著者
安田 喜憲
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.171-211, 1990-03-10

和辻哲郎によって先鞭がつけられた日本文化風土論は、第二次世界大戦の敗戦を契機として、挫折した。形成期から発展期へ至る道が、敗戦で頓挫した。しかし、和辻以来の伝統は、環境論を重視する戦後日本の地理学者の中に、細々としてではあるが受け継がれてきた。戦後四〇年、国際化時代の到来で、再び日本文化風土論は、地球時代の文明論を牽引する有力な文化論として注目を浴びはじめた。とりわけ東洋的自然観・生命観に立脚した風土論の展開が、この混迷した地球環境と文明の未来を救済するために、待望されている。
著者
渡邉 卓弥 塩治 榮太朗 秋山 満昭 笹岡 京斗 八木 毅 森 達哉
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.2, 2017-10-16

本研究はウェブサイトに訪問したユーザのソーシャルアカウントを特定するサイドチャネル攻撃を実証する.特定経路を構成するのは,様々なサービスに実装されているユーザブロック機能である.準備段階では,候補となるソーシャルアカウント群に対しブロックと非ブロックのマッピングを行う.実行段階では,訪問者にタイミング攻撃を仕掛けブロック状態を推定する.推定結果とマッピングを照合することで訪問者とアカウントを紐付けることができる.著名な16のサービスにおいて攻撃が成立することを検証し,100%近い精度で特定に成功した.本稿は,ウェブサービスのソーシャル性に起因する新たな問題を提起し,その原理と対策を論じる.
著者
辻 浩和
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.188-202, 2020-03-15
著者
菱沼 一憲
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.182, pp.147-164, 2014-01-31

上野国桐生下広沢村の彦部家の足利将軍家旧臣活動の分析を通じて、近世の身分制における由緒の機能を明らかにし、旧臣活動の背景にある社会運動を浮かび上がらせる。彦部家は同村の有力百姓で、村役人に任じられていた。しかし高階姓で、室町・戦国期には、足利将軍家の近習の武士として京都で活動し、戦国末期に同村へ土着したと伝える。戦国期、同地へ土着するに際し、戦国大名由良氏より広沢郷内に千疋を宛行われたという領主としての由緒、関ヶ原の合戦で旗絹・旗竿を献上したという桐生領五四ヶ村の由緒は、それぞれ村支配、絹織物産業を支える理論として機能した。いわゆる「家の由緒」「村の由緒」である。これに対して足利将軍家の旧臣として会津藩士坂本家と交流した活動は、その目的が必ずしも明確ではない。坂本家は足利義昭の曾孫で牢人であった義邵が、神道学・軍学・有職故実に通じて会津藩主保科正容に求められて同藩に仕官した。足利鑁阿寺がこの坂本家と、彦部家を仲介し旧臣関係が構築され、それにより御目見・御見舞・裃や感状の下賜・一字拝領といった恩賞給付がなされた。そもそも彦部家は、京都西陣から高度な織物の技術を導入し、また文芸の面では、江戸の国学者を桐生へ招き、また出府して中央の文化を吸収し、桐生国学を興隆させるなど、中央の文明・文化を積極的に導入・吸収することにより家の繁栄をもたらしてきたのである。坂本家との旧臣活動もまた、同家に蓄積されていた先進的で高度な文化に触れ、それに倣ってゆくことが一つの目的であったと考えられる。幕末期、彦部家は嫡子を幕臣とし、武家へ養子に入れており、同家が身分の上昇に執心していたことは明らかであるが、これを単に、幕藩体制での身分秩序を下支えするものと理解することは正しくない。武家による政治・経済・文化の一元的な独占体制への抵抗であり、独占されていたそれらを獲得してゆくという積極的な面を評価すべきである。こうした動向は、幕府支配体制の相対化という意味で、草莽運動と質的な共通性を見出すことができ、また彦部家のみならず東関東で広く確認される社会的動向といえる。
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.37-50, 2018-03-09

ジョン・マクダウェルは、『心と世界』において、我々人間の概念能力は「第二の自然」であり、法則の領域に属さない「独特の」ものでありながら、同時に自然的なものでもあるという議論を展開している。本論文では、過激なプラトン主義、簡素な自然主義、非法則的一元論という三つの立場との違いを整理することで、「第二の自然」がどのような主張であるかを明確にする。その上で、「第二の自然」をマクダウェルの静寂主義的な傾向の発露として理解できることを指摘する。さらに、物理主義の側に立って、マクダウェルからの批判に対する応答を試みる。
著者
秋山 広美 小松 孝徳 清河 幸子
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2011-HCI-142, no.23, pp.1-7, 2011-03-10

