著者
川辺 芳子 田中 茂 永井 英明 鈴木 純子 田村 厚久 長山 直弘 赤川 志のぶ 町田 和子 倉島 篤行 四元 秀毅
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.443-448, 2004-07-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

[目的] 防じんマスクの密着性の評価に使用されているマスクフィッティングテスターを用いてN95微粒子用マスク (N95マスク) の顔面への密着性の定量的評価を行うことの妥当性を検討することと, N95マスクの装着状況およびマスクの選択と使用方法の指導の重要性を明らかにすることを目的とする。 [対象] 当院に勤務する職員133名で, 男性29名, 女性104名, 常時N95マスクを使用している者は46名, 毎日は使用していない者87名であった。 [方法] 労研式マスクフィッティングテスターMT-02型TMを用いてマスクの漏れ率を測定し, 10%以下を許容範囲とした。基準に達しない場合は装着方法を指導し, それでも達しない場合はマスクの種類を変更した。 [結果] 1回目で漏れ率が10%以下であったのは87名 (65%) であった。10%を超えた46名のうち40名は指導やマスクの変更により10%以下になったが, 最終的に6名は達しなかった。マスクの選択, 鼻の部分の密着性, ゴムひもの使用方法が問題であった。 [結論] マスクフィッティングテスターはN95マスクの顔面への密着性の定量的評価に有用であり, 顔に合ったマスクの選択と日常的な指導点検, 3種類以上のマスクを準備しておくことが重要であることが明らかになった。
著者
堀部 政男
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-24, 2019-11-29 (Released:2019-12-23)

AIやIoTは、グローバルな規模でこれまで経験しなかったような影響を与えている。それは、プライバシー・個人情報保護に新たな問題を投げかけている。これまでにまとめられているAI原則の中にプライバシー保護を揚げるのが通例となっている。それでは実際にどのように保護するのか。プライバシー・個人情報保護の問題は、情報通信技術(Information and Communication Technology : ICT)などの進展との関係でかなり論じてきた。その必要性は、日本の法律(2015年改正個人情報保護法附則第12条第3項)でも認められるようになった。これまでもそうであったが、グローバルな規模でプライバシー・個人情報保護問題を検討する必要性を痛感している。そこで、プライバシー・個人情報保護に日常的に取り組んでいる主要国のデータ保護機関(Data Protection Authority : DPA)で構成されている「データ保護プライバシー・コミッショナー国際会議」(International Conference of Data Protection and Privacy Commissioners : ICDPPC)における議論が実践的であり、それを参照する意義は極めて大きいと考えるに至った。日本の個人情報保護委員会は2017年にメンバーとして認められた。この会議においては2017年にIoTの具体的な事例である自動化・コネクト(接続)された車両のデータ保護に関する決議(Resolution on data protection in automated and connected vehicles)が採択された。また、2018年には、同会議においてAIにおける倫理及びデータ保護についての宣言(Declaration on Ethics and Data Protection in Artificial Intelligence)が採択された。従来からの研究に加え、個人情報保護委員会の委員長として、これらの国際的文書にコミットしてきた。特に後者については、常設のAI作業部会が設けられ、日本としてもインプットしなければならない。そのためには、英知が結集されるべきである。
著者
關口 武
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.374-395, 1940-06-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1
著者
森本 千佳子 松尾谷 徹
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会研究発表大会予稿集 2016 秋季 (ISSN:24320382)
巻号頁・発行日
pp.172-183, 2016 (Released:2017-07-01)

本論文は、チームの協業状態を把握する方法の試行結果を報告するものである。特に近年ではダイバーシティの進展により様々なバックグラウンドを持つメンバーとの協業が増えている。効果的にチームビルディングを行うことの重要性は実社会では理解されているものの、客観的にチーム状態を把握するのは難しく、実務の場面ではプロセス審査場面や職場観察などで行われるのが一般的である。本研究では、経済学の分野で所得格差の把握に用いられるローレンツ理論のジニ係数をチームの協業状態を把握するチーム貢献係数として応用し、複数のソフトウエア開発チームの協業状態を比較した。その結果、チーム貢献係数によってチーム協業状態の差異が把握できたことを報告する。
著者
佐藤 文隆
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.275-278, 2018-12-06 (Released:2019-01-08)

筆者は「元気な物理学」の時代(概略1955-65年)を経験したが,そこには計算機革命を主導するなど,「開かれた学問」のマインドに満ちていた。電子は素粒子であると同時にコンピュートする存在でもある。自然は人間の概念世界のなかに描かれるものである。力学の物理教育では実在とツールの関係の考察が必要であり,量子力学の解釈問題はこの点に関わっている。ツールは他の学問に波及する威力を持つ。
著者
古森 孝英 佐藤 修 森 良之 石井 正俊 榎本 昭二
出版者
特定非営利活動法人 日本口腔科学会
雑誌
日本口腔科学会雑誌 (ISSN:00290297)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.696-701, 1988-07-10 (Released:2011-09-07)
参考文献数
14

