著者
小林 万優 住田 翔太郎 新村 末雄
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.180-186, 2012 (Released:2012-11-03)
参考文献数
35

成熟モデルマウスの初期胚について,ブリリアントクレシル青(BCB)に陽性と陰性の胚の出現率とそれらの胚盤胞への発生率を調べた.2細胞期ないし桑実胚期の胚において,BCB陽性のものの出現率は,94.2ないし96.4%であり,BCB陰性胚の出現率に比べ,すべての時期で有意に高かった.また,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(85.7ないし96.7%)は,BCB陰性胚の0ないし50.0%に比べ,すべての時期で有意に高かった.一方,加齢モデルマウスから採取した2細胞胚および桑実胚において,BCB陽性のものの出現率は,79.5および58.6%であり,BCB陰性胚の出現率(20.5および41.4%)に比べて有意に高いとともに,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(77.1および79.4%)も,BCB陰性胚の発生率(0および45.8%)に比べて有意に高かった.なお,BCB陽性の2細胞胚と桑実胚の出現頻度は,成熟モデルマウスから採取したものに比べて加齢モデルマウスから採取したもので有意に低かったが,胚盤胞への発生率は,両モデルマウスから採取した胚の間で相違なかった.以上の結果から,BCB陽性胚の体外での胚盤胞への発生率はBCB陰性胚に比べて有意に高いことが確かめられた.また,卵子と初期胚におけるBCBに対する染色性とG-6-PDH活性との間には相関のあることが考えられた.
著者
腰塚 哲夫
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.963-975, 2002-07-01 (Released:2009-11-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

The amount of production of the hydrogen peroxide in the year 2000 was 145, 744 t. The demand for pulp is 71, 237 t and the ratio has reached 48. 9%. Also, about 60% of the demand for this pulp has been estimated as demand for recycled pulp. Therefore, recycled pulp is an important field of the hydrogen peroxide market.Seven kinds of oxidizing agent (chlorine, hypochlorite. chlorine dioxide, hydrogen peroxide, oxygen, ozone, peracetic acid), three kinds of reducing agent (sodium hydrosulfite, sodium borohydride. formamidine sulfinic acid) were described and especially hydrogen peroxide, sodium hydrosulfite, and formamidine sulfinic acid were described in detail as important bleaching agent.Concerning hydrogen peroxide, the influence of metals, the heat of kneader and catalase were described. The preventative measures were also described.Concerning sodium hydrosulfite, the decomposition by air, water and combustion by water were described. As a measure, “HS master”, which can dissolve sodium hydrosulfite continuously in nitrogen gas atmosphere and can feed it to the pulp bleaching site was introduced. “HS master” was developed by Mitsubishi Gas Chemical.Concerning formamidine sulfinic acid, the “Fosble System” which is able to manufacture it on-site was introduced. The “Fosble System” was developed by Mitsubishi Gas Chemical.
著者
米本 昌平
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.25-31, 2001

先端医療は本質的に、新しい医療技術と社会的諸価値との調整問題を含んでいる。この問題は一般に生命倫理とよばれるが、日本の大学アカデミーによる生命倫理研究の多くは実質的にアメリカにおけるバイオエシックス研究の輸入であった。この課題の多くは、本来医療職能集団が策定する倫理的ガイドラインとその遵守問題として扱われるはずのものである。医療職能集団としてのこの種の統治は、医療者全員が強制的に加入する、懲罰規定をもつ公的身分組織があることによって保証される。だがなぜか日本には医療者を包括する強制参加の身分組織がないため、たとえば脳死移植や生殖補助医療の規制がうまく機能しないままにある。俗に言う医療不信と、強制参加の身分組織がないこととはほぼ見合いの関係にある。日本医師会は任意加入の社団法人でしかなく、個別専門学会が決める倫理的ガイドラインは、学会員の見識に訴える見解に留まるものである。
著者
佐藤 祐子 桑原 礼子 重田 公子 谷口(山田) 亜樹子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.45, 2011

