著者
Takumi YOSHIDA Md Emtiaj ALAM Keisuke HANAFUSA Yasunori TSUJIMOTO Masaya TSUKAMOTO Ryoji KANEGI Toshio INABA Kikuya SUGIURA Shingo HATOYA
出版者
The Society for Reproduction and Development
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
pp.2021-084, (Released:2022-01-07)
被引用文献数
2

We examined the effectiveness of saline, Euro-Collins solution (EC), and ET-Kyoto solution (ET-K) as preservation media for the cold storage of feline ovaries. Ovaries were maintained in these media at 4°C for 24, 48, or 72 h until oocyte retrieval. The ET-K group exhibited a higher oocyte maturation rate than the saline group after 72 h of storage. Moreover, ET-K could sustain the competence of the feline oocytes to cleave after 48 h, and the morula formation rate of the ET-K group was higher than that of the other groups after 24 and 48 h. Furthermore, the ET-K group exhibited a higher blastocyst formation rate than the other groups after storage for 24 h, and only ET-K retained the developmental competence in blastocysts after 48 h of storage. In addition, regarding the cell numbers of the blastocysts, there was no significant difference among the tested groups. In conclusion, our results indicate that ET-K is a suitable preservation medium for feline ovaries.
著者
勝山 祐子
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.119-132, 2018-01-31

フォルチュニィのドレスが『失われた時を求めて』で描かれるのは、ヴェネチアン・ルネッサンスを甦らせる衣装としてだ。だが、フォルチュニィのテキスタイル作品で最も有名なのは、古代ギリシャ風のガウンやスカーフである。これは『スワン家のほうへ』の末尾で描かれる1912 年頃のモードに見られるような、当時の古代ギリシャ風ドレスの流行(リバティーのドレスや19 世紀後半に大量に発掘されたタナグラ人形を連想させるドレスの流行、あるいはディレクトワール様式のドレスのリヴァイヴァル)や、ダンカンらギリシャ風ダンスの隆盛と無関係ではない。また、フォルチュニィはワグネリアンであり、舞台用間接照明とそれを有効に使用するための舞台装置「クーポール」を発明、プルーストも親しかったベアール伯爵夫人の私設劇場で実際に使用されることになった。1906 年3 月の杮落しにプルーストが赴いた形跡はなく、そもそもプルーストとフォルチュニィのあいだにどの程度の交流があったのかも明らかではないが、フォルチュニィがレイナルド・アーンの姻戚だったことに鑑みても、プルーストがこうしたフォルチュニィの多岐にわたる活動を知らなかったとは考えられない。二人の意外な共通点は、フォルチュニィのオペラやバレエといった舞台芸術における活動を支える理論、つまり音楽とは時間的芸術で、切断のない時間の中で音楽による陶酔に身を任せるべきだ、という確信である。
著者
Li Min-Yi Zhang Jing Feng Gang Satyanandamurty Tirumani Wu Jun
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.22-26, 2011
被引用文献数
10

熱帯地域において,Brontispa longissima(Gestro)はヤシの木に重大な被害をもたらす害虫である。我々は,熱帯マングローブの潜在的殺虫剤リード化合物探索研究において,インドマングローブXylocarpus moluccensisの種子からΔ8,14二重結合をもつメキシカノライドであるカヤシンと2'S-メチルブタノイルプロセラノリドを単離した。これらの化合物の構造は文献データと比較して同定した。50μg/mlの濃度では,カヤシンはB. longissimaの2齢から5齢幼虫に対して強い殺虫効果を示し,2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは5齢幼虫に対して顕著な殺虫効果を示した。B. longissimaの5齢幼虫に対する24時間と48時間暴露のLC50(半数致死濃度)は,カヤシンは7.27と3.39μg/ml,2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは10.57と4.03μg/mlであった。2種の化合物のB. longissimaの5齢幼虫に対する殺虫活性は,アザジラクチンとトオセンダニンよりも強く,ロテノンと同程度であった。しかし,Prodenia litura(Fabricius)の3齢幼虫に対しては,これらの化合物は中程度の摂食阻害活性しか示さなかった。以上の結果は,カヤシンと2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは,B. longissimaの幼虫に対して選択的な殺虫活性を持っていることを示唆しており,B. longissima防除用の有力な殺虫剤候補になると思われる。
著者
脇田 雅文 田中 美枝 宇野澤 秀樹
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.59-66, 2009
被引用文献数
1

