著者
町 博光
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

消滅の危機に直面している奄美諸島方言の方言敬語法の調査をおこない、統一的な記録法で保存活用するのが本研究の目的であった。奄美諸島10地点で調査をおこなうことができた。奄美諸島の敬語法のおおよそが把握できた。奄美大島本島での北部の方言敬語法の簡素化、南部での古態性などが指摘できた。徳之島方言が奄美方言での南北の特徴を持っていること、与論・沖永良部方言が沖縄方言的であることなどが明かにできた。
著者
嵐 洋子 田川 恭識
出版者
杏林大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

九州北西部及び中部方言における韻律単位の実態と変化のメカニズムを明らかにするために,長崎県佐世保市を中心に,生成調査を行った。その結果,高齢層には,音調句末に特殊拍があると下降位置が変わりやすい傾向が見られたが,中年層にはその傾向は見られなかった。佐世保市方言においては,韻律単位が音節から拍へ変化している可能性が示唆された。
著者
鵜野 ひろ子
出版者
神戸女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

エミリ・ディキンスンは1850年代、新聞から日本について、さらにはペリーの遠征当時国会議員であった父親から直接、日本を力づくでも開国させようという米国の外交政策について知っていた。それが1860年以降の彼女の隠遁という生き方に影響を与えたことがわかった。それについての論文は『エミリ・ディキンスンの詩の世界』に掲載した。1850年代の資料収集に時間がかかったので、彼女の1860年代、70年代の、クラークや新島との関係についての資料収集が中途半端に終わった。
著者
坂西 友秀
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

研究の第部では、15世紀から19世紀末までの西洋人と黒人に対する日本人の人種ステレオタイプに関する歴史的、心理的過程について検討した。港町に住む人々は、16世紀にはすでに黒人に対する人種ステレオタイプをもっていたかもしれない。貿易、軍事、海外の事件に関わる諸問題は、江戸時代の末になって初めて、日本人と西洋人との間の関係に影響を及ぼす重要な心理、歴史的背景要因になった。明治末期から、心理学専門の学会誌として発行された「心理研究」をとりあげ、内容分析を行った。その結果、日本民族・人種の改良を説く「優生学」的な論文が多く出されており、人種や民族への関心が極めて強かったことがわかる。西洋人に対する憧憬と侮蔑の二面をもちながら、西洋人並みに日本民族を優良化することが重要課題であった。研究の第二部では、セクシャル・マジョリティのセクシャル・マイノリティに対する態度と反応を吟味した。異性愛者は、同性愛者特にホモ・セクシャルの人に対して強い否定的な感情を抱く割合が高かった。また、日本人の成人の人種ステレオタイプと偏見を、絵本の挿絵から抜き出した(ちびくろ)サンボに対する彼等の反応を分析することによって明らかにした。つまり黒人の子どもに対しては、知的ではなく、文化的でもなく、責任感もないといった印象を強くもっている人が多かった。これらの研究は、今日、多くの日本人が、マイノリティや人種集団に対してステレオタイプや偏見をもっていることを示唆するものである。
著者
鈴木 和博 南 雅代 加藤 丈典
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

・電子プローブマイクロアナライザを高性能・高機能化して分析値の精度と確度を高めた.・トリウムやウランを含む鉱物のコンコーダントな分析値を選別する化学的基準を確立して、CHIME年代の確度を高くした.・氷上花簡岩、領家帯ミグマタイト、肥後変成岩、韓国京畿地塊の準片麻岩、中国南東部の花商岩類、中国吉林省の東清花簡岩のCHIME年代を再検討して、地質学的推定年代や同位体年代との矛盾を解明した.矛盾の原因は肥後変成岩と東清花商岩では同位体年代、氷上花商岩と京畿地塊では地質学的解釈、領家帯ミグマタイトと中国南東部花商岩ではCHIME年代にあった.
著者
里 直行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

