著者
佐藤 晃彦
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.577-580, 2008-05-31 (Released:2008-07-01)
参考文献数
23

急性膵炎では,軽症例であっても入院治療が原則であり,脈拍数・血圧・尿量・呼吸数などの基本的なモニタリングを行いながら,絶食による膵外分泌刺激の回避,除痛,十分な輸液を行う必要がある。軽症例では,感染性合併症の続発がまれであるため予防的抗菌薬投与の必要はなく,蛋白分解酵素阻害剤投与や経腸栄養療法の臨床的有用性も確立されていない。経口摂取を契機として急性膵炎が再燃する場合があるため,食事開始時期の決定は重要なポイントとなる。軽症例では,腹痛の消失,血中膵酵素値やCRPの低下を指標として食事開始を決定することが推奨される。入院時に軽症であっても,経過中に重症化する症例が少なからず存在するため,重症度評価を継続する必要がある。
著者
田村 恵理 谷口 義典 西山 充 矢田部 智昭 井上 紘輔 荒川 悠 森 正和 池添 隆之 寺田 典生 藤本 新平
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.6, pp.1041-1050, 2016-06-10 (Released:2017-06-10)
参考文献数
10

65歳,女性.高血圧,肥満症で加療中であったが,全身倦怠感,尿閉のため当院受診した.両側水腎症を認め,腎後性腎不全に対し経皮的腎瘻造設術を施行したが,腎障害改善なく,原因不明の遷延性乳酸アシドーシス,無症候性低血糖も認められた.持続的血液濾過透析を施行下に腹部造影CT検査を施行し,腹壁皮下結節および腹直筋の不整肥厚などを確認した.皮下結節およびリンパ節の生検にて形質芽球性リンパ腫と診断した.化学療法を開始し,乳酸アシドーシスや低血糖は速やかに改善した.悪性腫瘍,特に血液系腫瘍ではWarburg効果がみられることがあり,原因不明の乳酸アシドーシスでは,原因として悪性腫瘍の可能性を念頭に精査する必要がある.
著者
小野 かお里 Paul A. SEIB 高橋 節子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.813-820, 1999-08-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
16
被引用文献数
3

ヒドロキシプロピル化の置換度の異なる小麦澱粉2種を試料として小麦粉に10%添加して麺を調製し, 麺への添加効果を明らかにすることを目的として実験を行った.測定はファリノグラフィーによるドウの混捏特性, 麺の理化学的性質は溶出固形物量, 糊化度, 麺のテクスチャー・圧縮および引っ張り試験による凍結・解凍安定性などから実験を行い, 官能評価により食味特性を明らかにした.結果は以下に示すとおりである.(1) ファリノグラフィーから, 小麦粉にヒドロキシプロピル小麦澱粉を添加すると吸水率は増加し, 対照の小麦粉ドウに近似の図形を画き, こしの強いドウが得られた.(2) ヒドロキシプロピル小麦澱粉を添加した麺の茄で汁中への溶出固形物量は低下し, 溶出抑制効果が認められた.(3) β-アミラーゼ・プルラナーゼ法による糊化度の測定から, ヒドロキシプロピル小麦澱粉を30%添加した麺の糊化度は対照の小麦粉麺に比べて高く, 茄で時間の短縮効果が認められた.(4) 茹で麺の圧縮ならびに引っ張り試験から, ヒドロキシプロピル小麦澱粉を添加した麺は対照の小麦粉麺に比べて軟らかく凝集性が大で伸びのよい麺となり, 引っ張り強度・伸び弾性率がともに大きく, こしのある麺となった.(5) 茹で麺は凍結・解凍を繰り返すことにより, 硬さおよび伸びは低下, 伸び弾性率は増加し, 糊化度は低下するが, ヒドロキシプロピル小麦澱粉LLを添加した麺の変化は小さく, 老化しにくく凍結・解凍安定性の高い麺が得られた.(6) 官能評価によりヒドロキシプロピル小麦澱粉LLを10%添加した麺は白く, べたつきのない嗜好性の高い麺と評価された.
出版者
巻号頁・発行日
vol.十市遠忠・蜷川新右衛門親当,
著者
野村 竜也 三浦 雅展
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.439-446, 2011-03-30 (Released:2016-08-07)
参考文献数
9

