著者
崎田 嘉寛 寳學 淳郎 藤坂 由美子 近藤 剛 田邊 圭子 津内 香
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.311-326, 2021 (Released:2021-05-20)
参考文献数
112

The purpose of this study was to acquire historical insights into women’s football in prewar Japan. The study had 2 specific aims: 1) to analyze the origin and development of women’s football in Japan through information gathered at higher educational institutions for women (The Girls’ Higher Normal School, Nara Women’s Higher Normal School, Japan Women’s College, Tokyo Women’s School of Gymnastics and Music) and 2) to analyze the growth of women’s football using information collected at public high schools for girls. To achieve this, the historical records of 422 school were reviewed. To address the first question, it was investigated whether instruction and guidance were available at higher educational institutions for women, and whether football was an extra-curricular activity. The data suggested that while football might have been taught both as part of the regular curriculum and as an extra-curricular activity, none of the institutions played a key role in the shift from casual to competitive play or in the growth of football throughout Japan. Analysis of the expansion of football revealed that, of the 286 girls’ public high schools surveyed, 53 offered football; these institutions were broadly distributed from Kyushu to Hokkaido. Evidence of women’s football was confirmed from 1902 to 1940, most instances being in the Taisho era (1912–26), followed by the Meiji era (1868–1912) and the Showa era up to 1945 (1926–45). Football was played mostly during free time and athletic meetings, but it was also sometimes played during class, as a club activity, and during excursions. In some cases, football was played regularly and school competitions were held; however, there were no confirmed examples of inter-school competitions. The involvement of instructors, uniforms, equipment, and rules at the 53 schools was established. The data suggest that instructors, including principals, were involved to some extent, and that football was made more accessible by the provision of appropriate uniforms and equipment. There were mixed results for rules; in some cases, football was played casually with relaxed rules, while in other cases, female students played more competitively and organized association football like their male counterparts. This study is significant in being the first attempt to empirically examine the history of women’s football in Japan.
著者
寳學 淳郎 近藤 剛 藤坂 由美子 崎田 嘉寛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.97_3, 2019

