著者
久保田 直行 矢口 愛子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.683-692, 2009-10-15 (Released:2010-01-12)
参考文献数
43
被引用文献数
1

国内における少子高齢社会の到来により,高齢者や子どもの見守りのため,家庭用パートナーロボットの開発への期待が高まってきている.しかし現状のロボットはシナリオに依存することが多く,自然なコミュニケーションを実現できてはいない.本研究の目的は,環境と発話内容の関係性を学習することで,人間とロボットの間での自然なコミュニケーションを実現することである.本論文ではロボットが環境と発話内容の関係性を学習するためにスパイキングニューラルネットワークを用いた手法を提案した.提案手法を用い,コミュニケーションを通じて,ロボットが日用品の用途を学習する実験と,時間と発話の関係を学習する実験を行った.実験の結果,ロボットが人間との相互作用によって認知環境に基づいた発話内容の更新を行えるようになる,ということを示した.
著者
大槻 美佳
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.171-180, 2021-09-25 (Released:2021-10-13)
参考文献数
39

進行性非流暢性失語(nfvPPA)の診断に必要な要素的言語症候とその病巣,診断基準に準拠した診断手順を概説し,今日のトピックスを取り上げた.トピックスは以下である.1.発語失行のみを呈する群はPPAOS(primary progressive apraxia of speech)として,区分されるようになった.2.文産生障害が前景になる一群は,病状の進行とともに前頭前野の機能低下を示し,bvFTDに類似の病像になる可能性が高い.3.背景病理として,PPAOSは4リピートタウオパチーが多く,その他,TDP-43プロテイノパチー,3リピートタウオパチー(ピック病)などが報告されているが,出現頻度は報告により異なり,症候と疾患単位の関係はまだ十分確立していない.4.特殊型として,進行性前部弁蓋部症候群(進行性Foix-Chavaney-Marie症候群)を呈する一群があり,TDP-43プロテイノパチーを呈し,筋萎縮性側索硬化症と同様の疾患スペクトラムである可能性が示唆されている.
著者
安倍 洋子
出版者
中央公論新社
雑誌
中央公論 (ISSN:05296838)
巻号頁・発行日
vol.102, no.12, pp.p184-194, 1987-10
著者
中村 長芳
出版者
文芸春秋
雑誌
文芸春秋
巻号頁・発行日
vol.65, no.13, pp.p138-152, 1987-10
著者
城下 賢一
出版者
京都大学法学会
雑誌
法学論叢 (ISSN:03872866)
巻号頁・発行日
vol.157, no.5, pp.98-113, 2005-08
著者
伊藤 整
出版者
中央公論新社
雑誌
中央公論 (ISSN:05296838)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.169-178, 1960-08
出版者
青土社
雑誌
現代思想
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.31-213, 2007-01
著者
長濱善夫著
出版者
創元社
巻号頁・発行日
1961
著者
こまたん 畑中 優美 吉村 理子
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.49-68, 2016-11-01 (Released:2017-11-03)
参考文献数
7
被引用文献数
4

