著者
桑木 共之 山中 章弘 李 智 礒道 拓人 山下 哲 大塚 曜一郎 柏谷 英樹 宮田 紘平 田代 章悟 山口 蘭 石川 そでみ 桜井 武 加治屋 勝子 上村 裕一 二木 貴弘 Khairunnisa Novita Ikbar 有田 和徳 垣花 泰之
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

快情動は疾病予防や健康増進に有益であることが経験的に知られている。その脳内神経回路を明らかにすることによって、経験則に生物学的エビデンスを付与することが本研究の目的であった。快情動によってカタプレキシーを引き起こすことが知られているオレキシン欠損マウスを用い、カタプレキシー発作直前または同時に活性化される脳部位を網羅的に探索したところ、側坐核の活性化が顕著であることが明らかになった。今まで不明であった快情動を研究する際のターゲットとなる脳部位を絞り込むことができたが、健康増進との関連解明にまでは至らなかった。
著者
石黒 格
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.33-55, 2018

<p> 進学,就業において非常に厳しい制約下にある青森県の若者の現状を,進学,就業の実態と社会関係資本の利用という観点から検討した。筆者らが独自に行った3つの調査データの分析から,以下の結果を得た。1)青森県では,威信の高い大学に入学する機会が強く制約されているが,中堅以下の大学への入学機会への制約は弱い。2)そのため,学力の高い若者に対して,選択的に移動の誘因が存在する。3)青森県在住の若者は,南関東在住の若者と比べて労働時間は等しく,勤続年数は長いが,収入は低い。4)青森県在住の若者の社会関係は地域的で,そのために時間が経過しても残存しやすい。5)青森県在住の若者にとって,社会関係が就業機会獲得の重要な経路となっており,特に低学歴の若者でこの傾向が強い。以上の結果および先行研究から,青森県では,学力および経済的に有利な立場にいる若者には大都市へと移動する誘因が存在するのに対して,相対的に不利な立場にいる若者にはそうした誘因は小さく,むしろ豊かでサポーティブな社会関係が出身地に留まる誘因となっていることが示唆された。こうした誘因の二重構造は,相対的に有利な若者が,より多くの利益を得る構造を有しており,格差の再生産装置と評価しうる。しかし一方で,大都市に移動する利益の小さい,資源の乏しい若者を地域に包摂し,移行における不確実性のリスクから保護する機能を果たしているとも理解できる。</p>
著者
谷口 巳佐子 山内 亮子 中村 元臣
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:00215376)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.681-685, 1972

白ネズミの肝臓ミトコンドリヤによるパルミチン酸誘導体の酸化に及ぼすリボフラビンの影響をしらべ, リボフラビン欠乏によって, パルミチル-CoAとL-カルニチンとの酸化のほうが, パルミチル-L-カルニチンのものより減少が大きいことが見いだされた。<BR>離乳ネズミをリボフラビン添加対照食で18日間飼育し, ついで31日間欠乏食で飼育したとき, ミトコンドリヤのパルミチル-CoAとL-カルニチンの酸化活性は, 欠乏食で飼育をはじめたものと同様の減少を示したが, パルミチル-L-カルニチンのものは欠乏食飼育前に対照食を与えたもののほうが酸化活性の減少が少なかった。<BR>ミトコンドリヤの呼吸調節率は, 欠乏食で4週間飼育することにより, パルミチン酸の両誘導体ともに減少した。しかし, 酸化的リン酸化の比はパルミチル-L-カルニチンを基質とし, 欠乏による影響はなかった。
著者
木村 豪雄 岡 洋志 平崎 能郎 鉄村 進 古田 一史 三潴 忠道
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.951-956, 2003-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

肝癌に伴う腹水と浮腫に対して防已椒目〓〓大黄丸料を使用し, 興味ある効果を経験した。症例は80歳女性。2002年4月, 急速に進行する対麻痺, 膀胱直腸障害を呈した。転移性胸椎腫瘍の診断で手術されたが, 術後より下肢浮腫と腹水を生じた。腹部CTにて肝硬変および肝癌が指摘された。腹満, 口腔内の乾燥, 便秘を目標として防已椒目〓〓大黄丸料を投与した。下肢の浮腫は速やかに軽減し, CTで腹水の減少が確認できた。しかし原疾患の進行に伴い, 1ヵ月余りで効果は徐々に減弱した。悪性腫瘍に伴う腹水の治療は困難であるが, 本方は腹水に対する有効な方剤として再注目すべきである。
著者
越智 洋 水谷 政美 松浦 靖 古市 佳代 林 幸男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.274-279, 2016-06-15 (Released:2016-07-31)
参考文献数
22

