著者
藤波 潔 MAINA James 松井 邦人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.781, pp.171-179, 2005

トラックやトレイラーのような大型車が左折するとき, 舗装表面では鉛直方向の荷重だけでなくすえ切り荷重のようなトルクが作用することが知られている. しかし, トルクによる多層構造物の応答解析の類例は皆無に近い. 本研究では, 多層弾性構造の表面にトルクが生じるような円形分布のせん断応力の作用に対する理論解を誘導している. すでに求めた鉛直方向の分布荷重作用時の理論解とこの理論解を組み合わせることにより, すえ切り荷重作用時の舗装に発生する応力, ひずみ等を予測することが可能となる.
著者
兼重 賢太郎
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.68-81, 1992-02-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
54
被引用文献数
3 1
著者
沖 慶子
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.65-91, 2003-04-28 (Released:2017-04-15)
参考文献数
83

アカデミー地理学成立以前の近代日本地理学史における代表的な地理書のひとつとされている牧口常三郎著『人生地理学』(1903年初年版)は,のちのアカデミー地理学の形成者からは同時代において低く評価されたとみなされている。この要因のひとつに,小川琢治が『地学雑誌』に発表した書評(1904)の内容が挙げられる。本書の同時代評に言及した従来の論考においては,この小川(1904)と伊藤銀月(1903)のみをとりあげたものが大半であった。本書の同時代評を精確に把握するために,本書の重版状況,本書を書評・紹介した刊行物とその記述内容,本書の中国語版の発行状況について検討をおこなったところ,次のことが明らかになった。すなわち,重版ペースの速さ,本書の書評・紹介をおこなった刊行物の数の多さとそれらの多様な属性,複数の刊行物から一様に高く評価された点があること,そして本書の中国語版といえる書が複数存在することなどが明らかになり,本書がきわめて幅広い分野から高く評価されていたことが示された。また,記録に残された文書を読む限りにおいてはのちのアカデミー地理学の形成者はそれほど評価していないが,一般読書界において高い評価がおこなわれたゆえに,彼らが一般読書界における評価とは一線を画し,表立って評価をおこなうことを避けた可能性が示唆された。
著者
村田 啓介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.367-386, 1995-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
60
被引用文献数
1 2

山形県の郵便局において実施されている「サクランボ小包」事業という,通信販売方式によるサクランボの産地直送事業は,販売業者と郵便局とが業務提携をして事業を遂行するという形態で,1985年の開始以降,一定の成長を示している. 1992年まで「サクランボ小包」事業にはさまざまな販売業者が参入しているが,そこにはサクランボの主産地において,郵便局とりわけ特定郵便局からの働きかけによって早い時期に参入した販売業者が,熱心な担当者との相互協力のもとでその事業規模を拡大させていき,それが主として郵便局という1つのネットワークを通じて技術や手法が伝播し,後に他の産地や非産地のさまざまな販売業者の参入を促したという経過がみられる.また,事業規模を拡大させている販売業者の展開過程の共通点として,第1に販売業者の事業を拡大させようとする意欲,第2に郵便局の担当者が,自ら働きかけて販売業者の参入を促したという点に対するある種の責任感,第3に地元の事情に詳しく,かつ地元の発展を願う特定局の局長という立場からのこの事業への思い入れ,といった点が指摘できる.この事例をとおして,通信販売方式による産地直送事業は小口貨物輸送業の輸送システムを活用することによって成立する事業であり,またその事業の盛衰は,中心的な役割を担う人材の実践力によるところが大きいということが指摘できる.
著者
中井 博之 稲葉 雅幸 井上 博允
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2003, 2003

ロボットが全身行動を生成する場合には, 外界との接触条件を考え, 複数の拘束条件を考慮した上でパスプランニングを行わねばならない。今回, RRT-Connect Plannerとピンドラッグ方式によるロボットの動作生成法を組み合わせて, その全身行動をプランニングする方法を開発した。そこで, 小型ヒューマノイドロボットの階段昇段動作を例に挙げて, その実装について述べる。

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著者
小杉榲邨 編
出版者
小杉榲邨
巻号頁・発行日
vol.[2], 1900
著者
堤 雅雄
出版者
島根大学教育学部
雑誌
島根大学教育学部紀要 人文・社会科学 (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-6, 1998-12

人間の心理が単純に割り切れるものでなく,時に相矛盾する精神力動を併せ持つことがあるのは,我々の日常経験,とりわけ対人関係を振り返れば自明であろう。人が孤独を恐れ,他者を求めるのはごく自然な心情であるが,その一方でなぜか他者を避け,引きこもろうともする(堤,1995)。かつてショーペンハウアー(1973)が「山あらしジレンマ」として描いた接近・回避葛藤はその典型であり,人が同一の対象に対して肯定,否定の両価的感情を有することがあるとの認識は,広く臨床に携わる者にとっての要諦でもある。 他者に対する両価性(ambivalence)は次の3つの位相において成立可能である。まず,自己に対する我の両価性。自己に対する嫌悪と自己愛の併存は境界例をもちだすまでもなく,特に青年期では一般的,かつ顕著である(Beebe,1988)。次に親密な他者(汝)に対する両価性。愛する者に対する愛と憎しみの二重の感情は永遠の文学的テーマである。そして他者一般(彼ら)に対する両価性。初対面の他者との出会いや,公的な場面での自己提示などでは,多くの人が緊張や羞恥を経験するが,そこにも他者に対する両価的感情が内在する(Asendorpf,1989)。 近年,ボールビィに端を発する愛着理論において,密接な関係にある他者に対する愛と憎しみの両価的愛着タイプは,乳児期の母子関係から成人期の異性関係に至るまで,生涯を通して普遍であるという議論が盛んである(Bowlby,1973,1977,Bretherton,1985,Simpson,Rholes&Phillips,1996)。 現代の若者たちの,おとなから見れぱ一見不可解な対人行動のスタイルに対しても,その基底に他者に対する接近−回避葛藤を見る視点からの議論がある。一時期新聞紙上で「ふれあい恐怖症」なる語題が喧伝されたのもその一例である。ふれあい恐怖症とは,授業やクラブ活動などの浅い付き合いは無難にこなすものの,その後の雑談や会食などの深い付き合いになると不安感が高まり,逃げ出してしまうというものである(朝日新聞,1989)。 彼らの行動の根底に,果たしてそのような相反する志向性が実際に存在するのだろうか。残念ながらこれに関する実証的検証は意外に少ない。例えば最近の対人不安心性に関する国内の幾つかの研究論文(堀井・卯月・小川,1994,堀井・小川,1995,岡田・永井,1990,内田,1995)でも,他者に対する両価性についての言及には乏しい。 本研究では大学生を対象に,人と人とのふれあいに対する肯定,否定の二重の志向性の存在を検証するとともに,いまだおとなになれない後期青年期の,他者に対する微妙で複雑な心理の分析を試みる。