<p> 日本における体育・スポーツ分野の歴史的研究において、サッカーを対象としたものは限定的にしか分析されておらず、女子サッカーを対象としたものは管見の限りない。</p><p> 本研究では、戦前日本における高等女学校の女子フットボールの様相を実証的に明らかにすることを目的とする。その際、学校史などの紙資料と聞き取り調査から研究目的にアプローチする。</p><p> 研究の結果、主に次が明らかになった。1902(明治35)年から1940(昭和15)年頃まで、青森から熊本までの高等女学校においてフットボールは行われていた。女子フットボールは、主に運動会や昼休み・放課後に、簡易なルールで行われ、実証では1916(大正5)年の大分第一高等女学校の「アッソシエーション・フットボール」が最古の画像である。高等女学校の校友会としての部活動や他校との対戦などは確認されず、高等女学校のフットボールは、組織化・競技化までには至らなかったと考えられる。</p>
著者
韓 美英 古塚 秀夫
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.213-218, 2013-06-25
参考文献数
6
被引用文献数
2

本研究では,次のことを明らかにしている。第1に,現金現物日記帳と資金繰表の収支概念が相違していることを具体的に種目(科目)または取引を取り上げて明らかにしている。さらに,この相違の要因として,(1)圧縮記帳の採用(資金繰表),不採用(現金現物日記帳)と,(2)前払金や前受金などについて,債権・債務関係を重視(現金現物日記帳)するか,換金性の速さを重視(資金繰表)するか,の2つを明らかにしている。第2に,現金を資金とした場合,現金現物日記帳が資金管理機能を有していることである。第3に,現金と預貯金を資金とした場合,現金現物日記帳から本来の現金取引と預貯金取引を抽出して集計することによって,資金繰表と同じような資金管理機能を有することを明らかにしている。
著者
四柳 宏
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.777-780, 2018

<p>B型肝炎ワクチンの定期接種化は,母子垂直感染対策だけでは水平感染のコントロールができなくなったことが主因である.定期接種化により今後日本のB型肝炎の新規発生は激減すると考えられるが,定期接種の対象とならない児や青少年に対するキャッチアップを行う必要がある.今後解決すべき問題としてエスケープ変異,ワクチン無効例への対策,ブースター接種の検討などが挙げられる.</p>
著者
高山 憲之 白石 浩介
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.38-100, 2017

<p>本稿では、給与所得者として20年以上、勤務した実績を有し、2012年度末の年齢が56~69歳の男性1253人を対象として、年金と高齢者就業の関係を分析している。主な使用データは世代間問題研究プロジェクトが2012年に実施したパネルデータ「くらしと仕事に関する中高年インターネット特別調査」である。分析によって得られた主要な知見は以下のとおりである。</p><p>(1)2012年度における法定の年金受給開始年齢は男性の場合、定額部分が64歳、報酬比例部分が60歳であった。本稿で分析の対象とした男性にとっては報酬比例部分だけで月額10万円前後(平均値)の年金を受給することができたので、定額部分64歳受給開始にもかかわらず、60歳から年金を受給しはじめた人が多かった。ただ、60歳時点では失業給付(求職者給付)を、まず受給し、その受給期間が満了した後から年金を受給しはじめた人も少なくなかった。</p><p>(2)2012年12月時点における年金受給率は60~64歳層で64%、65~69歳層では89%であり、総じて高齢になるほど年金受給率は高くなっていた。</p><p>(3)60歳以降、減額なしで老齢年金を受給する人が圧倒的に多かった。2012年12月時点で60~64歳層の場合、在職により老齢年金が減額されていた人は9%、全額支給停止となっていた人は12%にすぎない。65歳以上では、在職者が減る一方、在職による減額がはじまる屈折点も28万円超が65歳から比較的高めの47万円超に変わるので、減額つきの在職老齢年金受給者や全額支給停止者はきわめて少なくなっていた。</p><p>(4)2012年12月時点で56~59歳だった人については正社員または役員の割合が50%超となっていたが、60歳だった人の正社員割合は24%、さらに61~64歳層では11%、65~69歳層では、わずか2%であった。一方、60~64歳層の非正規就業者割合は約4分の1、無職者42%となっていた。なお、60歳であった人の失業者割合は22%となっており、この年齢層だけ失業者割合が異常に高かった。</p><p>(5)2012年4月時点における厚生年金保険加入率は60歳で50%割れとなっていた。さらに、61~64歳では24%弱、65歳11%弱、66~69歳4%弱と、その加入率は高齢になるほど低くなっていた。</p><p>(6)同時点で厚生年金保険に加入していた人の総報酬月額は56~60歳層で平均50万円前後であったが、61~65歳層30万円台、さらに66~69歳層20万円台であった。ただし、60~64歳で厚生年金保険に加入していた在職者の80%前後が「総報酬月額+年金受給月額」の合計額を28万円以下に調整し、減額なしで年金を受給していた。</p><p>(7)次に、コーホート別の加齢効果を調べたところ、まず、56~59歳時点の正社員割合は、かつて80%であった(または80%に近かった)が、1948年度生まれの世代から低下しはじめ、1952年度生まれ(2012年度には60歳)になると60%強になっていた。60歳を超えるとともに、いずれの世代でも正社員割合は30%前後あるいは、それ以下へ急減しており、被用者だけに限定すると、正規の人より非正規の人の方が総じて多かった。そして、64~65歳時点では無職者が過半数を占めるようになっていた。</p><p>(8)総報酬月額の中央値は、いずれの世代においても59歳時点で50万円以上となっていたが、61歳時点では30万円台または、それ以下に低下していた。ただ、その分布のばらつきは比較的大きく、61歳以降においても月額47万円超の人が30%以上いた(ゼロデータは除いている)。</p><p>(9)いずれの世代においても年金受給率は加齢とともに上昇しており、総じて62歳時点で50%を超え、65歳時点で80%超となっていた。とくに、1949~1951年度生まれについては定額部分に係る法定の受給開始年齢が65歳になっていたにもかかわらず、60歳受給開始者が40%台を占め、さらに61歳時点の年金受給率は60%台に上昇していた。