著者
Kimiko MOTONAKA Tomoya KOSEKI Yoshinobu KAJIKAWA Seiji MIYOSHI
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences (ISSN:09168508)
巻号頁・発行日
pp.2021EAP1013, (Released:2021-06-01)
被引用文献数
2

The Volterra filter is one of the digital filters that can describe nonlinearity. In this paper, we analyze the dynamic behaviors of an adaptive signal-processing system including the Volterra filter by a statistical-mechanical method. On the basis of the self-averaging property that holds when the tapped delay line is assumed to be infinitely long, we derive simultaneous differential equations in a deterministic and closed form, which describe the behaviors of macroscopic variables. We obtain the exact solution by solving the equations analytically. In addition, the validity of the theory derived is confirmed by comparison with numerical simulations.
著者
涌井 架奈子 松井 成明 安田 政実 伊藤 仁 平林 健一 梶原 博 村上 優 佐藤 慎吉 長村 義之
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 = THE JOURNAL OF THE JAPANESE SOCIETY OF CLINICAL CYTOLOGY (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.269-274, 2008-07-22
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

<b>目的</b>: 子宮体部明細胞腺癌 (以下, 体部明細胞腺癌)における腫瘍細胞の出現パターンについて検討を行った.<br><b>方法</b>: 当院で組織診, 細胞診のいずれからも体部明細胞腺癌と診断された 6 例 (純粋型 3 例, 混合型 3 例) を対象とした. 細胞材料は全例エンドサイトで採取されたものを用い, 1) 細胞集団の出現パターン, 2) 散在性裸核細胞に着目した検討を行った.<br><b>成績</b>: 腫瘍細胞は大型乳頭状集団, 11.4%; 小型乳頭状集団, 41.8%; シート状集団, 38.0%; 重積性集団, 8.9%の出現率を示していた. ミラーボール集団はみられず, 基底膜様物質の出現はわずかであった. 一方, 類内膜腺癌においては小型乳頭状集団, 重積性集団が比較的高い頻度で認められた. 散在性裸核細胞は明細胞腺癌 6 例すべてに認められ, 平均 10 個, 核面積は平均 138.1&mu;m<sup>2</sup>を示していた. また, これらを類内膜腺癌に出現する散在性裸核細胞と比較した場合, 出現数, 核形態に相違を認めた.<br><b>結論</b>: 子宮体部明細胞腺癌は主だった 5 つの出現パターンを示す腫瘍細胞が混在し, 特に小型乳頭状集団, シート状集団, 散在性裸核細胞に留意することが重要と考えられた. また, 散在性裸核細胞は類内膜腺癌と比較して, 出現数, 核形態に相違があり, 両者の鑑別に有用な情報を与えるものと考えられた.
著者
澁谷 美紀 久保田 哲史
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.289-294, 2020
被引用文献数
1

This report clarifies that the effectivity of in-store display that shows &ldquo;the quality of product process&rdquo; of gelato made from milk that were fed self-supplied feed. We investigated the feature of consumers' information processing and the effectivity of information provision with protocol analysis by thinking aloud method and purchase experiment. As a result, we found that provision of the place of feed production alongside that of milk production gains consumers' interests in feed.
著者
助重 雄久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