オカラ麹と発酵原料としてのオカラや米を使用して,新しい発酵物を製造し,その成分含量とACE阻害活性について検討した.オカラ麹を使用すると,有機酸,アミノ酸が豊富でACE阻害活性の高い発酵物が得られた.アミノ酸の中では特に必須アミノ酸が大きく増加し,機能性成分のGABAも増加した.また,オカラ麹の発酵物は発酵初期から高いACE阻害活性を示し,発酵終了まで高い活性で推移した.一方,米麹発酵物は,発酵初期はACE阻害活性がなく,時間の経過に従い高くなったが,オカラ麹と比較すると低い値であった.オカラ麹発酵物は体内消化液処理後もACE阻害活性を維持していたので,経口摂取した場合でも有効であると考えられた.
著者
岩崎 正幸 阿部 民也 吉田 欣哉 吉川 恵郷
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.267-270, 1983

約600羽のカナリヤを飼育する繁殖場で, 群飼されていた約400羽のうち約30%に, さえずり障害, その他慢性の呼吸器障害を示す疾病が発生した. 病理学的検査をした9羽のうち6羽の肺の血液加寒天ローソク培養では細菌の発育はなく, 血清ニューカッスル抗体価は10倍以下, マイ灘プラズマ (MgおよびMs) 抗体は陰性であった.<BR>共通した組織病変は上部気道, 気管, 肺気管支粘膜に上皮の腫大増生, 分泌活性, 粘膜の皺襲形成, 固有層の線維性増生, 円形細胞浸潤および気管支腔内への肉芽組織の侵入突出など, 慢性炎症が認められた. 粘膜病変は気道内に寄生するダニの認められる部位でより強調された.<BR>病巣から採取したダニは中気門類, ハナダニ科, <I>Sternostoma tracheacolum</I>と同定され, わが国での分布が初めて確認され, 和名をコトリハナダニと新称された.
著者
鳥山 香織 月舘 敏栄
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.16, no.32, pp.241-244, 2010-02-20 (Released:2010-02-19)
参考文献数
4

This study has conducted a questionnaire with field work in Aomori, Hirosaki and Hachinohe city to find out common space’s utilization and snow measures of public housing during winter.As a result, five follows: 1) Corridor is effective as the place to keep Snow processing tool and to put the plant. 2) Garbage box at common space of outside is to keep away snow by residents. 3) Snow removal place is necessary to put snow and snow shoveling tools. 4) The problems of snow for the senior resident is the physical fatigue to clear snow.
著者
岩見 憙道
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.188-198, 1980 (Released:2010-10-28)
参考文献数
42

口腔連鎖球菌の解糖反応の律速段階を明らかにするため, S. mutans PK1とS. sanguis NCTC10904株の休止菌のグルコース消費速度, 乳酸生成速度, 解糖中間体の菌体内濃度を測定した。これらの測定値から計算した質量作用比と平衡恒数を比較し, S. mutansではATP-グルコースホスホトランスフェラーゼ (AGPT), ピルベートキナーゼおよび乳酸脱水素酵素によって, S. sanguisではAGPTとピルベートキナーゼによって触媒される反応が律速段階であることが分かった。さらにこれら両菌で反応溶液のpHを変化したときの解糖中間体の菌体内濃度の変動から, 酸性pHで解糖速度が減少するのはAGPTにより触媒される反応の阻害のためであること, この阻害はS. mutmsよりもS. sanguisで強いこと, また, S. mutansでのフッ素添加による解糖速度の減少はAGPTとエノラーゼによって触媒される反応の阻害のためであることが考えられた。
著者
佐藤 靖之 浜本 正人 S. シュパイデル 岩田 聡 内山 晋
出版者
The Magnetics Society of Japan
雑誌
日本応用磁気学会誌 (ISSN:02850192)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.133-136, 1986

