著者
吉野 樹
出版者
公益社団法人 日本義肢装具士協会
雑誌
POアカデミージャーナル (ISSN:09198776)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.193-196, 2018 (Released:2019-02-15)
参考文献数
20

我が国における義肢装具の黎明期を支えるなど、奥村済世館の功績は非常に大きい。しかし、その命名者については、川村一郎の文献に「明治36 年に当時の陸軍第4 師団軍医部長の命名により「済世館」を公稱する。」との記述があるものの、その詳しい人物像については当該の文献にも他の先行研究にも記載がなかった。筆者はこの点に注目し、命名者の氏名や経歴などの詳しい人物像を明らかにすることを目的に調査した。文献調査の結果、命名者は谷口謙であろうことが導かれた。谷口についても調査し、記載した。同館に関する情報の混乱を整理しなければならないことが今後の課題であり、調査を継続する必要がある。
著者
篠田 梨恵 篠田 康孝 森 卓之 吉村 知哲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.141, no.2, pp.281-288, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)
参考文献数
24

Tolvaptan (TLV) carries the risk of serious side effects, and its introduction requires hospitalization. Therefore, it is important from the viewpoints of safety and medical economics to predict in advance, the patients for whom it will be effective and introduce it. The purpose of this study was to investigate the noninvasive and simple predictors for identifying TLV responders. We conducted a retrospective observational study of patients with heart failure who had TLV introduced at our hospital from January 1, 2017, to December 31, 2018. By using the body weight and BNP reduction as the effect indices, predictors of body weight and BNP reduction were extracted by logistic analysis. The sensitivity and specificity at the cutoff value obtained by ROC analysis were also examined. Among 85 subjects, urine sodium concentration >63 mEq/L [odds ratio (OR): 6.11, 95% confidence interval (CI): 1.36-27.4] was detected as a predictor of body weight reduction. The sensitivity at this cutoff value was 81%, and the specificity was 70%. Serum osmolarity>291 mOsm/L (OR: 3.76, 95% CI: 1.00-14.2), urine potassium concentration<21 mEq/L (OR: 4.45, 95% CI: 1.09-18.2), and urine sodium concentration>71 mEq/L (OR: 7.38, 95% CI: 2.05-26.6) were detected as predictors of BNP reduction. The sensitivities were 62%, 53%, and 73%, and the specificities were 58%, 68%, and 68%, respectively. Therefore, it was suggested that urine sodium concentration may be useful as a predictor of body weight and BNP decrease after TLV induction.

6 0 0 0 OA 運動年鑑

著者
朝日新聞社 編
出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
vol.昭和3年度, 1928
著者
渡辺 大士 砂川 正隆 片平 治人 金田 祥明 藤原 亜季 山﨑 永理 髙島 将 石野 尚吾 久光 正
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.146-155, 2017 (Released:2017-10-03)
参考文献数
34

加味逍遥散は,柴胡,芍薬,蒼朮,当帰,茯苓,山梔子,牡丹皮,甘草,生姜,薄荷の10種の生薬から構成される漢方薬であり,比較的体力の低下した,精神不安やイライラなどの精神神経症状を有する人の全身倦怠感,のぼせ,寒気,種々の身体痛,食欲不振,好褥的傾向などの症状に用いられている.近年,オレキシンがストレス反応の制御に関与することが明らかになってきた.オレキシンは神経ペプチドの一種で,オレキシン産生神経は主に視床下部外側野および脳弓周囲に存在するが,その軸索は小脳を除く中枢神経系全域に分布し,摂食行動や覚醒反応ほかさまざまな生理活性の制御に関与している.本研究では,ラット社会的孤立ストレスモデルを用い,加味逍遥散の抗ストレス作用,ならび作用機序の検討としてオレキシン神経系の関与を検討した.初めに,加味逍遥散がオレキシンの分泌に影響するのかを調べた.Wistar系雄性ラットに,100mg/kg/day,400mg/kg/day,1,000mg/kg/dayの3種類の用量の加味逍遥散を7日間連続で経口投与し,血漿オレキシンA濃度を測定した.Control群と比較し,100mg/kgならび400mg/kgの投与で有意な低下が認められたが,1,000mg/kgでは有意な変化は認められなかった.次に,ラットをグループ飼育群(Control群),孤立ストレス群(Stress群),ストレス+加味逍遥散(400mg/kg)投与群(Stress+KSS群)に分け,7日間の飼育後,攻撃性試験ならび血漿コルチコステロンならびオレキシンA濃度の測定を行った.Stress群ではControl群と比較し,攻撃行動を示す時間が有意に延長し,血漿コルチコステロンならびオレキシンA濃度も有意に上昇したが,Stress+KSS群ではこれらの変化は有意に抑制された.更には, いずれの生薬が主として作用しているのかを検討した.本研究では柴胡に注目し,柴胡単独投与で検証した.ラットをControl群,Stress群,ストレス+柴胡投与群(Stress+saiko)の3群に分け,血漿コルチコステロンならびオレキシンA濃度の測定を行った.Stress+saiko群では,これらの濃度の上昇が有意に抑制された.ストレス負荷によって,攻撃性が高まり,血漿コルチコステロンならびオレキシン濃度が上昇したが,これらの変化は加味逍遥散の投与によって抑制された.オレキシンが本モデル動物のストレス反応の発現に関与していることから,加味逍遥散の効果は,オレキシン分泌の制御を介した作用であり,柴胡が重要な働きをしていると考えられる.加味逍遥散は抗ストレス作用を有し,作用機序として,オレキシン分泌の制御が関与することが示唆された.
著者
三原 武司
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.364-378, 2015 (Released:2017-03-08)
参考文献数
86

