著者
塩崎 大輔 橋本 雄一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>1</b><b>.研究目的</b><b></b> <br>日本の積雪寒冷地における代表的な地域開発としてスキーリゾート開発があげられるが、バブル期以降のスキー観光の停滞、衰退が著しいことが指摘されている(呉羽,2009)。こうした状況の中、北海道ニセコ地域では外国人観光客の取り込みを図り、特に北海道ニセコひらふ地区においては外国人向けコンドミニアムの建築など開発が盛んな地域として注目され、小澤ほか(2011)や呉羽(2014)など多くの知見が得られてきた。しかし、これまでのニセコ地域を対象とする研究では、特に開発が盛んであるひらふ地区に着目した研究が多く、ニセコ地域全体の開発に関する蓄積は少ない。そこで本研究は建築計画概要書データを用いてニセコ地域における開発の変化を明らかにすることを目的とする。 <br> <b>2</b><b>.研究方法及び資料</b><b></b> <br>本研究の対象地域は北海道虻田郡倶知安町及びニセコ町である。本研究を行うにあたって、倶知安町及びニセコ町の建築確認申請概要書に記載されている新規建築計画680件の建築確認申請概要書をデータベース化する。このデータベースを用いて新規建築の件数及び面積から開発行動の経年変化を分析し、ニセコ地域全域の開発の実態を明らかにする。次にニセコ地域における新規建築の分布変化をみることにより、ニセコ地域における開発の動向を分析する。最後にこれらの分析結果を総合し、本研究は積雪寒冷地におけるリゾート地域における開発の時系列変化を考察する。 <br> <b>3</b><b>.研究結果</b><b></b> <br>(1)ニセコ地域の新規建築の件数及び面積の時系列変化をみることにより、地方地域の開発行動が景気の影響を受けて変化していることが明らかとなった。2006年以降、ニセコ地域全域の新規建築確認申請件数は119件から174件まで増加した。しかし2009年には107件と2006年の件数を下回った。これはリーマンショック後の世界的な金融危機の影響が表れていると考えられる。 <br>(2)2006年から2010年までのニセコ地域の新規建築物の分布変化をみると、2006年には倶知安町ひらふ地区に開発が集中しており、2008年には樺山地区が新たに開発されるなど開発エリアの拡大がみられた(図1)。また2009年にニセコ町字曽我に大規模な開発計画が存在したが、未だ着工はされていない。ニセコ町アンヌプリスキー場周辺では温泉資源が有効活用されており、より高付加価値を求めた企業がニセコ町において開発計画を立てたが、景気の悪化に伴い計画が中断したと考えられる。 <br>(3)新規建築の建築主に着目してみると、日本以外では特にオーストラリアと中国香港の建築主が多く、そのほとんどがひらふ地区で開発を行うという動向が明らかとなった。またひらふ地区では企業と個人の双方が開発を進めていたが、樺山地区やニセコ町では企業による開発が目立った。これはヒラフ地区がすでに開発され土地も細分化されており、企業がより大きい開発地の一括取得を目指した結果であると考えられる。
著者
呉羽 正昭
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100065, 2017 (Released:2017-10-26)

日本では,1990年代初頭までバブル期にスキー観光が著しく発展した。その時期,さらには高度経済成長期前後にも多くのスキー場開発がなされたが,1995年前後以降はスキー観光自体が著しく衰退している。その結果,スキー場や宿泊施設など,スキーリゾートの諸施設の経営は大きく悪化した。それゆえ,スキー場索道経営会社の変更が頻繁に生じたり,スキー場自体が休業や閉鎖に追い込まれる事例が多く発生している(呉羽 2017)。 こうした日本におけるスキーリゾート問題解決の救世主となったのは外国人スキーヤーの訪問である。スキーをめぐるインバウンド・ツーリズム発展の契機は,2000年前後に生じたニセコ地域でのオーストラリア人スキーヤーの増加である。その増加要因には雪質の良さや「9.11」以降の北米スキーリゾート滞在離れがあると言われている。その後,山形蔵王,妙高赤倉,野沢温泉,八方尾根などのスキーリゾートにもこの現象が派生した。宿泊施設の経営不振・廃業などが続いていたスキーリゾートでは,インバウンド・ツーリズムの発展にともなってさまざまな変化が生じている。本研究では,インバウンド・クラスターとしてのスキーリゾートにおける諸変化について複数事例の比較分析を通じて明確にする。さらには,インバウンド・ツーリズム発展による問題点について整理する。付記:本研究はJSPS科研費15H03274の助成を受けたものである。 文献 呉羽正昭 2017.『スキーリゾートの発展プロセス:日本とオーストリアの比較研究』二宮書店.
著者
山本 欣司
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.101, pp.1-9, 2009-03

