著者
平塚 聖一 澤田 敏雄 長谷川 薫
出版者
静岡県水産試験場
巻号頁・発行日
no.35, pp.23-27, 2000 (Released:2011-03-05)

1991年から1996年までの6年間に、静岡水試の調査船が近海、東沖及び南方漁場において漁獲したカツオ41漁獲群、4,114尾について石ガツオの出現状況を調査し、以下の結果を得た。 1)41漁獲群中、87.8%に当たる36漁獲群において石ガツオの出現が見られた。また、1漁獲群当たりの石ガツオの出現率は0~16.8%であったが、群間で大きな差が認められた。 2)石ガツオは近海、東沖及び南方漁場のいずれの漁獲物においても出現した。また、漁獲後処理のうち水氷、ブライン凍結両方の貯蔵方法においても石ガツオの出現が確認された。 3)石ガツオは漁獲後の処理方法によって発生するのではなく、生存中からすでに存在している可能性が高いと考えられた。 4)石ガツオは一部の漁場において特異的に出現するのではなく、広範囲に亘る漁場で出現する可能性が高いと考えられた。
著者
野口 玉雄
出版者
日本水産學會
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.895-909, 2003 (Released:2011-03-05)

マリントキシン(魚介毒)は、魚介類がもつ自然毒で魚介類の食中毒の原因となっている。主なものとして、フグ毒(テトロドトキシン、X)、麻痺性貝毒(PSP)、シガテラ毒、下痢性貝毒(DSP)、“アオブダイ毒””(palyoxin(PX)またはPX様物質)などがある。最近のマリントキシン研究の進歩により、これらの毒の動物界における分布が広いことが分かり、それに伴い多くのマリントキシンの来源が微細生物に端を発した食物連鎖により毒化することが明らかとなった。また地球環境の変化に伴い、毒化生物の分布が広くなり、食中毒も広域化しつつある。重要食用貝類の毒化は、水産業の発展を阻止することから、近い将来に、毒化予防対策が打ちたてられる必要があろう。この総説では、水産科学および食品衛生の面から、最近のマリントキシン研究のハイライトを中心に紹介したい。
著者
遠部 卓
出版者
日本プランクトン学会
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.41-54, 1978 (Released:2011-03-05)
著者
田中 深貴男 梅沢 一弘
出版者
埼玉県農林総合研究センター
巻号頁・発行日
no.2, pp.103-106, 2002 (Released:2011-03-05)

1999年4月に県内で初めて発生したキンギョのヘルペスウイルス性造血器壊死症(GFHN)について、その発生及び養魚場の汚染状況を調査するとともに、養魚場の防疫措置の効果を追跡した。また、防疫に関する試験を実施した。この結果、県内の生産者の2/3の養魚場でによる汚染が確認された。また、生産池の消毒、受精卵の消毒及び隔離飼育は、本病の予防に有効であるが、親魚池等の汚染エリアと生産池の隔離が困難な構造、配置の養魚場では、完全に発病を抑えることが困難であることが分かった。さらに、ニシキゴイやタイリクバラタナゴ、ホンモロコ、ナマズなど県内で生産、流通しキンギョと接触する可能性が高い他の魚種については、GFHNVに対する感受性がないことが判明した。
著者
市岡 孝朗
出版者
日本生態学会暫定事務局
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.429-438, 2016 (Released:2017-01-27)