神奈川県大磯町高麗山で2015年4月18日~10月10日まで野外のアオバトの鳴きの声を録音して鳴き声の解析を行った。併せて保護アオバトの鳴き声を録音して鳴き声に個体差があるのかを検討した。1)アオバトの鳴き声にはオアオ鳴きとポポポ鳴きの二種類があるのを確認した。調査地でのオアオ鳴きは5月2日の鳴き声初認~10月10日の最終調査日まで聞かれ、ポポポ鳴きは5月2日のオアオ鳴き初認日~8月7日まで聞かれた。2)アオバトの標準的な鳴き声は句1~句10で構成されるソング(オアオ鳴き)であることが分かった。参考に鳴き声をカタカナ表示すると『オオゴアッゴ(句1)、オー(句2)、オー(句3)、オアオ(句4)、オアオ(句5)、アオアーオ(句6)、オーアー(句7)、アーオアオ(句8)、オアオ(句9)、オー(句10)』という鳴き声に聞こえる。3)野外アオバトの全鳴き声の句1~句10の全鳴き声の周波数範囲(ソング内最低周波数最小値~ソング内最高周波数最大値)617Hz~1242Hz。平均値は714Hz~1066Hzであった。4)ソング内最低周波数に該当する句は、句2で全体の96.7%が句2に集中している。5)ソング内最高周波数に該当する句は、句6が全体の61.1%、句8が22.2%で合わせると83.3%を占めてほぼこの二つの句に集中している。6)ソング内最低周波数が上昇するとソング内最高周波数も上昇するという相関関係にあり平均値ではソング内最低周波数713Hzに対してソング内最高周波数は1072Hzで周波数上昇幅は359Hzであった。7)全鳴き声の句1~句10までの各句長さの範囲は0.38~3.42秒。平均値は0.88~2.38秒であった。8)各ソング内長さの最小値に該当する句は、句5が32.2%、句9が35.6%、句10が22.2%でこの3つで90.0%を占めている。該当する句の長さの範囲は0.38~1.07秒。9)各ソング内長さの最大値に該当する句は、句1が36.7%、句7が45.6%の2つで82.3%を占めている。該当する句の長さの範囲は1.76~3.42秒。10)全鳴き声のソング長さの範囲は18.29~25.39秒。平均値は22.33±1.42秒(SD)であった。11)保護アオバトの各句最高周波数も行徳12オスの句10の1ヶ所を除いてすべて野外アオバトの鳴き声の周波数範囲内にあった。12)保護アオバトの各句の長さ(時間)も野外アオバトの鳴き声の長さの範囲内にあった。13)保護アオバトの鳴き声は個体ごとに声紋の形が違うことが分かった。14)各句最高周波数の野外アオバト全数各句の標準偏差と保護アオバト各句の標準偏差の平均値を比較すると野外アオバト全数の各句は1.9~3.9倍バラツキが大きい。15)ソング長さの野外アオバト全数標準偏差と保護アオバト標準偏差の平均値を比較すると野外アオバト全数ソング長さは3.5倍バラツキが大きい。16)保護アオバト3個体は年を経ても鳴き声の最高周波数や長さの計測値のバラツキは小さく、声紋の形状変化においても大きな経年変化はなかった。17)ソング長さと句2の最高周波数の組み合わせで作成された散布図から、ソング長さと句2の最高周波数の最大値-最小値の幅(分布の範囲)の各最大値を利用して作成された分散範囲枠を当てはめると同一個体をおまかにクラス分けをすることが出来る。18)個体間の差異があること、個体間の差異よりも個体内の差異が小さいこと、個体の鳴き声は年を経ても大きくは変化しないことからアオバトの鳴き声を個体識別に使用することが可能である。
著者
大崎 健一 小西 淳 池上 和仁 小出 幹夫
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.497-502, 1991-04-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
7
被引用文献数
2

短時間熱脱水架橋した線維化アテロコラーゲンと熱変性アテロコラーゲン複合体で構成される人工真皮を開発した。そこで、ラット全層皮膚欠損創にこの人工真皮を貼付し、さらに同時或いは1、2週後に自家の薄い分層皮膚(S.T.S.)を重ねて移植した。その結果、S.T.S.生着率は、同時に重層移植した群で50%、1週間後移植群で60%、2週間後移植群では90%と高率であった。組織学的には、生着例ではいずれも疑似真皮様となった人工真皮の上に、S.T.S.が極めて自然に密着していた。S.T.S.の表皮基底細胞は、植皮6日後には、BrdU(チミジンアナログ)の盛んなとり込みも見せ、旺盛な分裂増殖能を示した。以上より、この人工真皮は生体適合性が高いため薄い分層植皮の為の良いbedとなり、厚い皮膚移植や皮弁以外に方法がなかった全層皮膚欠損創の再構成にも貢献出来る可能性があるものと考えられた。
著者
森田 亜紀 早川 文代 大田原 美保
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00084, (Released:2023-02-17)

ベーカリー製品に特化した分析型パネルを評価者として,ベーカリー製品9品目の官能評価の設計や品質情報の伝達の際に参照できるテクスチャー用語体系を構築する一助となる調査と解析を行い,以下の結果を得た.(1)ベーカリー製品9品目のテクスチャー描写に使われる用語のデータを得ることができ,そのうち69語が「ベーカリー製品の主要なテクスチャー用語」と位置付けられた.(2)ベーカリー製品と用語を集計し主成分分析を適用したところ,ベーカリー製品のテクスチャーは、「かたさに関連するテクスチャー」,「空気を含んだやわらかさに関連するテクスチャー」に加え,「油脂由来のテクスチャー」や「咀嚼中に口腔内で感じる水分に関連するテクスチャー」が重要であると解釈できた.(3)官能評価の設定や情報伝達に利用できるデータベースが作成でき,ベーカリー製品毎の代表的なテクスチャー用語とその語彙特徴が明らかとなった.
著者
松本 雄宇 岩崎 優 細川 恵 鈴木 司 井上 順 重村 泰毅 高野 克己 山本 祐司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00090, (Released:2023-02-17)