<b>Ⅰ 本報告の背景とねらい</b><br>少子高齢化に悩む多くの市町村は、他地域からの移住者を定住させる取り組みを重要施策として掲げ、移住説明会や移住体験会等を実施する市町村も増えてきた。しかし、農山村地域に移転・定住した人々の多くは、定年者や早期退職者であり、地域産業の担い手育成や人口の再生産には結びつかない。一方、子育て中あるいはこれから子育てをする若年層の移住は、満足のいく住まいや保育・教育施設、就業先がみつからないことが障害となって、なかなか進まない。こうしたなかで、全国有数の高齢化である山口県大島郡周防大島町では、「周防大島町定住促進協議会」を発足させて、官民が一体となって受け入れ体制を整えており、2012~13年には2年連続で社会増となった。本報告では、若年層の移住者への聞き取り調査をもとに、移住に至るまでの経緯や、移住者が挑戦しているさまざまな取り組み、島における移住者の役割について考察した。<br><b>Ⅱ 移住前の状況と移住の動機</b><br>聞き取り対象者10名のうち6名は親戚や妻の父か母が周防大島の出身者であり、その他は新規就農者フェアや島づくりのためのイベントで周防大島出身者と知り合ったのが島を知るきっかけであった。移住の動機は全員が移住後に従事している職業をしたいためであった。また関東圏から移住した2名は東日本大震災後に放射能の影響を受けない地域で子どもを育てたいことが、移住を急ぐ動機となった。東日本大震災以降はこうした「放射能避難民」が急増しており、社会増をもたらした一因にもなっている。<br><b>Ⅲ 住まいの確保と移住後の就業状況</b><br>移住後の住まいは、親類や親がいる場合、それらの所有物件や、親類や親の知り合いが所有している家屋であった。その他は、島の知り合いか定住促進協議会の仲介で、空き家を探して住んでいた。移住後の職業は農業が4名、漁業が1名、養蜂業が2名、設計士+ジェラート専門店1名、ジャム専門店1名、ポータルサイト運営者+観光協会1名であった。農業をしている4名のうち、2名は農学部出身者で農業に関する知識があったが、他の2名の前職はイベントプランナーとミュージシャンで、農業経験はなかった。農業以外に従事している6名の前職は旅行会社社長、CM制作者、ホテルマン、設計士、電力会社社員、情報通信関係企業の社員で、設計士以外は前職と無関係であったが、養蜂業の2名は退職後に農家や父親の養蜂業の手伝いをした経験があった。<br><b>Ⅳ 島の産業再生に寄与する移住者</b><br>今回対象とした移住者全員が、インターネットを島での生活や仕事にとって欠かせないツールと考えていた。業務上では①島で入手しにくい業務用資材の購入、②生産技術や市況等の情報収集、③独自の生産方法や商品のPR、生活上では①島にない生活雑貨等の購入、②島で安く入手できない商品の購入に多用されていた。 しかし、大部分がネットで物を販売するには否定的であった。彼らは、島の恵みを活かした農産物、ジャム、ジェラートを作りたい、移住時から今日に至るまで世話になっている島民と共に歩みたい、という思いが強い。このため、生産物も可能なかぎり島内のチャレンジショップや「道の駅」、近隣の有機農産物販売店等で売り、訪れる観光客に周防大島の良さを伝えたいと考えている。また、農業や養蜂業に従事している移住者は、耕作放棄地や遊休地も活用して有機農業や観光農園等に取り組んでおり、地域産業の再生にも寄与する存在になりつつあるといってよい。
著者
青山 浩子 納口 るり子
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.394-399, 2017

<p>The objective of the study is to analyze the impacts of the installation of a gelato shop on the profitability of a dairy farm. The retail sector has operated at a slight loss, because it is still in a start-up phase. Since the dairy operation is profitable, there is no significant impact from the loss on the sixth indutrialization trial. The manager believes that brand establishment for the gelato shop is possible, along with job creation, and promoting regional communication. Since the time to secure profits in the sixth industrialization is in effect, it is important that the core business is able to ensure sufficient revenue.</p>
著者
岡橋 秀典
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.31, 2006