ユーザの発するオノマトペには 「何かを表現したいがうまく言語化して表現できないモヤモヤとした印象」 が込められていると言われている.すなわち,オノマトペを入力として扱えるシステムを開発することは,そのようなモヤモヤとした意図を直接的に扱えるため,ユーザの認知的な負担の軽減につながると考えられる.そこで,本研究ではこのようなシステムの構築に向けて,オノマトペの印象を客観的手法に基づき数値化する方法を提案することとした.具体的には,ユーザに対する質問し調査の結果をもとに,オノマトペを構成する音の印象を表現する属性の抽出と属性値の設定,およびその属性値を組み合わせることでオノマトペの印象を表現する方法を提案した.
著者
国文学研究資料館
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館春季通常展示 和書のさまざま ――書誌学入門――
巻号頁・発行日
pp.1-42, 2007-04-16

日本の文学・歴史・思想は、《本》という形で受け継がれて来た、といっても過言ではないでしょう。本書では、《和書》のさまざまな形態を体系的に紹介しながら、日本の古典籍がどのように読み伝えられて来たのかを紹介します。It is no exaggeration to say that the Japanese literature, history, thought have been inheritedin the form called "the book". While introducing various forms of "the book" systematically,how Japanese classical books have been handed down was referred in this book.
著者
和田 拓哉 福地 健太郎
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2017-EC-44, no.18, pp.1-8, 2017-05-25

ロールプレイングゲーム (RPG) における重要な要素として 「戦闘」 がある.RPG では各キャラクターの体力や攻撃力,敵キャラクターと与え合うダメージなどが数値で表現されており,プレイヤーがゲームを楽しみ攻略する上で重要な要素である.一般にプレイヤーキャラクターの成長に伴いこれらの数値は増大し,それがプレイヤーにとっての継続プレイの動機となっている.本研究では,この数値の大きさがプレイヤーにどのような影響を与えるかを調べるために,戦闘に特化した実験用ゲームを作成し実験を行った.その結果,数値が大きいほどプレイヤーはゲームをおもしろいと評価するという仮説は棄却されたものの,数値が大きい場合,ゲームそのものの難易度は変わっていないにも関わらず,プレイヤーはゲームの難易度を高く感じることが分かった.
著者
中島 俊介 楠 凡之
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要, 人間関係学科 = Journal of the Faculty of Humanities, Kitakyushu University.Human Relations (ISSN:13407023)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.13-29, 2008-03

本研究は,森田療法理論(森田 1960)に基づいて大学生における「健康な自己愛」を検討するための新たな尺度を作成することを目的とした。研究1では健康な自己愛の状態を測定するための尺度項目を検討した。その際には、現在の自己愛理論の「2種類の自己愛」の枠組み(中山ら 2006)を参照しながら,これに自己愛の健康性を示す視点として森田療法理論の「自己へのとらわれ(我執)」(北西 2001)の知見を加えて新しい視点からの自己愛尺度の作成を試みた。これを大学生217名に施行し,因子分析を行ったところ,3つの下位概念に対応する3因子が得られた。研究2では大学生150名を対象として,今回作成した自己愛尺度の信頼性と妥当性を検討した。アルファ係数,再検査信頼性係数などの結果から高い信頼性が確認された。また,NPI(自己愛人格目録)・シャイネス尺度・自尊心尺度などの関連から妥当性が確認された。以上の結果から、本邦大学生の「健康な自己愛」を検討していくための新しい尺度の信頼性と妥当性が確認されたと考えられる。
著者
富田 美智江
雑誌
流経法學 = Journal of the Faculty of Law, Ryutsu Keizai University
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-22, 2017-09-10
著者
堀山 貴史
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.418-426, 2012-03-15

「任意の凸多面体は,辺を切り開くことで,その面が重ならないように展開することができるだろうか?」これは,計算幾何学の未解決問題の1つである.より正確に言い換えると,「任意の凸多面体は,単純で自己交差のない多角形に辺展開することができるだろうか?」という問いである.展開図と言うと,小学校の算数の時間に,立方体や直方体の箱をチョキチョキと切り開いたのを思い出される方が多いだろう.本稿では,その頃には出てこなかった「単純」や「自己交差」,「辺展開」といった見慣れないキーワードの解説から始め,上記の未解決問題へのアプローチと関連研究について述べる.