著者
川井 八重 住田 優子 土屋 紀子
出版者
高知医科大学
雑誌
高知医科大学紀要 (ISSN:13430793)
巻号頁・発行日
no.18, pp.101-110, 2002-12
被引用文献数
1

高知県N市の高齢者教室において,介護を要しない高齢者(N=51,男性:N=7,75.4±3.0才,女性:N=44,75.0±5.0才)を対象に,投影法及び自尊感情尺度を用いて,高齢者の介護意識について検討を行った。調査方法は,調査者が「要介護者を介護者が介護している絵で,2人のそれぞれに漫画の吹き出しがある絵」を提示し,吹き出しの中に自由に言葉を記載してもらう方法であった。さらに,調査者は被験者に「父・母・夫・妻・息子・娘・嫁・ホームヘルパー」の記載のある用紙を渡し,その中から要介護者を1者,介護者を1者,それぞれ選び出してもらった。同時に,被験者はRosenberg, M.の自尊感情尺度表を自記式で記載し,調査者はそれにもとづいて得点を算出し,関連性を検討した。検討の結果,以下の項目が考えられた。(1) 被験者は,介護者として「嫁・妻・娘」を想定していた。それは,従来の介護規範と同様であった。しかし80才程度以上の被験者では,従来の介護規範以外の介護者を想定していた。すなわち,「息子・ホームヘルパー・夫」を介護者として想定していた。(2) 被験者は,要介護者と介護者の関係を「痛苦を訴える要介護者を,激励しながら世話する」という形態で想定していた。また被験者は,要介護者が要求したことを介護者が無茶件に行うという想定をしていた。(3) 被験者のうち,年齢が高い被験者は自分を要介護者と想定し,若い被験者は介護者と想定する傾向が見られた。(4) 被験者のうち,自尊感情尺度得点の低い者は,悲観的な要介護状態を想定しやすい傾向が見られた。(5) 上記の(1)〜(4)の項目は,要介護者が依存的態度になり易いという傾向を示唆していた。
著者
松田 美津子 山寺 幸雄
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.271-277, 2017-06-01 (Released:2017-08-24)
参考文献数
8

Carotidynia(頸動脈痛)は頸動脈部分の圧痛を生じる原因不明の症候群である.今回超音波検査にてCarotidyniaによる頸動脈壁の肥厚と回復の経過を観察し得たので報告する.症例は43歳女性.右頸部痛を訴え3日目に当院を受診した.超音波検査にて疼痛部直下の右頸動脈球部から内頸動脈にかけて限局性の壁肥厚を認め壁厚は3.3 mmであった.肥厚部には動脈内腔から外膜方向に向かう細い拍動性の血流シグナルを認めた.経過観察において壁厚は11日目;2.4 mm,28日目;2.1 mm,6か月目;1.6 mmと縮小し,経過とともに肥厚部の血流シグナルも不明瞭化したことから,炎症に伴う一過性の腫大と血管拡張があったものと推測された.Carotidyniaを疑い疼痛部に限局性の壁肥厚がみられた場合は,偽腔血栓化を伴う頸動脈解離,早期の高安動脈炎やプラークとの鑑別が必要であり,2週間~1か月後に超音波検査を再検し,必要に応じて数か月の経過観察により肥厚部を評価する必要があった.Carotidyniaはしばしば誤診されたり見落とされたりすると報告されているが,頸部痛の超音波検査では,頸部リンパ節や甲状腺だけでなく頸動脈まで幅広く観察することによりCarotidyniaの診断率が向上するものと思われた.
著者
福沢 芳章 古畑 茂喜 塚本 隆是 伊藤 寛治 名倉 道治
出版者
長野県医学会
雑誌
信州醫學雜誌 (ISSN:00373826)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.813-817, 1959-04-01

信州醫學雜誌 8(4): 813-817(1959)
著者
永井 玉藻
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.94-109, 2018 (Released:2019-03-15)

19世紀のパリ・オペラ座において、バレエの伴奏は弦楽器奏者の仕事だった。彼ら伴奏者は、当時のバレエ・カンパニーに必須の存在であり、日々のリハーサルのために、弦楽器伴奏者専用のリダクション譜も作成されていた。バレエ伴奏が弦楽器によって行われていたことは、ワイリーやスミス、デイらによって言及されてきたが、その詳細には未だ不明な点が多い。 そこで本稿では、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのオペラ座におけるバレエ伴奏者について、彼らの人物像や劇場での立場の解明と、弦楽器奏者によるバレエ伴奏が衰退した時期の特定を試みた。 今日、フランス国立文書館や、フランス国立図書館分館のオペラ座図書館には、19世紀のオペラ座に関する資料が多く所蔵されている。それらのうち、19世紀後半にオペラ座で稽古伴奏を行っていたバレエ伴奏者に関する書類を精査したところ、当該時期のオペラ座監督の義務書が、バレエの稽古のために伴奏者、あるいはヴァイオリン奏者を雇用すると定めていたことが明らかになった。 さらにこの職務は、ほとんどの場合において、オペラ座オーケストラの弦楽器奏者2?3人によって担われていた。彼らには、オーケストラ奏者としての給与とは別に、伴奏者としての給与も支払われていた。したがって、バレエ伴奏は、当時としては非常に珍しく、オペラ座から許可された副業として位置付けられていたと言える。しかし、その社会的地位は、オペラの稽古伴奏者に比べて極めて低いものだった。 こうした弦楽器のバレエ伴奏者は、1920年代ごろまで活動していた可能性が高い。その後はピアニストによる伴奏へ移行し、今日のようなピアノでの伴奏が一般的になった。しかし、バレエ伴奏は19世紀半ばからオペラ座の一役職として認知されており、その伴奏には、必要な才能や条件があると考えられていたのである。
出版者
日経BP
雑誌
日経ニューメディア = Nikkei new media (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1751, 2021-05-03