1.はじめに 日本の中山間地域は、高度経済成長期を経て公共事業や分工場に依存する外部依存性の高い周辺型経済を形成してきた。それが曲がりなりにも1970~80年代に地域経済を支え、地域を存続させる役割を果たしたことは否定できない。しかし、今日、急速に進むグローバル化、構造改革の波は、そうした経済にも根本的転換を迫っている。また、現代日本における知識経済化の急速な進展はこうした転換を促す大きなベクトルを醸成している。それゆえ、こうした認識にもとづき、わが国の中山間地域における新たな経済社会システムを展望することが求められている。 本報告では、上記課題に応えるための第1歩として、広島県内の農村ツーリズムの1事例を取り上げる。対象地域は、東広島市福富町竹仁地区である(福富町は2005年2月に東広島市へ編入合併した)。2.「こだわりの郷」の成立と展開 この地区には、釣り堀と飲食店などの複合施設をはじめ、天然酵母のパン屋、酪農家によるジェラート店やレストラン、いくつかのブティック、その他の飲食店など、多様な業態の店舗が分散的に立地している。これらの飲食店、ブティックなどは90年代になって徐々に集まってきたが、「こだわりの郷」という名称の下でネットワーク化されることで、地域外に広く認知されるようになった。その活動は90年代中頃から始まり、正式にグループが発足したのは99年である。この組織の成立の経緯は、立地店舗の中の1経営者が「こだわりの郷」のネーミングを考案し結成を呼びかけたのが発端で、行政はその形成のプロセス、運営にも一切関与していない。現在は13業者が加入しているが、活動は共通パンフレットの作成やスタンプラリーを行う程度であり、ゆるい結合の組織である。 地域振興という点で重要なのは、分散的にこの地区に立地していたに過ぎなかった店舗群が、一つの名称を与えられることで、特徴ある地域集積として広く認知されるようになったことであろう。ネットワーク化と地域ブランド化が、タイミングよくなされた事例と言える。3.物産館の設置とその役割 この地区の地域振興に新たな展開をもたらしたのは、福富町(当時)による2002年の物産館設置である。「こだわりの郷」の集客力に注目した町が、国の補助事業によって、農産物等の加工と販売を行う休憩施設を地区中央の道路沿いに設置した。この物産館には地元の9グループ約140人が参加し、野菜の直売に加え、エゴマ油、豆腐、味噌、餅、パンなどの多彩な手作り物産の製造販売を行い、また小規模ながら食事の提供も行っている。 このような活発な活動が功を奏し、来客数は初年度の5万人弱が年々増えて2005年度には8万人に達した。販売金額も順調に伸びている。 この物産館は、この地区での行政による観光関係事業としては最初のものであったが、自然発生的な地域づくりの動きを的確に捉えて有効な施策を実施し、インフラ面、社会面、経済面など多方面で成果をあげていることが特筆できる。4.来訪者の特性と行動 まず来訪者の特性をみる。回答者は性別では男と女、ほぼ同数であるが、年齢層では50歳台と60歳台が多く、両者で全体の60_%_以上を占める。居住地は、東広島市が1位で40_%_強、2位が広島市で30_%_弱を占め、これら2市で全体の70_%_に達する。 回答者の半数は10回以上この地区を訪問している。このようなリピーターが来訪者の半分を占めるということは、根強いファンが存在することをうかがわせる。また、同伴者は、夫婦だけで50_%_弱に達するが、これに夫婦プラス子供同伴の20_%_弱を合わせると、夫婦を中心とする形態が70_%_にも達する。夫婦を中心とした来訪が基本パターンであり、それには居住地による地域差もほとんどみられない。 この地区への訪問目的で最も多いのが、約40_%_を占める物産購入であり、食事が30_%_でこれに続く。他方、この地区の魅力として強く意識されているのは自然や田園景観である。このため、この地区のツーリズムは魅力的な自然や田園景観というベースの上に、食事や物産の提供が行われることで成立していることがわかる。しかし、地区内での訪問先は3箇所程度であり、しかも大部分は自動車利用であるため滞在時間が短いのが問題と言える。5.おわりに 以上検討した事例からは、知識経済化時代の中山間地域の地域振興に求められるいくつかの要素が見出せる。列挙すれば、行政への依存度の少なさと住民の自主性、ネットワーク型の組織、地域ブランド、新旧住民双方の関与と交流、来訪者とのコミュニケーション重視の販売形態、健康に代表される生活文化領域での提案、自然環境や景観の重視などである。
著者
関根 康史
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.1309-1314, 2017 (Released:2018-05-15)
参考文献数
13

現在の国内の貨物輸送のほとんどがトラックによる輸送で賄われており,その安全性を構築していくことは重要である.本研究では,大型トラックの衝突事故に着目し,交通事故総合分析センター(ITARDA)が保有する交通事故統合データから,乗員傷害状況の詳細を事故統計分析の視点から明らかにした.
著者
宗 健
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2018年春季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.5-8, 2018 (Released:2018-05-31)

本稿では、首都圏1万人のアンケート調査の結果から、労働時間が仕事満足度・主観的幸福度に与える影響を報告する。分析結果は以下の通りである。1) 主観的幸福度に対する仕事満足度の影響は比較的小さく、住まいの満足度・家族関係の満足度等が大きな影響を与えている。2) 仕事満足度に対する労働時間の影響は比較的小さく、労働環境への安心感や自公成長感が大きな影響を及ぼしている。これらの結果から、企業の働き方改革には、労働時間短縮・適正化への取り組みと同時に、職場の人間関係や仕事そのものへの理解度を高めるといった取り組みも必要であることが強く示唆されている。
著者
畠 榮 鐵原 拓雄 三宅 康之 広川 満良
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.549-555, 1996-11-01
参考文献数
14
被引用文献数
8
著者
小林 万優 住田 翔太郎 新村 末雄
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.180-186, 2012 (Released:2012-11-03)
参考文献数
35

