著者
長谷川 正哉
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.17-23, 2016-03-31 (Released:2018-02-16)

靴は地面と足を隔てる外的環境であり、杖や装具よりも使用頻度が高い日用品である。また、 靴は立位や歩行に影響をおよぼすことから、それらを介入対象としてあつかう理学療法士は靴に関する知識を持つ必要がある。本稿では高齢者の足部機能を補助する一般的な靴についてふれ、靴の選択方法および環境設定、着用方法について概説した。 高齢者に対し「歩行」を目的とした靴を選ぶ際にはヒール、ソール、アッパー部分の構造を確認する必要がある。一方、高齢者では靴の着脱動作が困難な場合があり、また、靴の選択基準として靴着脱の容易さや足当たりを重視するため、オーバーサイズの靴を選択する傾向がある。 そのため、理学療法士は足と靴に関する知識を持ち、足部評価、着脱動作を容易にする環境設定、足と靴に対する情報提供、靴の着用指導を行う必要がある。
著者
大鐘 勇輝 榎堀 優 梶 克彦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.145-157, 2023-01-15

医療技術の発達による寿命の延伸と,これにともなう高齢化によって介護業界の人手不足が社会問題となっている.高齢者介護施設では日常生活の介助のほかに,健康維持を目的とした活動量の把握・管理が求められる.そこで本研究では,車椅子使用者を対象とした低コストなモニタリング手法を目指し,BLEビーコンを用いた自走・介助の判別および,活動量の推定手法を提案する.BLEビーコンから発信される電波は,距離の二乗に反比例して減衰するため,受信機との距離によって受信電波強度は変化しやすい.そこで,介助者に取り付けたBLEビーコンの受信電波強度が,各シチュエーション(介助者がいない,介助者が車椅子を押す,介助者が近くを通る)によって異なる特徴を,自走・介助の推定に,車椅子の車輪に取り付けたBLEビーコンの受信電波強度が,車輪の回転によって変化する特徴を,活動量の推定に用いた.評価の結果,自走・介助の推定は93.0%の精度で,活動量推定の指標となる車輪回転数の推定は100.0%の精度で推定できた.
著者
尾辻 健太 酒井 一徳
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.175-179, 2019 (Released:2019-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

子持ちシシャモ (Mallotus villosus〔カラフトシシャモ, 別名 : カペリン [以下, シシャモ] 〕) 経口摂取によるアナフィラキシーを2例経験したので報告する. 2例とも食物アレルギーの既往はなく, シシャモ摂取歴は不明であった. 1例目は6歳男児. シシャモなど摂取後アナフィラキシーをきたした. シシャモの皮膚プリックテスト (SPT) の結果, 生では身は陰性で卵は強陽性, 加熱では身・卵とも陽性であった. 焼いたシシャモの食物経口負荷試験 (OFC) では, 身と卵のOFCいずれもアナフィラキシーをきたし, 卵ではアドレナリン筋注を要した. イクラ, タラコはともに特異的IgE陰性かつOFC陰性であった. 2例目は7歳男児. シシャモなど摂取後眼瞼腫脹あり. 加熱シシャモのSPTは身で陰性, 卵で弱陽性であった. 焼きシシャモOFCの結果, 身は陰性であったが, 卵はアナフィラキシーを認めた. イクラは自宅で症状なく摂取可能で, タラコOFCは陰性であった. 以上より, シシャモ卵独自のアレルゲンが存在する可能性があると考えられた.
著者
桂 宏光
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.742-757, 1982-10-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
86
著者
福田 央 韓 錦順 水谷 治 金井 宗良 山田 修
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.4, pp.273-314, 2017 (Released:2022-12-05)
参考文献数
12

焼酎の84種類の揮発性成分をSPME法とヘッドスペース法を用いて分析した。泡盛及び甘藷焼酎の揮発性成分間の相関解析を行った。その結果,中鎖脂肪酸エステル類間及び高級脂肪酸エチルエステル類間で相関性は全体的に高く,生合成系や化学構造の類似性が寄与していると推定された。モノテルペンアルコール類間及び低沸点エステル類間では高い相関性を示す成分について生成経路を推定した。フルフラールは意外にもアルデヒド類と相関性を示した。この他,泡盛及び甘藷焼酎において,個別に高い相関性を示す成分について考察を加えた。

