著者
荒又 美陽
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 = Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
巻号頁・発行日
no.69, 2006-03-10
参考文献数
2

1.はじめに<BR> 街区を保存すべきか、作り変えるべきかという判断は、既存の建造物の状態や固有の歴史性にしたがってなされているように見える。しかし、実際には、それは時代や社会情勢を反映しており、決して中立のものではない。同じ街区が、数年間のうちに、保存の対象となったかと思えば取り壊されることもある。<BR> パリのマレ地区は、1964年に歴史的街区として保護・修復の対象となった。根拠法である通称「マルロー法」(1962年成立)の審議の段階で、マレはすでに対象とみなされており、その歴史的価値が相当に認知されていたことを見て取ることができる。ところが、戦前には、マレ地区の南部は「不衛生街区」として取り壊しの対象となっていた。この転換の背後には何があったのだろうか。本報告では、パリ四区の住民を中心とする歴史協会が、現在のマレ地区にほぼ一致する領域を対象に研究し、1902年から39年まで発行していた『ラ・シテ』という機関誌を取り上げる。分析によって、地区の二つの表象が明らかになってくる。ここでは、それらと政策の関連について考察する。<BR>2.取り壊しに対抗する歴史<BR> フランスの都市計画は、19世紀中盤以降、入り組んだ街区を取り壊し、広い街路と設備の整った建造物を建設する方向で進められてきた。マレ地区の整備は遅れていたが、20世紀の初頭には、少しずつ取り壊しと再建が実施された。第四区の歴史協会は、地区の建造物やモニュメントについて、たくさんの研究を行った。詳しく見ていくと、それらは必ずしも美的・歴史的価値が見出されるにつれて増えたというわけではない。1902年の最初の論文から、対象となっているのは破壊されつつある建造物であった。また、歴史上重要な人物が地区でどのように生活していたかについても報告され、具体的な場に当てはめられた。『ラ・シテ』の歴史研究は、具体的な建造物や通りと関連させることによって地区の取り壊しに抗していたのである。<BR>3.排除すべき現状<BR> 他方、同じ『ラ・シテ』において、東方ユダヤ移民が批判すべき対象として現れていた。19世紀末から、ポーランドやロシアの弾圧を逃れて多くのユダヤ人がマレに住んでいたが、『ラ・シテ』では、言葉も通じず、好んで不衛生な状態にいる不可解な存在として描かれていた。行政に「不衛生街区」と指定されたマレ南部については、統計上移民が多いこととともに、19世紀のはじめにコレラの死者が多かったことも報告された。こうして、『ラ・シテ』では、街区の取り壊しにも理由を与える表象を提供していた。<BR>4.破壊から保存へ<BR> マレ南部の不衛生街区は、ヴィシー期に集中的な開発の対象となった。当初は取り壊しを目的としていたが、1942年に街区の歴史性を重視する方針に転換した。同じ時期にユダヤ人が強制移送の対象となり、地区の表象として歴史性のみが残っていたことと無関係とはいえない。戦後、不衛生街区事業を担当していた建築家がマレ地区保存のための調査にあたった。『ラ・シテ』に見られた保存と排除の思想は、60年代に引き継がれていくのである。<BR><BR>主要参考文献<BR>Fijalkow, Y. 1998. La Construction des &icirc;lots insalubres. Paris 1850-1945. L'Harmattan<BR>Gady, A. 1993. L'&Icirc;lot insalubre No 16: un exemple d'urbanisme arch&eacute;ologique. Paris et Ile de France m&eacute;moires publi&eacute;s par la f&eacute;d&eacute;ration des soci&eacute;t&eacute;s historiques et arch&eacute;ologiques de Paris et de l'Ile de France. Tome 44: 207-29

1 0 0 0 OA 日記

出版者
巻号頁・発行日
vol.[11] 東禅寺 一,
出版者
巻号頁・発行日
vol.[85] 六十五 文政七申年 二冊ノ内下 分冊ノ一,
著者
大浦圭一郎 間瀬 絢美 山田 知彦 徳田 恵一 後藤 真孝
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2010-MUS-86, no.1, pp.1-8, 2010-07-21

近年,コンピュータによる歌声合成が注目を集めている.中でも隠れマルコフモデル(hidden Markov model; HMM)に基づく歌声合成では,歌い手の特徴を歌声データと対応する楽譜から自動的に学習することができる.2009年12月,無料のオンラインサービス「HMM歌声合成システム: Sinsy」を開始した.ユーザーは楽譜をウェブサイトにアップロードすることで,任意の楽譜に対応した歌声を合成することができる.但し,Sinsyの歌声モデルには70曲で学習した特定話者モデルを用いており,新しい歌い手の歌声モデル追加の際の収録コストが高くなる問題があった.本稿ではSinsyのシステム構成について述べるとともに,話者適応手法により少量のデータから所望の歌い手の特徴を再現した歌声を合成することを検討する.
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス = Nikkei electronics : sources of innovation (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1199, pp.74-81, 2019-01

