著者
植村 玄輝 吉川 孝 八重樫 徹 竹島 あゆみ 鈴木 崇志
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、現象学の創始者エトムント・フッサール(Edmund Husserl)が1922年から1923年にかけて日本の雑誌『改造』に寄稿した5編の論文(うち2編は当時未刊)、通称「『改造』論文」について、フッサールの思想の発展・同時代の現象学的な社会哲学の系譜・より広範な社会哲学史の系譜という三つの文脈に位置づけ、現象学的な社会哲学の可能性についてひとつの見通しを与えることを目指すものである。
著者
長谷川 高平 荒井 康裕 小泉 明 寺井 達也 飯出 淳 篠永 通英
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.II_109-II_120, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
33

老朽化や地震によって多発する送配水システムの断水事故などを背景に水道事業体は管路システムの冗長化を進めている.一方,送水管路は大口径で交通量の多い幹線道路に敷設される事が多く,人口減少に合わせて非開削で口径のダウンサイジングが行えるPipe In Pipe(PIP)工法が注目を集めている.しかし,PIP工法を用いて断水を伴わずに冗長化を達成する管路更新計画の策定手法はこれまで検討されてこなかった.そこで,本研究では老朽化した送水システムを仮想し,更新案として二重化と系統連絡という2つの冗長化案,その比較として単純更新案の3つを対象に費用対効果分析を行なった.結果として,(1)管路システム冗長化の主便益は断水事故低減にある,(2)現行の社会的割引率やPIP工法の単価では,B/Cで比較した場合の冗長化の優位性が確保できないものの,実勢の経済状況を反映した社会的割引率の引き下げによって冗長化の優位性が得られる,(3)特定の距離以内に浄水場が隣接する場合,その浄水場規模の余裕を用いることで断水を必要としない冗長化管路更新が有効になる,の3点を明らかにした.
著者
八谷 和彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.51-56, 1989-05-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
19
被引用文献数
4 5

北海道において水稲の幼穂形成期以前に発生する初期害虫による被害を,切葉処理法によって解析した。処理区は,{第4∼9葉,第4, 5葉,第6, 7葉,第8, 9葉}×{主稈のみ,全茎}×{葉身の1/2,葉身全体}の切除を組み合わせた15区とし,1984, 85年に行った。葉身の切除によって,草丈の抑制,生育の遅延,茎数と穂数の減少が認められ,イネクビボソハムシなどで報告されている従来の知見とほぼ一致したほか,以下の知見が得られた。1) 減収の主要因は,穂数の減少であると考えられた。2) 補償作用として,年次により有効茎歩合,稔実歩合および千粒重の増加が認められた。補償作用の発現程度は気象条件に左右され,平年を上回る気温が続いたときに現れるが,平年並みの気温では発現は弱いものと考えられた。3) 全茎の最上位葉の葉身全体を2葉連続して失うと減収が起こると考えられた。また,低温年にはこれ以下の被害量でも減収が起こることが予想された。
著者
吉本 尚
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.943-945, 2013-11-15

はじめに アルコール問題に対する対応をプライマリ・ケア医が行うことで,問題の早期発見が可能となる.これは,アルコール依存症(以下,依存症)の予防や早期回復のみならず,アルコールに関連する身体的・心理的・社会的問題を減らす意味でも,医療者・医療機関の疲弊の軽減,医療費の増大を軽減させるという視点からも,非常に重要な取り組みである. 近年,特に依存症になる以前の,「危険な飲酒」の段階から介入を行うことが効果的と言われており,各国で対策が進められている.本稿ではアルコール問題のスクリーニング,介入,適切な紹介・連携を効果的に行う枠組みであるSBIRT(Screening, Brief Intervention, Referral to Treatment,略称:エスバート)に関して述べる.
著者
竹沢 尚一郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.145-165, 2018

<p>『文化を書く』の出版から四半世紀が過ぎた。他者にどう向きあい、どう書くべきかを問うたこの書は、今も人類学者に少なからぬ影響を与えている。しかしその四半世紀前に、おなじように他者に対する書き方を問う運動が日本にもあったことはほとんど知られていない。本稿は、谷川雁と上野英信というふたりの著述家が作った「サークル村」の運動を追いながら、そこでなにが問われ、いかなる答えが準備され、いかにしてすぐれたモノグラフが生み出されたかを跡づける試みである。</p><p>第二次世界大戦が日本の敗戦で終わると、文学サークル等が各地に誕生した。なかでも異彩を放ったのが、1958年に筑豊に形成された「サークル村」であった。他のサークルが職場や地域を拠点として活動したのに対し、それは九州各地のサークルの連携をめざすことで戦後の文化運動のなかで特異な位置を占めた。</p><p>会員の多くは、炭坑夫や孫請労働者や商店員であるか、その傍らで生活する人びとであったが、彼らはそれだけで社会の底辺に位置づけられた人びとについて書くことが許容されるとは考えなかった。彼らはどう書くかの問いを突き詰め、それへの答えを用意した。人びとの語りを最大限尊重するための聞き書きの採用、概念ではなく平易な言葉で生活世界と思想を再現すること、知識人による簒奪を避けうる自立した作品の創造、差別や抑圧を生み出す社会の全体構造を明らかにすること、である。</p><p>エスノグラフィ記述の基本ともいうべきこれらの指針に沿って、会員たちは多くのモノグラフを生み出した。上野英信の炭坑とそこで働く労働者についての記述。女坑夫についての森崎和江の聞き書き。不知火海の漁民の生活世界と病いと、チッソや地域社会による抑圧を描いた石牟礼道子の『苦海浄土』。</p><p>特定の地域を対象に、そこで生きる人びとの行為や相互行為を丹念に記述し、さらに差別や排除を生みだした全体構造までを書き出したこれらのモノグラフは、戦後日本が生んだ最良のエスノグラフィのひとつといえる。これらの作品を生んだ背景を追い、その成立過程を追うことで、人類学の可能性を検証する。</p>
著者
李 卿 川田 智之
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.117-121, 2014
被引用文献数
13

Since 2004, we have conducted a series of studies of the effect of forest therapy on human health and established forest therapy as a new preventive strategy. We have found that forest therapy has many beneficial effects on human health. However, there is almost no study dealing with the possibility of clinical applications of forest therapy. In this review, we discuss the possibility of clinical applications of forest therapy from the following viewpoints: 1. Forest therapy can decrease blood pressure, heart rate, sympathetic nerve activity, and levels of stress hormones, such as urinary adrenaline and noradrenaline, and can increase parasympathetic nerve activity, suggesting its preventive effect on hypertension. 2. Forest therapy can also decreace the scores for anxiety, depression, anger, fatigue, and confusion and increase the score for vigor in the Profile of Mood States (POMS) test, suggesting its preventive effect on mental depression. 3. Forest therapy can increase the activity and number of human natural killer (NK) cells and the intracellular levels of anticancer proteins, suggesting its preventive effect on cancers. 4. These findings suggest that forest therapy may have preventive effects on lifestyle-related diseases. However, the above preventive effects of forest therapy should be confirmed in clinical research.
著者
佐倉 由泰
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 <文化コミュニケーション学科編> (ISSN:02880555)
巻号頁・発行日
no.30, pp.191-214, 1996-03-01

ArticleStudies_in_Humanities_C30: 191-214(1996)
著者
亀井孝 水沢利忠著
出版者
丸善 (発売)
巻号頁・発行日
1965