これらの年金受給率は、1948年度生まれ以前の世代のそれより10%程度あるいは、それ以上高かった。</p><p>(10)年金受給者に着目すると、報酬比例部分に係る法定の受給開始年齢が60歳に据えおかれていたときに関するかぎり、定額部分に係る法定の受給開始年齢が段階的に65歳へ引き上げられても60歳から年金を受給しはじめた人が最も多かった。ちなみに、定額部分の法定受給開始年齢引き上げにぴったり合わせて実際に年金を受給しはじめた人は受給者の4分の1あるいは、それ以下にとどまっていた。</p><p>(11)他方、報酬比例部分に係る法定の受給開始年齢が60歳から61歳に引き上げられたとき、該当する厚生年金加入歴20年以上の男性は、その過半が60歳時にも厚生年金に加入していた。そして60歳から老齢年金を受給しはじめる人の割合は激減した。報酬比例部分の受給開始年齢引き上げは多大な雇用促進効果と年金受給開始先送り効果の2つをもっていたことになり、定額部分の受給開始年齢を引き上げたときとは明らかに違っていた。</p><p>(12)60歳時点に関するかぎり、在職によって年金給付が減額される、または全額支給停止となる人が、かつては多かった。ちなみに1948年度以前に生まれた世代の場合、その割合は60%台であった(全額支給停止者を含む)。しかし、1949年度以降に生まれた世代の場合、その割合は50%前後あるいは、それ以下になっていた。その割合は61歳以降、加齢にともなって急激に低下し、65歳時点では10%未満までダウンしていた。</p><p>(13)2012年12月時点で年金を受給していた60~69歳の男性について受給開始前後の就業状況等を調べた結果によると、まず、受給開始1年前の時点では正社員ないし役員が48%、非正規就業20%、失業中8%、無職者17%等であったが、受給開始直後には正社員ないし役員が17%となり、30%近いダウンとなる一方、無職者が36%、失業中15%、非正規就業25%へと、それぞれアップしていた。さらに受給開始2年後になると、正社員ないし役員は10%まで減る一方、無職者割合は48%へ上昇していた。受給開始直前に正社員ないし役員であった人に限定すると、受給開始直後も正社員ないし役員にとどまった人は3分の1にすぎず、無職者27%、失業者17%(無職者と合わせると40%超)、非正規就業21%へと就業状況が大きく変わっていた。</p><p>(14)就業状況が変わると週あたり労働時間も変わる。年金受給開始1年前には労働時間40時間以上の人が52%を占めていたが、年金受給開始直後には27%へと、ほぼ半減していた一方、労働時間ゼロが52%となった。年金受給開始とともに労働時間を減らしたり、勤務を辞めてしまったりした人が、それなりに多く、就労を抑制したり、早期引退を促進したりする効果が年金受給にあることが、パネルデータによって計量的に確認された。</p><p>(15)年金受給開始1年前の総報酬月額および「その他の月収」(報酬や週30時間未満の勤務から得られた賃金等)と、年金受給開始1年後の「年金+総報酬月額+その他月収」の合計額を比較すると、年金受給開始後、大幅に収入を減らした人が圧倒的に多かった。ちなみに、後者の前者に対する割合は20%未満の減が6%、20%以上40%未満の減8%、40%以上60%未満の減18%、60%以上80%未満の減25%、80%以上の減19%となっていた。</p><p>(16)実際に年金受給を開始した年齢が60~64歳であり、かつ年金受給開始直後においても総報酬を手にしていた人に限定すると、受給開始1年前の総報酬月額は15万円未満の人が13%、30万円未満40%であったが、受給開始直後になると、総報酬月額15万円未満の人は40%となっていた。そして、受給開始直後における「総報酬月額+年金給付(基本月額)」の合計額は20万円未満が21%、20万円以上28万円以下が31%、28万円超40万円未満29%、40万円以上10%となり、20万円以上28万円以下のところに、それなりの塊りがあった。総報酬月額と年金給付月額の合計額を28万円以下に制御し、年金を減額なしで受給するために総報酬月額を下方に調整した人が30%弱に及んでいた。</p><p>(17)生存時間解析をした結果によると、総じて、老後資金に余裕があったり、就業継続によって稼得が期待される賃金が従前賃金の60%未満であったりすると、早めに就労を停止し、年金を受給し始める傾向がある。さらに、無配偶者の方が有配偶者より就労を早期に停止する確率が高い。</p>
著者
海野 宏至 長谷川 正裕 鈴木 慶亮 松井 佑梨世 湏藤 啓広 今中(吉田) 恭子 吉田 利通
出版者
日本関節病学会
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.131-136, 2016 (Released:2017-07-31)
参考文献数
16

Objective: Tenascin-C (TNC) is an extracellular matrix glycoprotein. In this study, we examined the effects of full-length TNC on joint cartilage protection in murine osteoarthritis (OA) models and on synovial inflammation in OA joints. In addition, we performed an in vitro study to reveal the mechanism of repairing cartilage using full-length TNC.Methods: In this in vivo study, fourteen male BALB/c strain mice (8-weeks-old) were used. Both knee joints were exposed and the anterior cruciate ligament and medial collateral ligament were transected. 