日経 xTECHは米Magic Leap(マジックリープ)のMR(Mixed Reality)用ヘッドマウントディスプレー「Magic Leap One」を分解した。同製品の特徴は、着用者の目の状態に応じて映像の表示を変えて自然に見せる光学技術を、世界で初めて搭載したこと。

1 0 0 0 OA 十役之抄 19巻

著者
有沢武貞
出版者
巻号頁・発行日
vol.[4],
著者
中山 剛 陳 慎静 山脇 彰 穆 盛林
出版者
一般社団法人 産業応用工学会
雑誌
産業応用工学会全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.16-17, 2013

現在タブレット,スマートフォン,携帯ゲーム機,銀行のATM,切符販売機などのタッチパネルを搭載した機器が普及している。しかし,これらの機器の操作や情報伝達は主に視覚に頼っており,眼の疲労などの問題を生むほか,視覚障害者や高齢者などはタッチパネルが使用しづらいなどの問題がある。そこで視覚以外で人間と機械の間の新たな入力デバイスまたは新たな情報提示装置として触覚が近年注目されている。本研究では、ソレノイドを用いたタッチパネル型触覚呈示装置を提案する。その結果従来のキーパッドより使いやすいというアンケート結果が出た。硬さの違いの表現が滑らかでなかったり、PWM制御周波数が高いと実験装置から不快音がでたりとまだまだ改良する点があるが、触覚を呈示可能な触覚呈示装置を実現できたと考えられる。
著者
神﨑 美玲 禾 紀子 青島 正浩 戸倉 新樹
出版者
金原出版
雑誌
皮膚科の臨床 (ISSN:00181404)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1800-1804, 2018-10-01

38歳,男性,ゴルフ指導員。初診前年の秋より,食事や運動時に,背部にチクチクとした痛みがあった。初夏には発汗低下,うつ熱のため屋外での仕事に支障をきたし,8月には熱中症に至った。コリン性蕁麻疹の合併はなく,温熱発汗試験で広範囲な無汗,発汗低下がみられた。薬物性発汗試験は陰性であった。病理組織学的に汗腺組織の形態学的異常はなく,炎症細胞はわずかであった。無汗部の汗腺上皮では,アセチルコリン受容体の発現が低下していた。無汗をきたす基礎疾患や自律神経異常はなく,特発性後天性全身性無汗症と診断した。ステロイドパルス療法が奏効し,3クールで発汗が回復した。本症はまれな疾患であるが,早期に診断・治療すべきである。
著者
松崎 稔晃 益川 眞一 河津 隆三 原 賢治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P2384, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】 骨粗鬆症による脊柱変形や加齢に伴う椎間板の変性など原因は多様であるが、よく観察される高齢者の異常姿勢のひとつに円背がある.この円背は呼吸機能低下や嚥下の際の過剰努力など多種多様な影響を全身に及ぼすが、その中で今回は脊柱のアライメントと下肢の運動連鎖に着目し、円背と下肢の筋力バランスの関連性を検証することにした.これにより日々行っている理学療法プログラムやホームエクササイズ指導を再考し、今後起こりうる変形性膝関節症などの二次的な疾患の予防等にも役立つのではないかと考えた.【対象・方法】 既往に中枢疾患がなく下肢関節に不定愁訴のない円背を呈している患者20名(平均年齢82.2±7.5歳、以下 円背有り群)、円背を呈していない患者20名(平均年齢76.3±6.2歳、以下 円背無し群)を対象とした.ここで、円背については明確な定義がないので、今回は体幹伸展可動域0度以下の患者を対象とした.測定方法はOG技研製徒手筋力センサーGT-310を用い膝関節屈曲・伸展筋力、足関節底屈・背屈筋力を両側下肢について測定した.測定値については3回測定し、その最大値を測定データとした.膝関節伸展筋力最大値/膝関節屈曲筋力最大値(以下 膝関節筋力比)、足関節背屈最大値/足関節底屈最大値(以下 足関節筋力比)のデータに関してMann-Whitney U検定にて円背有り群、円背無し群間での有意性を比較検討した.【結果】 統計処理の結果、両側下肢の膝関節筋力比において円背有り群、円背無し群間で有意差を認めた(P<0.01).すなわち両側下肢ともに円背有り群は円背無し群と比較して膝関節筋力比が高値を示した.一方、両側下肢の足関節筋力比において円背有り群、円背無し群間で優位な差は認めなかった.【考察】 後藤によると、電気生理学的研究において円背症例では股関節・膝関節の屈筋群と伸筋群はともに正常姿勢例と比較するとより過剰な筋活動を要求されるが、その中でも大腿前面筋により大きな筋活動を要求されたと報告している.また、運動学的観点から考えてみると、円背に伴う脊柱後彎・骨盤後傾により、股関節は屈曲、膝関節は屈曲・内反・内旋位を呈する.これにより股関節の伸展モーメントを生み出すことができず、膝関節では伸展のモーメントの必要性を余儀なくされ、過剰な負担を担う.これらの電気生理学的・運動学的側面から考え、円背症例では、ハムストリングスよりも大腿四頭筋により大きな筋活動が要求され、このことが膝関節筋力比が高値を示したという結果になったのではないかと推測した.【まとめ】 現在の円背症例に対する運動療法は、体幹の可動域訓練、腹筋群・背筋群の筋力増強訓練とともに大腿四頭筋の筋力増強訓練を推奨している教科書や文献が多い.しかし今回の結果からこれまで行われてきた運動療法の中に膝関節屈筋群の筋力増強訓練の必要性も示唆された.
著者
本郷 隆治 小倉 明夫 井上 博志 林 浩二 石黒 秋弘
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.573-580, 2001-05-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8