インプラント治療において,歯槽骨量が少ない場合は骨造成を併用してインプラントを埋入する方法が多く取り入れられてきている.しかし,大きな骨造成を行なうことにより患者および術者への負担も大きくならざるを得ないという欠点があった. そこで,ショートインプラントを適正な位置に埋入することにより,低侵襲で埋入を行ない,患者への負担を軽減するように試みられてきた. しかし,欠損部の大きい全顎治療等でインプラントの埋入本数が増えた場合は,技工側は上部構造の補綴物製作にあたり鋳造物が大きく鑞着部分が多くなり,高度な技工技術が必要になる.さらに多くの貴金属の使用によりコストの増加がともない,患者側の経済的負担にもなっていた. プロセラインプラントブリッジの最大の特長はCAD/CAM システムによって製作され,従来の鋳造物と比較し,チタンブロックからの削り出しのため,変形のリスクがないことである.フレーム自身がアパットメントと一体構造,高強度,作製過程の簡略化と低コストである利点がある. 本論文においてショートインプラントとプロセラインプラントブリッジを用いたインプラント治療の結果,精度が高く一定の審美性のある上部構造を持ったインプラント補綴治療ができ,本治療方法は以下のような特長をあわせて有している. 1.ショートインプラントによる患者,術者への負担軽減 2.プロセラインプラントブリッジによる製作過程の簡略化と低コスト化 これらの結果から今後のインプラント処置の選択肢の1 つとなりうることが示唆された.
著者
田畑 恒平 植田 康孝
雑誌
Informatio : 江戸川大学の情報教育と環境
巻号頁・発行日
vol.13, 2016-03-15

ネット動画、CG 映像、アニメ、ゲーム、メディアアート、映画、テレビなど、現代のデジタル社会の中で、映像文化が占める位置づけはますます重要且つ緊密になっている。このような状況の中で、ウェアラブル端末の登場は、「現実空間」に位置する人間と、ビッグデータとして「ヴァーチャル空間」に蓄積される映像との関係を変えてしまう革命である。ウェアラブル端末によって実現する「AR 空間」や「VR 空間」は、新たなプラットフォームになる可能性がある。Vine からInstagram などのSNS、ゲーム実況からウェアラブル端末などのゲームは、「映像に何が映っているか」ではなく、「映像でいかにコミュニケーションするか」を重要とする、「映像コミュニケーション」時代の到来を示す。「グーグル・グラス」や「アップル・ウォッチ」のようなウェアラブル端末が普及した近未来においては、映像を撮影する条件は常に「ヴァーチャル空間」に記録されるようになる。我々が映像を見る時、更には映像を撮る時、「ヴァーチャル空間」は無意識のうちに表出される人間の特徴を余さず捉え記録する。「プレイステーションVR」向け「サマー・レッスン」では、キャラクターからも見られているという「緊張感」を常にプレイヤーに与える。プレイヤーが「ヴァーチャル空間」を覗く時、「ヴァーチャル空間」はプレイヤーに様々な映像を提示するが、プレイヤーは引き換えに自分の「反応」を「ヴァーチャル空間」に提供しなければならない。ヘッド・マウント・ディスプレイを装着し、周囲を見渡すと、頭の向きを変える行為もデータとして「ヴァーチャル空間」に与え分析されることになる。アルバート・アインシュタインは100 年前に発表した「一般性相対理論」で、「空間」と「時間」は連続体(「時空」と呼んだ)であると論じたが、2016 年2 月11 日、「時空のさざ波」である「重力波」の直接観測が報告された。ドローンが「3 次元」世界の「高さ」方向の制約を開放するものであるとしたら、ウェアラブル端末は縦、横、高さの「3次元」に「時間」軸を加え、「3次元→4次元」を実現するものである。 江戸川大学マス・コミュニケーション学科エンタテインメントコースは、「ウェアラブル端末」を学生が近未来の方向性を考える上で適した課題であるとの認識の下、平成27年度の演習・実習に導入した。「現実空間」と「ヴァーチャル空間」の境目(マジックサークル)は崩れ始め、かつては夢物語であった4次元的な製品やサービスが実現する。「現実」と「ヴァーチャル」を織り交ぜて、面白いモノ、便利なモノを生み出す。「今までにない時代が見えてくる、違った4 次元世界が見えてくる」ようになり、社会や経済を刷新する仕事に携わるすべての人々が持つべき視点であり、「現実空間」に閉じて生きることはもはや許されない時代となる。今までの情報革命は、あくまでもモニターの向こう側、つまり情報空間の中でのみ生活が便利になった程度だった。AR、VR の普及で今後は、情報が現実さえも凌ぐ社会になる。米IDC の調査によれば、2020年には500億台の機器がネットに接続し、2013年(44兆バイト)から10 倍の440 兆バイトのビッグデータが作られる。ICT技術の進歩により、2045 年には「ヴァーチャル空間」(コンピュータの能力)が「現実空間」(人類の能力)を凌ぐという説がある。このような世の中は、プライバシー問題、セキュリティ問題を深刻にするという懸念も根強いが、社会に出る若者に必要な知識を身に付けさせることが「大学」の責務であるとすれば、ICT の力を前向きに捉え使いこなす「英知」を育成することが、文部科学省が国立大学に教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の統廃合や社会的要請の高い分野への転換を迫る、「人文系の大学で教えている学問のほとんどがもはや時代遅れになっている」という指摘を受けるなど昨今厳しい批判に晒されている文系学部が目指すべき「大学教育」となる。

