著者
蒲生 忍 マッコーミック トーマス
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.149-157, 2010-09-23 (Released:2017-04-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1

米国の終末期の医療選択としては1998年にオレゴン州で発効した尊厳死法Death with Dignity Act(以下DWDA)が最も先鋭的な枠組みとして取り上げられる。これは医師による自殺幇助Physician-Assisted Suicideとも呼ばれ、その施行状況が米国内のみならず日本を含めた諸外国の注目を集めている。オレゴン州はDWDAのみならず、緩和医療が最も活発に行われる州としてもよく知られている。オレゴン州に隣接するワシントン州でも、2008年にDWDA案が住民発案された。その可否を問う住民投票が大統領選挙と同時(2008年11月4日)に行われ、58%の支持を受け可決され2009年3月5日に発効した。筆者らは投票日に先立ちワシントン州で、DWDA案の立案にかかわった元ワシントン州知事Gardner氏はじめワシントン大学の医療提供者と面談し意見を聞く機会を得た。面談した様々な医療提供者の多くは、法案が自己決定に固執する一部の層のためであること、オレゴン州DWDA施行後の緩和医療を含め医療技術に大きな進歩があり、尊厳死を含め終末期の医療選択への要求が変化していることなどを指摘した。投票前の諸氏との議論を踏まえ、ワシントン州DWDA発効後の実施状況も報告したい。
著者
竹中 佳彦
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.35-47, 2010

<p>本稿の目的は,東大・朝日政治家調査と東大・朝日世論調査を用いて,2000年代の日本の国会議員のイデオロギーと信念体系を,有権者と比較しながら,明らかにすることである。分析の結果,以下の結論が得られた。第1に,代議士のイデオロギーには,03年から05年にかけて保守化や脱保守化という傾向は見られない。第2に,自民党代議士のイデオロギーは中道化しており,自民党と民主党のイデオロギー対立はかなり縮まってきている。第3に,国会議員の政党間の政策対立は,自民党と共産党や社民党の間では大きいが,自民党と民主党の間では,有意な差は存在するものの,さほど大きくはない。第4に,国会議員の信念体系は,安全保障に関する争点や小さな政府を強く統合する保革イデオロギーと,日本型システムに関する次元の2次元から構成されている。これに対して有権者の信念体系は,安全保障に関する争点と小さな政府が独立した次元となっており,日本型システムに関する次元とあわせて3次元て構成されている。第5に,国会議員の信念体系も,有権者のそれも,07年になっても大きな変化を見せていないので,イデオロギーを中核とする態度構造は残存している。</p>
著者
米山 弘一 謝 肖男 米山 香織 竹内 安智
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.302-305, 2009-11-20
参考文献数
35
被引用文献数
3 3

被子植物の約1%(3000-4500種)は他の植物に寄生する寄生植物である。寄生植物のなかでも、農業生産に大きな被害を与えているのがハマウツボ科の根寄生雑草ストライガとオロバンキである。ストライガは光合成機能を有する半寄生性で、主にソルガム、トウモロコシ、サトウキビ、イネなどイネ科植物に寄生する。オロバンキは光合成機能を失った全寄生性で、主にトマト、ニンジン、タバコ、アブラナなどの双子葉植物に寄生する。これらの根寄生雑草は、巧妙な生存戦略によってその生息範囲を拡大している。それは、(1)大量の種子を生産し、(2)種子の寿命が長く、(3)種子発芽が宿主由来の化学物質によって誘導されることである。すなわち、根寄生雑草の種子は、宿主の根から分泌される発芽刺激物質にさらされて初めて発芽する。この発芽刺激物質には少なくとも3種類の化合物群、すなわち、ソルガムのジヒドロソルゴレオン、ヒマワリのセスキテルペンラクトン、そしてストリゴラクトン(SL)、が知られているが、最も多くの植物種が生産・分泌している発芽刺激物質がSLである。本稿では、SLの構造多様性と植物界における分布について解説する。
著者
山口 克彦
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.83-89, 1990 (Released:2007-07-09)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
野々垣 文成
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
no.38, pp.39-48, 2016-12-20

声楽の分野では演奏が全てである。その演奏の助けとして歌手とピアニストの為の演奏法の解釈、分析が必要であり重要となってくる。現在、声楽の分野ではそのような文献がまだ不十分である。特にその中でもドイツ歌曲の分野では世界で最も優れている詩人の作品に才能ある作曲家が曲をつけていることでも知られている。筆者自身ドイツ歌曲専門の歌手であるため、ドイツ語圏の最高の芸術作品であるドイツ歌曲の演奏法と解釈に注目している。
著者
浅野 良輔
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.158-167, 2011 (Released:2011-03-08)
参考文献数
39
被引用文献数
1

健康生成モデルは,精神的健康をより力動的でポジティブな視座から捉えようとする理論である(Antonovsky, 1979, 1987山崎・吉井監訳,2001)。しかし,これまでの健康生成モデルに関する研究では,個人内過程のみが扱われるに留まっており,個人間の相互影響過程を考慮した検討が必要である。本研究では健康生成モデルに基づき,恋愛関係における知覚されたサポートと親密性が,首尾一貫感覚を介して,精神的健康を促進するというモデルを仮定し,二者の個人内過程と個人間過程を検証した。恋愛カップル85組を対象とする質問紙調査を行った。構造方程式モデリングによる分析の結果,(a)個人の首尾一貫感覚はその個人の精神的健康を直接的に促進する,(b)個人の首尾一貫感覚を介して,知覚されたサポートと親密性はその個人の精神的健康を促進する,(c)男性の首尾一貫感覚を介して,女性の知覚されたサポートは男性の精神的健康を促進する,しかし,女性の親密性は男性の精神的健康を抑制するということが示された。以上の結果から,恋愛関係と健康生成モデルの個人内過程,ならびに個人間過程との関連性が議論された。