スタチンがマウスにおいて脳内ベータ・アミロイドを低下させることおよびその機序を明らかにした。スタチンはベータ・アミロイドの産生を抑制し、かつベータ・アミロイドのクリアランスを増大させた。ベータ・アミロイドのクリアランス増大の機序としてはLRP-1の増加が考えられた。両者においてイソプレニル化が関与していた。
著者
岡崎 竜二
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は強相関電子系において近年数多く発見されているエキゾチックな超伝導状態の解明を目的としている。本年度は重い電子系超伝導体URu_2Si_2の特異な超伝導状態の舞台となる「隠れた秩序」状態について研究を行った。この物質ではT_c=1.4Kで超伝導転移を示し、これまでの熱測定による先行研究や昨年度までの本研究による下部臨界磁場の実験結果より、時間反転対称性の破れた特異な超伝導状態であることが示唆されているが、その発現機構の解明には至っていない。その一方で、この物質ではT_h=17.5Kで比熱が明瞭な2次相転移を示すことが知られており、その秩序変数は発見以後25年経過した現在においても明らかになっておらず、「隠れた秩序」として注目を集めている。この物質では圧力・温度相図においてこの隠れた秩序相でのみ超在導が発現することが知られている。従って超伝導発現機構を解明する上で、この隠れた秩序相の解明は極めて重要である。そこで本研究では、この隠れた秩序状態を明らかにすべく、T_hで何の対称性が破れているかに注目して、磁気異方性に非常に敏感な磁気トルク測定装置の開発及び測定を行った。今回、正方晶単結晶のab面内に正確に磁場を印加することによってトルク測定を宅った結果、隠れた秩序相において正方晶では予期されない2回対称振動を観測した。このことに隠れた秩序が正方晶の面内4回回転対称性を破る電子状態であることを示唆しており、隠れた秩序の解明に向けた重要な実験結果であるといえる。
著者
遅澤 壮一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

四国中央部の三波川高圧型変成帯を広域マッピングした。マッピングは、大歩危砂質片岩、緑泥石帯主要部、緑泥石帯Lテクトナイト、ガーネット帯、アルバイト-黒雲母帯、オリゴクレース-黒雲母帯に、帯区分して行った。その他、砂質片岩、石灰質片岩、ピーモンタイト珪質片岩、マフィック片岩、アンフィボライト、エクロジャイト、変成超塩基性岩の特徴的な岩相を独立にマッピングした。エクスヒューメイションはデタッチメント断層を伴うウェッジエクストルージョンに始まり、アウトオブシークエンススラスト(OST)とデュープレックスに引き継がれ、最終的に正立褶曲に装飾されている。中央構造線は三波川変成岩のルートである。エクロジャイトは御荷鉾オフィオライトのメタモルフィックソール由来と思われる。
著者
舘野 隆之輔
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、土壌中の有機物含量が非常に小さい火山灰性未熟土壌に成立する森林の皆伐後の短期的・長期的な養分循環の変化を明らかにすることを目的として行った。樹木の一次生産量、土壌窒素無機化速度、樹木の窒素吸収量など窒素循環に関わるパラメーターは、人工林と常緑広葉樹林ともに未熟土以外の同一気候帯の森林と大差ないことが明らかとなった。一方で伐採に伴う硝酸流出量は、他の同一気候帯での結果に比べて小さく、このことは本調査地の特徴的な土壌特性や水文特性などを反映しているものと考えられた。
著者
山田 光男 木下 宗七
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我が国企業の中国での直接投資・現地生産が、日中経済の産業と貿易にどのような影響があるか、中国地域経済の特徴を考慮しながら、日中韓計量経済モデルや日中産業連関表の枠組みにより分析を行った。機械部門での日本企業の中国への進出は相互貿易を高め、輸出特化度を低下させてきた。日本から中国への生産シフトは、電気機械・一般機械部門の方が自動車部門よりも日本への影響が少ない。また、中国に於ける日系企業の省エネ活動は、他の企業にも普及しなければ中国全体の環境改善にはつながりにくい。
著者
東山 京子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、近代統治史料のなかで本府・法院・監獄・軍隊・専売・企業・地方州庁(街庄)・評議会などのあらゆる機関を持った小政府組織として存在していた台湾の統治機関である台湾総督府の行政文書を対象としたものである。現存する台湾総督府文書は、文書課において管理される過程で、行政的に体系的に保存された文書群と、編綴される前または廃棄される前に接収された現用のままの文書群とで構成されていることから、当該文書はこの二つの異なる文書群が保存された、通常の文書管理制度では類を見ない文書形態が残されている。このように本研究では、日本の近代を担ってきた行政組織の文書であり、現存する希少で豊富な価値を持つ歴史資料である台湾総督府文書を、近代公文書学的視点からその構造を明らかにしようとするものである。
著者
栂 正行
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、市民の近代化の過程を映し出す指標としてのイギリス社会小説に個人の近代化と社会の近代化の過程が見いだしうるように、同様の過程がインド英語小説のなかでどのように展開したかを検証した。かつての宗主国大英帝国から独立し、英語による社会小説を排出した旧植民地でも、イングランドの社会小説のたどった道を反芻するかのような現象が起きた。ナイポール研究、オクリ研究、シン研究を通じ、かつての英国最大の植民地インドにおいて近代化がいかに表象されたかを明らかにした。
著者
目加田 慶人 種田 行男 今枝 奈保美
出版者
中京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

