著者
種田 元晴
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.31-40, 2020-01-31

長きにわたって学校法人文化学園を象徴する建築物であった「文化服装学院円型校舎」は、円形校舎が各地に 相次いで建てられ、建築界を賑わした時代に竣工した。その先駆例は、文化服装学院の前年に竣工した「山崎学園富士見中学・高等学校」であった。富士見中学・高等学校は、坂本鹿名夫の設計による。坂本は以降、数多くの円形校舎を手掛けた。しかし、「文化服装学院円型校舎」は坂本の手によるものではなく、三菱地所の杉山雅 則の設計である。本稿では、坂本による円形校舎と「文化服装学院円型校舎」の形態構成と空間構造を比較する ことにより、その共通点および差異を検証した。その結果、「文化服装学院円型校舎」は、坂本鹿名夫による実 用新案である円形校舎がつくられた時期に、坂本の承認を得て、坂本の考案した円形校舎の利点を取り入れなが ら計画されたものであることが明らかとなった。また、坂本による一連の円形校舎が経済性を追究し、合理性を満たすことを目的とした建築であったのに対し、「文化服装学院円型校舎」は仕上げや設備を高級に設えた象徴 性の追究された建築としてつくられたものであり、両者は設計趣旨のまったく異なったものであることが明らかとなった。
著者
入交 眞巳 中西 コスモ 渡辺 宏 松浦 晶央 山崎 淳 大西 良雄 甫立 孝一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.721-727, 2011-09-20
参考文献数
11

本研究はペットとして飼われている犬の飼育者に対して,犬飼育に関する意識調査をアンケート方式において行った.青森県内に住む犬飼育者を対象に29の設問のアンケート用紙を動物フェスティバルや動物病院で配布し,471名の犬飼育者から回答を得た.回答者の7割は女性で,年齢は30~40代が多く,家族とともに暮らしている人が9割を占めた.犬飼育の理由としては,自分か家族が動物好きだからが5割以上を占めた.不妊去勢手術に対し75%が賛成しているが,実際に処置している飼育者は4割弱であった.飼い犬に所有者明示をしている人は3割できわめて少なかった.獣医師会や環境省の啓発にもかかわらず,不妊去勢手術実施や所有者明示の割合が少なかったことから,獣医師は地域社会に対しこれまで以上に正しい犬飼育の教育と啓発を行っていくべきである.
著者
小柳 磨毅
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, 2020

<p><tt>保健医療学学会の設立に関わらせていただいたのは,故</tt> <tt>西村 敦先生のお誘いがきっかけでした.「療法士を中心とした学際的な学会を設立し,大学院教育の発展にも結び付けたい」とのご趣旨に感銘し,ご一緒させていただきました.設立当時は会の運営や学会の準備に手間取ることもありましたが,回を重ねる毎に,皆様のご協力もあって円滑に進めることができるようになりました.</tt> <tt>学際的な色彩の強い本学会は,普段は接することのない様々な情報に触れることができ,感性を刺激されることが度々ありました.さらに様々な視点から議論が行えることは,大学院生を指導する立場として,教育的な価値が高いと感じています.また会員と編集委員の皆様のご尽力により,本学会の機関誌である「保健医療学雑誌」が刊行され,大学院生を含む多くのセラピストが査読を経て情報発信できることは,本学会の優れた社会的,学術的な貢献と思います.</tt> <tt>過去の学会では,海外から講師をお招きしたこともありました.当時,アメリカメジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースにおいて,主任の理学療法士を務めておられたスー女史に講演をいただきました.多数のスライドを拝見してお話を聞き,米国の充実した設備や環境に圧倒されました.しかし同時に,スポーツ損傷に対する理学療法の基本的な考え方や技術には,共通するものが多いという実感があり,本邦からの国際的な情報発信の重要性を痛感した機会でした.</tt> <tt>本会では,数年前から一般演題の中に,学部の学生が発表できるセクションが設けられました.優秀演題を表彰する制度も併設し,学生の研究意欲の向上にも貢献しています.人と議論をしながら真理を追求していくという,セラピストには欠くことのできない資質を,学生時代から高めていく意義は極めて深いと思います.</tt> <tt>西村先生のご遺志に応えるためにも,今後も微力ながら本学会の発展に努めたいと思</tt><tt>います. </tt></p>
出版者
経済界
雑誌
経済界
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.14-35, 2020-03
著者
櫻庭 ゆみ子
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 中国研究 (ISSN:18825591)
巻号頁・発行日
no.14, pp.185-213, 2021

はじめに「陳衡哲女史を偲ぶ」長堀祐造教授退休記念号翻訳
著者
宮木 孝子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = Jissen Women's Junior College Review (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
no.42, pp.(1)-(15), 2021-03-10

下田歌子の教育思想「良妻賢母」を『青鞜』の下田歌子批判の評論からその思想を考察する。
著者
山田 達也
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.124-128, 2010-02-01