<B>【目的】</B>柿は日本人に古くから親しまれている果物である。昔から渋柿は「干柿」や「樽柿」に、地域によっては「あんぽ柿」や「枯露柿」にして食べられている。現在、摘果した柿や規格外で販売できない未利用柿を大量に廃棄している現状がある。我々は今回、それらの未利用柿を広く有効利用できないかと考え、現代の若年層の柿に対する嗜好性や認知度を把握する目的で女子大学生を対象にアンケート調査を行った。<BR><B>【方法】</B>調査時期は2010年4月、20歳前後の女子大生132名を対象者に柿に関するアンケート調査を行った。調査内容は、柿の嗜好性や柿の「摘果」や品種の認知度、柿に対するイメージおよび柿の新規加工食品に関するアイディア等の項目である。<BR><B>【結果】</B>柿の嗜好に関しては「好き」と答えた学生が7割程度であった。しかし、他の果物に比べ嗜好意欲が低いことが伺える。甘柿と脱渋した柿では9割の学生が「甘柿」を好んでいた。「軟らかい」柿を好む学生および「硬い」柿を好む学生は双方ともに約5割であった。一方で柿の品種を答えることのできた学生は2割程度で、「摘果」に関して理解している学生は1割以下であった。<BR> 他の果物に比べて柿の嗜好意欲が低い理由には、食べやすさ、水分含量が低い、糖/酸比が低いなどの問題に起因していると考えられる。また、未利用柿の有効利用法としては、サラダ類、ケーキ、ジェラートが上位に挙げられていた。また、「かきフライ」などユーモアに富んだネーミングのものも挙げられていた。大量廃棄される未利用柿の中には渋柿もあるため、柿の加工食品の開発には簡単に脱渋ができ、加工調理しやすいものが適していると考える。
著者
杉山 崇
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-15, 2005

近年、中流層が解体し始め、社会階層の分断化が進むことが予想され、その背景に労働市場の変化が指摘されている。分断化が進むことによって、新たな富裕層が誕生することも予想されるが、同時に新たに失業者、フリーターといった正規雇用職につけない階層が生じることも予想される。本稿ではこのような社会変動の影響で無力感、アイデンティティの拡散、自己批判、被害的な妄想観念などの問題が浮上してくる可能性を指摘し、これらの問題への予防的な対応としてキャリア発達カウンセリングの視点の重要性を強調した。
著者
秋山 正子
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.53-65, 2020

<p>第3期がん対策推進基本計画の全体目標の一つ,尊厳をもって安心して暮らせる社会の構築は「がんとの共生」と表現され,次の分野別施策が示された。①がんと診断された時からの緩和ケア②相談支援,情報提供③社会連携に基づくがん対策・がん患者支援④がん患者等の就労を含めた社会的な問題⑤ライフステージに応じたがん対策の5つである。</p><p>英国で1996年に誕生したマギーズキャンサーケアリングセンターをモデルとしたマギーズ東京が2016年に日本にできるまでを紹介し,従来の形ではなく新しい方法を取り入れて,今のがん医療で取り残されてきていた相談支援を,病院以外で行うことの意義を,開設後3年間の実績を踏まえて紹介をした。それはまさに協働的意思決定(シェアードディシジョンメーキング)支援の場になっている。</p><p>この活動によって,当事者である患者や家族のみでなく,関わる専門職も,短時間で,情報提供し答えを出さねばという呪縛から解放されていく様子を見せて貰っている。これは,看護の実践の場として,ケアの質を維持し,モチベーションを高めていくことにも繋がり,今後はこの実践現場からの結果を,情報発信していくことも重要となろう。</p><p>予約なし,相談料無料,そして全てがチャリティによって運営されていると言うこと自体もチャレンジャブルである。建築と環境にも心を配られたマギーズセンターは,医療のみならず異分野からも着目されている。</p>
著者
高岡 義幸
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学経済研究論集 = HUE journal of economics and business (ISSN:03871436)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.81-99, 2017-12

