著者
市川 紘美
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.1-24, 2011-03-15

Kyoka Izumi's Ryutantan (1896) is written as a first-person narrative. In the story, the narrator “Ware" (I) seeks out a Mother who does not exist. Previous studies have interpreted Ryutantan to show “a union of mother and child" or “the formation of Ware's ego." However, there are no concrete descriptions of his deceased mother or memories of her in the story. “Ware" creates images based on an imagined mother figure and seeks her out in various ways. However, the women that he meets are not able to become this nonexistent “Mother" that he has created in his imagination. This paper shows that “Ware" is doomed to never find this mother figure that can fulfill his desires.“Ware's" assertiveness can be seen in his quest to find the nonexistent “Mother". However, the narrative is in a passive voice, creating a discrepancy between the story and the narrator's voice. In addition, toward the end of the story, “Ware" abruptly discontinues the narration, and a change to an outsider's third-person voice occurs. In a hopeless pursuit to fulfill his desire, “Ware" becomes unable to complete the narrative. This “Ware," who cannot find completion, falls short of establishing his “self."In Ryutantan, the story unfolds by linking the drifting of the subject between reality and the nonexistent, to his continued pursuit to find the nonexistent mother figure. This state of suspension between reality and the nonexistent can also be found in the late works of Kyoka. One can say Ryutantan holds the possibility to go beyond reality.
著者
稲村 務 Inamura Tsutomu
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.23, pp.35-80, 2009-03

本稿はC・ギアツの解釈人類学的理論を沖縄の大学生向けに解説するための教育的エッセイである。ギアツの解釈人類学は今日の文化人類学において様々なパラダイムの基礎と考えられるものであり、是非理解しておくべきものである。本稿ではゼンザイ、桜、ブッソウゲ、雲南百薬、ニコニコライス、墓、巫者といった沖縄・奄美の身近な事例を検討することでその理論を理解させる目的をもっている。

1 0 0 0 OA 日本酒醸造法

著者
葛岡陽吉 著
出版者
葛岡陽吉
巻号頁・発行日
1910
著者
崗本 晋澤
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.g83-g84, 1996

Face bow headgearは, 上顎大臼歯の遠心移動, 上顎骨の成長抑制および加強固定などに用いられる顎外固定装置で, その作用を解明するための研究が数多く行われている. しかしながら, 顔面頭蓋形態的差異による効果と, 顔面頭蓋の主たる成長発育の場である縫合部で実際に歪計測を行った報告はない. そこで, 骨格形態の差異が上顎顎外固定装置の作用に及ぼす影響と上顎顎外固定装置が上顎骨周囲の縫合部に及ぼす影響について検討した. 研究方法 Hellmanのdevelopmental stage VAに属し, 健全な永久歯列を有する乾燥頭蓋骨2体を使用した. 1体は, SNA 83.5゜, SNB 78゜, ANB 5.5゜, FMA 25゜, Occlusal to FH 11゜および Palatal plane to FH 5゜で, 口蓋平面が前下方に傾斜していた. 他の1体は, SNA 87゜, SNB 81.5゜, ANB 5.5゜, FMA 23゜, Occlusal to FH 0゜および Palatal plane to FH -7゜で口蓋平面が前上方に傾斜しており, 上顎第一大臼歯が前者に比べて前方に位置していた. 乾燥頭蓋骨を前処理したのち, 頭蓋全縫合部にセメダイン1565, 歯根膜空隙にはデンタルシアノンを注入した. 上顎中切歯から第二大臼歯に edgewise appliance, 左右上顎第一大臼歯間に palatal barを装着し, 矯正線を結架して上顎歯列を一塊にした. おのおのの頭蓋骨に三軸型ロゼットゲージを19か所接着した. Long typeの face bow headgearを上顎第一大臼歯に装着し, outerbowの第一大臼歯相当部を mediumとし, 前方20mmを short, 後方20mmを longの3か所の位置で牽引した. 牽引方向は FH planeを基準平面として上方75, 60, 45, 30, 15, 0, -15および-30゜の8方向とした. 荷重量は, 骨がクリープ現象を起こさず反復荷重-歪曲線において完全に Hookeの法則が成立する3kgを用いた. 歪測定には, デジタルメーターとスキャナーを使用した. 結果および考察 口蓋平面前下方傾斜頭蓋骨において, short 75, 60゜および medium 75゜牽引では, 上顎骨には反時計回りの回転を伴う後上方への変位, short45゜, medium 60゜および long 75゜より下方の牽引では, 上顎骨には時計回りの回転を伴う後上方への変位が生じていた. 口蓋平面前上方傾斜頭蓋骨において, short 45゜, medium 60゜ および long 75゜より上方の牽引では, 上顎骨には反時計回りの回転を伴う後上方への変位, short 30゜, medium 45゜および long 60゜より下方の牽引では, 上顎骨には時計回りの回転を伴う後上方への変位が生じていた. 前頭上顎縫合部, 頬骨上顎縫合前面, 側頭頬骨縫合外側縁, 蝶前頭縫合上および蝶鱗縫合の側頭面部の歪は, それぞれ牽引部に近い上顎骨前頭突起上, 上顎骨頬骨突起, 頬骨骨体部および蝶形骨大翼と比較して最大20倍前後であった. また, 横口蓋縫合部, 蝶鱗縫合の下顎高前方部および蝶後頭軟骨結合部では, 他の骨体部と比較して上記の縫合上と同様に大きな値を示した. これらの結果から, 顔面頭蓋において縫合部は主たる成長発育の場であり, face bow headgearによる orthopedic effect が主として縫合部と蝶後頭軟骨結合部に生じているのではないかと考えられる. 矯正歯科臨床において face bow headgearを用いる場合, 使用目的と患者の顎顔面形態の特徴を把握したうえで, 牽引部位と牽引方向を十分に検討することの重要性が示唆された.
著者
小森 雅子
出版者
福岡教育大学
雑誌
福岡教育大学紀要. 第二分冊, 社会科編 = Bulletin of Fukuoka University of Education. Part II, Social sciences (ISSN:02863227)
巻号頁・発行日
no.63, pp.37-48, 2014-02-10