熱帯雨林は生物多様性の宝庫として数多くの研究者を魅了してきた。その多様性の根幹をなすのは、昆虫類を中心とする節足動物である。なぜ、熱帯雨林では節足動物の種類が極度に多いのか。多様な節足動物の進化を促し、共存を許容する要因の一つとして、熱帯雨林の「大きな」林冠の存在に関心が払われてきた。熱帯雨林の樹木の生産・成長・繁殖活動の中心である林冠には、多様な樹種の梢・葉・花・果実が豊富に産み出されるほか、様々な着生植物、つる植物、絞め殺し植物が繁茂して、微気象的な環境要因が異なる多様な微小空間が集まってできあがった複雑な立体構造が形成されている。こうした林冠の特性が、熱帯雨林における節足動物の高い多様性の創出・維持に大きく貢献しているのではないかと考えられてきた。本論文では、この仮説を実証的に検証することをめざした、今日に至る一連の研究を整理して、今後の研究の展望を示すことを目的とした。仮説を検証する第一歩として、熱帯雨林の林冠には、同地の林床や他のタイプの森林の林冠と比べて、いかに多くの節足動物が生息しているかを示そうとした研究がなされてきた。これらの研究結果から、熱帯雨林ではほとんどの分類群で林冠と林床の両方に共通する種の数はかなり少ないこと、熱帯から温帯に向かって林冠の大きさ・複雑さが減少すると林冠の節足動物種数が減少することなどが示された。仮説のさらなる検証には、林冠のどの部分にどのような節足動物が生息しているのか、林冠のなかにみられる環境勾配に対して種構成がどのように変化するのか、節足動物が関与する生物間相互作用が林冠内の空間異質性に対してどのように反応しているのか、などといったことを具に明らかにする必要が有る。しかし、熱帯雨林の林冠は、あまりに背が高いために研究活動が容易には進展せず、それらの問題を解決するための野外調査が進んで来なかった。高い林冠という障壁を克服するため、近年、林冠観測システムが世界中の熱帯のいくつかの地点に設置され、林冠の節足動物群集についての研究が急速に進展した。筆者らによる林冠のアリ類群集の資源利用様式に関する一連の研究成果を含む、林冠観測システムを用いた研究結果から、熱帯雨林の林冠には多様な微小環境が混在しており、その空間異質性に対応する形で、これまで予想されていた以上に多様で量も豊富な節足動物群集が存在していることが明らかになってきた。
著者
田畑 広之進 松原 甲 澤田 富雄
出版者
兵庫県立中央農業技術センター
巻号頁・発行日
no.45, pp.49-54, 1997 (Released:2011-03-05)
著者
福本 学
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.33-40, 2013 (Released:2013-07-09)
著者
山田 利博
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.364, pp.81-99, 2018 (Released:2019-06-10)

東京大学演習林において森林内のキノコにおける放射性セシウムの福島原子力発電所事故後5年間の変化を土壌などの基質との関係から調べた。いくつかの種類のキノコで放射性セシウム濃度は事故後1,2年目に高く,その後低下した。しかし,多くのキノコでは放射性セシウムの変化は大きくなく,時間とともに放射性セシウムが集積することは一般的ではなかった。放射性セシウムはA0層では次第に減少する傾向がみられたが,A層における増加は事故後1,2年目にみられたもののその後は明瞭でなかった。放射性セシウムはいくつかのキノコ種,特に菌根菌で高濃度に集積したが,他のキノコでは土壌環境の値を超えず,キノコがどの程度放射性セシウムを集積するかどうかには菌の種類や土壌条件が影響していると思われた。放射性セシウム134(Cs-134)との比から計算した過去の残存放射性セシウム137(Cs-137)の割合から,キノコや土壌では福島事故以前からのCs-137を長期間保持しているだけでなく,福島事故で発生したCs-137は流動的であるのに対して,事故以前からの残存Cs-137は菌類の物質循環系に強固に保持されていることが示唆された。
著者
石田 智子 小沼 守 小野 貞治 村上 彬祥 佐野 忠士
出版者
獣医麻酔外科学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.7-12, 2014 (Released:2014-10-29)

ウサギ160症例における麻酔関連偶発死亡症例を調査した。American Society of Anesthesiologists Physical Status(ASA)分類に必要であった検査のうち、ASA分類ⅠでもX線検査で4.7%(2/43)、ASA分類IIの血液検査で22.6%(12/53)、画像診断で30%(15/50)に異常が認められたため、積極的な術前検査によりできるだけ信頼度の高いASA分類をする必要性があると考えられた。避妊手術や去勢手術では麻酔関連偶発死亡例はいなかったが、子宮疾患や尿路結石、消化管閉塞の症例のうち、麻酔危険度の高いASA分類III以上(ASA分類III1例;ASA分類IV2例)で麻酔関連偶発死亡例が各1例あった。麻酔関連偶発死亡症例は全体で1.9%(3/160)となったが、すべて24時間以内(手術開始1時間後2例、18時間後1例)に心停止で死亡した。今回の結果から、ASA分類III以上のウサギでは、麻酔関連偶発死亡率が高くなるため、手術開始から24時間以内は十分なモニタリングには行うべきであると考えられた。
著者
杉浦 真治 山崎 一夫
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.201-205, 2005 (Released:2011-03-05)

