著者
赤尾 健志 寺林 恵美子 大場 正則 水島 朝美 城戸 恵美 高橋 秀幸 山上 亨 八野田 純
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.D1218, 2008
被引用文献数
1

【目的】当院の癌終末期理学療法では、1.患者・家族のニーズに答える、2.患者・家族の信頼を得る、3.チーム医療を重視することを目標に取り組んでいる。今回、癌終末期理学療法の取り組みを現状と患者・家族のコメントをもとに検討したので報告する。<BR><BR>【対象】2006年4月から2007年9月の間、癌終末期で理学療法を施行し入院中死亡した22名、男性11名、女性11名、平均年齢73.8歳、現疾患は、肺癌16名、大腸癌2名、胃癌2名、肝細胞癌1名、胆嚢癌1名であった。<BR><BR>【方法】理学療法開始時と終了時の理学療法内容とADLレベル、理学療法実施期間、理学療法終了日から死亡までの期間について調べた。また対象者を、理学療法を死亡まで継続可能であった群(以下継続可能群)14名、患者の希望により理学療法を途中で中止した群(以下希望中止群)3名、合併症等の発症により理学療法を中止した群(以下合併症発症群)5名に分類した。それぞれの群に対し、患者・家族のコメントをカルテ等から抽出した。<BR><BR>【結果】理学療法内容は、開始時は、ADL練習19名、肺理学療法5名、筋力運動10名、関節他動運動7名、疼痛緩和・浮腫改善2名であった。終了時は、関節他動運動14名、肺理学療法12名、疼痛緩和・浮腫改善6名、ADL練習1名であった。ADLレベルは、理学療法開始時は歩行レベル7名、車椅子レベル11名、ベット臥床レベル4名であった。終了時は、車椅子レベル2名、ベット臥床レベル20名であった。理学療法実施期間は平均42.6日(7日~170日)であった。理学療法終了日から死亡までの期間は平均4.3日(0日~20日)であった。患者・家族のコメントは継続可能群では、呼吸が楽になった、むくみがとれて足が軽くなった等の身体的改善感の他に、自分の体を触ってもらうことで温もりを感じる、雑談等ゆっくり話ができる、リハビリをするのが生きる支えとなっている等、精神面に関するコメントが見られた。希望中止群では、触ると痛い、歩く練習をすると疲れる等であった。合併症発症群では、脳梗塞発症、消化管出血、呼吸急性増悪等で、急激に全身状態が変化した場合が多かった。<BR><BR>【考察】癌終末期理学療法の現状としては、全身状態が自然経過として次第に悪化していくにも関わらず、理学療法を継続している症例が多く見られた。その理由として、一時的でも身体的改善感が得られること、厳しい現実から少しでも逃避できる癒しの効果、精神的支え等が考えられた。以上より、当院での癌終末期理学療法の取り組みは患者・家族に対し、身体・精神的に良い効果を与えることができているのではないかと思われた。また途中中止になった症例から、患者の状態に応じて少数・頻回のより細かな理学療法内容の検討、また合併症の発症等から、一日一日のリスク管理を含めたチーム医療での情報共有等がより重要だと思われた。<BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR>
著者
南 一成
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