宮本輝「泥の河」はこれまで、板倉信雄と松本喜一の出会いから別れまでを描いたものであり、信雄が身近に経験し、父親から聞かされもした死の問題や、「舟の家」の人々との交わりの中で目覚めた信雄の性と成長の問題がテーマの主軸をなすと捉えられてきた。しかし拙稿では、小説の構造を丹念にふまえ、そのような解釈の問題点を指摘するとともに、自分なりの把握を示した。さらに拙稿では、小栗康平監督による映画「泥の河」が、どのようにして貧しさを背景とする子ども達の短い交流を主題化したかを論じた。
著者
北城 圭一 山本 義春 宮下 充正
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
BME (ISSN:09137556)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.40-48, 1998-07-10 (Released:2011-09-21)
参考文献数
36
被引用文献数
1
著者
小岩井 馨 武見 ゆかり 林 芙美 緒方 裕光 坂口 景子 嶋田 雅子 川畑 輝子 野藤 悠 中村 正和
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-28, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
51
被引用文献数
1

目的:効果的な減塩対策のためには食塩摂取源を把握する必要がある.食塩摂取源を食品群で把握するだけでなく,家庭内・家庭外由来かを特定し,さらに疾病の指摘の有無別に食塩摂取源の特徴を検討することとした.方法:平成29年神奈川県真鶴町の特定健診受診者を対象とした横断研究を行った.3日間の食事調査により出現した食品や料理を食品群別・加工度別に分類後,家庭内・家庭外(菓子・嗜好飲料・中食,外食)に整理した.その後,食事記録日数の不足者等を除外した213名を対象に,3日間の平均食塩摂取量に占める各々の食塩摂取量の割合(以下,「食塩摂取割合」)を算出した.さらに,循環器疾患の指摘または降圧剤の使用有無別(以下,「循環器疾患の有無別」)に食塩摂取割合を比較した.結果:食品群別の食塩摂取割合が最も高い食品は,男女とも調味料(約60%)であり,このうち,約75%が家庭内,約25%が家庭外であった.循環器疾患の有無別では,中食からの食塩摂取割合は男性の有り群は26.8%と,無し群14.3%に比べ,有意に高かった(p=0.029).結論:地域在住特定健診受診者では,家庭で使用する際の調味料からの食塩摂取割合が高いこと,男性の循環器疾患有りの者は中食の食塩摂取割合が高いことが示された.減塩対策を検討する上で,家庭内・家庭外の視点を取り入れること,男性では中食への減塩対策も必要であることが示唆された.
著者
明陳仁錫纂輯
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
vol.[9], 1000
著者
ジグラー ポール Paul Ziegler
雑誌
国際経営・文化研究 = Cross-cultural business and cultural studies (ISSN:13431412)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.71-84, 2005-11-01

The internationally renowned German architect, Bruno Taut, is known in Europe a an architect of immense genius who, due to Nazi persecution of left-wing thinkers, was forced to seek exile in Japan. What is not known in Europe is that Taut wrote a significant amount of work on Japanese Culture. The focus of this paper focuses on the contradictions between Taut's reputation as a left-wing architect in Europe and his active support in Japan for a most oppressive form of culture.
著者
斉藤 哲也 楊 迪寧 星野 准一
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.1-6, 2011-05-06

本稿では,公共空間の活性化のために,ゲーム世界と実世界のコミュニケーションを相互に楽しむパブリックオンラインゲームシステムを提案する.オンライン上でゲーム参加者の活動により変化し続けるゲーム世界の風景を,大型ディスプレイを通して公共空間に提示する.公共空間では,オンライン上の変化を多くの人が俯瞰的に観察・鑑賞でき,またゲーム参加者自身へも公共空間での観察活動の参加を促す.本システムの設置と運用により,多くの人が自然に公共空間に訪れ,楽しい時間を過ごせると期待できる.提案システムを制作し,実際にユーザに体験してもらい,評価実験を行うことで,本システムの有効性を示す.In this paper, we propose the public online gaming system to enjoy a communication in the game world and the real world mutually for the better public space. The main system shows the scenery of the game world which the activity of the online gaming participant changes through the large-sized display in the public space. A lot of persons can appreciate a bird's-eye view of the system and also it prompts game participant himself, too, to participate in the observation activity in the public space. We think that a lot of persons come naturally to the public space and can spend delightful time by the establishment and the operation of the main system. We create a proposed system, do an evaluation experiment after having a user experience the system actually and show the validity of this system.
著者
鈴木 隆泰
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.1147-1155, 2017