10 μg/mL of TNC were injected into the knee joint (group Ⅰ). The control group had injection of phosphate buffered saline (PBS) (group Ⅱ). Mice were sacrificed at 4 days, 2 weeks, and 4 weeks postoperatively. Cartilage was evaluated using the Mankin score, and synovitis was evaluated using the Synovitis score. An in vitro study was also performed on human cartilage specimens, which were obtained from patients who underwent total knee arthroplasty for the treatment of OA. Chondrocytes were isolated and cultured, and they were treated with 0, 1, or 10 μg/mL of TNC. We also compared the expression of many kinds of messenger RNA after exposure at each dose by real-time polymerase chain reaction. We evaluated the expression of TNC, inflammatory cytokines [TNF-α, IL-1β, NFκB], anabolic factors [TGFβ, TIMP3, bFGF], and catabolic factors [ADAMTS-4, -5, and MMP-3, -13].Results: With the in vivo study, the average Mankin scores were significantly better in group Ⅰ than group Ⅱ at 4 weeks (group Ⅰ; 1.1, group Ⅱ; 3.2 (P<0.05)). At 4 days and 2 weeks, no development of OA was found in either of the two groups. Low-grade synovitis occurred in both groups at 4 days, 2 weeks, and 4 weeks. There were no significant differences in average synovitis scores between two groups at 4 days, 2 weeks, and 4 weeks. The in vitro study revealed that TNC upregulated the expression of endogenous TNC, TNFα, IL-1β, NFκB, TGFβ, TIMP3 and ADAMTS-4, MMP-3, and MMP-13. But 10 μg/mL of TNC downregulated the expression of ADAMTS-5.Conclusion: This study has demonstrated that 10 μg/mL of full-length TNC can prevent articular cartilage degeneration for 4 weeks without promoting synovitis. The in vitro study demonstrated that TNC upregulates itself and anabolic factors. However, TNC also downregulated the expression of ADAMTS-5 which contributed to cartilage degradation.
著者
中村 匡秀 松本 健一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
設計工学・システム部門講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

This paper addresses an issue of spontaneous software evolution, which is a modern form of software evolution observed in social coding platforms such as GitHub. In the spontaneous software evolution, feature additions and modifications of software are achieved by spontaneous proposals from individual developers, not by the request from the project manager. In this paper, we investigate project factors that can boost such spontaneous software evolution. Specifically, we first introduce a governance framework of the spontaneous evolution, inspired by a smart city execution model, and then consider relevant factors that can motivate developers to propose actions. Finally, we discuss necessary features for the governance framework from viewpoints of (1) motivation of developers, (2) individual sense of value, (3) skill and competency, and (4) characteristics, quantity, and deadline.