In this report we presented a case of emphysema of the parotid gland induced by abnormal habit.The patient was a 45-year-old man. In Sept. 1983, he noticed painless swelling of the left cheek. In Feb. 1985, concerned about the swelling which had continued to grow at times, he visited a clinic of an otorhinolaryngologist. However he received no cure because no swelling was found at that time. On Dec. 3, 1986, when he was admitted to a hospital for a physical examination, the swelling of the same region was pointed out by the doctor. And on Dec. 12, he was referred to our university clinic.In the clinical examination, a diffuse swelling of the left cheek was observed. W hen we pressed the bilateral parotid gland regions, we felt as if we had pressed a mass of flour. And foamy saliva was ejected from the parotid papilla with air. CT scan and sialogram revealed air in the bilateral parotid glands and ducts.Clinical diagnosis of emphysema of the bilateral parotid glands was made. This emphysema was considered to be induced by the abnormal habit that he had puffed out his cheeks strongly with his breath many times since he was 11 years old.
著者
山中 大学 田中 浩
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-17, 1984 (Released:2007-10-19)
参考文献数
32
被引用文献数
22 25

中層大気中に存在する薄い乱流層の成因の一つという観点から, 対流圏起源の慣性内部重力波の臨界高度砕波を理論的に吟味してみた。Coriolis力による慣性効果は長周期または長波長の内部重力波については無視できないものである。基本場の鉛直シアーと Coriolis因子を一定とした慣用の非粘性線形方程式系から慣性内部重力波を表わす厳密解が導かれ, さらに Olver(1974)が拡張した Liouville-Green 法を用いて臨界高度近傍での正しい局所分散関係式を得た。この関係式から慣性内部重力波の重要な特徴として, Jones臨界高度の「弁効果」, および, 上下の臨界高度の内側の一対の「転移高度」の存在, の二つが見出された。類似の特徴は, 無限小シアーと水平方向の異方性とを仮定する系について過去に指摘されているが (Grimshaw, 1975, 1980), それらの仮定は弁効果と転移高度の存否に関する限り本質的なものではないと言元る。弁効果と転移高度との複合作用の結果として慣性内部重力波は Jones臨界高度近傍で波面の走向に依存した吸収また反射を受ける。すなわち吸収率および吸収に伴う砕波乱流層の厚さは波面の走向が東西に向うほど増大し, 一方波面が南北に沿うような波は実質的に反射される。基本場の Richardson 数が大きいと転移高度はそれぞれ臨界高度に近接するため, 両臨界高度の内側の乱流層は外側のそれよりもずっと薄くなる。以上のすべての特性は Jones 臨界高度近傍のある領域内でのみ起こり, その外部ではよく知られた非慣性内部重力波と本質的に同じ特性が得られる。この領域はCoriolis 因数に比例した厚さを持ち, 非慣性内部重力波では完全に消失してしまう。現実の成層圏乱流層との比較さらに中間圏以高まで達する重力波の定量的情報としての活用を考え, 慣性内部重力波とその砕波乱流層の厚さとの関係を表わす式を具体的に導いた。メソスケール領域の水平波長を仮定する場合, 慣性内部重力波のつくる乱流層は非慣性波のそれに比べて薄くなる。
著者
赤林 伸一 有波 裕貴
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和2年度大会(オンライン)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.13-16, 2020 (Released:2021-10-28)

本報では、CFD 解析(RANS) を用いて、市街地屋外での喫煙時に生じる汚染質濃度分布及び屋内の喫煙所において喫煙者が退出する際のタバコ煙の拡散状況を解析し、建築・都市空間において受動喫煙が発生するリスクを明らかとする。今後の受動喫煙防止政策の策定や適切な分煙手法などに関する基礎的な資料を得ることを目的とする。
著者
Katsumi TAMADA
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.215-225, 2022 (Released:2022-08-13)
参考文献数
41