1 0 0 0 サモア史

著者
岩佐嘉親著
出版者
大陸書房 (発売)
巻号頁・発行日
1970
著者
岩井 千明
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.64, 2008

小論では岩井(2007)で提示したコンフリクトのあるビジネスゲームを用いた実験結果の報告を行う.実験aでは異なる大学の学部生をペアにした4チームでチームの累積利益を目的にした場合(チーム内コンフリクト無)と個人のボーナスを目的にした場合(チーム内コンフリクト有)でそれぞれ集団意思決定の効果を被験者への質問状により測定し比較分析を行った.実験仮説はコンフリクト有のゲームのほうがより集団意思決定の効率化が促進するというものであったが,両者の結果に有意な差は認められなかった.実験bで同じ内容のゲームを業務経験の豊富な社会人を対象に行ったところ,実験結果には統計的に有意な差は見られなかったが,コンフリクトの有るシナリオのほうが意見の対立を醸成する傾向が見られた.
著者
川村 悟
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.37-43, 2013

中小企業診断士には,フリーランスとして活躍する「独立診断士」,企業に所属する「企業内診断士」という二つの属性がある。後者の企業内診断士は,所属企業の副業禁止規定によって,企業外において診断サービスを提供しても,有償で活動を行うことが難しい。したがって,無償の診断を余儀なくされ,サービス品質を向上しにくい問題が存在する。本報告では,診断報酬の有償化によって企業内診断士のサービス品質向上が実現できることを検証する。有償化が引き金となり,「企業内診断士のモチベーション向上」と「中小企業の要求品質向上」が相互に作用する好循環が生まれ,中小企業診断士の専門性発揮や中小企業の経営改善に貢献しうる可能性を示す。
著者
塚田 花恵
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.65-78, 2016

普仏戦争後のフランスの音楽史研究は、文化的アイデンティティの模索と隣り合わせに発展したものであった。本論文の目的は、ジュール・コンバリューが著した『音楽の起源から今日にいたる歴史』(1913〜1919、以下『音楽史』)における音楽の進歩のナラティヴを検討することによって、1910年代のフランスにおける音楽史叙述のあり様の一端を、詳らかにすることである。 共和派であったコンバリューは『音楽史』において、音楽が中世・ルネサンスにおける宗教からの解放とフランス革命による王政からの解放を経て、19世紀フランスという時代に到達するという進歩の流れを示した。『音楽史』で描かれる交響曲とオペラのジャンルの進歩は、いずれもフランスがその舞台として設定され、ベルリオーズが重要な位置に置かれている。それによってコンバリューは、ドイツの巨匠を含みつつ、フランスを中心に据えたヨーロッパ音楽史を創出するのである。 しかし彼は『音楽史』において、ベルリオーズよりもベートーヴェンやワーグナーにより多くの紙幅を割いている。これは、かつて熱狂的なワグネリアンであった彼個人の音楽嗜好と、第一次世界大戦中のフランスにおけるドイツ音楽受容の状況との衝突によるものであろう。ベルリオーズの音楽には、1880年代以降、ワグネリスムの侵入に対する防波堤としての役割が期待されていた。学術的な形でベルリオーズに重要な歴史的位置づけを与えるコンバリューの音楽通史は、普仏戦争後に起こったこの作曲家のカノン化を推し進めるものであったと考えられる。共和国フランスをベルリオーズに代表させ、ワーグナーに対するアンビヴァレントな評価を示す『音楽史』の進歩のナラティヴには、1870年以降にアイデンティティの政治と関連して発展したこのディシプリンの、約半世紀の歴史の反映を見ることができる。