成熟モデルマウスの初期胚について,ブリリアントクレシル青(BCB)に陽性と陰性の胚の出現率とそれらの胚盤胞への発生率を調べた.2細胞期ないし桑実胚期の胚において,BCB陽性のものの出現率は,94.2ないし96.4%であり,BCB陰性胚の出現率に比べ,すべての時期で有意に高かった.また,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(85.7ないし96.7%)は,BCB陰性胚の0ないし50.0%に比べ,すべての時期で有意に高かった.一方,加齢モデルマウスから採取した2細胞胚および桑実胚において,BCB陽性のものの出現率は,79.5および58.6%であり,BCB陰性胚の出現率(20.5および41.4%)に比べて有意に高いとともに,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(77.1および79.4%)も,BCB陰性胚の発生率(0および45.8%)に比べて有意に高かった.なお,BCB陽性の2細胞胚と桑実胚の出現頻度は,成熟モデルマウスから採取したものに比べて加齢モデルマウスから採取したもので有意に低かったが,胚盤胞への発生率は,両モデルマウスから採取した胚の間で相違なかった.以上の結果から,BCB陽性胚の体外での胚盤胞への発生率はBCB陰性胚に比べて有意に高いことが確かめられた.また,卵子と初期胚におけるBCBに対する染色性とG-6-PDH活性との間には相関のあることが考えられた.
著者
腰塚 哲夫
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.963-975, 2002-07-01 (Released:2009-11-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

The amount of production of the hydrogen peroxide in the year 2000 was 145, 744 t. The demand for pulp is 71, 237 t and the ratio has reached 48. 9%. Also, about 60% of the demand for this pulp has been estimated as demand for recycled pulp. Therefore, recycled pulp is an important field of the hydrogen peroxide market.Seven kinds of oxidizing agent (chlorine, hypochlorite. chlorine dioxide, hydrogen peroxide, oxygen, ozone, peracetic acid), three kinds of reducing agent (sodium hydrosulfite, sodium borohydride. formamidine sulfinic acid) were described and especially hydrogen peroxide, sodium hydrosulfite, and formamidine sulfinic acid were described in detail as important bleaching agent.Concerning hydrogen peroxide, the influence of metals, the heat of kneader and catalase were described. The preventative measures were also described.Concerning sodium hydrosulfite, the decomposition by air, water and combustion by water were described. As a measure, “HS master”, which can dissolve sodium hydrosulfite continuously in nitrogen gas atmosphere and can feed it to the pulp bleaching site was introduced. “HS master” was developed by Mitsubishi Gas Chemical.Concerning formamidine sulfinic acid, the “Fosble System” which is able to manufacture it on-site was introduced. The “Fosble System” was developed by Mitsubishi Gas Chemical.
著者
米本 昌平
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.25-31, 2001

先端医療は本質的に、新しい医療技術と社会的諸価値との調整問題を含んでいる。この問題は一般に生命倫理とよばれるが、日本の大学アカデミーによる生命倫理研究の多くは実質的にアメリカにおけるバイオエシックス研究の輸入であった。この課題の多くは、本来医療職能集団が策定する倫理的ガイドラインとその遵守問題として扱われるはずのものである。医療職能集団としてのこの種の統治は、医療者全員が強制的に加入する、懲罰規定をもつ公的身分組織があることによって保証される。だがなぜか日本には医療者を包括する強制参加の身分組織がないため、たとえば脳死移植や生殖補助医療の規制がうまく機能しないままにある。俗に言う医療不信と、強制参加の身分組織がないこととはほぼ見合いの関係にある。日本医師会は任意加入の社団法人でしかなく、個別専門学会が決める倫理的ガイドラインは、学会員の見識に訴える見解に留まるものである。
著者
佐藤 祐子 桑原 礼子 重田 公子 谷口(山田) 亜樹子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.45, 2011

