著者
加藤 隆弘
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.40-45, 2020 (Released:2020-03-30)
参考文献数
39

神経のシナプス間の神経伝達異常仮説に基づいた精神疾患の治療薬の開発がすすめられてきたが,実際には画期的な創薬には未だ到達しておらず,ほとんどの精神疾患では病態すら十分には解明されていない。脳内細胞ミクログリアはサイトカインやフリーラジカルを産生することで脳内免疫細胞として働き,近年ではシナプスと断続的に接触していることも判明し,精神疾患の病態への関与が示唆されはじめている。本稿では筆者らが十年来提唱してきた精神疾患のミクログリア病態治療仮説,および,仮説解明のために推進している主に血液を用いた橋渡し研究を紹介する。
著者
成田 正明 江藤 みちる 大河原 剛
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.S13-4, 2014

発達期の化学物質のばく露は子どもの正常な発達に悪影響を及ぼし得る。なかでも妊娠中の化学物質のばく露は様々な外表奇形・内臓奇形を引き起こすことはよく知られているが、情動や認知行動への影響についての詳細はわかっていない。<br> 自閉症は人との関わりを主症状とする、先天的な脳の機能障害に基づく発達障害である。しかし胎生期のどの時期に、どういうことが原因で(遺伝的因子、ウイルス感染、薬剤・化学物質)、どんな機能障害が脳のどの部分におきているか、はわかっていなかった。<br> これまで報告されている自閉症の原因としては、遺伝的因子、胎内感染症、化学物質(薬物・毒物)などがある。遺伝的因子の関与は強く指摘されているが、スペクトラムとしてヘテロな症候を持つ自閉症の病態を、単一の遺伝子異常で説明するのは本来困難である。妊婦の抗てんかん薬バルプロ酸などの薬物、アルコール、その他の化学物質の胎内ばく露も自閉症発症原因になり得るとされている。化学物質の胎内ばく露を巡っては、有機水銀摂取なども懸念事項であり、妊婦の魚介類摂取許容量が見直されるなども関連しているといえる。<br> 私たちはヒトでの疫学的事実、即ち妊娠のある特定の時期にサリドマイドを内服した母親から生まれた児から通常発症するよりもはるかに高率に自閉症を発症したことに着目し、妊娠ラットにサリドマイドやバルプロ酸を投与する方法で自閉症モデル動物を作成してきた。自閉症モデルラットでは、これまでにセロトニン神経系の初期発生の異常、行動異常などがあることを報告してきた。<br> 今回の講演ではサリドマイドによる自閉症モデルラットについての知見のほか、有機水銀ばく露実験なども含め、最近の知見も含めて述べていきたい。
著者
尾上 孝利 佐々木 彩夏 藪下 恵里 足立 裕亮
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-52, 2012-03

看護師にとって手指消毒の知識と手技は院内感染防止上重要である.本学での手指衛生教育後に学生がいかに手指消毒の知識と技術を理解しているかをアンケートとハンドぺたんチェックSCDLP培地を用いて検討した.教えられたスタンダードプリコーションの用語,意味および手技の理解度は1,2年生では劣っていたが,進級に伴って3,4年生では上昇していた.培養法で手洗いと擦式手指消毒手技を判定すると,合格率は1,2,3,4年生で50,40,75,60%,擦式手指消毒のみの値はそれぞれ60,60,100,80%であった.以上の結果は,1年生から確実な手指消毒手技を体得させる指導が必要であることを示唆している.

1 0 0 0 OA 花押譜 7巻

著者
桧山義慎
巻号頁・発行日
vol.[2], 1816
著者
斎藤 恭一 小島 隆 浅井 志保
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.233-242, 2017

不溶性フェロシアン化コバルト及びチタン酸ナトリウムは,放射性核種を含む汚染水から,それぞれセシウムイオン及びストロンチウムイオンを特異的に捕捉する.これらの無機化合物の沈殿を,放射線グラフト重合法によって市販の6-ナイロン繊維に接ぎ木した高分子鎖内で析出させた.それらの沈殿が多点の静電相互作用に基づいてグラフト鎖に巻き絡まるという担持構造が示唆された.作製された不溶性フェロシアン化コバルトあるいはチタン酸ナトリウム担持繊維は,従来の粒子状吸着材,例えば,ゼオライトやSrTreat(チタン酸ナトリウム担持樹脂)比べて,吸着速度は大きかった.市販の粒子状吸着材と比較して無機化合物重量あたりの吸着容量は大きかった.
著者
植村次雄
雑誌
薬局
巻号頁・発行日
vol.47, 1996
被引用文献数
1
著者
中村 謙介 中野 秀比古 奈良場 啓 小豆畑 丈夫 横田 裕行
出版者
一般社団法人 日本在宅救急医学会
雑誌
日本在宅救急医学会誌 (ISSN:2436066X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.51-60, 2021-12-31 (Released:2021-07-20)
参考文献数
28