著者
平河 茉璃絵
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究
巻号頁・発行日
vol.15, pp.119-165, 2021

<p> 2020年度に実施した第5回調査に関する主な調査結果は以下のとおりである。まず、40~64歳層の全体および男女別の結果を説明し、次いで、第5回調査で新たに調査対象になった60~64歳層のみを抜きだして整理した主要結果(60歳前後で変わったこと)を述べる。</p><p>(1) 仕事について</p><p> 男女ともに現在の従業上の地位は正社員の割合が最も高い。また、男性は専門職が多い一方、女性は事務的な仕事が圧倒的に多い。男女ともに6割以上の人が定年制があると回答。そして、男女ともに約8割の人が今後も仕事を続けたいか、現在、無職でも仕事に就きたいと考えている。そのうち、少なくとも年金を受給できるようになるまでは働きたいと考えている人が大半を占める。さらに、今後も就業意向がある人の7割以上が65歳以降も働きたいと考えている。キャリアアップのために何もしていない人が6割以上を占める。キャリアアップのための取り組みをしている場合、研修・職業訓練は職場の制度を利用し、仕事に関連するスキル・資格の取得は職場の制度を利用しない傾向が強い。現在の働き方として非正規雇用を選択した理由は、男性では「希望した仕事ではないが生活のため」という回答が多い一方、女性では「自分のやりたかった仕事だから」「労働条件が自分の希望とある程度一致したから」と回答した人が多い。現在、仕事をしていない理由としては男女ともに「病気、けが、障害等のため」が最も多い。女性では「親などの介護で手が離せないから」という理由が男性に比べて多い。</p><p>(2) ご家族・家計について</p><p> 本人のみの独居が最多であり、全体の44%を占める。同居相手で多いのは「母親」。生計維持の中心者は男性では「本人」、女性では「父親」が多い。誰かと同居している場合、その理由は「子どもの頃から同居しているため」が最も多く、次いで「自分の生活費を節約したいため」「自分の所得だけでは生活が難しいため」が続く。世帯の収入源としては「自分の仕事の収入」のある人が最も多く、70%以上を占める。次いで「親の年金収入」が続く。本人に仕事からの収入がある場合、「200万円以上~300万円未満」の割合が最も高い。さらに、自由に使える収入が年間100万円未満の人は約50%、自由に使える収入がない人は21%、貯蓄や資産形成に回した金額についても約半数が「ない」と回答した。10万円以上15万円未満の世帯も多い。9割以上の人は住宅ローンや住宅ローン以外のローンの残高が0円。資産形成の手段としては、男女問わず「預貯金」を選択した人が多い。</p><p>(3) 住まいについて</p><p> 現在の住まいは「親の持ち家」「賃貸住宅」「自分の持ち家」の順。家賃月額は「4万円~6万円未満」がトップ。老後の住まいは「現在の住まいにそのまま住み続ける」が全体の47.5%、「1人で暮らすつもり」が全体の40.7%を占めた。</p><p>(4) 不安・満足度等</p><p> 健康状態は「まあ健康」が全体の44.2%であり、トップである。8割以上の人は日常生活に支障がない。経済的に援助してくれる人が現在「特にいない」と答えた人は男性60%、女性41%、家事や看護を手伝ってくれる人が現在「特にいない」と答えた人は男性61%、女性44%、悩みを聞いてくれる人が現在「特にいない」と答えた人は男性65%、女性39%であった。老後においては、男女格差が小さくなるものの、「特にいない」人の割合は男女ともに高くなり、男性の場合、いずれも8割前後となっていた。現在の生活の満足度は「収入」「資産・貯蓄」が特に低い。その一方、「家族」「友人」に関しては満足度が比較的高い。老後の生活については「老後の生活全般」「自分自身の健康のこと」について、特に不安を感じている。現在における異性との交際については「交際相手も異性の友人もいない」と回答した割合が全体の52.5%を占め、今後「結婚するつもりはない」という回答も全体の過半数を占める。過去に介護経験があるのは全体の約2割である。介護経験がある場合、「母親」の介護が最も多く、次いで「父親」となっている。回答者の1割強は「仕事をやめて自分で介護」と回答した。親の介護が必要になった場合の主な対処方法としては、「ホームヘルプサービス、訪問看護などの在宅介護を利用」が全体の約20%を占め、次いで「会社の介護休業制度などを利用し自分で介護」となっていた。「仕事をやめて自分で介護」という回答は全体で13.7%であり、男女差はほとんどなかった。</p><p>(5) 老後の生活について</p><p> 老後の生活設計を「まだ考えていない」人が全体の3分の2近くを占めている。