1 0 0 0 OA 仏国学制

出版者
文部省
巻号頁・発行日
vol.第3編 巻5 大学総論(河津裕之訳), 1876
著者
山田 俊弘
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

本発表では昨年逝去した地球物理学者で環境学者の島津康男の地学思想を再考する――日本でも「人新世」の問題についての議論が広がりをみせてきている。これを単なる層序学上の問題として、あるいは人文学者たちの「新しい意匠」としてだけみるのではなく、同種の問題に取り組んだ日本人科学者の先駆性に学ぶことから対処法を考えてみたい。昨年92歳で死去された島津康男氏(1926-2019)の学問的人生の歩みは、ある意味で‘論理的’にみえる。父親の転勤のため転校を繰り返した学齢期を一時松本で過ごしており、地学的な関心を抱いたとみられる。五高を経て東大地球物理学科に進むと、坪井忠二に師事し、先輩格の竹内均とともに重力測定や物理計算にあけくれた。名古屋大学理学部地球科学科に地球物理学担当の助教授として赴任、「国際地球内部開発計画 UMP」にからんで「地球内部の物理学」を推進する一方(島津 1962)、統一された地球科学をめざして「シームレスな地球科学」というスローガンを掲げた。一つの到達点を教科書『地球の進化』(島津 1967)に見ることができる。そこでは、第I部「現在の地球」(地球物性論)、第II部「地質時代の地球」(地球熱力学)、第III部「先地質時代の地球」(地球進化学)が整然と展開され、地球理論を形づくった。第II部では地殻-マントル系の発展過程がグローバルテクトニクスと関連づけて議論されている。この「10年間における精一杯の勉強の成果」と大型化した計算機を使いこなすことで、地球科学の最前線を切り開く道があったはずだが、1970年代の島津は「シームレス」を「社会地球科学」のほうへ拡張し、本格的に環境問題に取り組み始める。具体的には、国際的な環境アセスメントのマニュアル作りと中京圏での「環境の現場監督」の実践だった。それは一方では巨大化する科学のあり方を見すえた環境政策へのコミットを意味し、他方では広い意味での科学教育を展望するものだった(山田 2015)。この時期の島津の進路を理解するには「社会地球科学」だけでなく、「自然のシステム工学」という発想を考慮しておく必要がある(竹内・島津 1969)。そこでは、自然現象のシミュレーションや地球化学的循環、惑星科学、生物圏といった概念から現実の問題に対処する「システム制御としての」災害・環境科学が見通されていた。 この路線の延長上で1980年代の「核の冬」や「核融合炉」シミュレーションへの関与を解釈するのは容易だ。実際、核融合炉研究では、アカデミズム内の研究者として、研究開発を支援するアセスメント・システムの構築を議論している(島津 1985)。だが、島津のその後は、ボヌイユ&フレソズ(2018)が人新世問題で言及する「ジオテクノクラート」の役割を担う方には行かなかった。むしろ林(2018)が指摘するように、公害問題に端を発する社会的課題としての環境問題に市民が向き合うためのアセスメントを提唱し「アセス助っ人」と自称して活躍した。 おそらくその転換の倫理的な根拠をなすのが、「核の冬」ENUWARシミュレーション時のヒロシマ体験ではないかと考えられる。日本での会議のコーディネーターを務めた島津は、「コンピューター・ゲーム」を断念し、「“核戦争はわれわれ人間自身がおこす”のであり、“もしおこったら”の第三者的立場は正しくない」「日本SCOPE[環境科学委員会]はそれに代わり、“核戦争を決しておこしてはならない”の原則に立つことを求め、この線にそってENUWARの結果を利用すべき」と主張した(島津 1985b)。もちろん一方で、1970年代の実践から「住民参加ゲーム」などを通した環境アセスと意思決定の問題を考え抜いてきたという背景があってのことだが(島津 1982)、その後「人新世」をとなえることになるクルッツェンとともに議論していた島津の思想と行動は、この問題における日本の貢献を考えるときあらためてふり返っておくべきと思われる。 【文献】ボヌイユ, C. & フレソズ, J.-B. 2018: 人新世とは何か, 野坂しおり訳, 青土社.林能成 2018: 地質学史懇話会会報, 50, 31-34.島津康男 1962: 国際地球内部開発計画資料, 1, 7-15.島津康男 1967: 地球の進化, 岩波書店.島津康男 1982: 環境情報科学, 11-1, 26-34.島津康男 1985a: 日本物理学会誌, 40-12, 972-975.島津康男 1985b: 科学, 55-12, 766-771.竹内均・島津康男 1969: 現代地球科学, 筑摩書房.山田俊弘 2015: 東京大学大学院教育学研究科基礎教育学研究室研究室紀要, 41, 183-194.
著者
児玉 龍彦
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.156-160, 2018-02-20 (Released:2019-02-20)
参考文献数
7