睡眠・覚醒の調節にはアセチルコリンが重要である。アセチルコリンを放出するコリン作動性ニューロンはREM(Rapid Eye Movement)睡眠時に強く活動することから、アセチルコリンはREM睡眠の調節に関わっていると考えられている。また、パーキンソン病やアルツハイマー病においてはREM睡眠の減少が見られ、同時にコリン作動性ニューロンの病変も見られることが知られている。したがって、これらの病気について、アセチルコリン活性の低下によるREM睡眠の減少が重要である可能性が考えられる。そこで本研究では、睡眠調節に関わると考えられるmAchRのうち、mAchR1〜5それぞれのサブタイプの遺伝子欠損マウスについて、睡眠の各ステージ、特にREM睡眠をモニターしながら障害させる実験系を開発した。マウスの脳波と筋電図を計測しながらリアルタイムでコンピュータにより解析し、吸気中の二酸化炭素濃度を自由にコントロールすることで睡眠の各ステージを障害させることに成功した。この実験系を用いて、mAchRの遺伝子欠損マウスの睡眠、特にREM睡眠の変化を解析する。また、アセチルコリンは睡眠だけでなく、概日リズムにも関わっている。概日リズムは光刺激とそれに伴う視交差上核の活動によってコントロールされているが、そこでアセチルコリンが重要な役割を担っていると言われている。したがって、アセチルコリン受容体の概日リズムの影響を調べるため、マウスの概日リズムを解析するための行動実験系、体温測定の実験系を作製した。この実験系を用いてこれまでに、プロスタグランジンE2(PDE2)が末梢の概日リズムを変化させる作用があることを見出している。これからさらに、アセチルコリン受容体の遺伝子欠損マウスについて解析する予定である。
著者
萬屋 博喜
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度は、前年度に引き続き、(1)デイヴィッド・ヒュームの因果論と(2)現代因果論におけるヒューム主義を主な課題として研究し、その成果を口頭や論文の形で発表した。(1)第一に、ヒュームの因果論に関しては、自然法則に関する見解について研究報告を行った。これについては、『人間知性研究』を主なテクストとして用い、(a)従来の解釈ではヒューム哲学が自然法則と偶然的一般化を区別できないという困難に直面することになるという点を指摘した上で、(b)自然法則の信念成立において数学的表現による数量化という手続きが不可欠であるという「数量化可能性の条件」という論点をテクストから析出することで、そうした困難の解消を試みた。(2)第二に、現代因果論におけるヒューム主義に関しては、(1)行為の道徳的評価における因果性の役割、(2)共同行為における因果性の役割に分けて研究報告を行った。まず、行為の道徳的評価における因果性の役割については、(a)行為の善悪を評価する原理の一つである二重結果原理の内実を明らかにした上で、(b)その原理において因果性が果たす役割の重要性を示したのちに、(c)その原理は傍観者視点での概念的直観ではなく当事者視点での経験的直観によって根拠づけられるということを示した。次に、共同行為における因果性の役割については、この論文では、(a)共同行為の定義や成立条件に関する黒田亘の見解を検討したのち、(b)黒田の議論が、合理性、暗黙の相互期待、意志表明の言語ゲームにおける<原因としての意志>の共有、という共同行為成立のための三条件を提示するものであった、ということを明らかにした。
著者
田中 康雄
出版者
北海道大学大学院教育学研究科附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-10, 2007-03-30

児童精神科医の視点から子どもたちの生きづらさについて、考察した。 生きづらさを問い続けるためには、生きるということ、さらには「豊かに生きる」ということを思索する必要がある。その意味で、生きがい感を持ちながら「生きる」ということを総括し、精神医学全体がもつ不確実性について言及した。故に近年問題視される発達障害という定義について、より熟考する必要性があることも強調した。 実際の子どもたちが抱える「生きづらさ」について提示しながら、解決に向け試みた。結果として、根源的にある、他者の意識について推量する想像力を行使することで、異質な他者を排除せず、認めあう自由を相互に手に入れることができるための「思いやり」の重要性を指摘した。 子ども発達臨床研究センターが、学際的に分野横断性と当事者性とをバランスよく持ち続け、鳥の目と蟻の目をもって、現在の社会状況に向き合える機能を持つことに期待したい。

1 0 0 0 OA 中右記

著者
藤原宗忠 著
出版者
日本史籍保存会
巻号頁・発行日
vol.3, 1916
著者
五島 寧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1318-1325, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
70

本研究は,満州国都市計画制度における,土地経営,集団住区,容積率規制に着目し,制度の起源,特徴,新規市街地への特化との関係,戦戦後日本制度との比較等の視点から検討した。土地経営は,ドイツの土地公有化政策を直接の起源とはしていなかった。集団住区は外国の理論の輸入であったが,人間的スケールの都市空間の創造よりも,人口配分の管理統制手段として利用された。容積率規制は,内地で見送られた制度であったが,高さ制限への翻訳を要するなど規制手段として発展途上であった。都邑計画法(1942)は,その時代の日本の都市計画技術を以て,既成市街地の存在を度外視して理想型を追求するとどうなるか,という実験と見ることもできるが,本格適用に至っていないことから,実験計画と呼ぶのが妥当であろう。
著者
久保 勝裕 安達 友広 木曾 悠峻
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1288-1295, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
33