本研究では,社会において「ものづくり」にどのようなイメージが付与されているかについて,成人を対象とした自由記述回答形式のオンライン調査により探索を行った.また,同時に「ものづくり」に対する意識を尺度を用いて測定し,自由記述から抽出された「ものづくり」に対するイメージとの関連について分析を行った.結果として,「ものづくり」に対するイメージカテゴリとして「専門技術」「業種・分野・組織」「商品・製品」の産業に関連するもの,「伝統」「精神・文化」の産業に直接関連しないものが抽出された.また,非産業的イメージを抱く回答者が全体の半数近く存在すること,「ものづくり」イメージカテゴリの分布が年代によって異なること,「ものづくり」に対する意識は全体として肯定的でありながら,非産業関連のイメージを抱く回答者群は産業関連のイメージを抱く回答者群と比べて,個人や生活と関連した「ものづくり」に対してより肯定的であることが示唆された.
著者
門田 裕一
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.77-90, 1984

東北地方のトリカブト属トリカブト亜属植物(キンポウゲ科)は4種2亜種から成ることが明らかになった。これらは, 垂直分布の点で高山性と低山性に, 水平分布の点で日本海型と太平洋型に, 染色体数の点では2倍種(2n=16)と4倍種 (2n=32) に区分される。 1. オンタケブシ Aconitum meta-japonicum NAKAI 2n=16(Fig.5-A)。 飯豊山地梶川峰(山形県)の山地帯においてのみ発見されている (Fig.4)。 これまで「オンタケブシ」と呼ばれていたものは, このオンタケブシそのものとウゼントリカブト及びセンウズモドキを含むことが明らかになった。その結果本種の分布上, 飯豊山地は基準産地の木曽御岳に次ぐ第2の産地となる。 上記の3種類は形態的特徴, 分布域そして染色体数によって明瞭に区別される。オンタケブシは, 概形が円く5-7-浅・中裂する葉をつけ, 花梗に滑面開出毛が生え, 枝が斜上して伸長し, 円筒状で短い嘴をもつ上萼片をつけることなどで特徴付けられる (Fig.2-A)。本種は2倍種で, 著しい隔離分布を示し, 形態的形質の変異性が低いことから, 遺存的な種と推定される。 2. ウゼントリカブト Aconitum okuyamae NAKAI 2n=32(Fig.5-C)。 山形・福島・秋田・宮城・岩手・東京の各都県に分布する (Fig.4) が, 奥羽山脈南部の山地帯(とくに山形県側)に多く見られる。本種は上述のように, これまで「オンタケブシ」とされていたものの一部である。オンタケブシによく似ているが, 本種は分枝した枝があまり伸長せず, 花梗が花と等長かより短く, そしてそのために花序に花がより密集すること, 上萼片がより浅い円錐形で, 花弁(密腺)の距が短く屈曲する点で区別される (Fig.2-D)。 福島県・谷地平と山形県・奥山寺では本種とオクトリカブトとの同所的生育が確認された。とりわけ奥山寺では, この2種とともに両者の自然交雑の結果生み出されたと推定される多数の中間形が発見されている。 3. シヤマトリカブト Aconitum nipponicum NAKAI 2n=32(Fig.5-D)。 本州日本海側山地に分布する高山性種で, 石川県・白山と山形県・月山がそれぞれ南限と北限である(Fig.3)。東北地方の高山性種は本種のみであり, 鳥海山以北の出羽山地, 白神山地, 奥羽山脈, 北上高地には高山性種は見出されていない。本種の現在の分布の中心は, その個体数の豊富さから, 飯豊山地にあるといえる。飯豊山地の東方約40km に位置し, その主稜線の延長上にある吾妻連峰では本種が全くみられないのは興味深い。 シヤマトリカブトはこれまで「ハクサントリカブト」と呼ばれていたものの大部分にあたる。ハクサントリカブトのタイプ標本(本文参照)はミヤマトリカブトと未記載のトリカブトとの自然交雑に由来する個体と推定された。実際に白山ではこれらの3種類が同所的に生育している。白山における自然交雑の実態については改めて詳述する予定である。 4. オクトリカブト Aconitum subcuneatum NAKAI 2n=32 (Fig.5-B)。 東北地方の内陸地域から日本海側地域にかけての低山に最も普通に生育するトリカブトで (Fig.4), 概形が円く5-7-浅・中裂する葉, 粗面屈毛が密生する花梗, 背の高い三角錐状〜僧帽状の上萼片をもつことなどで特徴付けられる (Fig.2-C)。 奥羽山脈北部の秋田駒ケ岳では本種の高山帯における生育が認められている。この山岳では, 低山性のオクトリカブトが高山帯へと垂直方向に分布域を拡大したものと考えられる。オクトリカブトの学名としては従来 A.japonicum THUNB. が用いられることが多かった。しかし A.japonicum THUNB. のタイプ標本はいわゆるヤマトリカブトとみなすのが最も適当であるので, オクトリカブトの学名は上記のように A.subcunetuam NAKAI となる。 5. ヤンウズモドキ Aconitum jaluense KOM. subsp. iwatekense(NAKAI) KADOTA 2n=32(Fig.5-E)。 前述のように本亜種もオンタケブシと混同されてきたものであるが, 葉は概形が五角形状で三全裂あるいは三深裂する点などで明瞭に区別される (Fig.1; Fig.2)。 東北地方では岩手・宮城・福島各県の太平洋側沿海地域に生育し, 北限は岩手県・種市である。分布状況と形態的形質の変異性が低いことから, センウズモドキは遺存的な分類群とみなされている。 6. ツクバトリカブト Aconitum japonicum THUNB. subsp. maritimum (KAKAI ex TAMURA & NAMBA) KADOTA 2n=32(Fig.5-F)。 東北地方では岩手・福島両県の太平洋沿岸地域に普通に生えるが, とくに北上高地に多い。本亜種の分布域は上記センウズモドキのそれに似るが, 温帯落葉広葉樹林の林縁や林内から草原までのさまざまな生育地に生え, したがって形態的形態的形質の変異性がより高く, かつ個体数がより多い。
著者
大下 誠一 川越 義則 安永 円理子 高田 大輔 中西 友子 田野井 慶太朗 牧野 義雄 佐々木 治人
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.329-333, 2011-08-15
参考文献数
11
被引用文献数
4 6