無人機の偵察機としての機能は、人間にはできない領域で発揮されるとき、大きな価値を有する。人間が搭乗しないため、搭乗員の生命に対するリスクを考慮せずに、任務を遂行できるところが、高く評価されている。しかし、攻撃能力をあわせもった無人機を、人に対して使用する事例が、9・11 テロ以降、アメリカの展開する「対テロ活動」においてみられる。 本稿では、とくに、「ターゲット殺害」行為について、国際人道法の下の区別原則および均衡性原則の観点から、評価を行った。区別原則の下では、戦闘員と文民の区別の難しさなどを中心に指摘した。均衡性原則の下では、軍事的利益と付随的損害の相対的な関係を確認し、無人機攻撃に伴う付随的存在発生防止の難しさを確認した。また、これらの観点に加え、無人機攻撃という行為がもたらす影響およびその課題について、検討を行った。
著者
鈴木 英明
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.79, pp.13-25, 2011
被引用文献数
1

近年,奴隷交易廃絶活動に関する研究は一層の盛り上がりを見せ,研究対象が拡張され,また研究視座も多角化している。そのなかで,インド洋西海域に関する研究も増えている。しかし,現在の研究は,少なくともインド洋西海域に関する研究についていえば,奴隷交易を他の交易と切り離して議論を進めるのが一般的である。したがって,奴隷交易廃絶活動にかかわる研究も,その活動が奴隷交易以外に与える影響については,充分に考察してこなかった。本稿は,そうした動向を踏まえて,洋上での活動がいかなるもので,それがこの海域の海運にいかなる影響を与えたのかを考察した。<br>考察の結果明らかになったのは,次の点である。①イギリス海軍が洋上での奴隷交易廃絶活動に参入する1860年代以降,洋上での活動の成果は飛躍した。②この飛躍の背景には,イギリス海軍の「奴隷船」拿捕に関する規定が大きく作用していた。③この規定によって,イギリス海軍の艦船は,奴隷を実際に救助しなくても,報奨金を得られ,それが成果の飛躍に繋がっていたのである。④しかしながら,こうしたイギリス海軍の活動は,インド洋西海域の海上輸送一般に甚大な影響を及ぼしてもいた。⑤なぜならば,彼らが参照した大西洋での経験とは異なり,インド洋西海域では奴隷の輸送と他の輸送とは区別されず,また,奴隷を専門に輸送する船舶とそれ以外とを外見や構造から見分けることもできなかったからである。⑥それゆえに,イギリス海軍は奴隷を輸送していない船舶をも「奴隷船」と認識し,奴隷交易廃絶活動の名のもとにそれらに打撃を与えていた。いわば,彼らの活動は「『奴隷船』狩り」と呼びうる側面を有していたのであった。
著者
喜多村 政美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.269-274, 1976

統計数値の所在(統計表)を示すキィワードインデクス「日本統計索引」の作成方法について述べた。見出しの細目化を効率よく行なうなどのために電算機処理(漢字処理)を援用した。電算機処理の中心は「反転処理」にある。これは索引の骨格的な記入中に潜在する用語を,見出し語として立てて新たなエントリを創出するもので,相関索引の考え方に基づくものである。統計表のインデクシングから索引本文の版下作製に至る各工程を,人手作業と計算機処理の両面から解説した。