1 0 0 0 OA 曽我物語

巻号頁・発行日
vol.第1冊, 1600
著者
周 宇嬌
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.23, pp.302-318, 2011-09
被引用文献数
1

飯尾はその著書『日本の統治構造』において、日本の議院内閣制の歪みを正し、政治システムを本来の意味での議院内閣制にすべきだと主張する。特に、総選挙で有権者が政党、政策、首相候補を三点セットで選択できる政治体制を作ることを重視する。また、90年代以降の政治改革が進行し、それは小泉内閣のもとで一定の成果を生み、日本の政治は望ましい方向に向かっているとの見解を示す。しかし、小泉内閣後を見てみれば、齟齬を生み出しているケースが多々ある。そこで、本稿は、概要を評者の視点で要約した後、小泉内閣後の日本政治について、有権者の三つの選択(マニフェスト、政党、首相)、有権者自身の動向、及び参議院から多面的な考察を加え、現実は飯尾の理想像から遠ざかっていることを明らかにした。また、観点が相違する大山礼子著『日本の国会--審議する国会へ』を紹介し、両者の議論を比較検討した。
著者
大橋 恵
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-36, 2010-03-20 (Released:2019-01-15)
参考文献数
31

The present study examined the cultural value attached to ordinariness in Japan. In previous researches, the Japanese attitude toward ordinariness was examined only among young adults. The present study aimed to ascertain the developmental changes in this attitude toward ordinariness. Elementary, junior high, and university students in the Tokyo area were asked about the connotations of the word “ordinary” in the phrase “an ordinary person.” In addition, they were asked to rate their image of an ordinary person using adjective pairs. It was found that while ordinariness did not receive a very favorable evaluation in general, the evaluation of junior-high students was greater than that of university students.
著者
砂原 秀哉 棚橋 京香 仲 立貴 菅野 昌明
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 第8回日本トレーニング指導学会大会 (ISSN:24337773)
巻号頁・発行日
pp.46, 2019 (Released:2022-02-25)

【目的】チェストプレスやショルダープレスでは、シートに後頭部、上背部、殿部を床面に右足、 左足を接触させる5ポイントコンタクトを保持することが推奨され、指導の実践現場において も、姿勢の重要性が強調されたレジスタンストレーニング指導が行われている。しかし、これ までのレジスタンストレーニングの指導書には、このような姿勢を維持する理由や姿勢の相違 に伴う発揮筋力の違いを示すエビデンスは明確に示されていない。そこで本研究は、チェスト プレスとショルダープレスの最大挙上重量(1RM)を、後頭部を背もたれシートに付けた姿勢と、 頸部を35°屈曲した姿勢で測定し、頸部の傾斜角度が1RMに影響を及ぼすかどうかを検討した。 【方法】対象者は、トレーニング経験を有する大学生28名(男性13、女性15名)、年齢は20.2±1.0 歳(男性20.8±0.4、女性19.7±1.1歳)であった。チェストプレスの測定はチェストプレスマ シン(FUNASIS社製)を用い、ショルダープレスの測定はショルダープレスマシン(LIDO社製) を用いた。姿勢条件は肩峰を通る床への垂直線-外耳孔と頭頂を結ぶ線の頸部角度が0と35° の2条件で実施した。角度の測定にMINATO神中式角度計7040を用いた。各姿勢条件における測 定はランダムに1RMに達するまで行った。チェストプレス、ショルダープレスの姿勢条件の1RM の比較には、対応のあるt 検定を行った。 【結果】対象全体のチェストプレス0°は50.5±18.0㎏、35°は50.7±18.5㎏、男子0°は67.5 ±9.0㎏、35°は68.3±9.9㎏、女子0°は35.7±6.9㎏、35°は35.5±6.4㎏であった。対象全 体および男女別ともにチェストプレス0°と35°の姿勢条件に有意差は認められなかった。一 方、対象全体のショルダープレス0°は27.1±9.1㎏、35°は25.9±8.9㎏、男子0°は36.0±5.1 ㎏、35°は34.4±4.9㎏、女子0°は19.5±2.7㎏、35°は18.5±2.8㎏であった。対象全体およ び男女別ともにショルダープレス0°が35°より有意に高値を示した。 【考察】頸部屈曲角度を変化させチェストプレスとショルダープレスでは、主働筋の長さが頸 部の屈曲により変化した場合に、筋の長さと張力の関係を示す「長さ-張力関係」によって 1RMに影響を及ぼすと考えられる。ショルダープレスでは、主に三角筋と僧帽筋上部が主働筋 であるが、頸部屈曲位35°条件では、肩甲骨や鎖骨の位置が変化し、これらの筋の長さが変化 し至適筋節長ではなかったと考えられる。一方で、0°条件では至適筋節長であったため高い 力を発揮することができたと考えられる。また、チェストプレスにおいて有意差が認められな かったことは、肩甲骨が起始部とは異なる大胸筋が代表的な主働筋であるため、頸部屈曲角度 の変化が大胸筋の長さに影響を及ぼさなかったと思われる。 【現場への提言】ショルダープレスのトレーニングにおいて、より適切に発揮筋力やパワーを 高めるためには、筋の長さ‐張力関係から、頸部屈曲角度を0°にしてトレーニングを行う必 要があると考えられる。一方、チェストプレスでは筋力発揮の観点からは頸部屈曲角度は影響 を及ぼさないと考えられる。

1 0 0 0 野間宏詩集

出版者
三一書房
巻号頁・発行日
1953