It is found that a large orthorhombic anisotropy is induced in (EuBi)<sub>3</sub>Fe<sub>5</sub>O<sub>12</sub> garnet films grown on (110) NdGG substrates. The Bi content is controlled by controlling the melt composition and the supercooling temperature. Gyorgy's parameter <i>B</i>=−2(<i>K</i><sub>u</sub>+<i>K</i><sub>p</sub>) increases linearly with the Bi content. The main part of <i>B</i> is found to be growth-induced. Gyorgy's parameter <i>A</i>=<i>K</i><sub>p</sub>−<i>K</i><sub>u</sub> is very small and almost independent of the Bi content. The growth- and stress-induced parts of <i>A</i> are found to be considerably large, but of opposite sign, and to compensate each other nearly completely, although their respective absolute values increase with increasing Bi content.<br>Magnetic properties of a (Eu<sub>1.8</sub> Bi<sub>1.2</sub>) Fe<sub>5</sub>O<sub>12</sub> film are obtained as follows: saturation magnetization 4π<i>M</i><sub>s</sub> = 1560 Gauss, uniaxial anisotropy <i>K</i><sub>u</sub> = 1.6 × 10<sup>5</sup>erg/cm<sup>3</sup>, in-plane anisotropy <i>K</i><sub>p</sub> = 1.6 × 10<sup>5</sup>erg/cm<sup>3</sup>, quality factor <i>Q</i> = 1.7, material length <i>l</i> = 0.06 μm and wall mobility μw = γ<i>Δ<sub>0</sub>/<i>α</i> = 19 ms<sup>-1</sup>. Such a film might be used as a 0.5 μm bubble material for current access devices.
著者
中村 三春
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.1-16, 1997-04-10 (Released:2017-08-01)

『定義』は冒頭に百科事典からの引用文を置きながらも、指示の不可測性、表意体(シニフィアン)の戯れ、反復表現による意味内容の無化などの領域に読者を引き込み、<定義>を不可能にしてしまうパロディである。しかし、それは単なるニヒリズムではない。『魂のいちばんおいしいところ』などを補助線とすれば、そこには言葉がメッセージ伝達の機能ではなく、コンタクト(接触)の回路を敷設することによって、人と人との間の繋がりを築くことの信念が読みとられる。
著者
佐川 英治
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

北魏の正史『魏書』は孝文帝の時代を北魏史の頂点とする歴史観で書かれている。しかし、本研究ではこの歴史像がある目的をもった一面的な歴史像であることを明らかにしてきた。本年度はこれを受けて北魏の建国から洛陽遷都までの百年間をその都であった平城に焦点を当て見直す研究をおこなった。すなわち、平城の北には、平城の規模をはるかに上回る広大な禁苑「鹿苑」が広がっていた。実はこの鹿苑は広大な放牧地であって、そこには無数の牛羊馬が放牧され、毎年春に陰山方面へ放牧に出かけ、秋に返る習慣があった。皇帝もしばしばこのルートにしたがって行幸し、春と秋には遊牧の祭祀をおこなった。当時、陰山は自然が豊かで多くの動物が暮らす場所であった。北魏は征服戦争で得た人民を平城周辺に移住させ、彼らに土地と耕牛を給する「計口受田」といわれる方法で国力を充実させていくが、それを可能としたのは陰山から毎年大量に供給される豊かな動物資源であった。ここに平城の地政学上の利点とそれまでの五胡十六国が持ち得なかった北魏の国力の源泉がある。しかし、やがて動物は減少し、皇帝は行幸や狩りをしなくなり、平城周辺では牛不足が深刻となる。これにしたがって鹿苑も放牧地から宴遊をおこなう中国的な禁苑へと姿を変えていった。『水経注』には孝文帝の時代、陰山から樹木が消えていたことが記されており、過放牧や森林の伐採がその原因と考えられる。この結果、孝文帝は平城を放棄し洛陽へ遷都するとともに、漢化政策をおこなって新しい権力基盤を求めざるを得なくなった。本研究では以上のことを明らかにすることで、孝文帝の漢化政策や洛陽遷都を北魏の発展の上に位置づける従来の見方に対して、環境の危機の上に位置づける新しい歴史像を提起した。また、洛陽遷都後の北魏史については造像銘を用いた研究の可能性に注目し、その成果を書評の形で示した。