<p>『法華経』の「常不軽菩薩品」に登場する常不軽という名の出家菩薩は,増上慢の四衆にひたすら成仏の授記をし続け,そのことで彼らから誹謗,迫害を受けた.増上慢の四衆は常不軽を誹謗・迫害した罪で死後無間地獄に堕ちたが,自ら罪を畢え已わった後に常不軽と再会し,彼から『法華経』を教示され(=成仏の授記を受け),無上菩提へ向かう者となったとされる.ところが羅什訳の『妙法華』のみ,死時に臨んで常不軽が「其の罪,畢え已わって」(其罪畢已)としている.しかし,なぜ彼に罪があるのか,あるとすれば何の罪なのかが解明されないまま,今日に至っていた.</p><p>従来看過されていた事実として,Suzuki Takayasuは「常不軽菩薩品」に二種類の誹謗者が表されていることを明らかにした.二種類とは "『法華経』に出会う前の,『法華経』という仏語なしに無効な授記をしていた常不軽"(常不軽 ①)を誹謗した者たち(誹謗者 ①)と,"『法華経』に出会った後の,『法華経』という仏語をもって有効な授記をしていた常不軽"(常不軽 ②)を誹謗した者たち(誹謗者 ②)であり,後者の誹謗者 ② のみが,『法華経』説示者を誹謗した罪で堕地獄する.ところが『妙法華』のみ,常不軽 ② が『法華経』を説示していたという記述を欠いており,常不軽 ①と常不軽 ② との差違が判別しがたくなっている.</p><p>『法華経』の主張(『法華経』抜きに如来滅後に一切皆成の授記はできない.だからこそ,如来滅後にはこの『法華経』を説いて如来の名代として授記をせよ.如来のハタラキを肩代わりせよ)から判断して,常不軽 ① と常不軽 ② の差違は『法華経』にとって本質的であり,原典レベルで「其罪畢已」に相当する記述があったとは考えられない.羅什の参照した「亀茲(クチャ)の文」が特殊であったため,常不軽 ① と常不軽 ② との差違が判別しがたく,誹謗者 ① と誹謗者 ② を分ける必要が,漢訳段階で生じたものと考えるのが妥当である.しかし,そのために「其罪畢已」という文章を編み出したのは,羅什が『妙法華』訳出以前に『金剛般若経』を知っていたためと考えられる.</p><p>この「其罪畢已」という一節が,日本の日蓮に絶大な影響を与えた.日蓮宗の開祖である日蓮は,以前に念仏者・真言者であったため,「其罪畢已」の「罪」を過去の謗法罪と理解した上で,自らを常不軽と重ね合わせ,〈法華経の行者〉としての自覚を確立し,深めていった.</p><p>もし『妙法華』に「其罪畢已」の一節がなかったとしたら,日蓮は〈法華経の行者〉としての自覚を確立できず,その結果,『法華経』に向き合う姿勢を変えた可能性が高い.あるいは『法華経』信仰を捨てていた可能性まで考えられる.『開目抄』に見られる,「なぜ自分には諸天善神の加護がないのか」「自分は〈法華経の行者〉ではないのか」の解答の源は,「其罪畢已」以外には見出せないからである.</p><p>もし『妙法華』に「其罪畢已」の一節がなかったとしたら,中世以降今日に至る日本仏教は,現在とは大きく違った姿をしていたであろう.まさに,「大乗経典が外的世界を創出」(下田正弘)した好例である.『妙法華』に存するたった一個のフレーズ「其罪畢已」が,今日の日本の宗教界のみならず,社会の一側面を創出したのである.</p>
著者
内田 昭宏 中本 幸一 佐藤 直樹 大鷹 正之 泉 正
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第39回, no.ソフトウェア, pp.1239-1240, 1989-10-16

CTRONは交換処理・情報処理・通信処理・ワークステーション等広い分野で共通に使用できるOSである。ソフトウェア流通性を促進するため, CTRONは基本OSと拡張OSの二階層による構成となっている。CTRONカーネルの機能は表1に示すようなサブセット単位に分割される。筆者らは,NECのオリジナル32ビットマイクロプロセッサV70/V80上に, C+Mサブセット機能を持つCTRONカーネルを実現した。本稿ではV70/V80CTRONの概要を紹介し、アーキテクチャ独立性を高め, UNIX上でも動作可能とした実現方式について述べる。
著者
石田 和久 中尾 承司 佐多 照正 岩下 佳敬 本田 香奈恵 山下 カオリ 黒木 久知 田辺 元 山崎 芳人 上田 勝
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.259-262, 2002-06-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

In order to examine the fungistatic action of TPN fluids against Candida abicans, which was clinically isolated and chosen as a model fungus because of its high risk of infection, we attempted to compare the TPN products commonly used at our hospital. Furthermore, we also investigated the effects of pH and sodium bisulfite (NaHSO3) on this action. Under the respective conditions of a lower pH or higher concentration of NaHSO3, the fungistatic action was weakly recognized, however, under the both conditions (lower pH and higher concentration of NaHSO3), a remarkable fungistatic action was observed.