イワナシ属Epigaeaはわずか3種を含むツツジ科の小低木で、北米、コーカサス、日本にそれぞれ分布する。北米産アメリカイワナシE. repensの種子はアリにより散布されることが知られている。ツツジ科の中でアリによって種子散布が行われる種は他に全く知られていない。日本産イワナシE. asiaticaの種子もアリによって散布されるかどうかを明らかにするために、2004年5月に京都市郊外の二次林林床に生育するイワナシの果実訪問者を調査した。その結果、5種のアリのワーカーがイワナシの果実を訪れ、果肉を摂食しているのを観察した。さらに、ヤマトアシナガアリAphaenogaser japonicaのワーカーが果肉と一緒に種子を運んでいた。ヤマトアシナガアリは日本産アリ散布植物の散布者として、しばしば記録されている種類である。これは、日本産イワナシの種子もアリによって散布されていることを示唆している。しかし、イワナシの果肉のある甘い果実は、他の動物も誘引する可能性がある。
著者
近藤 康人 池上 和男 井関 正博
出版者
防菌防黴研究会
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-4, 2004 (Released:2011-03-05)

5分間の電解により次亜塩素酸を生成した電解水と次亜塩素酸ナトリウム溶液を希釈した溶液で酵母の殺菌効果の比較を行った。電解水は生成直後から3分以内で高い殺菌効果が認められた。一方、次亜塩素酸ナトリウム希釈溶液ではほとんど殺菌効果は認められなかった。さらに、電解を30分以上行った溶液では次亜塩素酸に対して耐性のある枯草菌芽胞にも殺菌効果が認められた。また、電解水も6分間放置した場合には、殺菌効果は次亜塩素酸ナトリウム希釈溶液と同様になった。このことから電解水では生成直後にはオゾンなどの活性物質が存在し高い殺菌効果を示すと考える。
著者
細見 彰洋
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.469-474, 2007 (Released:2011-01-20)
著者
武田 淳 川端 眞人 松尾 敏明
出版者
佐賀大学農学部
巻号頁・発行日
no.85, pp.19-43, 2000 (Released:2011-03-05)