まえがき 1.‌ヨーロッパ思想に登場する「哲学」と「理性」の意味およびその機能 1.1「哲学」の意味 1.2「理性」の意味と機能 2.‌‌ヨーロッパにおける思想形成の階層構造と理性主義 2.1第一層:実体論 2.2‌第二層:古代ギリシャ思想,特にプラトンの思想 2.3第三層:キリスト教とその人格神 2.4第四層:理性主義の誕生と変遷 3.‌理性主義の変遷と発展(神的理性からの脱却/人間理性の自律性向上) 3.1啓蒙主義運動 3.2イギリス経験主義 3.3カントの試み 3.4ヘーゲルの試み 4.‌ニーチェ思想の性格と彼の企て 4.1‌19世紀末ヨーロッパ社会の諸相とニーチェの危機感 4.2ニーチェの企て 4.3「生きた自然」概念の復権:反哲学 4.4新たな価値定立の原理 4.5‌人間の自律性向上から見たニーチェ思想の意義 5.‌ハイデガー思想の性格と彼の企て 5.1思想形成と研究分野の変遷 5.2「存在と時間」に込められた意図 5.3反哲学と反ヒューマニズム 6.‌‌総括:人間の自律性の高まりとそれに対する反省 あとがき研究ノート
著者
坂田 美和 池添 博彦
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.43-50, 2013-03-31 (Released:2017-06-16)
参考文献数
5

栄養学は生理学および生化学を基礎にした学問である。生体内の物質代謝については、近年の生命科学の発展により、かなり新しい知見が加えられている。 栄養学における西欧語からの多くは、日本語に訳されることなく、そのままの形で用いられている。用いられている借用語を正確に把握するためには、言語の意味を理解しておく必要があると考えられたので、その語源を調べてみた。 借用語の多くは英語から取り入れられているが、その語源はラテン語及びギリシャ語であり、更に遡るとサンスクリット語に由来するものである。
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.297, pp.69-71, 2001-03

名古屋市にある「ばってん」は、予約なしで入ることはまず難しい店だ。平日の場合、何日も前から予約するお客は少ないが、夕方近くになると、当日の席を確保するための電話が鳴り出す。「予約を受けないと、外に行列が出来てお待たせしてしまうから、かえってお客様に申し訳ない」と林久治オーナーは言う。 予約は2時間制。
著者
唐李陽冰書
巻号頁・発行日
vol.[1], 1526
著者
高橋 知音 荻澤 歩 茂原 明里 辻井 正次 手塚 千佳 戸田 まり 仲島 光比古 橋本 しぐね 藤岡 徹 藤田 知加子 森光 晃子 山本 奈都実 吉橋 由香
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では感情認知能力、社会的文脈と感情や意図を読み取る能力、社会的適切さや暗黙のルールの理解を多面的に評価する「社会的情報処理能力検査バッテリー」を開発した。それぞれの課題について信頼性、妥当性についてある程度の根拠が得られた。これは、自閉症スペクトラム障害のある人の社会性を評価することができる我が国初めての検査バッテリーと言える。報告書として音声刺激CDを含む実施マニュアルも作成した。
著者
石原 舜三
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.142-143, 1998-02-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
4