下行大動脈手術後の対麻痺は,患者のQOLや予後に大きく影響する重大な合併症である。この脊髄虚血による対麻痺の発生頻度は減少しつつあるものの,下行大動脈手術後で10%前後1),胸腹部大動脈瘤術後では10~20%2)と報告されている。 脊髄は1本の前脊髄動脈と1対の後脊髄動脈からの血流を受けており,前脊髄動脈は運動領域である脊髄前面の2/3を,後脊髄動脈は知覚領域である脊髄後面の1/3に血液を供給している。これらの脊髄動脈は上位から椎骨動脈,上行頸動脈,深頸動脈,肋間動脈,腰動脈などから血流を受けているが,特に胸髄領域の前脊髄動脈は,ごく一部の前根動脈から血流を供給されており,これをAdamkiewicz動脈あるいは大前根動脈という。Adamkiewicz動脈は神経根に沿って脊髄レベルに到達し,ヘアピンカーブを描きながら前脊髄動脈に流入する。この特徴的な走行が術前の造影MRIやCTによる同定の決め手となっている。下行大動脈手術後に運動麻痺をきたすのはこの動脈の血流が障害を受けるためとされている。 脊髄保護は心筋保護に例えると理解が容易となる(表1)。脊髄のkey arteryはAdamkiewicz動脈であり,心筋における冠動脈に相当する。虚血には虚血時間,遮断中の側副血行路や灌流圧の維持,虚血中の酸素消費量などが関係し,今回のテーマである脳脊髄液(CSF)ドレナージは遮断中の灌流圧の維持を目的に行われる。ここではCSFドレナージの意義について概説する。
著者
伊佐敷 隆弘
出版者
宮崎大学教育文化学部
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-21, 2012-03

日本人の「死後の生」に関する考え方を「因果応報」という観点から4つの類型に分ける。 分類の基準は,1死後の因果応報を認めるか否か,2因果応報は個人単位か否か,3因果応報は1回限りか否か,という3点である。また,これら4類型はそれぞれ日本古来の習俗・儒教・仏教・キリスト教からの影響によることを明らかにする。「盆という古来の習俗」に現れている考え方は,因果応報を認めない(善人も悪人も死後は同じ場所へ行く)という点で他の3類型から区別される。「積善の家」ということばに表れているように,儒教においては因果応報が個人ではなく「生命の連続としての家」に生じる(先祖の行為の報いが子孫に生じる)。仏教では(極楽浄土に往生して輪廻しなくなるまで)「六道輪廻」という仕方で因果応報が無限に繰り返される。これに対し,キリスト教では生も死も「最後の審判」も1回限りであるから因果応報も1回限りである。さらに,古来の習俗と儒教において死者と生者の関わりが濃いのに対し,仏教とキリスト教では関わりが希薄である。また,古来の習俗と儒教において死者の魂の個別性がやがて失われるのに対し,仏教とキリスト教では死者の魂は永遠に個別性を失わない。日本人の「死後の生」に関する考え方はこれら4類型が混じりあったものである。
著者
利岡 靖継 雑賀 喜規 栗山 良員
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.416-426, 1968-03-01 (Released:2010-10-12)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

A simple method is proposed to predict mechanical properties of heattreated large steel forgings. The method is based on the findings. Firstly, the main considerations for the strength and the ductility are the carbon content of the forging and the microstructures induced during quenching. Secondarily, the microstructures can be computed from available CCT diagrams and cooling rates of quenching in the temperature range of 600°C to 300°C. These findings are verified experimentally on carbon steels and lowalloyed steels containing such elements as Ni, Cr and/or Mo. Equations for the rapid estimates of the cooling rates of steel forgings of the maximum diameter of 1000mm are derived experimentally as follows:log D+0.513 log C=2.37 when quenched in waterlog D+0.699 log C=2.02 oillog D+0.954 log C=1.18 airwhere, D is the diameter of a steel forging in mm. and C the looling rate in the temperature range of 600°C to 300°C in °C/sec.Discussions are given on the validities of the findings and the equations.
著者
長岡 良治
出版者
鹿児島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

ADHD児(3名)の注意力や集中力の改善にどのような運動が効果的かを調べるために、閉眼歩行、無酸素運動(100m走)、有酸素運動実施前後に計算テスト、CRT(選択反応時間)測定、ペグボード検査を実施した。ペグボード検査では有酸素運動後と閉眼歩行後に、計算テストでは有酸素運動後に、CRTは有酸素運動後や閉眼歩行後に時間が短縮すう傾向にあることから、有酸素運動や閉眼歩行は注意力や集中力の改善に良い効果をもたらすことが示唆された。無酸素運動は運動後の呼吸の乱れにより一般に集中力は低下するが、ADHD児の中には良くなる子もいた。ADHD児には、動作のぎこちなさや不器用,さがみられるため、筋緊張の調節を司る大脳基底核に発達障害があるのではないかと考え、感覚統合運動を取り入れた8種類の身体運動を5名に3ヶ月間実施した。8種類のうち閉眼歩行と手拍子は毎日行わせ、的当て、ビーンズバッグ、風船バレー、ボール運動、ビーズ通しおよび後出しじゃんけんは週に1回行わせた。注意力・集中力をみるためにAPP検査、計算テスト、タッピング、ペグボード、CRT測定を行った6トレーニング後はAPP検査で問題のあった自己統制、動作の安定の項目が改善された。タッピングとペグボードの検査項目では改善が見られなかったが計算テストとCRTに改善の傾向がみられたことから、今回負荷した運動課題が脳の処理機能に有効に作用したと推察された。