老後の生活設計を考えていない主な理由は「収入が少なく、今の生活で精一杯のため」にある。老後の収入源としては「公的年金」「仕事による収入」「預貯金」の3つを考えている人が多い。将来受け取ることができる公的年金の見込み額は、月額15万円未満としている人が全体の30%前後を占めている。公的年金の希望受給開始年齢は男女とも「65歳」が最も多い。66歳以降で公的年金を受給したい場合、その主な理由は「65歳以降も働くから」である。自分自身の介護が必要になった場合の対処についての回答は「自宅でホームヘルプサービス、訪問介護などの在宅介護・デイサービスを利用する」が男女とも約40%を占めていた。</p><p>(6) 独身生活のメリット・デメリットおよび新型コロナの影響</p><p> 独身生活を続けてきて感じたことについては、全体の40.2%が「自由に使える時間が多い」と答える一方、全体の39.9%は「老後のことを考えると不安」と回答した。さらに、結婚しなくてよかったという回答は男女とも20%強となっていた。</p><p> 新型コロナウイルスの流行による生活への影響については、全体の23.4%が「自分の仕事や収入が減少した」と回答。連日の報道や外出制限によって気鬱になった人は全体の31%であった。</p><p>(7) 60歳前後で変わったこと</p><p> 60歳を境にして60歳未満の人と変わる主な点は次のとおりである。まず第1に、仕事に就いていない人の割合が高くなり、男女とも40%強になっている。第2に、仕事に就いている場合、30人未満の事業所に勤務している人の割合が男女とも一段と上昇し、零細企業へのシフトが生じている。第3に、現在の仕事に30年以上にわたって就いている人の割合が男女とも20%程度となっており、長期勤続者のウェートもそれなりに高い。第4に、週4日以下の勤務日数者の割合や、1日8時間未満で働いている人の割合が上昇している。第5に、男性の場合、半数近くの人が今後は引退したい、あるいは無職のままで将来も仕事に就くつもりはない、と回答している。一方、女性の45%弱は現在の仕事を続けていきたい、としている。第6に、現在、仕事に就いていない主な理由が男女とも「自分が仕事に就かなくても、生活できるから」に変わる。第7に、女性の場合、生計維持の中心者が父親から本人に変わった人が多い。第8に、自分の年金収入がある人が男女とも増える一方、親の年金収入を失う人も少なくない。第9に、本人に仕事からの収入があっても、それが年間300万円未満の低所得者の割合が上昇している。第10に、保有している金融資産額2000万円以上の人は男女とも34%であった。多数派(40%弱)は500万円未満であった。第11に、60歳未満の人の方が遅めの公的年金受給開始(66歳以降)を希望する割合が高かった。</p>
著者
藤岡 一路
出版者
東京医学社
雑誌
小児内科 (ISSN:03856305)
巻号頁・発行日
no.45, pp.454-455, 2013-11-25

日本脳炎ワクチンは、東南アジアの日本脳炎流行地へ渡航する際には必須となるトラベルワクチンである。一般に現在の成人患者は、日本脳炎ワクチンの基礎免疫(3回)を完了している世代であるが、接種漏れなどで基礎免疫が完了していない場合は可及的速やかに基礎免疫の完了を目指したスケジュールを立案する。基礎免疫完了者に対する追加接種に関するエビデンスは乏しいものの、最終接種から3年以上経過している場合は一回の追加接種を行うことを積極的に推奨している。日本脳炎ウイルスHI抗体検査は感度・所要日数の観点から必須のプラクティスとしては採用していない。
著者
中川 啓 恒松 高洋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.720, pp.89-97, 2002-11-22 (Released:2010-08-24)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

ファイトレメディエーションは植物の生理代謝作用を利用する環境修復技術である. 本研究では, 博多据りカブ Brassica Rapa のファイトレメディエーションへの適用可能性を調べるため, 2つの栽培実験を行った. それは, 1) 銅とカドミウムの重金属複合汚染に対して, 汚染レベルや土壌タイプでの重金属の抽出濃度や抽出量の違いを調べる実験と, 2) 植物栽培中における重金属の時空間移動特性を調べるための実験である. これらの実験結果から, カブは銅とカドミウムを集積・茎葉部へ貯留する能力を持つ可能性があること, 栽培期間中, これらの重金属に対して耐性を示すこと, カブがカドミウムの可溶性フラクションを吸収していることが明らかとなった.