遠藤 章博士によるスタチンの発明は,人類史上はじめてコレステロール合成の本格的な制御を可能にし,肝臓やマクロファージをはじめとするヒトの細胞におけるコレステロール代謝の解析が大きく進み,メガスタディによる動脈硬化の予防の実証を可能にした.そのインパクトは20世紀の世界の医薬品開発と臨床医学を大きく変えた.年1兆円以上のブロックバスターを生み出し,グローバルなメガファーマの成立をうながした.だが,スタチンの影響はそれにとどまらない.コレステロールのメガスタディの評価は新たな論争を生み出し,単純化した標準治療や,コレステロールをはじめとする脂肪制限の栄養学には大きな批判も生まれている.スタチンの多面的作用の検討から,人体内の神経,血管,骨免疫系などにおける膜脂質とベシクル輸送におけるコレステロールのシグナル分子としての役割を明らかになりつつある.遠藤章博士のスタチンの発見は,医学薬学のパンドラの箱をあけ,21世紀の生命情報科学の創成をうながしている.
著者
Mengjin Hu Zhaoting Gong Yuejin Yang
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
pp.63924, (Released:2022-12-16)
参考文献数
28
被引用文献数
2

Aim: Some observational studies suggested that atherosclerosis increased the risk of venous thromboembolism (VTE), and vice versa. However, the results were conflicting, and the causal relationship is yet to be established. Therefore, we applied Mendelian randomization (MR) analyses to assess the bidirectional causality between coronary heart disease (CHD) and VTE, deep venous thrombosis (DVT), and pulmonary embolism (PE). Methods: A total of 184,305 individuals with CHD were included from the CARDIoGRAMplusC4D Consortium. Information on VTE, DVT, and PE were obtained from the FinnGen biobank. Genetic instruments for CHD and VTE were constructed using 37 and 12 single-nucleotide polymorphisms, respectively. Inverse-variance weighted meta-analysis under a random-effect model was used as the preliminary estimate. Five complementary MR methods were also used, including weighted median, MR-Egger, multivariable MR (adjusted for the body mass index), simple mode, and weighted mode methods. Results: The genetically instrumented VTE (odds ratio [OR]: 1.05; 95% confidence interval [CI]: 1.00-1.11; P=0.06), DVT (OR: 1.03; 95% CI: 0.99-1.08; P=0.19), or PE (OR: 1.07; 95% CI: 0.98-1.16; P=0.11) showed no causal relationships with CHD. There was also no clear evidence showing the causal effects of CHD on VTE (OR: 1.00; 95% CI: 0.82-1.22; P=0.98), DVT (OR: 1.00; 95% CI: 0.79-1.27; P=0.97), or PE (OR: 0.98; 95% CI: 0.82-1.18; P=0.87). No pleiotropic bias was found in the MR analyses. As heterogeneity was significant, a random model was used to minimize the effect of heterogeneity. Conclusions: No causal associations existed between CHD and VTE. Arterial and venous thromboses may represent separate entities.