極東ロシアのシホテリアンからチュコーツクに至る地域は, 西方のシベリア地塊 (先カンブリア紀基盤) の周辺に古生代以降の堆積岩類が発達し, 主に中生代中一後期に火山深成岩活動を伴う地質的背景を有し, 下記の様に多様な鉱物資源が発見されている。1) 原生代中期の地溝帯 : アノーソサイトに伴われるチタン鉄鉱-燐灰石鉱床 (P2O540億トン), 花崗岩に付随するREE, Nb-Ta鉱床など。2) 原生代最末期-カンブリア紀初期の地溝帯 : 層状Fe-Mn鉱床, 堆積性Pb-Zn鉱床など。3) オルドビス-シルル紀の融合-衝突帯 : 花崗岩に伴われるSn, F, Nb-Ta鉱床など。蛍石鉱床は大規模で鉱量4,500万トン (CaF2 32%) 。4) ジュラ紀中期の鉱化作用 : 花崗岩活動に関係する若干のAu, Bi鉱床。5) ジュラ紀後期-白亜紀初期鉱化作用 : 花歯岩と火山岩活動に関係するSn, W, Uなどのスカルン, 鉱脈型鉱床。Wスカルン鉱床が大きい。6) 白亜紀後期-古第三紀の鉱化作用 : 花歯岩と火山活動に関係するSn, W, Pb-Zn, Au-Ag鉱脈型, 一部スカルン及び鉱染型鉱床。カバレロボのSn鉱床は金属量34万トンでロシア最大。他にもコムソモリスク西方に数鉱床群。ダルネゴルスクのPb-Zn鉱床はPb-Zn金属量100万トンクラス。コリマーマガダン地域のデュカートAg鉱脈 (図1) はロシア最大の銀鉱山 (Ag金属量18,000トン, Au約50トン) 。金鉱床としてはナタルカ (図1) が大きく, Au約500トン, シホテアリンではアムール河口域のムノゴベルシンノエ鉱脈でAu金属量100トン以上。
著者
馬上 修一 加藤 光恵 坪井 永保 加藤 悠介 八木田 裕治 佐々木 貴義 遠藤 正範 安齋 明子 須藤 美和 本内 陽子 アロマクラブ 部員
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】卵巣癌でホスピス病棟に転棟された患者の機能面だけでなく,生きがいの「アロマ教室開催」を病院全体でサポートし,当院職員構成のアロマクラブに講師として招きQOL向上に繋げたため報告する。</p><p></p><p>【方法】<b><u>症例</u></b> 55歳女性,卵巣癌,心拍数94回/min,ROM制限無し,MMT4-,BI 15点(介護依存あり)。2011年11月当院で卵巣癌の手術施行。短期入院を繰り返していたが状態悪化し当院一般病棟を経てホスピス病棟へ転棟。後にリハビリテーション(以下リハ)依頼。介入当初の希望は「車椅子に乗ってどこか行きたい。なるべく出来ることは自分でやりたい」である。<u><b>経過</b></u> ADL向上目指し下肢筋力増強運動を中心にリハ継続していたが,介入8日目に「もっとアロマを教えたい」と熱望あり。患者はアロマトレーナー有資格者で,入院前はアロマ教室を開催していたため,リハ目標を「アロマ教室開催」,リハ内容をリラクゼーション中心に行い身体調整を行った。同時にアロマクラブに依頼し承諾を得た。患者には低負担で行える様に環境調整を行い,介入12日目に1回目開催。翌日状態悪化が見られたが,「またやりたい」と熱望があり,症状改善したため介入19日目に2回目開催。その3日後に逝去される。</p><p></p><p>【結果】開催日の患者は身支度し,活気に溢れていた。生きがいを達成し,患者や参加者から好評を得た。途中リハ内容を変更し,身体的ストレス軽減を図りアロマ教室を2回開催した。そのため患者は生きがいを達成し満足感を得たためQOLが向上したと考えられる。</p><p></p><p>【結論】終末期患者のQOL向上のため,優先順位の選択の難しさを実感した。また患者の要望を叶えるにはスタッフ間の連携及び迅速な対応が必要なため,チーム医療の重要性を実感した。今後もチームとしての連携を図り,要望に対し身体や環境調整を行い,QOLの向上及び患者満足度に対し客観的評価も検討していきたいと考える。</p>
著者
中澤 公孝 西村 幸男 荒牧 勇 野崎 大地
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は「ヒトの中枢神経が有する障害後の再編能力を解明すること」を最終目的とし、①パラアスリートの脳の構造的・機能的再編を明らかにすること、②モチベーションが脳構造と可塑性に与える影響を明らかにすること、を大目した。当該年度は前年度に引き続き、下肢切断と脊髄損傷の研究を継続するとともに、先天性上肢欠損、高次脳機能障害、脳性麻痺を対象とした研究を実施した。下肢切断に関しては、断端周囲筋を収縮させる際の同側運動野の活動が運動経験に関連して増大することが明らかとなった。この結果は、パラアスリートに観察された同側運動野の活動を説明するものであり、高レベルの義足操作に同側運動野活動が貢献することを示唆する。脊髄損傷者の脳構造・機能解析も進み、完全対麻痺者において特異的脳部位の構造的特徴が明らかとなった。この結果は、障がい後の代償反応と使用依存的可塑性発現によって説明することができる。先天性上肢欠損は一例ではあるが、先天的障害に対する代償反応としての下肢支配領域の特異的拡張を見出し、学術的価値が高いことから国際誌に掲載された。高次脳機能障害者に対しては上肢トレーニングに伴う機能的変化と脳構造・機能の変化を縦断的に調べた。その結果、上肢機能改善と共に脳支配領域の拡張、半球間抑制の低下、皮質脊髄路興奮性の上昇などを認めた。脳性麻痺については、パラリンピック金メダリストの解析を進め、水泳トレーニングによる脳再編、脊髄反射の関与に関する新たな知見が得られたことから学術的価値が認められ、国際誌に掲載された。