著者
加藤 翔太 西田 究
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

地震波干渉法は2観測点で観測された地震波形記録の相互相関関数を計算することにより、片方を仮想的な震源とし、もう片方を観測点とした場合の観測波形を推定する手法である(e.g. Snieder et al., 2013)。地震波干渉法解析では、地震波動場がランダムかつその強度分布が等方・均質であることを仮定する。ランダムな波動場として海洋波浪起源の脈動を解析に用いる場合には、周期5-20 sの帯域で表面波が卓越することが知られている。そのため、脈動を用いた地震波干渉法は地殻・上部マントルの3次元構造の推定に適している(e.g. Shapiro et al., 2005)。近年では、表面波だけではなく実体波の抽出が試みられている。その一例として、マントルの410/660 km不連続面からの反射P波の抽出が報告されている(Poli et al., 2012, Feng et al., 2013)。しかし、これらの反射P波を抽出した先行研究の対象地域は大陸に限られていた。本研究の目的は、防災科学技術研究所Hi-netの上下動記録に地震波干渉法を適用することにより深さ410/660 km不連続面からの反射P波を抽出し、日本列島下の不連続面をイメージングすることである。本研究では以下の手順で各観測点ペアに対する相互相関関数を計算した。用いた波形記録は防災科学技術研究所Hi-net観測点のうち西南日本に存在する240点の上下動記録(2007年-2018年)である。まず、Hi-netの上下動記録を2 Hzにダウンサンプリングした。その上で各観測点について翌日の観測波形との差を計算して元の観測波形の代わりに用いた(高木ほか、2019)。これは、Hi-netの機器ノイズ(Takagi et al., 2015)の相互相関関数への影響を抑えるためである。次に、得られた1日長の波形を1024 sの時間窓に分割し、周期5-10 sおよび10-20 sの平均2乗振幅によって時間窓を選択した。選択した時間窓について周波数領域で白色化を行い、周期1-10 sの成分について全観測点ペアの相互相関関数を計算した。まず4-th root vespagramを全観測点ペアに対する相互相関関数について計算した(Rost and Thomas 2002)。その結果、410 km不連続面の反射P波がオフセット距離0-300 kmで見られ、660 km不連続面の反射P波はオフセット距離50-100 kmで見られた。また、660 km不連続面の反射P波は410 km不連続面の反射P波に比べて弱いことがわかった。次に、得られた反射P波を不連続面の深度に変換するため、Common Middle Point (CMP)重合を行った(e.g. Stein and Wysession, 2003)。具体的には、オフセット距離が500 km以内の各観測点ペアについて反射点の位置でグループ分けを行い、各グループに対して不連続面が水平と仮定しCMP重合を行った。速度構造はJMA2001(上野ほか、2002)を用い、深度推定は410 km不連続面についてのみ行った。その結果、地域ごとに410 km不連続面深度の変動が見られ、特に東経134°-135°北緯33°-36°に反射点を持つグループでは不連続面が上昇している結果が得られた。これは、従来の地震波を用いた不連続面深度に関する研究(Tonegawa et al., 2005, Tono et al., 2005)と整合的である。本研究では地震波干渉法により西南日本の410 km不連続面深度の推定を行った。今後は用いる観測点を増やして対象領域を日本全国へと拡大するとともに、今回扱わなかった660 km不連続面の推定も行う予定である。謝辞:本研究では防災科学技術研究所のHi-netの上下動記録を用いました。記して感謝いたします。
著者
丸谷 宣子 白杉(片岡) 直子 岡本 裕子 谷口 智子 服部 美穂 中尾 百合子 津久田 貴子 早崎 華
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.323-332, 1998-12-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