<B>【目的】</B>柿は日本人に古くから親しまれている果物である。昔から渋柿は「干柿」や「樽柿」に、地域によっては「あんぽ柿」や「枯露柿」にして食べられている。現在、摘果した柿や規格外で販売できない未利用柿を大量に廃棄している現状がある。我々は今回、それらの未利用柿を広く有効利用できないかと考え、現代の若年層の柿に対する嗜好性や認知度を把握する目的で女子大学生を対象にアンケート調査を行った。<BR><B>【方法】</B>調査時期は2010年4月、20歳前後の女子大生132名を対象者に柿に関するアンケート調査を行った。調査内容は、柿の嗜好性や柿の「摘果」や品種の認知度、柿に対するイメージおよび柿の新規加工食品に関するアイディア等の項目である。<BR><B>【結果】</B>柿の嗜好に関しては「好き」と答えた学生が7割程度であった。しかし、他の果物に比べ嗜好意欲が低いことが伺える。甘柿と脱渋した柿では9割の学生が「甘柿」を好んでいた。「軟らかい」柿を好む学生および「硬い」柿を好む学生は双方ともに約5割であった。一方で柿の品種を答えることのできた学生は2割程度で、「摘果」に関して理解している学生は1割以下であった。<BR> 他の果物に比べて柿の嗜好意欲が低い理由には、食べやすさ、水分含量が低い、糖/酸比が低いなどの問題に起因していると考えられる。また、未利用柿の有効利用法としては、サラダ類、ケーキ、ジェラートが上位に挙げられていた。また、「かきフライ」などユーモアに富んだネーミングのものも挙げられていた。大量廃棄される未利用柿の中には渋柿もあるため、柿の加工食品の開発には簡単に脱渋ができ、加工調理しやすいものが適していると考える。
著者
杉山 崇
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-15, 2005

近年、中流層が解体し始め、社会階層の分断化が進むことが予想され、その背景に労働市場の変化が指摘されている。分断化が進むことによって、新たな富裕層が誕生することも予想されるが、同時に新たに失業者、フリーターといった正規雇用職につけない階層が生じることも予想される。本稿ではこのような社会変動の影響で無力感、アイデンティティの拡散、自己批判、被害的な妄想観念などの問題が浮上してくる可能性を指摘し、これらの問題への予防的な対応としてキャリア発達カウンセリングの視点の重要性を強調した。
著者
秋山 正子
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.53-65, 2020

<p>第3期がん対策推進基本計画の全体目標の一つ,尊厳をもって安心して暮らせる社会の構築は「がんとの共生」と表現され,次の分野別施策が示された。①がんと診断された時からの緩和ケア②相談支援,情報提供③社会連携に基づくがん対策・がん患者支援④がん患者等の就労を含めた社会的な問題⑤ライフステージに応じたがん対策の5つである。</p><p>英国で1996年に誕生したマギーズキャンサーケアリングセンターをモデルとしたマギーズ東京が2016年に日本にできるまでを紹介し,従来の形ではなく新しい方法を取り入れて,今のがん医療で取り残されてきていた相談支援を,病院以外で行うことの意義を,開設後3年間の実績を踏まえて紹介をした。それはまさに協働的意思決定(シェアードディシジョンメーキング)支援の場になっている。</p><p>この活動によって,当事者である患者や家族のみでなく,関わる専門職も,短時間で,情報提供し答えを出さねばという呪縛から解放されていく様子を見せて貰っている。これは,看護の実践の場として,ケアの質を維持し,モチベーションを高めていくことにも繋がり,今後はこの実践現場からの結果を,情報発信していくことも重要となろう。</p><p>予約なし,相談料無料,そして全てがチャリティによって運営されていると言うこと自体もチャレンジャブルである。建築と環境にも心を配られたマギーズセンターは,医療のみならず異分野からも着目されている。</p>
著者
高岡 義幸
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学経済研究論集 = HUE journal of economics and business (ISSN:03871436)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.81-99, 2017-12

まえがき 1.‌ヨーロッパ思想に登場する「哲学」と「理性」の意味およびその機能 1.1「哲学」の意味 1.2「理性」の意味と機能 2.‌‌ヨーロッパにおける思想形成の階層構造と理性主義 2.1第一層:実体論 2.2‌第二層:古代ギリシャ思想,特にプラトンの思想 2.3第三層:キリスト教とその人格神 2.4第四層:理性主義の誕生と変遷 3.‌理性主義の変遷と発展(神的理性からの脱却/人間理性の自律性向上) 3.1啓蒙主義運動 3.2イギリス経験主義 3.3カントの試み 3.4ヘーゲルの試み 4.‌ニーチェ思想の性格と彼の企て 4.1‌19世紀末ヨーロッパ社会の諸相とニーチェの危機感 4.2ニーチェの企て 4.3「生きた自然」概念の復権:反哲学 4.4新たな価値定立の原理 4.5‌人間の自律性向上から見たニーチェ思想の意義 5.‌ハイデガー思想の性格と彼の企て 5.1思想形成と研究分野の変遷 5.2「存在と時間」に込められた意図 5.3反哲学と反ヒューマニズム 6.‌‌総括:人間の自律性の高まりとそれに対する反省 あとがき研究ノート