明治期に建設された北海道の市街地の多くは、市街地区画図に基づいて極めて計画的に建設された。しかし、その後の市街地拡大の状況はそれぞれ固有性を持ち、それに対する市街地再編の中で寺院敷地の再配置が象徴的に行われた。つまり北海道では、市街地拡大の過程で「2度目のデザイン」が施されたのではないか。本研究では、市街地拡大に応じた寺院の再配置の方法を解明し、市街地固有の景観を創出してきた実態を明らかにした。例えば、余市では、近世市街地に接して市街地を増設した際に、従前からの寺院群を開拓使の意向で新市街地外側の道路端部に移転させた。寿都では、大火を契機に近世市街地を再編した際に、新規の道路開削と一体的に寺町を建設した。これらでは、①市街地区画地外に配置する、②市街地端部の道路の軸線上に配置する、③寺院敷地を連続させる等の手法が用いられた。以上、北海道の市街地では、設計手法を徐々に蓄積し、時代に応じた宗教統制が行われ、やがて両者が接点を見つけていった。その過程では、各々の時代背景や制度的背景、市街地拡大の状況に応じて、それぞれ特徴的な寺院の再配置が行われ、固有の景観を今日に継承してきた。
著者
木曾 悠峻 久保 勝裕 安達 友広
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1280-1287, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22

北海道の市街地は、多くが農業地帯に対して都市的サービスを提供するために、計画的に建設された。地方都市の建設は明治20年代から本格化したが、特に内陸都市では、原野区画が先行し、一定程度の入植が進展した後に市街地が区画されるのが一般的であった。従って、市街地の区画は、原野区画に埋め込むように建設され、その方向は強く規定された。本研究では、北海道殖民都市のグリッド市街地を分析対象として、①市街地範囲の設定方法と、②街区・宅地計画の方法(市街地区画道路の割り付け方法)の詳細を明らかにする。分析の結果、①原野区画の中に市街地区画を計画する場合、小規模市街地の範囲は、市街地用地の買収時の農地単位で規定された。300間四方の原野区画(中画)の内側に収め、100間×150間の「小画」の境界線を市街地の外枠とした。②具体の街区・宅地計画は、原野区画道路を基準線として設計された。一部の例外を除き、原野区画道路は付け替えや線形の変更をされることなく、原野の基本寸法の枠内で、市街地区画道路と街区の寸法が割りつけられた。この原野区画道路によって、市街地と周囲の農村部が空間的に連続化された。
著者
山田 歩美 加藤 雅大 有賀 隆
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1159-1164, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13

本研究は「過疎地域神社活性化推進施策」を受け、氏子と神社が地域運営を担う一員同士の繋がりであるという視点の上で祭礼運営を行うことが重要であるという背景を受け、社会的紐帯と祭礼形式の変容の相互関係を解明し、祭礼形式が変容しながらもそれが持続していく上での課題を、氏子側の祭礼に対する意識を踏まえ考察することを目的としている。⑴祭礼内容の歴史的変容、⑵祭礼を実行する組織運営、⑶祭礼に対する住民意識、以上3点について調査の結果、⑴対象神社の祭礼は福井地震を契機として祭礼内容が変容し、現在も人口減少に合わせて一部内容を変化しながら継続している。⑵氏子は町内会を介して祭礼に参加している。⑶氏子の祭礼に対する意識は各町内の人口特性や祭礼への参加形式の多様性によって各町内で差異が生まれている。以上より対象神社における社会的紐帯は町内会を介した間接的且つ段階的な繋がりの上に成り立つ事が明らかになった。また、各町内毎は祭礼形式に利点や課題を持ちつつも、全体としての枠組みは全地区で一貫されている事が地域運営の課題といえ、各町内の組織が有する祭礼形式の変容の方向性や課題を共有する事が重要であると考えられる。
著者
落合 知帆
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1151-1158, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

