著者
飯田 龍 小町 守 乾 健太郎 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.7, pp.71-78, 2007-01-26
被引用文献数
12

本稿では,日本語書き言葉を対象とした述語項構造と共参照のタグ付与について議論する.述語項構造や共参照解析は形態素・構文解析などの基盤技術と自然言語処理の応用分野とを繋ぐ重要な技術であり,これらの問題の主要な解析手法はタグ付与コーパスに基づく学習ベースの手法である.この手法で利用するための大規模な訓練データが必要となるが,これまでに日本語を対象にした大規模なタグ付きコーパスは存在しなかった.また,既存のコーパス作成に関する研究で採用されているタグ付与の基準は,言語の違いや我々が対象としたい解析と異なるために,そのまま採用することができない.そこで,既存のいくつかのタグ付与の仕様を比較し,我々のタグ付与作業で採用する基準について吟味する.また,実際に京都コーパス第3.0版の文章を対象にタグ付与の仕様について検討した結果とタグ付与の際に問題となった点や今後検討すべき点について報告する.In this paper, we discuss how to annotate predicate-argument and coreference relations in Japanese written text. Predicate argument analysis and coreference resolution are particularly important as they often provide a crucial bridge between basic NLP techniques such as morpho-syntactic analysis and end-level applications, and they have been mainly developed with corpus-based empirical approaches. In order to train a classification model in such approaches, a large scale corpus annotated with predicate-argument and coreference information is needed. To our best knowledge, however, there is no corpus including plenty of such tags in Japanese. In addition, we have difficulty adopting the traditional specifications for annotating tags due to the problem setting of each task and the difference between Japanese and English. So, we develop a new criteria for our annotating processes by examining the previous work on annotating tasks. This paper explains our annotating specification cultivated through actual annotating processes for the texts in Kyoto Text Corpus version 3.0, and discusses the future directions.
著者
末盛 博文 Suemori Hirofumi Hirai Yuko Hamasaki Kanya Kodama Yoshiaki Mitani Hiroshi Landes Reid D. Nakamura Nori
出版者
Public Library of Science
雑誌
PLOS ONE (ISSN:19326203)
巻号頁・発行日
vol.10, no.8, 2015-08-21

It is becoming clear that apparently normal somatic cells accumulate mutations. Such accumulations or propagations of mutant cells are thought to be related to certain diseases such as cancer. To better understand the nature of somatic mutations, we developed a mouse model that enables in vivo detection of rare genetically altered cells via GFP positive cells. The mouse model carries a partial duplication of 3' portion of X-chromosomal HPRT gene and a GFP gene at the end of the last exon. In addition, although HPRT gene expression was thought ubiquitous, the expression level was found insufficient in vivo to make the revertant cells detectable by GFP positivity. To overcome the problem, we replaced the natural HPRT-gene promoter with a CAG promoter. In such animals, termed HPRT-dup-GFP mouse, losing one duplicated segment by crossover between the two sister chromatids or within a single molecule of DNA reactivates gene function, producing hybrid HPRT-GFP proteins which, in turn, cause the revertant cells to be detected as GFP-positive cells in various tissues. Frequencies of green mutant cells were measured using fixed and frozen sections (liver and pancreas), fixed whole mount (small intestine), or by means of flow cytometry (unfixed splenocytes). The results showed that the frequencies varied extensively among individuals as well as among tissues. X-ray exposure (3 Gy) increased the frequency moderately (~2 times) in the liver and small intestine. Further, in two animals out of 278 examined, some solid tissues showed too many GFP-positive cells to score (termed extreme jackpot mutation). Present results illustrated a complex nature of somatic mutations occurring in vivo. While the HPRT-dup-GFP mouse may have a potential for detecting tissue-specific environmental mutagens, large inter-individual variations of mutant cell frequency cause the results unstable and hence have to be reduced. This future challenge will likely involve lowering the background mutation frequency, thus reducing inter-individual variation.
著者
HUSKEY R. J.
雑誌
Dev. Biol.
巻号頁・発行日
vol.72, pp.236-243, 1979
被引用文献数
1 25
著者
竹田 賢 中邨 良樹 大崎 恒次 細谷 信太郎
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2018年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.49-52, 2018 (Released:2018-12-25)