腎臓病患者の治療食として使用されている低タンパク米の製造工程で生じるERPの脂質代謝改善効果を検討した. 高脂肪食を与えた肥満モデルマウスにERPを摂取させたところ, 体重および精巣周囲脂肪重量の増加が抑制された. また, ERP摂取により糞中TG量が増加した. さらに, 血中ALT活性と肝臓中脂質量の結果から, ERP摂取は高脂肪食に起因する肝障害を抑制することが示された. 興味深いことに, ERP摂取によりインスリン抵抗性に関連するCerS6の発現量低下も観察された. ERPは主にペプチドと遊離アミノ酸から構成されていること, また一部の血中遊離アミノ酸濃度と精巣周囲脂肪重量との間に負の相関関係が認められたことから, 本研究で観察された効果はペプチドと遊離アミノ酸のどちらかないし両方を介していると考えられる. これらの結果から, ERPは抗肥満食品として有用な素材であることが示唆された.
著者
本多 拓実 齊藤 寛人 脇坂 崇平 稲見 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.393-402, 2022-12-28 (Released:2022-12-28)
参考文献数
20

In sports, it is essential to accurately predict the results of others’ actions based on the movements’ characteristics and respond appropriately to them. Previous studies have proposed systems that predict motions using machine learning and present these results to users. However, it remains unclear whether the judgment basis constructed by machine learning is useful for humans to predict movements accurately. This study developed a Neural Network that predicted the kicking direction of soccer penalty kicks and extracted the basis. Also, we tested whether the extracted basis was useful for participants in their predictions. The results showed that participants perceived the extracted basis as valid, even though they had not used it as a strategy at first.
著者
金子 充
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.33-43, 2002-08-31

産業構造の転換に伴って,人びとの働き方,家族のあり方,ライフコースが大きく変化してきている。そのことは,社会福祉の「対象」が変化していることを表している。こうした社会福祉の現代的な「対象」の問題は,ジェンダー論,人種/エスニシティ論,そしてアンダークラス論から提示されている。「批判的社会政策論」(Critical Social Policy)はこれらの議論のエッセンスを凝縮し,階級,ジェンダー,人種/エスニシティなどの観点から,人びとが「社会的に分裂した」(social division)状態にあることに注目しつつ,そのような、人びとの差異やアイデンティティに配慮した福祉国家を構築することに関心をもつアプローチである。こうした視点をもとに,現代の社会変化と「社会的分裂」に関する議論を踏まえた社会福祉対象論を再構成するための展望について論じる。
著者
杉山 真樹
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.148-153, 2015-05-25 (Released:2015-06-01)
参考文献数
28

「木材の良さ」に関するこれまでの研究をアプローチ方法で分類すると,1)木材の良さを木材の物理・化学的特性から説明,2)木材が人間の心理面に与える影響をアンケートや行動観察等の間接的手法で評価,3)木材が人間に与える影響を人間の生理指標から直接的に評価,の3つに分けられる。現在,社会的要請の最も大きい研究分野は3)であるが,中長期的には2)を事例研究からより科学的普遍性のある疫学的研究に発展させることが必要であると考える。また,この分野の研究推進は急務であるが,同時に成果情報の社会への発信を強化することが重要である。
著者
時田 諒 佐藤 尚輝 谷尻 豊寿 戸田 創
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.10-17, 2022 (Released:2022-10-17)
参考文献数
15

3 次元相同モデルを用いて現代日本人における肩甲骨全体形状のバリエーションの抽出を試みた。全頂点の3 次元座標に対する主成分分析の結果,第1 から第5 主成分までで累積寄与率が約50% となった。第1 主成分は,肩甲骨体部の彎曲が強まるにつれて,関節窩や烏口突起の前方への傾きが強まる成分であった。第2 主成分は,肩甲骨体部が頭尾方向に長くなるにつれて,棘上窩に対する棘下窩の面積が大きくなる成分であった。第3 主成分は,肩峰の前傾に伴い棘上窩の幅が小さくなる成分であった。第4 主成分は,肩峰が外側に張り出すにつれて棘上窩の幅が大きくなる成分であった。第5 主成分は,肩甲棘から肩峰にかけての前傾に関する成分であった。肩甲骨には多くのバリエーションが存在し,全体形状を包括的に解析する重要性が示唆された。今後は同手法を用いることで,肩甲骨全体形状と肩関節疾患の関連性の解明などが期待できる。