2021年3月26日に武田良太総務大臣は東北新社子会社の「東北新社メディアサービス」が提供しているBS4K放送「ザ・シネマ4K」の衛星基幹放送業務認定を5月1日付けで取り消す処分を行った。他方、フジ・メディア・ホールディングスは2012年から2014年にかけて放送法の…
著者
平山 傑 丹野 克俊 蕨 玲子 上村 修二
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.131-135, 2008-02-15 (Released:2009-06-09)
参考文献数
9

症例は29歳の男性。 8 年前まで下垂体胚細胞腫の放射線治療を施行されており,汎下垂体機能低下症に対して 1 日にhydrocortisone 20mgを投与されていた。大量の水様性下痢後に全身脱力と低体温を呈したため当院に救急搬送された。低体温に対し電気毛布による体表復温と,温水を使用した胃洗浄による内部復温を開始した。復温に伴い血圧低下が出現したためrewarming shockを疑い輸液負荷を行ったものの反応せず,dopamineを開始したが低血圧が遷延した。既往歴とカテコラミンに不応性のショックから,急性副腎不全を疑い,搬入より11時間後にhydrocortisone 100mgを静脈内投与した。その後から徐々に血圧が上昇し,輸液負荷やdopamineを漸減することが可能となった。hydrocortisone投与前の血中コルチゾール濃度は1.4μg/dlと低値を示していた。第 4 病日にICUを退室し,第11病日に独歩退院となった。急性副腎不全はよく知られた疾患であるが,実際に救急外来で遭遇することはまれである。症状も様々で検査所見も非特異的なものが多く,診断に苦慮する。時にカテコラミンに不応性のショックを呈するため,早期の診断と治療が予後を左右する。カテコラミン不応性のショックをみた場合,既往歴や経過から積極的に急性副腎不全を疑い,ステロイドを投与すべきであると考えられた。
著者
金安 顕一
出版者
Cukr編集部
雑誌
ツックル
巻号頁・発行日
no.1, pp.34-37, 2005-03
著者
久田 重太 千家 正照 伊藤 健吾 丸山 利輔
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.1-7, 2011-02-25 (Released:2012-02-25)
参考文献数
10

ヒノキを中心とした常緑針葉樹林流域とミズナラなどの落葉広葉樹林流域において水文観測を行い,林相の違いが水収支特性に及ぼす影響を検討した.短期水収支法を1時間単位の流量データに適用した結果,広葉樹林流域に比べて針葉樹林流域の蒸発散量が大きいことが明らかになった.また,蒸散量をPriestley-Taylor式により推定することで, 蒸発散量から遮断蒸発量を分離したところ,落葉広葉樹流域に比べて針葉樹流域の遮断蒸発量が大きいことが示唆される結果となった.さらに,総流出量を直接流出量および基底流出量に分離することで,両流域の流出特性を検討したところ,2流域間に直接流出率に差がみられず,総流出量の差を生じさせているのは基底流出量の違いであった.これら水収支の各成分の検討から,林相の違いが遮断蒸発量と基底流出量に大きく影響していることを明らかにした.
著者
長根 裕介 五十嵐 匠 杉本 周路 平方 仁 川田 望 滝本 至得
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.529-531, 2003-06-20

症例は52歳の男性。妻および子供2人と同居。40歳頃より,女性になりたいとの願望が生じる。日々自己性器への嫌悪が強まり,自宅で陰囊をカミソリで切開後,両側精巣を摘除し投棄した。その後,陰囊部の疼痛と腫脹が増強し,当科を受診した。同日緊急に血腫除去,精索断端の結紮およびドレナージを行った。術後に精神神経科で性同一性障害と診断され,現在外来で経過観察中である。本邦における自己去勢報告例は,本症例を含めて4例のみである。

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著者
東亜旅行社満洲支部 編
出版者
博文館
巻号頁・発行日
vol.昭和17年, 1942
著者
田代 英美
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.13-21, 2014-09

東日本大震災・福島第一原子力発電所事故に伴う遠方個別避難は、現在も続いている。避難・移住者の支援活動にはさまざまな担い手が参加し、活動内容も多様である。宮崎県では避難・移住した人たちが作るネットワークが活動しており、県内全域で約300家族とつながっている。このネットワークは避難・移住者同士の交流に始まり、現在はメンバーに地元の人々も加わって避難・移住者への支援活動に重点を置いている。 本稿では、ネットワークの参加者へのインタビュー調査をもとに、遠方個別避難における生活再建の新たな方向性を考察した。このネットワークのメンバー構成や活動内容に見られる現在の生活スタイルへの疑問や新しい生活像の模索は、本複合災害からの生活再建のひとつのかたちであると考える。これは、以前提起した移動適応型の生活構造とは異なる生活再建のあり方であるように思われる。この点については今後分析を進めていきたい。