食の簡便化,女性の社会進出,高齢化社会の到来等により,フードデリバリー市場が拡大傾向にある.フードデリバリーは即時配送を特徴とするビジネスであり,宅配便のビジネスモデルとは異なる側面がある.特に,注文のピーク時間が重なるため,需要と配送能力のコントロールが収益に大きく影響する.本研究では,即時配送型ビジネスにおける需要の平準化と配送効率を高める物流モデルについて考察する.具体的には,注文に応じて配送する“プル型”に,ルート配送を行う”プッシュ型”を組み込んだ”ハイブリッド型物流”モデルの枠組みを提示し,その実現には,物流データとマーケティングデータを組み合わせることが重要である点を指摘する.
著者
西村 かおる 倉沢 正樹
出版者
日経BP社
雑誌
日経ドラッグインフォメーションpremium
巻号頁・発行日
no.106, pp.24-26, 2006-08-10

——西村さんは看護師、保健師でありながら、「コンチネンスアドバイザー」という肩書で幅広く活動されています。この道に進もうと思われたきっかけからうかがえますか。西村 きっかけは、1986年からの2年半、訪問看護を勉強するために留学した英国で、コンチネンスアドバイザーというスペシャリストに出会ったことです。
著者
R. J. D. TILLEY J. N. ELIOT 吉本 浩
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.153-180, 2002-06-20 (Released:2017-08-10)
参考文献数
27

シジミチョウ科47種とシジミタテハ科7種について,緑,青,紫といった光沢を発する鱗粉の微細構造を調べた.構造色による虹様光沢には,Urania(ツバメガ)型とMorpho(モルフォチョウ)型が知られる.調べたシジミチョウのほとんどは,鱗粉表層部の多重層によるUrania型であったが,予期せぬことに,Lycaeninae(シジミチョウ亜科)のAphnaeini(キマダラルリツバメ族)と,Eumaeini(カラスシジミ族)の中のDeudorigina(トラフシジミ亜族)とHypolycaeninaのいくつかの種でMorpho型が観察された,シジミチョウ科のUrania型は,Eliot(1973)によって"pepper-pot"(胡椒入れ)型と名付けられたように,多重層に多かれ少なかれ穴の開いたやや複雑な微細構造を示すものが大部分であった.一方,シジミチョウ科のMorpho型は,鱗粉表面の縦隆起(ridge)の側面に生じる縦溝(flute)の作用によるもので(Morpho(flute)型),縦隆起側面のscuteによるシジミタテハ科,タテハチョウ科,シロチョウ科,アゲハチョウ科の,Morpho(scute)型とは全く異なっていた.系統や分類の分野では,鱗粉の形態は従来あまり用いられて来なかった.これは,類似した型のものが複数の科にまたがって現われるからである.しかし,シジミチョウ科の光沢鱗のほとんどが,蝶の他の科では見られないUrania(pepper-pot)型であることや,今回見つかったMorpho型がflute型であることは重要と考えられる.Morpho(flute)型は,例外的にアカエリトリバネアゲハの翅表の緑色鱗と裏面の青色鱗に認められる以外は,シジミチョウ科に特徴的と思われる.また,シジミタテハ科では,シジミチョウ科に現われる様々な型のどの1つも見られず,特に構造色鱗はタテハチョウ科で報告されているものと同じであった.シジミタテハ科については,従来,シジミチョウ科の1亜科として他のシジミチョウと姉妹群を成すという考えや,シジミチョウ科の姉妹群となる独立した科,またはタテハチョウ科の姉妹群となる科とする意見が提出されてきた.今回の観察は,シジミタテハ科とタテハチョウ科を姉妹群とする見解を支援する新しい情報を提供する.シジミチョウ科の中で,どちらの型の鱗粉が最初に獲得されたかを解くには,南米のシジミチョウ科を考慮する必要がある.南米は,北米経由のアンデス産のいくつかのPolyommatina(ヒメシジミ亜族)を別とすれば,亜族Eumaeinaのみが分布する.シジミチョウ科の起源は白亜期初期におけるローラシアのユーラシア域と信じられるが,ゴンドワナ大陸のアフリカ/南米陸塊へのシジミチョウ科の侵入は"ジブラルタル・ルート"であったろうとされ,白亜期中期前後の2つの大陸の分離時期には祖先的Eumaeiniのみが存在したとするのが論理的である(そうでなければ,今の南米にはEumaeini以外のシジミチョウ科も分布する筈である).亜族EumaeinaではUrania型の鱗粉のみが見られることから,シジミチョウ科の構造色鱗の起源はUrania型で,Morpho型は2つの大陸の分離後アフリカで進化したと推測できる.Urania型が先に現われたとする根拠は,それがPoritiinae(キララシジミ亜科)に見られることにもある.一般にシジミチョウ科の初期の分岐は,Poritiinae,Miletinae(アシナガシジミ亜科),Curetinae(ウラギンシジミ亜科)へと続く枝からのシジミチョウ亜科の分離を導いたと考えられるので,Urania型鱗粉はこの非常に早い段階で既に存在していたと推定される.Morpho(flute)型を有する3つのグループの内,亜族DeudoriginaとHypolycaeninaは,♂交尾器や翅脈から見て互いに近縁であり,また亜族Eumaeinaとも近縁である.DeudoriginaとHypolycaeninaはアフリカに分布の中心があり,恐らくインド大陸がアジアに衝突した後,東洋区や旧北区の東南縁に広がった.これは,.Morpho(flute)型がアフリカ大陸の分離後にアフリカで生じた考えをうまく説明できる.問題は残る1つのAphnaeini族である.この族はシジミチョウ亜科で最も早く分岐したグループと考えられ,ローラシアからゴンドワナ大陸に最初に入ったシジミチョウと考えられるが,そうであれば,この族が南米に産しないことは説明しづらい.この族の祖先が森林地域に適応できなかったというのがその説明になるかも知れないが,いずれにせよ,Aphnaeini族でのMorpho(flute)型の獲得は独自に起こったと考えるのが最もありうるように思われる.Morpho(flute)型鱗粉は,未分化(undifferentiated)鱗とUrania型鱗粉から別々に生じたように思われる.細部で高度に改変されたUrania型からの変形はやや想定しづらいかも知れないが,Chliaria属やSiderus属のいくつかの種では明らかに中間的な鱗粉が観察され,その変形過程の説明を可能とする.恐らく,多重層が単層になることで鱗粉表面の縦隆起(ridge)が高くなり,直立した縦溝(flute)も顕著となる.次いで単一の"pepper-pot"層も失われ,縦隆起の間隔が狭まるとともに,縦溝の傾斜が起き,最終的には鱗粉の表層下面と平行になるところまで傾斜が進んだと考えられる.
著者
AJISAKA Tetsuro
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋研究=South Pacific Study (ISSN:09160752)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-6,