熊野川沿い集落は古来より洪水常襲地域であったため,伝統的な水防建築の一様である「アガリヤ」を建て,水害時に備えた.本研究では,和歌山県田辺市,新宮市,三重県紀宝町の熊野川沿い集落での調査により,アガリヤの分布を確認し10の集落において現存を確認した.また,田辺市本宮町を対象とした詳細調査において,アガリヤは住居式,倉庫式,住居倉庫式に分類され,地区によって倉庫式または住居倉庫式が多数を占める違いがあった.また,その配置は,住宅の裏に石段を築き整地した上に建てられた敷地内盛土型と,住宅のある敷地から離れた高台に建てられた敷地外高台型に分類した.アガリヤの減少または消失の要因は, 昭和28年以降大規模な水害の減少,公共事業や治水対策の実施,二階建住宅の普及に伴う住民の水害危機感の減少,公的避難所の整備による自己対策から避難所避難への意識変化が挙げられる.現代社会において地域に残る伝統的な水害対策の知恵の継承が重要である.
著者
今井 茂夫 和田 充弘 和田 丈晴 岩﨑 圭 片桐 律子 美濃部 安史 石井 聡子
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1243-1250, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
29

衛生ナプキンや使い捨ておむつのような衛生用品は,皮膚との長期間の接触で使用されるため,これらの製品に含まれる化学物質が人体に悪影響を及ぼすかどうかを確認することが重要である。衛生用品の主要材料であるパルプは,その白さを増すためにアルカリ薬剤による漂白が行われるが,製造メーカーの環境配慮の高まりによって二酸化塩素に基づくECF漂白が広く採用され,これまでの漂白方法に比べてクロロホルムおよびクロロフェノールの生成は大幅に減少した。しかも,ECF漂白プロセスにおける塩素化合物の発生および持続性に関する知識が蓄積されている。一方,衛生用品に塩素化合物が含まれていると,汗などの体液に溶けて皮膚に吸収される可能性があり,人的影響を把握するためにはその含有量を定量的に測定する必要がある。但し,塩素化合物の悪影響は化学種によって大きく異なるため,塩素の総量のみを計算することでは不十分であり,溶出液中の化学形態を特定することが重要となる。当社では,生理用ナプキンに使用されるパルプ中のダイオキシン類を分析し,たとえ毎日40年間使用されても大丈夫なよう,衛生用品の消費者の健康への影響を評価している。筆者らは,生理用品への漂白パルプの使用可否を決定すべく,皮膚暴露を想定した溶出試験を実施し,溶出された化合物の定量を含む化学形態ベースの定量分析フローを作成,安全性に関する評価方法を確立した。これにより,ECF漂白パルプに含まれる塩素化合物の量的な把握,及び化学的形態の解明に至り,当社製品が安全であることを確認した。本レビューでは,これらの研究成果を紹介する。
著者
村松 常司 高橋 邦郎 竹内 外夫 長谷川 優
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.59-68, 1986-07-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
19

A quentionnaire survey was conducted to clear the smoking habits among male university athletes. 425 male students aged 18-23 responded to the questions of their smoking habits, daily dietary life and sleeping anonymously. The differences of smoking habits among athletes are analyzed in this report.The results are as follows;.1) Among the male university athletes,45.2% have smoking habits..2) The percentages of the smokers among Kendoists, Ruggers and Gymnasts are high (82.7%,73.4%,61.9%, respectively), and those among Soccer players, Judoists and Swimmers are low (8.1%,11.5%,18.2%, respectively)..3) There is a remarkable difference of daily diet and sleep between the smokers and the nonsmokers. The Nonsmokers have more desirable diet and enough sleep, and also, there is a remarkable difference between events of athlete..4) Volleyballers, Track and Field athletes and Swimmers obtain higher scores of Dietary Index more than players of other events.
著者
新井将之
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.796, pp.155-159, 2001-05-21
被引用文献数
1

Horowitz氏のなかで,何かが変わりつつあった。なぜか,以前のように気持ちが盛り上がってこないのだ。大学教授としての安定した収入,周囲からの尊敬,何一つとして不自由のない生活。不満など,何もないと思っていたのに。 原因はわかっている。不満のない生活こそが,それだった。
著者
GORMAN CA
雑誌
Ophthalmology
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1521-1522, 2001
被引用文献数
2 12