抗酸化剤無添加の精製エゴマ油を180℃で10時間加熱し, 経時的に油のAV, POV, CV, p-An. V, Toc量と脂肪酸量の変化を調べた。対照試験としてダイズ油についても同様に測定し, 両者の熱安定性を比較した。また, コットンボールを用いて加熱時のモデル食品成分添加の影響を調べた。1) 180℃, 70分までの短時間加熱では, ダイズ油に比べてエゴマ油の劣化は若干進んでいたが, α-リノレン酸の残存率も90%以上であり, 栄養的にも食品衛生上も支障があるほどではなかった。2) 180℃, 10時間加熱においては, 加熱時間が長くなるにつれ, ダイズ油に比べてエゴマ油の劣化が著しく, CVが50を越えるのがダイズ油が10時間後であるのに対し, エゴマ油は約5時間後であった。エゴマ油は着色も著しく, 10時間後にはAVは0.20と低かったが, CVは131.0, p-An. Vは242.4に達した。3) コットンボールを用いて, エゴマ油とダイズ油の水添加加熱時の熱安定性を比較した結果, 1時間以内では, エゴマ油はダイズ油に比べAV, CV, p-An. V, POVともやや上昇したものの, 食品衛生上問題になるほど酸化は進まなかった。4) エゴマ油の熱酸化は第二塩化鉄により促進された。グルコースや水の添加によっては若干酸化が進んだ。逆に, グリシン添加時はPOV, CV, p-An. Vの値が減少した。これは, アミノ酸自身の抗酸化性と, アミノカルボニル反応によって, 油中に生成されたカルボニル化合物が消費されたこと, さらに生成されたメラノイジンが抗酸化性を示したことなどが考えられた。

6 0 0 0 朝日年鑑

著者
朝日新聞社 [編]
出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
vol.昭和5年, 1929
著者
崔 銀姫
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.93-108, 2012

本稿では,1950年代の日本における「観光アイヌ」の誕生をめぐって全国的な流行と社会的なブームに至るまでの歴史を,近代後半からおよそ60年間(1899年の「北海道旧土人保護法の制定」〜1959年の『コタンの人たち』)の時代における「観光アイヌとは何か」の問題を中心に,単なる「差別」と「同化」の問題に帰結させるのではなく,20世紀初期から半ばのメディアの空間の成立と変容をメディア文化論の視点から鳥瞰的に検討することで,「覧(み)せる/観(み)られる」といった身体を媒体にした経験のなかに隠れていた歴史社会的意味とその変容を考える。考察の結果,第1期の時代(1899年〜1926年)において,アイヌにとってはそうした博覧会の主催者たちの欲望への理解には至らず,「観られる」アイヌの身体の方向性は異なったものであった。その後,第2期の時代(1927年〜1945年)になるとアイヌの大きな変化としては,「民族意識の高揚」とアイヌ自らが各種の著作物を出版したことであった。その後の第3期(1946年〜1959年)の戦争が終わってから1959年までの特徴は,「観光の介入」による変化があった。「観光アイヌ」とは,さまざまなファクターが相まった60年間のなかで「観られる」アイヌとして風景化されていたといえる。
著者
門田 園子
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
no.15, pp.33-46, 2008-03-31
参考文献数
15

二十世紀前半に活躍した国際的美術商である山中商会については、近代美術市場史を語る際にしばしば言及されてきたが、商会によって実際にどのような物品が、どの程度の数海外に渡り、現在どのような形で残されているのかについては依然として不明な点が多い。本稿は山中商会ロンドン支店の足跡を辿る事例研究であり、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム・アーカイブが保管している登録ファイルをもとに、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムの東洋美術コレクションのうち、山中商会が関わった作品について明らかにする。登録ファイルは1910年から1932年の間に山中商会ロンドン支店とヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムで交わされた文書からなり、購入にいたった作品には所蔵番号が付与されているため、所蔵状況を確認することができる。本研究はアーカイブ資料を用いた美術研究の有用性を示すとともに、ミュージアムという公的な場でいかに東洋美術のコレクションが形作られてきたかを、その担い手であったディーラーと専門学芸員の交渉過程から検証する。