The specimen, collected from New Caledonia in December 1987, was identified as Cladosiphon novae-caledoniae KYLIN. As KYLIN (1940) has not made its description, this is the first one presented in paper. It's morphological characters were compared with those of the "type specimen" in the BotanicalMuseum, University of Lund and some species of Cladosiphon collected in Pacific Ocean. It has a potential for a new mariculture resource in New Caledonia.
著者
岡本 行夫 原田 亮介
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1255, pp.80-83, 2004-08-23

問 イラクで襲撃されて亡くなった奥克彦さんと井ノ上正盛さんは、岡本さんがよくご存じの外交官でした。イラク戦争や復興支援の中で、日本の関わり方についてどう考えていますか。 答 日本が米国の開戦を支持したのは、少なくともあの時点では当然だと思っています。それには2つの理由があります。1つは国際法上の理由です。
著者
渡辺 博明
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-25, 2005

スウェーデンでは、1920年代以降、最大勢力の社会民主主義を中心に、共産主義、保守主義、自由主義、農民勢力のそれぞれの政党からなる5 党制の時代が長く続いた。 しかし、1980年代末から新党の参入が相次ぎ、長期安定を誇った同国の政党システムにも明確な変化が表れた。 その背景には、政党支持構造の流動化と政治的争点の多様化があった。他方、そうした変化が進む中でも、主要政党が左派と右派に分かれて対峙する「ブロック政治」の枠組みは、双方に新たな政党を加える形で存続し、それと結びついた社民党の優位も続いている。こうしたことから、スウェーデンの政党システムについては、時とともに不安定化要因を多く抱え込みながらも、今までのところ、包括的な対抗軸に基づいて作動する従来の形態が辛うじて維持されているといえる。
著者
岡部 真子 寳田 真也 宮尾 成明 小栗 真人 伊吹 圭二郎 小澤 綾佳 廣野 恵一 市田 蕗子 田口 雅登 芳村 直樹 東田 昭彦
雑誌
第55回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2019-04-26