Rural areas provide various habitats for birds, and some studies have revealed habitat associations in rural bird communities in Japan. Previous studies have primarily focused on waterbirds or the habitat values of abandoned farmland, thus little is known about the importance of cultivated land for rural bird communities. Therefore, in this study, I clarified the characteristics of the avifauna in a rural area of the Ishikari Plain in Shinshinotsu Village, Western Hokkaido, and examined habitat utilization of cultivated land by eight major grassland species; Bull-headed Shrike Lanius bucephalus, Eurasian Skylark Alauda arvensis, Black-browed Reed Warbler Acrocephalus bistrigiceps, Siberian Rubythroat Calliope calliope, Stejneger's Stonechat Saxicola stejnegeri, Chestnut-eared Bunting Emberiza fucata, Black-faced Bunting E. spodocephala, and Common Reed Bunting E. schoeniclus. I conducted bird surveys along three 2-km line-transect routes among rice fields with some wheat, non-wheat crop fields, and weedy areas from April to October from 2016 to 2018. I recorded a total of 51 species of three general types: grassland birds, residential birds, and water birds. Rice fields in this study areas were flooded during early to mid-May to mid to late August, however species-specific habitat utilization analyses revealed that a small number of Eurasian Skylark, Stejneger's Stonechat, and Chestnut-eared Bunting inhabited the rice fields during study periods other than the flooding season. A relatively large number of Eurasian Skylark was observed in wheat fields and non-wheat crop fields throughout the study period, and Stejneger's Stonechat and Chestnut-eared Bunting were temporarily observed in those habitats. The other five species only rarely observed in rice, wheat, or non-wheat crop fields, but all eight species were observed in weedy areas. The characteristics of the avifauna in this rural area of Western Hokkaido proved to be quite different from previous studies conducted in the Kanto Region of Honshu. For the conservation of biodiversity and birds in rural areas, it is necessary to investigate the avifaunal characteristics of various regions of Japan.
著者
石黒 泰 崔 广宇 藤澤 智成 安福 克人 奥村 信哉 玉川 貴文 Joni Aldilla FAJRI 李 富生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_415-III_422, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
21
被引用文献数
2

合併処理浄化槽の処理水槽内水の残存有機物に関連すると報告されている粒径0.5-1 μmの粒子の構成を明らかにするため,処理水槽内水中の粒子と細菌が水質に与える影響を調査すると共に浄化槽内の粒子と細菌の量的変動を解析した.処理水槽内水の細菌数とBODの間に有意な相関がみられ,細菌が残存有機物に関連していることが示された.浄化槽内の粒子数と細菌数の変動から,嫌気ろ床において細菌以外の有機性粒子の多くが除去され,処理水槽内水に存在する粒径0.5-1 μmの粒子の多くが細菌であることが示された.クラスター分析から接触ろ床槽内水,処理水槽内水では細菌が残存有機物に最も強く関連する因子であることが示された.これらのことから浄化槽処理水の残存有機物を減らすためには,細菌を減らす必要があることが示唆された.

1 0 0 0 車輛工学

著者
車輛工学社 [編]
出版者
車輛工学社
巻号頁・発行日
vol.20(7), no.202, 1951-07
著者
杉浦 淳吉
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.3-13, 2003-06-25 (Released:2020-11-02)
参考文献数
14
被引用文献数
6

本論文では「説得納得ゲーム」という教育ゲームについて検討した.このゲームは,環境教育のツールとして開発・実践・改良された.このゲームの概略は以下のとおりである.1)プレーヤーは環境に配慮した消費行動を「アイディアカード」に書き出し,そのアイディアの内容を他のプレーヤーに説明し,さらに実行の「難易度」と多くの消費者が実行した場合の環境配慮の「社会的効果」をプレーヤー同士で評価する.2)プレーヤーを「説得する役割」と「説得される役割」に分け,説得する側は,説得される側に対して,アイディアカードに書かれた内容を実行するように説得する.説得される側は,理由をつけて断る.相手の説得に納得したら,カードに実行を約束する署名をする.3)一定時間で区切り,説得する側と説得される側の役割を交替する.それぞれの役割を2回ずつ経験し,最終的に獲得された署名の数に応じて得点を競う.以上のような説得的コミュニケーションに関わる諸要素を取り込んだこのゲームは,環境配慮行動の普及をテーマに設定された大学の授業および市民ワークショップにおける6つの運用事例における検討から,ゲームのバリエーションの設定により数人から数十人の単位での教育場面に適用可能であることが示された.また,環境教育に限らず,コミュニケーション教育や専門家教育のためのゲーミングとしての可能性や,研究ツールとしての可能性についても論じられた.
著者
西村 理
出版者
学校法⼈ 大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.6-30, 2014-03-01 (Released:2021-04-01)

アントニーン・ドヴォルザーク(1841〜1904)の交響曲第9番作品95「新世界より」の第2楽章の旋律は、《家路》というタイトルで親しまれている。《家路》というタイトルは、ドヴォルザークの弟子ウィリアム・アームズ・フィッシャー(1861〜1948)が作詞し、1922年に出版した《Goin' Home》の訳語である。本論文の目的は、《Goin' Home》がいつから《家路》として知られるようになったのか、《Goin' Home》と《家路》の歌詞はどのような関係にあるのか、さらにどのようにして《家路》が流布していったのかを明らかにすることである。日本で1931年3月に発売されたシルクレットのレコードがきっかけとなり、《Goin' Home》は《家路》として知られるようになり、ラジオでは1932年以降、英語で歌われていたものの《家路》というタイトルで放送されるようになった。1934年以降、《Goin' Home》に基づいた複数の日本語歌詞による楽譜が出版され、ラジオでも1937年から《家路》もしくはそれに類するタイトルの曲が放送されるようになった。フィッシャーの《Goin' Home》の歌詞における「home」は、文字通りの「故郷」と「天国の故郷」という二重の意味を持っていたが、《家路》として流布していく過程で、前者の意味のみが広まっていった。