福島原子力発電所から約230km離れた,東京都西東京市における研究圃場において原発事故後に栽培された野菜及び土壌の,<SUP>134</SUP>Csと<SUP>137</SUP>Csの放射能を測定した。試料は植え付け47日後のジャガイモの葉,並びに,苗の定植40日後のキャベツの外葉を用いた。両者共,<SUP>134</SUP>Csと<SUP>137</SUP>Csの総量は9Bq/kg以下となり,摂取制限に関する指標値500Bq/kgより低い値であった。土壌は約130Bq/kgであり,天然の<SUP>40</SUP>Kの約290Bq/kgと比較しても低い値であった。キャベツの外葉を水で洗浄する前後の放射能像をイメージングプレートにより得たが変化は見られなかった。
著者
KAWAHARA Takayoshi HATAE Shuichi KANYAMA Takahide ISHIZAKI Yuki UEZU Kazuya
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
Environment Control in Biology (ISSN:1880554X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.75-78, 2016
被引用文献数
16

Recently, large-scale forest fires have been occurring frequently worldwide. In forest fires, the use of the firefighting foam has greatly improved fire extinguishing effects, but the environmental impact from firefighting activities using foam still cause concerns. We have been developing a novel firefighting foam for forest fire with significantly lower environmental risk, consisting of soaps, chelating agent, and diluents. We determined the optimal composition of soap, and found the high biodegradable chelating agent with a high foaming performance.

1 0 0 0 OA 憲教類典

著者
近藤守重 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.[20],
著者
伊藤 泰弘
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF BENTHOLOGY
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:02894548)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.47, pp.23-36, 1994-08-30 (Released:2009-08-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

Two discrete morphological types were recognized among the populations of a boring bivalve, Penitella kamakurensis, based mainly on whether the anterior end of the shell (beak) is pointed (P-type) or rounded (R-type). The relative abundance of the two types varies from place to place according to the hardness of the rock in each locality. P-type individuals are abundant in softer rocks and R-type in harder rocks. In R-type individuals, the width of growth band is narrower, the size of posterior adductor muscle scar is larger, and the shell is thicker than in P-type individuals from the same locality. Individuals of either shell type living in harder rocks show the same tendencies in comparison with those of the same shell type from softer rocks.
著者
浅川 明弘 乾 明夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.11-16, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

機能性消化管障害は,遺伝・環境を含んだ生育歴を背景に,心理社会的ストレスが心身相関,特に脳腸相関における神経内分泌系の異常などをもたらし,閾値を越えた時に,消化管運動機能異常,内臓知覚過敏などが顕在化して発症する.診療においては,胃腸症状に焦点をあてた対症療法のみならず,原因となる要因,病態の上流に位置する心理社会的背景などを把握した根治治療,全人医療,個別化医療が要求されている.

1 0 0 0 OA 通志200卷

著者
宋鄭樵撰
出版者
謝氏彷武英殿本刊
巻号頁・発行日
vol.[40], 1859
著者
金子 淺之助
出版者
燃料協會出張所
雑誌
燃料協會誌
巻号頁・発行日
vol.4, no.32, pp.五三〇-五三三, 1925