【背景】フォンタン術後の蛋白漏出性胃腸症(PLE)は、未だ予後不良な合併症である。単心室循環におけるフォンタン/グレン術後の反復するPLEにおいて、タダラフィル (TAD)中止後に症状の軽快を認めた3例を経験した。【症例】症例1)15歳女児、三尖弁閉鎖症で2歳でフォンタン術を施行し、10歳でPLEを発症した。利尿剤やベラプロスト(BPS)・ボセンタンを開始したが、Alb低値が持続しTADを追加した。その後TAD・マシテンタン(MAC)の2剤を使用した。心不全治療目的で硝酸イソソルビドテープを導入し、TADを中止したところ、4か月間 Alb値は維持でき、外来管理が可能となった。症例2) 11歳女児、単心室症で1歳時にグレン術を施行した。術後5年の心臓カテーテル検査で肺動脈圧は26mmHgと高値で、利尿剤・エナラプリル・BPS・TADで管理した。8歳でPLEを発症しMACを追加した。静脈のうっ滞の改善目的で硝酸イソソルビドテープ導入し、TADを中止すると低血圧は改善し、4か月間 Alb値は維持でき、外来管理が可能となった。症例3)13歳女児、左心低形成症候群で2歳でフォンタン術を施行した。7歳でPLEを発症しシルデナフィルを開始したが、副作用のためTADに変更した。再燃を繰り返し、MACを追加したが、体血圧の低下を認めたためTADを中止したところ、低血圧とPLEの症状改善を認めた。モニタリング可能であった症例1,2において、Alb低下時はTADの血漿蛋白非結合型分率が上昇する傾向を認めた。【考察】薬物の効果は血漿蛋白に結合していない非結合型が薬効を示す。血中Albが低値のPLE患者では、TADの血漿蛋白非結合型分率が増加しその薬効が増強する結果、低血圧をきたし、腸管血流低下をもたらし、PLEを助長させる要因になっていた可能性が考えられた。【まとめ】TADは、PLEにおいて肺高血圧を伴う症例に対して比較的よく使用されている薬剤であるが、PLEによる薬物動態の変化を考慮した治療選択を検討することが重要と思われた。
著者
上田 秀明 田村 義輝 杉山 隆朗 野木森 宣嗣 加藤 昭生 若宮 卓也 小野 晋 金 基成 柳 貞光
雑誌
第55回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2019-04-26

【背景】フォンタン術後の蛋白漏出性胃腸症PLEは、治療抵抗性で予後不良とされている。PLEを発症して4年以上のフォンタン術後PLEの治療および中・長期予後を検討した。【対象】当院で経過観察中のPLE発症4年以上のフォンタン術語PLE10例(男6、女4)。年齢は中央値14(8-24)歳。主心室は左室1、右室6、無脾症3例であった。【結果】フォンタン術式は APC1、心内導管型TCPC1、心外導管型TCPC8例。TCPC時にフェネストレーション作成を行ったのは6例。導管直径は16mm 4例、18mm 3例、20mm 2例。PLEの診断は、血中蛋白濃度、消化管蛋白漏出シンチグラムや便中α 1 アンチトリプシン・ クリアランス値より行なった。【治療】内科的治療として、ステロイド療法3例で1例ブデゾニド使用例。全例入院加療中に持続ヘパリン療法を行なった。カルベジロール6例、肺高血圧治療薬5例に導入した。皮下注用免疫グロブリン製剤ハイゼントラ使用継続中3例。高タンパク食などの栄養療法4例。側副血管コイル塞栓術1例、末梢性肺動脈狭窄に対するステント留置術1例を行った。外科的介入例なし。【結果】 死亡例は初期のAPC1例で、9例生存、現在NYHA心不全分類でI度 3、II度 6例。ステロイド療法3例とも継続中で、低蛋白血症が消失しているのは、ハイゼントラ使用例を含む4例。中心静脈圧、肺血管抵抗、心係数はそれぞれ中央値13(10-15)mmHg、中央値1.3(0.7-2.3)units・m2、中央値3.6(2.3-4.1)L/min/m2。造影上の主心室の駆出率は中央値46(38-56)%。【結語】遺残病変の修復、病初期からヘパリン療法、利尿薬の増量に加え、抗心不全療法、皮下注用免疫グロブリン製剤の導入により、予後は改善してきているものの、運動耐容能の低下から日常生活上制限を受けていることが多い。今後、注意深い経過観察や新たな抗心不全療法が求められる。
著者
萬屋 賢人 菅原 俊治
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.1-9, 2011-11-30