1 0 0 0 堺市史

著者
小葉田淳編集
出版者
堺市役所
巻号頁・発行日
1971
著者
中村 良介 山本 聡 松永 恒雄 小川 佳子 横田 康宏 石原 吉明 廣井 孝弘
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.15-24, 2014

我々は月探査機「かぐや」に搭載されたスペクトルプロファイラ(SP)データの全量解析を行い,月表面に露出しているカンラン石・低カルシウム輝石に富む岩相の全球分布を調べた.その結果,(1)カンラン石はモスクワの海・危難の海といった地殻が薄く比較的小さい衝突盆地周辺に(2)低カルシウム輝石は月の三大衝突盆地,すなわち南極=エイトケン盆地・雨の海・プロセラルム盆地の周囲に,それぞれ局在することが明らかとなった.表層の斜長岩地殻が完全に吹き飛ばされた衝突盆地の内部では,その下にあるマントルが大規模に溶融して「マグマの海」が形成される.原始地球への巨大衝突によって形成された月は,当初数百km以上の厚さのマグマオーシャン(マグマの大洋)によって覆われていた.「マグマの海」は,このマグマオーシャンのミニチュアであり,SPが捉えたカンラン石・低カルシウム輝石の分布は,その分別結晶化過程を反映していると考えられる.今後「かぐや」分光データの詳細な解析をすすめ,「マグマの海」の組成およびその分化過程を読み解いていけば,同じ手法を用いてマグマオーシャンの分化過程や月の内部構造・バルク組成にも強い制約を加えることができるだろう.同様に月の「マグマの海」の研究は,ほぼ同規模の小惑星ベスタ上のマグマオーシャンや,月よりもさらに規模の大きい地球のマグマオーシャンの分化過程についても,新たな知見をもたらすことが期待される.
著者
小松 節子
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.29-37, 2021 (Released:2022-01-08)
参考文献数
56

今世紀における地球温暖化や人口増加は,国際的に食糧危機をもたらす深刻な問題である.特に,温室効果ガスの排出による異常気象は,降水量や降雨パターンを大きく変動させ,作物の収量低下を招いている.つまり,環境ストレス耐性作物の作出を目指した耐性機構の解明は,重要な課題である.そのためには,生命現象をシステムとして理解し,複雑なタンパク質ネットワークを正確に解析することが必要である.ゲノム上遺伝子重複が多い作物においては,環境ストレス耐性機構を遺伝子レベルから明らかにすることは容易ではないので,プロテオミクス技術を農学分野へ展開することに着目した.特に,日本ではダイズを用いた食品の消費が多いにも関わらず,湿潤な気候のためダイズの生産が極めて限られている.そこで,耐湿性ダイズの作出を目的として,プロテオミクス技術により包括的に解析し,さらに分子生物学的検証実験により,湿害耐性機構を解明したので概説する.プロテオミクス技術で同定された鍵となるタンパク質をマーカーとして作物品種選抜へ利用することにより,ストレス耐性作物の作出が可能となることが期待される.
著者
岩崎 未央
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.61-68, 2021 (Released:2022-01-08)
参考文献数
41

ナノ液体クロマトグラフィー-質量分析を用いるプロテオーム解析手法は,タンパク質の種類・量を網羅的に解析する有効な手法であるが,特定の細胞のタンパク質を1回の分析で網羅的に同定・定量することは試料の複雑さ故に困難であった.我々はこの問題を解決する基盤技術開発に取り組んできた.特に,カラム圧が低いモノリスカラムに注目し,メートル長カラムと緩勾配グラジエント溶出を用いることにより高分離・高感度化を実現し,さらに同重体標識法を組み合わせることで定量確度を向上させるRiMS(removal of interference mixture spectra)法を開発した.この手法を多能性幹細胞解析に応用したところ,細胞種類特異的なタンパク質の定量確度を向上させることが明らかとなった.本稿では,今までの定量的プロテオーム解析を実現させるための方法を俯瞰しつつ,RiMS法について紹介する.