本稿は, アンソニー・ギデンズの社会理論における行為の再帰的モニタリングを, 認知と文化の共進化理論ならびに最近の神経科学の成果を導入することで, 理論的に再構成することを企図している. はじめに, 現生人類以前からつづく認知と文化の歴史を, 遺伝子-文化共進化理論の学説とともに概観する. つぎに, 再帰性と社会類型の議論を確認する. 認知と文化の歴史で重視される要素は, 模倣・口承・識字である. ギデンズ社会理論では, 文字の出現前後で再帰性の類型を区別する. しかし, その移行期になにがおきたのかは十分に説明されていない. そこで文字が出現する前後の類型を, いわゆる大分水嶺理論を援用し整理したうえで, 双方に神経科学的な基礎づけをおこなった. 結果, 模倣と口承という原初的な再帰性の神経科学的メカニズムの1つとして, ミラーニューロンが浮上した. 他方, 文字の出現以降は, ニューロンのリサイクリングとよばれる識字による脳神経の再編成が, 再帰性の作動変更の神経科学的な根拠となることがわかった. 以上をギデンズ社会理論に導入した結果, 識字以後の類型である伝統的文化とモダニティの非連続性は相対化された. さいごに, 識字化の帰結について論点を確認した. 現在われわれは, 識字による脳神経の再編成と再帰性の進化がはじめて人類社会を覆いつくし, さらには選択圧をみずから再帰的に変更可能とする歴史段階を経験している.

6 0 0 0 OA 清水次郎長

著者
神田伯山 口演
出版者
改善社
巻号頁・発行日
vol.第2, 1925
著者
大谷 璋
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.29-36, 1968-01-30 (Released:2010-03-11)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

E.O.G.法により眼球運動に関する研究を行った. 結果は次の通りであった. (1) 周辺視野の視覚刺戟に対する, 眼球運動の選択反応時間を測定した (図2, 3). その時の反応時間は Hich の法則に従わなかった. 即ち選択数が増大しても反応時間は大とならなかった. (2) 接近した時間間隔で継時的に2個の視覚刺戟に反応しなければならないとき, 第2の反応時間は第1に比較して, 時間間隔が300msec. 以下のとき増大した. (3) 交互に点灯する光刺戟又は数字 (数字表示管による) を交互に固視するとき, 各300msec. 以下の点灯時間の場合では光点を追って凝視出来ずおくれが生じた (図5). 同様にして数字表主管で数字を読みとらせたときは単なるネオン光を追従させたときよりもわずかおくれが大きかった (図5, 表2). (4) 実験室においてベルト・コンベア視覚検査作業の実験を行った. 検査対象が1秒間3.5個以上の速度で流れた時は検査精度が低下した (表3). (4) 工場現場で鋼板のベルト・コンベアによる検査作業の眼球運動を測定した. 1秒あたりの眼球運動はベルト・コンベアの速度いかんにかかわらず1秒間約3.5回であった (図6).以上の結果から意志的に飛越的に眼球を動かすときは1秒間に3回前後が運動の限度と考えられる.
著者
丸茂 喜高 鈴木 宏典 片山 硬
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.614-621, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

This study proposes an idea that encourages driver's motivation to drive altruistically. We focus on an existing intersection that disturbs the throughput of upstream vehicles by right-turn vehicles waiting a gap acceptance to turn right. We investigated some scenarios that oncoming thru traffic mandatorily give a right-of-way to the right-turn vehicles to make enough time-gap for right turning. Here, it is assumed that the effects of giving a right-of-way to the right-turn vehicles are provided to a driver of approaching thru vehicle via onboard indicator. A verified traffic simulator examines the effects of prioritizing behavior on traffic flow. Numerical analysis showed that the traffic throughout in congested states was gradually improved when prioritized right-turn vehicles increases. Also, penetration of the prior right-turn vehicles is effective to mitigate not only the collision risk at the intersection but also the total CO2 emission over the arterial road.
著者
黒崎 宏
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.211-217, 1986-03-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
11

ウィトゲンシュタインの数学論については, 彼の『数学の基礎』の, 第二版よりも遙かに充実した第三版が出版され, またクリスピン・ライトの浩瀚な研究書なども出て, 我々の周辺でも近頃話題になることが多い。しかし彼の科学論については, かつてトゥールミンが彼の小さな本『科学哲学』において, またハンソンが彼の本『発見のパターン』において, 援用していること等を別にすれば, 今も昔もあまり正面から話題にされる事がなかった-ように思われる。しかし私は, 彼の科学論は科学の本質を深く洞察していると思うので, ここで彼の科学論を私なりに整理し, その意味を考えてみようと思う。