本論文では,視野範囲内の先行車が低速の際に車間距離をとる渋滞緩和車を導入し,エージェントシミュレーションにより,渋滞緩和への効果とその解析結果について述べる.高速道路の交通流は渋滞に至る過程で,渋滞が起こりうる交通密度に至っても,交通流の流量が増加し続けるメタ安定相を経る.メタ安定相は,流量が最大となる状態であり,渋滞の初期状態からメタ安定相へ戻すことができれば,渋滞の緩和や渋滞の発生を遅らせることができると考えられる.そこで渋滞緩和車を渋滞緩和エージェントとしてモデル化し,交通流のモデルである拡張 Nagel-Schreckenberg モデルに加えシミュレーションにより実験したところ,実際に渋滞状態からメタ安定相に移行できることを確認した.さらに詳細な解析の結果,渋滞緩和車を連続して配置することがメタ安定相への移行に重要であることが分かった.また渋滞緩和車を導入しない場合の平均速度と渋滞緩和車を導入したときの通常車両および渋滞緩和車の平均速度を比較したところ,渋滞緩和車となり速度を落としても,平均速度は向上することが分かった.
著者
小西 芳信
出版者
南西海区水産研究所
雑誌
南西海区水産研究所研究報告 (ISSN:0388841X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.p103-121, 1983-03
被引用文献数
4

1976年以降薩南海域にマイワシの産卵場が形成されている。この海域におけるマイワシの発生と補給状態を把握するために,1976年以降毎年1,2月に卵・稚仔調査を行なっている。ここでは,1976年から1981年の6ヵ年の薩南海域におけるマイワシの産卵場の拡大過程を卵・仔魚の分布から記述し,併せて黒潮の沖合外側域における卵・仔魚の分布の実態について述べた。これらのことを要約すると,以下のようになる。1)1976年から1981年の6ヵ年に薩南海域におけるマイワシの親魚群は,薩摩半島から大隅半島に至る鹿児島県沿岸域,大隅海峡域,屋久島,種子島の周辺域に分布していた。2)1976年にはマイワシ親魚群の主分布域は薩摩半島から大隅半島に至る沿岸域に限っていたが,その後年々薩南海域の南部に拡大している。そして,1979年以降親魚群は屋久島,種子島の周辺域に集群し,さらに量的にも増加していると思われる。3)このようなマイワシ親魚群の分布の変化は流況とともにマイワシ卵・仔魚の分布に影響している。すなわち,1976-1978年の3ヵ年には初期卵は薩摩半島から大隅海峡に至る沿岸域に多く,さらに発生の進んだ卵・仔魚は東方に輸送されていた。1979年には卵の分布量は親魚群のそれよりかなり少なかったが,卵・仔魚は東方に輸送されていた。1980,1981年には卵・仔魚は屋久島種子島の南東水域から黒潮によって北東の下流域へ運ばれていた。4)卵・仔魚が黒潮によって下流に運ばれる過程でそれらの一部が黒潮の沖合外側域へも輸送されていた。とくに,1981年には屋久島,種子島の南東水域で産出された仔魚が日向灘東方にみられる黒潮反流のほぼ全域で分布していた。
著者
稲福 征志
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

先進国においては「肥満」と「結核」が経済的弱者層に集積することが懸念されることから、本研究では結核菌感染がメタボリックシンドローム病態に与える影響についての基礎的知見を得るべくして、結核感染プロトタイプである抗結核ワクチン株BCG菌体を用いた研究を遂行した。BCG菌体投与による脂肪肝の改善作用はBCG菌投与による獲得免疫の活性化が大きくかかわっていることが示唆された。また、BCG死菌体投与による脂肪肝改善は認められなかったものの、BCG菌体成分が褐色脂肪細胞に対して何かしらの影響を与えていることが明らかとなった。
著者
渡邊 慎一 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.49-59, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
50
被引用文献数
3

屋外の温熱環境を評価する際,日射は極めて重要な要素である.多くの温熱指標は,その算出において平均放射温度を入力値として要求している.本報では,長波長および短波長放射を考慮した屋外における平均放射温度の算出方法を概説した.まず,屋外における平均放射温度の算出理論を記述した.そして,長短波放射計を用いた 6 方向および上下 2 方向の測定に基づいた算出方法を示した.さらに,より簡便な測定方法であるグローブ温度計を用いた算出方法を示した.実際に測定を行う際には,使用できる測定器および要求される精度から適切な算出法を決定する必要がある.