食事の改善を必要としている国民が増大している.現在,記憶や写真に基づく食事量推定を利用した食事指導が行われているが正しく食事量を推定出来るわけではない.本研究では,食事量の推定精度向上のために,ステレオカメラを用いて,食品の大きさなどの情報を専門家に与えるシステムについて述べる.実際の食品を撮影し量を推定する実験をおこない,食品サイズを被験者に知らせることで,推定精度が向上することを示した.
著者
筧 一彦 広瀬 友紀 渡邊 眞澄 近藤 公久
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

人間の文理解過程において先行する文脈情報による予測が、後続する文の理解過程に与える影響及び文中の動詞特性の影響について検討した。実験の手法として、眼球運動測定装置によるVWP(VisualWorldParadigm)法や文完成課題などを用いた。刺激文として統語的構造に多義性を持つ文、語省略のある文、意味不整合語を含む文を使用した。その結果、先行情報の内容と後続の文処理との関係が種々明らかとなった。
著者
尾入 正哲 岸田 孝弥 向井 希宏
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

高齢者の交通モビリティを高めるために、高齢ドライバーの運転実態の分析、ナビゲーション時の方向感覚の検討、新たな交通安全教育の開発といった複数の観点から研究を行った。高齢ドライバーや高齢自転車運転者については、一時停止や確認行動を促進する工夫が必要であることが示された。またグループワークの手法を用いた交通安全教育が高齢者にとって有効であることが確認された。
著者
野口 典子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

東アジア包摂型福祉社会開発にむけてのソーシャルケアワークの実践方法と福祉専門職養成、とくに都市部の高齢者に生起している新たな「孤立」問題を追究する。地域(メゾレベル)で問題を共有化し、高齢者自身のエンパワーメントを軸に、地域の諸活動との連携を通じ、ニーズ発見システム、福祉専門職との協働によるソーシャルケアワーク実践の開発を意図している。
著者
近藤 健児 藪内 繁己
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題の一つのまとめとして、近藤と藪内の共同研究では、環境汚染を引き起こす工業材生産部門に汚染抑制装置を提供する産業部門が存在するという拡張された小国CopelandandTaylorモデルに、都市部門の最低賃金と失業を導入し、環境税や賃金政策、外国人労働の受け入れなどの経済効果について分析を行った。とりわけ労働受け入れは、一定の条件のもとでは、環境問題、失業問題、国内の経済厚生いずれにも好影響をもたらしうるという注目すべき結論が得られた。この共同研究はJournalofInternationalTradeandEconomicDevelopment(2012)に掲載された。
著者
渋谷 努
出版者
中京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では日本、イギリス、フランス、モロッコに住むイスラームマイノリティの生活とグローバルなネットワークについて現地調査によりデータを収集した。今回の研究で得られたデータは宗教的少数派のグローバルなネットワークを理解するための基礎的なものであるとともに、彼らの宗教的マイノリティであるため生じる生活戦略を一般的な理論を考察するためにも重要な寄与をすることが出来ると考える。
著者
長田 年弘 篠塚 千恵子 水田 徹 金子 亨 師尾 晶子 櫻井 万里子 櫻井 万里子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題は、水田徹(当時の研究代表)によって平成6年に開始されたパルテノン彫刻共同研究を発展的に継承するものである。ギリシア、アテネにおいて築いた各美術館との協力関係を土台としてパルテノン彫刻に関する総合的研究を進めた。アジアを視座とするギリシア美術史研究を推進した。
著者
佐藤 誠 峯 陽一 文 京洙 シャーニー ジョルジオ カルロス マリア・レイナルース 中村 尚司 鄭 雅英 佐藤 千鶴子 安藤 次男 小島 祥美 大倉 三和 スコーマン マキシ ソロモン フセイン コーネリッセン スカーレット バレスカス マリア・ロザリオ ベイリー エイドリアン アティエンサ マリア・エラ ハートウェル レオン デヤヘール ニコラ 大西 裕子 坂田 有弥
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

国際人口移動を単なる労働移民の問題にとどまらない複合現象として理解する視点にたち、日本とアジア、南アフリカと南部アフリカという二地域における国際人口移動の実態把握と比較分析を通じて、流出地域と流入地域において人間の安全が保障されるための課題は何であるのかを、人間安全保障の批判的摂取をふまえつつ解明した。具体的には、社会セクターにおける人口移動に焦点をあて、国際人口移動研究への理論的貢献を行った。