著者
植田 和美 渡辺 文雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.36, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】日本人にとって二枚貝はビタミンB12の主な供給源である。中でもアサリは、日本食品標準成分表2010によると可食部100g当たり52.4μgとビタミンB12含有量が高い食品である。また、アサリ加工品である水煮缶詰(液汁を除いたもの)においても、63.8μg/100gのビタミンB12が含まれており、手軽な食素材であることからビタミンB12供給源と考えられた。さらに、これまでの研究から活アサリの「煮る」加熱調理では、ビタミンB12の煮汁中への移行が認められている。そこで、本研究ではアサリ水煮缶詰を固形物および液汁に分けて測定を行い、ビタミンB12含有量を明らかにすることを目的とした。 【方法】3種類の市販アサリ水煮缶詰各5試料を用いて、ビタミンB12含有量を測定した。ビタミンB12の測定方法は、フードカッターにより均質化したアサリ固形物および液汁を分析試料とし、Lactobacillus delbrueckii subsp. Lactis ATCC 7830 によるバイオアッセイ法を用いた。 【結果】アサリ水煮缶詰3種類のビタミンB12は、固形物中に17.4~39.4μg/100g、液汁中に6.3~8.8μg/100gが含まれており、製造元により含有量には差が見られた。また、日本食品標準成分表における水煮缶詰のビタミンB12含有量は液汁を除いたものとして示されているが、一缶に含まれるビタミンB12含有量の15~30%が液汁中に存在していた。つまり、液汁25g程度で成人の推奨量である2.4μg/1日を補完することが可能であると言える。このことから、アサリ水煮缶詰の利用方法としては、液汁も一緒に使用する調理方法がビタミンB12供給のためには有効であると考えた。
著者
池間 里代子 イケマ リヨコ
雑誌
流通經濟大學論集
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.21 (291)-26 (296), 2008-01
著者
森下 綾子 谷口 裕子 滝野 長平 大滝 倫子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.1027-1032, 2010-04-20 (Released:2014-11-28)

32名の疥癬患者に対し,輸入したペルメトリンクリームを用いて治療した(9名の予防投与を含む).19名の疥癬患者は,ペルメトリンクリーム単独で治療を行い,1週間間隔で2回,頸部より下の全身に塗布,乳幼児では頭頸部を含め全身に塗布したところ,全例で治癒した.高齢者,角化型疥癬,プレドニゾロン内服などの難治が予測される4名の疥癬患者に対し,ペルメトリンクリームをイベルメクチンと併用して用いた.このうち3名はペルメトリンクリーム2回塗布で治癒したが,角化型疥癬の1名は3回塗布にて治癒した.角化型疥癬患者と密な接触機会があるため予防的にペルメトリンクリーム塗布を行った患者9名は,1回塗布し,6カ月以上発症せず予防効果を得た.32例全例で接触皮膚炎などの副作用は認められなかった.血液学的検査では検査を行った5症例については,塗布前後で肝機能障害,腎機能障害などは認められなかった.ペルメトリンクリームは高い殺虫効果を持つばかりでなく,毒性が低いため,妊婦,授乳婦,生後2カ月以上の乳幼児にも使用できる外用薬であり,本邦でも早期に認可されることが望まれる.
著者
中崎 公隆 諸橋 環 清水 翔一 河村 研吾 高橋 昌里 森岡 一朗
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2019.0164, (Released:2020-07-17)
参考文献数
11

症例は 9 歳男子.腹痛発作を主訴に受診し,左腎に高度の水腎症を認めた.当初無機能腎として腎摘出術も検討されたが,腎実質障害は可逆性と判断し腎盂形成術を実施したところ,著明な腎機能の改善が得られた.高度な水腎症で検査上無機能と判断される場合でも,不可逆性の組織変化を来す病態以外では腎温存術を検討する必要がある.