急性期疾患とその治療に伴い身体や精神面にさまざまな障害を負うことがしばしばみられ、特に高齢者は回復 力の低下から障害を負いやすい。これまで急性期医療後の障害は集中治療後症候群や入院関連障害などの形で取り扱われてきたが、広く救急医療後の障害を検討するため、PACS(post-acute care syndrome)という概念を提唱した。 PACS は身体障害、認知機能障害、精神障害の3 つに分けて検討することができ、それぞれの評価バッテリーを適切に用いることで評価が可能である。超高齢社会である日本においてPACS を検討し対策することは急務であり、急性期病院と在宅医療やプライマリケアとの情報連携を立ち上げる必要がある。
著者
高橋 裕子 芳賀 しおり 石坂 幸人 三森 明夫
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.46, 2011

アンジオテンシン阻害酵素 2(ACE2:ACEホモログ)は、ACE作用に拮抗して血管保護に働く。我々は、膠原病の収縮性血管病変に、ACE2阻害が関与する仮説を立て、患者血清中にACE2阻害自己抗体を証明した。すなわち、精製ヒトリコンビナントACE2によるELISAで、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、四肢末端壊死の患者(SLE, SSc, MCTD)で抗体の高値陽性17人/18、対照患者24人で低値(p<0.0005)、健常者28人で陰性であった。血清ACE2活性は、抗ACE2抗体価と逆相関し(R2 = 0.55)、患者血清IgG分画は、in vitro ACE2活性を抑制した。末端壊死が進行中のSLE 1例では、ステロイド治療+血漿浄化/DFPPにより抗ACE2抗体消失、血清ACE2活性欠損の回復をみた(Takahashi, et al: Arthritis Res Ther, 2010)。その後、新たなPAH 3人で抗体高値を確認した一方、非血管病にも高値例(7/54)を認めたが、それら血清IgG分画にはin vitro ACE2阻害作用がなかった。さらにランダムペプチドライブラリー法で得た抗体の反応部位候補2ヶ所の合成ペプチドで血清を吸収し、4患者で抗ACE2抗体価低下、in vitro ACE2阻害活性の低下をみた(p<0.05)。現在、抗ACE2-MAbによる動物モデルを作成中である。
著者
新村 末雄 石田 一夫
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.99-105, 1976

妊娠5日12時間から16日までのハムスターの子宮に出現する巨細胞をORSINIに従って第1次巨細胞と第2次巨細胞に分け,それぞれについて核酸,たん白質,多糖類,脂肪を染色し,さらに,Acid Pase,Alk Pase,Etase,SDH,各種OH-SDHの組織化学的検出を試みた。<BR>第1次巨細胞は細胞質突起をもっており,妊娠5日12時間にすでに着床腔周辺とエクトプラセンタルコーン付近にみられ,次第に増えてライヘルト膜近くの子宮内膜に分布し網状構造を形成した。この時期の巨細胞にごは赤血球の破片が貧食されていた。妊娠後期には紡錘状となって減少した。第2次巨細胞は多角形で,7日12時間に増殖中のエクトプラセンタルコーンの外側に多数出現し,後に合胞体化して栄養海綿体を形成した。<BR>これらの巨細胞は常に多量のRNAを含有しており,acrolein-SCHIFF陽性たん白質も少量観察された。グリコゲン穎粒は第1次巨細胞では妊娠12日まで,第2次巨細胞では13日まで,いずれも少量認められた。酸性多糖類はまったく検出されなかった。脂肪小滴は第1次巨細胞では8日まで少量認められ,第2次巨細胞では10日から出現し次第に増加した。AcidPase活性は弱かったが,妊娠期間をとおして常に認められた。Alk Pase活性は弱かったが8日まで存在し,9日で痕跡的となり11日に消失した。SDH活性は第1次および第2次巨細胞とも常に弱かった。Etaseと各種OH-SDHは検出されなかった。<BR>以上のことから,ハムスターの巨細胞は従来いわれているように移行性と貧食性をもっており,胞胚の着床や着床腔の拡大に関与していることが示唆されたが&bull;ラットやマウスにみられるようなOH-SDHは検出されなかったので,プロジェステロンの産生は行われていないように思われた。
著者
冨尾 賢介
出版者
埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

子宮内膜症は慢性炎症性疾患であり新規治療法が待たれる。本研究では、オメガ3脂肪酸(以下ω3FA)の子宮内膜症抑制効果をin vitroで検証した。子宮内膜症患者の培養腹腔マクロファージ(以下Mφ)をω3FA処理下にLPSで刺激したが、TNF-α産生は抑制されなかった。そこでω3FAがMφのインフラマソーム活性を抑制し、IL-1β産生を抑制することに着目した。ω3FA処理下では、ニゲリシン刺激(インフラマソーム活性化の試薬)に対する培養腹腔MφからのIL-1β産生は抑制された。ω3FA はMφのインフラマソーム活性を抑制することで子宮内膜症の炎症を抑制し、新規治療戦略に繋がる可能性が示唆された。