症,気分障害,広汎性発達障害(アスペルガー障害),神経症,人格障害,一次性ひきこもりの鑑別を概説した.このなかで鑑別の困難な疾患の一つとして「アスペルガー障害」が挙げられる.アスペルガー障害のなかには幼児期・思春期に診断されないまま青年期になり,対人関係の困難さなどから就労が続かず,ひきこもるという形で事例化する場合がみられる.さらに診断の困難なものとしては,これまでの疾患分類では診断しきれない「一次性ひきこもり」が挙げられるが,これは現代日本の青年の新しい精神病理と考えられる.この2つの状態について,事例を交えて紹介しその精神病理および鑑別の要点・治療の差について解説した.
著者
板東 充彦
出版者
九州大学
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.107-118, 2005

Support for the socially withdrawn requires not only strong commitment from family, but also the discovery of a support method that the individual can make use of. It is also considered important for such individuals to have group experience at transitional facilities before they return to society. With an easy-to-use support method in mind, this paper reviewed the literature related to the application of the group approach for support of "hikikomori" (the socially withdrawn) and attempted to further conceptualize the issue. As a result, seven group approaches, namely "group psychotherapy," "day care," "ibasho (place of belonging)," "self-help group," "hospital treatment," "overnight facilities," and "support group," were conceptualized. Characterization was performed from the three viewpoints of the supporter (specialist - non specialist,) the framework (medical - community mental health,) and the support structure (comprehensive - hard - soft - free.) In order to offer effective support that is also easy to make use of by the socially withdrawn, it was proposed that specialists work in the area of community mental health. Recovery from a state of social withdrawal was understood as a process in which a person rediscovers his/her place, and the group approach was realized as a way to determine how to offer support for such recovery.
著者
大隈 紘子
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.195-201, 2005-03-01

わが国では近年社会的ひきこもりが増加し問題になっている.大分県精神保健福祉センターでは,2002年から「社会的引きこもり対策推進事業」を3ヵ年計画で進めている.2002年度の大分県の「ひきこもり」実態調査の結果,社会的ひきこもり件数は211名であった.このうち,30歳以上のひきこもり者が31%あり,「高年齢化したひきこもり者」が相当数いることを明らかにした.また,ひきこもり継続年数が5〜9年の者が約30%,さらに,ひきこもり継続年数が10年以上の者が約20%あり,「長期化するひきこもり者」が多数いることが判明した.本稿では2症例のひきこもり者の症例報告をした.この治療経験から,対人関係の問題を補う支援の必要性と,どんな職に向いているのかがわからない悩みには具体的な職業相談や就労支援が効果的であることがわかった.これらの悩みは現代の青年やフリーターにも共通する悩みであり,現在は青年から大人になるのが困難な時代であると感じた.
著者
村澤 和多里
出版者
作新学院大学
雑誌
作新学院大学人間文化学部紀要 (ISSN:13480626)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-15, 2005-03-23

E.H.エリクソンのアイデンティティ論は、1950年代のアメリカにおいて、既存の社会に対して反抗的な「青年文化」を理解する枠組みとして生み出され、1970年代には日本においても青年心理学の基礎に位置づけられた。しかしながら、1980年代にはいるとエリクソンの理論は急に色あせたものとなり、論壇からは「退場」していった。現代、「ひきこもり」などの青年期の問題について理解・援助していく上で心理と社会を包括的にとらえるパラダイムが必要であると思われるが、エリクソンに代わるものはいまだに登場していない。本論文ではあらたなるパラダイムの可能性を探る第一歩として、エリクソンのアイデンティティ論について概観し、また相対化することを目的として、社会学者P.L.バーガーのアイデンティティ論と比較検討した。エリクソンの理論の限界としては時代的コンテクストを相対化する視点を持ち得なかった点を、バーガーの理論の限界としては結果的に人間から社会への働きかけの可能性が示されていない点を指摘し、新たな理論への可能性としてエリクソンにおけるアクチュアリティの概念に注目した。