In recent years, as gradient magnetic resonance imaging (MRI)systems have become larger and faster, the influence of low-frequency alternating magnetic fields on the human body during rapid scanning have become significant in terms of patient health. It has become more important to monitor time-variant magnetic fields (dB/dt). From this point of view, we measured the maximum dB/dt for clinical scanning using a self-made search coil and storage oscilloscope that conformed to international standard IEC 60601-2-33(1995). The results were almost the same as the calculated values. In this brief report, we introduce to clinical operators the method of measuring maximum dB/dt.
出版者
巻号頁・発行日
vol.[4],
著者
三村 將
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.157-163, 2011-06-30 (Released:2012-07-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 4

高次脳機能障害をもつ者は運転に関して,認知症のような絶対的欠格事由ではない。しかし,認知機能のどの領域がどの程度保たれていれば運転適性とみなされるかの基準があいまいである。高次脳機能障害者の運転能力を評価する方法としては,実車による路上評価,運転シミュレータ等によるオフロード評価,机上の神経心理学的検査,家族等同乗者による評価が挙げられる。このうち,一応のゴールドスタンダードとみなされるのは実車による路上運転評価であり,今後,医療機関と自動車教習所などとの連携により,高次脳機能障害者の路上運転評価を系統的に進めていくシステム作りが急務である。本稿では,我々が行っている高次脳機能障害者の運転評価の状況について,症例をあげて概説した。高次脳機能障害者の自動車運転については,さまざまな分野の専門家がそれぞれの立場から意見を出し合い,最良の方策を検討していくべき問題である。

1 0 0 0 OA 年録

出版者
巻号頁・発行日
vol.[169],

1 0 0 0 OA 一般演題 要旨

出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.Suppl, pp.149a-272a, 2018-02-20 (Released:2019-02-20)
著者
村田 晃 辻正 信 添田 栄一 猿野 琳次郎 桜井 稔三
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.35-44, 1972

<i>L. casei</i>のJ1ファージの増殖機構究明の一手段として,宿主菌のDNA合成を特異的に阻害するマイトマイシンCを阻害剤として用い,この阻害剤のファージ増殖阻害の機作について研究した.まず,マイトマイシンCが, J1ファージの増殖を阻害することを確認した.マイトマイシンCは,遊離ファージを不活性化せず,吸着, DNA注入も阻害しなかった.一方,マイトマイシンC存在下で,ファージDNAの複製, serum-blocking powerを有するファージタンパク質,ファージエンドリジンの合成はみられなかった.放射線生物学的研究,およびマイトマイシンC・パルス実験は,初期の増殖段階がマイトマイシンCにより阻害されることを示した.<br>以上およびその他の実験結果,ならびにマイトマイシンCの一般知見とから,マイトマイシンCのJ1ファージ増殖阻害の機作は,菌細胞内に注入されたファージDNAが,マイトマイシンCの作用を被り,分子内にクロスリンクを形成することに基づくもので,このために子ファージDNA複製のプライマーとしての活性を喪失し,ファージDNAの複製がブロックされるためと考えられた.<br>なお,比較的低濃度のマイトマイシンCを<i>L. casei</i>S-1菌株に作用させると,処理一定時間後に溶菌が誘起されることが示された.電子顕微鏡観察は,溶菌液中にファージ粒子の存在することを示した.さらに,この粒子の感染性も,プラークを形成する感受性菌株を見い出し証明した.これらの結果は, L. casei S-1菌株は溶原菌であることを示し,また溶菌誘起はファージの増殖が,マイトマイシンCによって誘発されたためであることを示した.