ガダルカナル島は,熱帯の島嶼に属するメラネシア・ソロモン諸島の一つで,多様な植生と豊富な資源に恵まれた島である. タラウラ村は,ソロモン諸島の主島ガダルカナル島の首都ホニアラからほぼ50キロメートル東方に位置する.およそ300人ほどの人々が住んでいる集落である. ガダルカナル島タラウラ村における動植物資源の伝統的な利用技術や管理形態を通して,オセアニア島民の島嶼生態系における生存戦略がいかに行なわれてきたか,また現在行なわれているかを探るために1997~1999年まで現地での住み込みによる狭域調査(intensive study)を行なった. 基礎資料は現地で行なった聞き込み法(questionnaires),直接観察法(direct observation)によって得られたデータに基づき,調査期間中にソロモン諸島のマライタ島,フロリダ島やニュージョージア州のギゾ島での広域調査で得られた情報を付け加えた. オーストロネシア語を話すモンゴロイド集団が,インドネシアやフィリピンあたりの多島海からの根茎類・樹木類と土器を携えて,長けた航海術を駆使して,オセアニアの海原に乗り出したのは,今から7,000~5,000年前といわれる.いわば新石器文化をもった「海のモンゴロイド集団」が,先住集団のオーストラロ・メラネシアンの人々を時には避けながら,移住(migration)・定住(sedentarism)・混血(interbreeding)をしながら,オセアニアの大小の島々に地理的に拡散していった.その集団の一つであるラピタ(Lapita)人が,メラネシア・ビズマーク諸島のムサウに残したラピタ土器は,今から3.200から3,300年前になる. 彼らがオセアニアの島嶼に進出と放散・適応する過程で利用した,重要な食用資源には樹木栽培(arboriculture)によるパンノキやココヤシがある.とくにパンノキの実を発酵させたものは,貯蔵食糧(fermented storage food)としても利用する.またココヤシは,人為的な栽培の手を加えなくても,海流に流されてたどり着いた浜辺に自然に根付いて,その生育範囲を広げられる特性をもっている.さらにココヤシの多様な部位が,それも生育過程の各時期(stage)に応じて人間が利用・食用できるメリットは大きい.しかも,ほぼ無尽蔵に利用できる点でもパンノキと同様に非常に重要である. 調査の結果,本集落においてタロイモやヤム等の根茎類を主食とし,シダ類を副食とする,ガダルカナル島の固有な植物性資源に強く依存した食体系(food-technology system)を構築してきたことが判明した.ポストコンタクト(post-contact)と呼ばれる白人たちとの接触によって,島に導入された外来のキャッサバやサツマイモなどの新大陸起源の作物もあった.しかし,それでもなお.プリコンタクト(pre-contact)の島には,自給自足できるほど十分な固有な植物資源に恵まれた環境にあった.ガダルカナル島民がもつ民族植物学的知識は,彼らの生活の中でみられる様々な智恵に垣間みることができるばかりか,その深さや幅の広さに外国の植物学者たちも一様に驚愕することでも十分うなづけるものである.さらにソロモンピジン語で「キャベッジ」と呼んでいる栽培種や野生の採集種は,実に多い.その植物のほとんどすべてが日常的にオカズとして利用される.そのオカズの豊富さと周年性も,ソロモン諸島住民の食生活の大きな特徴と捉えられる. 島をとり囲む裾礁(fringing reef)に足を一歩踏み入れば,サンゴ礁には利用できる水族資源も豊かであるが,彼らにとって海はそれほど魅力もなく,とりたてて海洋資源にさほど依存する必要もなかった.イルカ漁(dolphin hunting)に専念するマライタ島民の一部に見られる海辺住民などを除けば,海洋資源の開発に積極的な姿勢は見られなかったといっていい. ソロモン諸島島民の伝統的な食物利用・技術形態を緻密に調べていく狭域調査は,今後,島嶼生態系の住民の生存戦略を明らかにし,海のモンゴロイドたちがオセアニアに散らばる大小の島々への進出・定性・拡散を探る上でも基礎的な作業といえよう.
著者
壽 和夫 齋藤 寿広 町田 裕 佐藤 義彦 阿部 和幸 栗原 昭夫 緒方 達志 寺井 理治 西端 豊英 小園 照雄 福田 博之 木原 武士 鈴木 勝征
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.1, pp.11-21, 2002 (Released:2011-03-05)

1. ‘あきづき’は1985年に果樹試験場(現 果樹研究所)において‘162-29’に‘幸水’を交雑して育成した実生から選抜したやや晩生の赤ナシ品種である。1993年に一次選抜し,1994年からナシ第6回系統適応性検定試験に‘ナシ筑波47号’として供試した。その結果、1998年8月21日付けで‘あきづき’と命名され、なし農林19号として登録、公表された。また、2001年10月18日付けで種苗法に基づき第9401号として品種登録された。2. 樹勢はやや強く、短果枝、えき花芽ともに着生はやや少ない。開花期は‘幸水’とほぼ同時期で、‘筑水’とは交雑不和合であるが他の主要品種とは和合性である。‘豊水’と‘新高’の間に成熟し、病虫害に対しては通常の防除で対応できる。3. 果実は扁円形で平均果重が500g程度と‘豊水’より大きいが‘新高’よりは小さい。果肉は軟らかく、甘味は‘豊水’程度で酸味が僅かにあり、食味は良好である。芯腐れ、みつ症などの生理障害の発生は少ない。有てい果が多数混在する。
著者
高島 大典
出版者
栃木県農業試験場
巻号頁・発行日
no.28, pp.47-54, 1982 (Released:2011-03-05)