6 0 0 0 OA 日本刀工辞典

著者
藤代義雄 著
出版者
藤代義雄
巻号頁・発行日
vol.新刀篇, 1937
著者
芝原 暁彦
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

近年、古生物学に関するエポックメイキングな研究成果が相次いで発表されている。例えば始祖鳥は、走査型電子顕微鏡による分析で、メラノソームと呼ばれる細胞小器官の痕跡が化石から発見されたことにより、少なくとも一部の羽毛は黒色であった可能性が示唆されている。同様に、複数の羽毛恐竜でも部分的に羽毛の色が推測されており、これまでの復元図では推測で描くしかなかった古生物の「色」についても、極めて部分的にではあるが統一できる可能性があり、科学教育やアウトリーチ分野にも影響しはじめている。 また日本各地における化石研究も精力的に続けられており、日本地質学会が2016年に作成した「県の石」リストでは化石の項目が設けられ、各県を代表する古生物が取り上げられるなど、国内における古生物の多様性を反映した教育コンテンツが続々と整備されている。こうした傾向を、今後の学校教材でどのように反映させていくかを考察したい。 また地質標本館が所蔵する鉱物・岩石・化石の標本写真は、政府標準利用規約2.0にもとづき「地質標本データベース」として公開されており、出典元を示すことで教材としての柔軟な活用が可能となっている。こうした良質なオープンデータについての紹介と、実際の利用方法についても実例を交えながら紹介し、新しい地球惑星科学教材の可能性について幅広く議論したい。
著者
色川 卓男
出版者
社会・経済システム学会
雑誌
社会・経済システム (ISSN:09135472)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.91-97, 2006-10-14 (Released:2017-07-28)

This paper examines the causal relationships between marriage and subjective well-being in detail in a longitudinal data set spanning 12 years. We get the following ; 1) when there are wives with children at the time of first marriage, they should not be so happy. In other words, childless single women who will get married are happier than single women with children who will get married. In Japan, at least, we find that there is an order model for marriage. 2) Single women who will marry are not much different subjective well-being than those who will not marry in 4 year ago at the time of first marriage. Single women gain subjective well-being by marrying. 3 ) Wives with small differences in their level of education between spouses don't gain, on average, much different subjective well-being from marriage than wives with large differences. For Japanese wives, differences in their level of education between spouses have no effect on their subjective well-being from marriage. 4) Social stratification like income, education status of their household has some effect on their subjective well-being from marriage. In conclusion, as for the wives, all gain subjective well-being from marriage. But, it is slightly different between their social stratification

6 0 0 0 OA ヒト科の出現

著者
國松 豊
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.798-815, 2002-12-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
102
被引用文献数
2 3

The human lineage is a branch of the huge evolutionary tree of the Hominoidea, which today includes ourselves, chimpanzees, gorillas, orangutans, and gibbons. All extant hominoids, except for the single world-wide species Homo sapiens, are now endangered and restricted in their distribution to tropical/subtropical forests of Africa and Southeast Asia. However, hominoids were once a more flourishing group millions of years ago. In the Miocene, there were various kinds of hominoid primates, and their distribution was much wider than today, from the southern tip of Africa through Arabia, to Europe in the west and through India to China in the east. It is from this great diversity of Miocene hominoids that the earliest human ancestors emerged, probably during the Late Miocene. The first part of this article provides readers with general information about extant hominoids. The second part is devoted to Miocene fossil hominoids with emphasis on African fossils. Although the main subject of this article is fossil hominoids, some recent findings of early hominids are also mentioned to at the end.

6 0 0 0 OA 信長公記

著者
太田牛一 著
出版者
甫喜山景雄
巻号頁・発行日
vol.巻之下, 1881

6 0 0 0 OA 少年伝記叢書

出版者
民友社
巻号頁・発行日
vol.苐三卷, 1897